暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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2016年12月

「やけどにチンク油、ぬかみそ」は、絶対ダメ!!


冬はやけどの季節だ。

やけどの重症度は、深さと広さで決まる。

深さは、表皮のみの「第Ⅰ度」、真皮まで及んだ「第Ⅱ度」、さらに深い「第Ⅲ度」と分けられる。

広さ(面積)は、からだ全体の体表面積に対して何%にあたるかという比率であらわす。目安としては、手のひらの面積がその人の体表面積の1%に相当する。

治療は、やけどの広さや深さによって異なるが、どんな程度のやけどでも、応急処置としてはまず冷やすこと。

水道の水を30分から1時間ジャブジャブかけてしっかりと冷やし切る。

皮膚が赤くなっただけの「第Ⅰ度」の1%くらいのやけどだったら、それだけで治る。

衣服の上から熱湯をあびたら、服の上から流水をかける。

無理に服をぬぐと、衣服にくっついた皮膚が一緒にはがれてしまうことがある。

昔は、やけどをして医者に行くと、白いどろっとした塗り薬(チンク油)を塗られた。

医学の教科書にも載っている治療法だったから、いまでもお年寄りの内科の先生なんかだとやっているかもしれない。

だが、それをやられると、やけどの深さがわからなくなる。

本格的な治療の妨げになるだけでなく、カサブタができ、細菌感染を起こしやすい。

で、チンク油を落とす。これが痛い。

ネットで「チンク油」を検索すると、

「ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説 

チンク油 亜鉛華に等量のオリーブ油を混和したもので、やけど、できものなど皮膚の炎症の際に患部を保護するための油剤として広く用いられる」とある。

時代遅れの大マチガイといわねばならない。

『広辞苑』に「チンク油」が登場するのは、1983年発行の第三版から。

「チンク油 同量の酸化亜鉛と植物油(主にオリーブ油)とを混和したもの。収斂(しゅうれん)作用があり、皮膚の急性炎症に使う」という語釈は、2008年の第六版まで変わっていない。

やけども皮膚の急性炎症の一種ではあるが、やけどにチンク油は、ダメです。

医者に行くほどではない「やけどのくすり」となると、ぬかみそ、みそ、しょうゆ、食用油、ジャガイモの汁、キュウリの輪切り、アロエ、朱肉......まあ、じつにいろいろさまざまな家庭療法が言い伝えられている。

全部、ダメ! 

わざわざバイ菌をくっつけるようなものだし、治りも遅くなる。

とにかく「やけどの特効薬」は、水!

しっかり水で冷やしたあとでも水疱が残りジュクジュクしているときは、皮膚科へ。

そうしてやけどが治ったら、跡を残さないケアが大切だ。

それにはまずビタミンC。ビタミンCには色素沈着を抑える効果がある。

食事やサプリメントでの摂取のほか、ビタミンCのローションを塗ればより効果的。

大敵は紫外線。紫外線を浴びると、跡の色が濃くなる。

衣服などで紫外線からやけど跡を守ろう。

ともあれ、いちばんのだいじは「予防」。

ストーブ、魔法瓶、油料理......しっかり気をつけてください。とくにお子さまに!

ところで、「やけど」は、

〔広義では、危険なことにのめり込んで手痛い損害を受ける意にも用いられる。例「円相場で大やけどした」〕=『新明解国語辞典』というように比喩としてもつかわれる。

こちらのクスリは、金と時間と友情だろう。

むろん「予防にまさる治療なし」は、この場合もいえる金言である。


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風邪はホントに「万病のもと」か?

「風邪は万病のもと」ということわざは、中国明時代の『円機活法』という書物のなかの、「風者百病之始」から出たものらしい。

だから「風邪は百病のもと」ともいう。

百病といい、万病といっても、この「百」や「万」は、百貨店や万年筆の百や万と同じ。

風邪は非常に多くのさまざまな病気の原因になるといっているわけだ。

それはホントか? 

ホントでもあるし、ウソでもある。

アメリカの疫学調査だが、ある地域社会の全疾患の発生数の約70%は風邪で、住民1人当たり年に7回、風邪をひき、そのうち2~3回は市販の薬を服用、病・医院で受診したのは1回だった、と報告されている。

ちょっとした鼻風邪なども勘定に入れると、日本人のばあいもだいたいこんなものだろう。

風邪はいわゆるコモン・ディジーズ(ありふれた病気)の最たるものである。

であるのに、もしもあらゆる風邪が万病のもとになるとしたら、世の中そこらじゅう病人だらけになってしまうだろう。

そんなことはない。

だれでも7回ひいた風邪は、7回ともなんの余病を併発することもなく治るのが普通だ。

多分、ほとんど100%に近い症例において、風邪は万病のもとでは、ない。

では、風邪からほかの病気になることはないのかというと、それはあるのである。

いちばん多いのは肺炎を併発する例だ。

とくに乳幼児と老人の風邪は肺炎に進展しやすい。

中耳炎を起こす例もある。

風邪のウイルスや細菌が、鼻をかんだりしたとき、のどから耳に通じる耳管をくぐりぬけて、中耳を汚染するためだ。

まれに脳炎や脳症を引き起こすこともある。

脳炎は、ウイルスが直接、脳の中に入り込んで起こる。

脳症は、ウイルスは脳内に入らなくても、サイトカイン(免疫細胞がウイルスを攻撃するために出すいろいろなたんぱく質)による反応で起こる。

ライ症候群という子どもの病気も、風邪やインフルエンザ、水ぼうそうなどウイルス性疾患のあと発症する。

原因はわかっていないが、解熱鎮痛薬のアスピリンが疑われている。子どもにアスピリンを飲ませてはいけない。

風邪で体力が低下したため、それまで潜在していた病気が出てくることもある。

療養中の病気はてきめんに悪化する。

病人に風邪をひかせないのは、看護の基本である。

初発症状が風邪によく似ている病気が、風邪と間違えられることもある。

はしか、溶連菌感染症、百日ぜき、ジフテリア、急性肝炎、結核などだ。

数日でおさまらない風邪や、風邪にしてはちょっとヘンだな、と思ったら、風邪の余病か、あるいは風邪に似た症状で始まる別の病気を疑って、医師の診察を受けるようにしたい。

なお、厚生労働省が毎冬、キャンペーンしているように、

「インフルエンザは風邪ではありません」。

風邪の熱は37度ぐらいで、症状も軽い。

インフルエンザはいきなり38度以上の熱が出て、のどの痛みやせき、頭痛、倦怠感、筋肉痛など激しい全身症状が出る。

「やられた!」と感じたらすぐ医者へ!

ところで、風邪をひくかどうか、ひいても、軽くすむかどうかは、主としてそのとき、その人のウイルスに対する抵抗力で決まる。

すきっ腹のときや寝不足のときに寒い目にあうと、風邪をひきやすい。

3食きちんと食べて、毎夜よく眠ること。

ひいてしまったときの注意もこれと同じ。

風邪の最良の治療法は安静から始まる。


柿と酒のやや複雑な関係


師走12月、忘年会の月は、肝臓受難の月である。

「悪酔い・二日酔いを防ぐ上手な酒の飲み方」といった記事が散見される月でもある。

そんな記事にはもしかしたら、

「酒を飲む前に柿やミカンなど果物を食べておけば悪酔いしない」などと書いてあるかもしれない。

この助言、酒にある程度以上強い人に対してならホントだが、酒に弱い人に対してはウソになる。

まずいことに、そういう助言を忠実に実行しがちなのは、弱い人のほうだから、余計なことをしたばっかりに余計ひどい目に遭うことになりかねない。

「酔い覚ましには柿を食えばよい」とは、昔から言われていて、これはホントのことだ。

柿がいいのならミカンやリンゴだっていいのではないか、と思う人もあるだろう。

それもまあけっこうである。

柿やミカンやリンゴなどの果物が酔い覚ましに効いたり、悪酔いを防いだりするのは、それらに多く含まれている果糖にアルコールを分解する酵素の活性を強める働きがあり、タンニン(柿にはとくに多い)やビタミンCにはアセトアルデヒドを分解する酵素の活性を強める働きがあるからだ。

アセトアルデヒドというのは、アルコールが分解されてできる毒性の強い物質である。


体内に入った酒(アルコール)は、肝臓でまずADH(アルコール脱水素酵素)やMEOS(ミクロゾーム酸化系)という酵素によって分解されてアセトアルデヒドになる。

次に、ALDH(アルデヒド脱水素酵素)という酵素の働きで、アセトアルデヒドが無害の酢酸に変わる。

そして最後に、酢酸が炭酸ガスと水に分解されて、体から出ていき、アルコールの旅は終わる。

こう見てくると、アルコールの代謝がスムーズにいくかどうか―言い換えると、悪酔いや二日酔いをするか、しないか―は、一群の酵素の働きにかかっていることが、わかる。

一つずつ順番に見ると―、

ADHはだれもがだいたい同じように持っている。

MEOSは、ADHの補助的な働きをするのだが、アルコールを飲むことで肝臓のなかで増加し、活性が強くなる。

酒飲みのキャリアが重なるのにつれて酒に強くなる一つの理由は、この酵素が増加するからだろう。

そして三つ目のALDH。これがアルコール代謝の最も重要なカギをにぎっている酵素だ。

というのは、ALDHがその代謝を受け持つアセトアルデヒドこそ、悪酔い・二日酔いの元凶だからだ。

ALDHには1型(ALDH1)と2型(ALDH2)という二つのタイプがある。

ALDH1は、だいぶ飲んで血液中のアセトアルデヒドが高濃度になったとき、ようやく働き始める後発型の酵素である。

ALDH2は、飲み始めの低濃度のときからよく働き、アセトアルデヒドを次から次へ酢酸に分解する。

酒に強い人は、ALDHの1型も2型も両方持っている。

酒に弱い人は、1型しか持っていない。

飲み始めから働く2型がないから、酒をちょっと飲んだだけでもアセトアルデヒドがたまってしまい、顔が赤くなり、胸がドキドキしたりする。

日本人など黄色人種の半数は、ALDHの2型が遺伝的に欠損している。

つまり酒に弱い体質に生まれついている。

酒を飲むと顔が真っ赤になる症状をオリエンタル・フラッシュと呼ぶのは、そういうわけである。

―というところで柿(果物)の話に戻る。

酒を飲む前や飲んでいるときに果物を食べると、そのなかの果糖がADHの活性を強くし、アルコールを分解する働きが促進され、アセトアルデヒドがそれだけ早くできる。

ところが、そのアセトアルデヒドを次々に処理していくALDHの2型がないと、アセトアルデヒドはどんどんふえていく。

果物を食べたために悪酔いの度合いがさらにひどくなる。

実際、ALDH2の欠損者では、酒を飲む前に果糖を摂取したときと、そうでないときとでは、アセトアルデヒドの血中濃度の上昇速度が明らかに異なることが実験的に確かめられている。

だから酒に弱い人が果物を食べるのなら、酒を飲んだあと(アルコールがすっかりアセトアルデヒドに分解されたころ)だと、タンニンやビタミンCのALDHの活性を高める作用が期待できる。

酒の前の果物は人によってはNG、酒のあとの果物はだれでもグー。そういうわけです。



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