暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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2016年10月

「酒は百薬の長」の虚実

酒の十徳


酒に関する名言、格言の類を集めたものを走り読みして気になったことがある。

それは日本人にはどうも否定的な酒観?の持ち主が多いようだということだ。

なにかよほど酒にひどい目に合わされたのか、恨みつらみが言外ににじみ出ている感じなのだ。

例を挙げるとこんなふうである。

「一杯は人、酒を飲み、二杯は酒、酒を飲み、三杯は酒、人を飲む」(千利休)

「好んで酒を飲むべからず。固辞しがたくとも微醺(びくん)にして止むべし」(松尾芭蕉)

「酒を多く飲んで飯を少なく食う人は命短し」(貝原益軒)

「百薬の長とはいえど、万の病は酒よりこそ起これ」(吉田兼好)

ただ、一方にはこんな人もいる。

将棋の升田幸三さんの生前、面接取材した際、医者にかかっても薬はめったに飲んだことがないとおっしゃる。

「どうしてですか?」

「医者がくれるのは一薬だが、わしは毎日、百薬の長を飲んどる」

大いに笑わせてもらったが、適量の酒はまさにしかり、である。

「酒の十徳」を挙げてみよう。

①気持ちのイライラを鎮め、心を安らかにする精神安定剤。

②憂うつな気分を浮き立たせ、心を陽気にする抗うつ剤。

③胃液の分泌を促す食欲亢進剤。

④眠りを誘う催眠剤。

⑤善玉コレステロールのHDLを増やし動脈硬化を防ぐ心臓病の予防薬。

⑥血圧を下げる降圧剤。

⑦尿の出をよくし、尿路結石を防ぐ利尿剤。⑧発汗を促し風邪を治す解熱剤(例=たまご酒)。

⑨脳を刺激し意識を回復させる気付け薬。

⑩セックスをつよくする催淫剤。

まさに百薬の長、これほど多彩な薬理作用をもつ薬はほかにはないだろう。

急いでヤボなつけたしをするが、こうした酒の薬効は、適量を守ったときにのみ得られる。

飲み過ぎると逆効果、命取りになりかねない。

適量とはどれくらいか?

「1日1単位」、多くても「2単位」が限度と、心臓病や肝臓病の専門医は異口同音に注意している。

1単位(純アルコール換算20g)は、ビール=中びん1本、日本酒=1合、ウイスキー=ダブル1杯、焼酎=0.6合、ワイン=1/4本、缶チューハイ=1.5缶といったところ。

適量の酒が、心臓病、脳梗塞のリスクを有意に下げることは、世界各地で行われたさまざまな疫学調査によって実証されている。

だが、だからといって、もともと酒に弱い人が無理して飲むのはNG、バカげている。

酒(アルコール)は、体に入ると肝臓で分解処理される。

そのさい必要な酵素が3種類あるのだが、日本人などモンゴロイト(黄色人種)の約40%は、そのなかの1種類ALDH2の活性が弱いか、欠けている。

そのため少量のアルコールでも悪酔いしやすい。酒に強いか、弱いかは、これで決まる。

酒をすこし飲んだだけで、たちまち顔が赤くなり、胸がドキドキする人は、ALDH2が欠損していると考えてマチガイない。

そういう人は、たとえ社長命令でも一気飲みなんて絶対やってはいけない。

「酔いに十の損あり」と古人も教えている。

─てな、わけで、「酒は百薬の長」は、ホントであり、ウソでもある。

このようにまったく一筋縄ではいかないのが、酒の酒たるところだろう。


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「スポーツは体にわるい」?

◎過激な運動後の「オープンウィンドウ」

絶好の運動日和がつづいている。

にわかスポーツマンがどっとふえる季節だが、はまり過ぎちゃいけませんよ。

過激な運動のあとには免疫力が低下し、感染症にかかりやすいことがわかっているからだ。

アスリートが意外に風邪を引きやすかったり、だいじな試合の前に体調を崩したりしがちなのは、よく聞く話である。

なぜか? 

運動免疫学の専門家の説明は、こうだ。

激しい運動のあと、血液中の物質を測ると、「IgG値」と「NK細胞」の活性度が低下し、「インターロイキン6」がふえている。

IgGは、体内に侵入した抗原(病原体やウイルス・細菌など)に対する抗体として働く5種類の免疫グロブリン(Ig)のうちいちばん多いグロブリン(単純たんぱく質)だ。

NK(ナチュラルキラー)細胞は、白血球の一種のリンパ球の15~20%を占める細胞。

体のおまわりさんのようなもので、体内をいつもくまなくパトロールして、がん細胞の芽やさまざまなウイルスに感染した細胞をやっつけている。

NK活性が低下すると、感染症やがんにかかりやすくなる。

インターロイキン6(IL-6)は、免疫にかかわるたんぱく質=サイトカインの一種。免疫を抑制し、炎症を引き起こすので炎症性サイトカインと呼ばれる。

通常の状態ではIL-6はほとんど検出されないが、フルマラソンのあとの血液中では約100倍もふえることがあり、関節リウマチ患者の関節液中には著しく増加する。

IL-6の激増は、生体が酷使されていることの証拠といえる。

過激な運動のあとで生じるこうした血中物質の変動によって、免疫のはたらきが数時間から数日、一過性に低下した状態を「オープンウィンドウ」と呼ぶ。

感染症などに「窓を開けた」状態というわけだ。

実際、マラソンのあと参加選手の多くに風邪の症状がみられたり、感染症にかかるリスクが高まったりすることは、内外の研究報告でも確かめられている。

そうした過激な運動を長く続けていると、当然、寿命にも影響する。


◎体育系0Bは短命

こんな調査研究がある。

体育学部をもつある国立大学の卒業生の110年間の死亡者のなかから、生年と没年の明白な3113人を抽出し(戦死・戦病死、事故死などを除き)、体育系、文科系、理科系に分けてそれぞれの平均寿命を算出した。

結果、体育系=60.6歳、文科系=66.8歳、理科系=66.1歳だった。

「直接の死因についての資料はなかったが、体に重い負荷のかかる激しい運動を、長期にわたって続けた体育系卒業者が、他のグループに比べて短命なのは明らか」と、調査を行った研究者は話している。

なぜ、激しい運動が寿命を縮めるのか。

「ひとことでいってしまえば、運動によって酸素の消費量が増え、それにつれて体内に『活性酸素』と呼ばれる猛烈な毒が発生し、生体を傷つけることと、運動がストレスになることである」

基礎運動科学が専門の加藤邦彦・理愽(東京大学理学部)は、著書『スポーツは体にわるい』(カッパサイエンス=光文社)にそう記している。

同書には、運動量の増大によって生じる活性酸素が、老化・短命を促進すること、スポーツがストレスであること―が、多くの研究実験をもとに詳しく明快に説かれている。

過激な運動が健康長寿の妨害因子であることに異論を差しはさむ余地はないようだ。

反面、適度な運動が、免疫力を高め、感染症のリスクを減弱し、生活習慣病を防ぎ、健康寿命を延ばす大きな要因であることも事実である。


◎WHO推奨の「ニコニコペース」

では、「適度な運動」とは?

自分が出せる最大限の力(最大運動強度)の半分ぐらいの「ニコニコペース」が、よい。

それだと、筋肉のエネルギー源である乳酸の生成と酸素の供給のバランスがとれて、らくらく続けられる。

楽しく体を動かすと、エンドルフィンという快感ホルモンが脳内から分泌され、NK細胞の活性が上がる。

健康のための運動は無理せず楽しくやるに限る。

なお、「ニコニコペース」の運動は「荒川方式(アラカワメソッド)」と呼ばれ、WHO(世界保健機構)が推奨している。


耳が遠くなると長生きする?

耳と寿命は無関係

私事だが、私は10年前にほとんど全聾同然の重度難聴になった。

「ミンツン(聾を意味する屋久島方言。ミン=耳)になったよ」といったら、「目でなくてよかったな」といわれたり、「耳が遠くなると長生きするそうだよ」と慰められたりした。

目と耳とどちらがより重要か。これは一概にはいえない。

視力には、感覚・知覚・認知のすべてが反映され、人間は外部情報のほとんどを目から収集しており、その割合は約80%にもなるといわれる。

一方、聴力の欠如は人間関係をいちじるしく希薄にする。

人の肉声(話)を聞くことができないことが、どれほど寂しいものか、なった者でなければわからないだろう。

「目が見えないことは、人と物を切り離す。耳が聴こえないことは、人と人を切り離す」と、カントがいっているそうだ。

なるほど、目、耳、どちらを選ぶ? という問いを突き詰めると、物か? 人か? の二者択一、人それぞれの価値観を問うことに通じることになるようだ。

つまり一概にはいえないってわけ。

─と、書いて、いま、目を閉じて全盲の状態をつくってみて、これが死ぬまでつづくのかと想像したら、怖くなった。

ミンツンのほうがまだしも救いがあるなと思い、わが精神性の低さを自覚したしだい。


    *

さて、本題の「耳が遠くなると長生き」だが、これ、ホントか? ウソか?

まるっきりウソ、ナンセンスな俗説である。

難聴は伝音難聴と感音難聴に大別される。

前者は、外耳から中耳までの音を伝える働きが障害された場合に起こる。

後者は、内耳から大脳までの音を感じる神経系が壊れる。

内耳は、耳の奥にある体の中で最も硬い骨に囲まれている。

そこの蝸牛(かぎゅう)と呼ばれるカタツムリのような形の器官に、有毛細胞という毛の生えた細胞がびっしり並んでいる。

この細胞の壁に収縮たんぱく(プレスチン)という物質があり、音の振動が伝わると、伸び縮みしてその刺激を脳へ伝える。

蝸牛の中にひしめき合うように生えている有毛細胞は、生まれたときから減り始めて、けっして再生しない。

だから年をとるにつれてだんだん耳が遠くなるのは(個人差はあるが)、だれも避けられない。いわゆる老人性難聴である。

昔、「人生50年」といわれた短命時代には、老人性難聴が起こるまで長生きする人はごく少なかった。

結果、長生きした人はみんな耳が遠かった。

その原因と結果が逆立ちして、「耳が遠くなると長生きする」という俗説が生まれ、信じられるようになったわけだ。

いまや「人生80年」どころか「90年」の時代になりかけている。

だれもが避けられぬ加齢性難聴の進行を抑えるにはどうしたらよいか。

小川郁・慶応大教授(耳鼻咽喉科)らは、10年以上前から「イヤー・フード」の実験的研究を続けていて、抗酸化物質が難聴の進行を抑えることを実証した。

抗酸化物質を多く含む食品といえば、バナナ、アボカド、プルーン、アーモンド、キウイフルーツ、リンゴ、ミカン、キャベツ、タマネギ、カボチャ、ニンジン、トマト、ブロッコリー、ニンニク、納豆、豆腐、豆乳、そば、卵の黄身、ワカメ、ココナッツオイル、赤ワイン...きりがない。

 小川先生は、プレスセミナーでこう話していられる。

「治せない難聴は、いかに予防するかが大切で、いま注目の抗加齢医学では、例えば脳を守るための「ブレイン(脳)フード」として、ビタミンEとかウコン、カテキン、青い魚に含まれるDHAなどの効果がわかっています。

耳についてはどうか。我々も10年以上前から「イヤー(耳)フード」の実験的研究を続けていますが、一つはカロリー制限と、もう一つは抗酸化物質が、難聴の進行を抑えることがわかっています。

例えば、Sir2という長寿遺伝子はカロリーを抑えるとスイッチがオンになります。

抗酸化物質では赤ワインのポリフェノールがSir2遺伝子を活性化するという論文が二〇〇三年に発表されて、赤ワインブームが起こりました。

が、赤ワインをどれくらい飲めばSir2遺伝子をオンできるかといえば、1日5本ということで、それじゃ寿命が伸びる前に肝硬変で死んでしまう(笑)。

そこで赤ワインの、そのレスベラトロールという物質をサプリメントにすればいいだろうと、いまそれの開発が進んでいるようです」。

レスベラトロールとそのサプリメントについては、このブログの「長寿サプリ」にすこし詳しく記した。ご参照ください。



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