暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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2016年2月

一人で悩まないで!

尿もれ克服の日

2月20日は「尿もれ克服の日」だった。

尿もれを克服した元患者の団体「ひまわり会」が、

「女性の4人に1人が尿もれに悩んでいる現状をふまえ、女性の尿もれに関する認識を広く一般に深め、尿もれで悩む女性がゼロになること」を目的として設定した。

220を、ニ、モ(2=two→too)、レ(0)と読む語呂合わせだそう。

ジョンソン・エンド・ジョンソン社がサポートする、女性の健康に関する電話サービス「ウーマンズ・ヘルスパートナー・コールセンター」に寄せられた、1年間の全相談の約31%が「尿もれ」だったという。

尿もれには、腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁がある。

腹圧性尿失禁は、重い物を持ち上げたり、クシャミをしたり、笑ったり......など、おなかに圧力がかかり、膀胱がグッと収縮する瞬間、もれてしまうもので、女性の尿失禁の70~80%は、これ。

最大の原因は、出産だ。

出産のときの産道損傷や骨盤底筋(骨盤内におさまっている子宮、膀胱、膣、尿道、直腸などを支え、尿道をしめている筋肉群)の下垂が、年を重ねるにつれて大きくなるのだという。

──であるなら、それはつまり人間のいのちをつないだ、母なるひとの証し、なのである。

子よ、老いた母の尿もれをあだおろそかに思うなかれ!

笑ったりしたらバチが当たるぞ!

もう一つの切迫性尿失禁は、尿意を感じたとたん尿が漏れそうになり(切迫尿意)、漏らしてしまうもので、排尿を調節する自律神経が狂って、膀胱の異常収縮が誘発されるために起こる。

女性では腹圧性との混合型として10%ぐらい、

男性では、前立腺肥大症や前立腺がんの症状として、ままみられる。じつは当方も体験者。その切ない苦痛は、拙著『「がん」はいい病気』(マキノ出版)に笑述した。

人に知られたくない...、トシのせい...、と一人で悩んでいられるご婦人が多いようだが、尿もれは、適切に対処すればかならず改善される。

尿失禁の専門外来、女性泌尿器科、泌尿器科・婦人科連携のウロギネ外来(Urologie=泌尿器科、Gynecologie=婦人科)を訪ねるとよい。

その前に知りたいことなど、ネットで調べたり、電話でたずねたりするのもよろしいでしょう。

「ウーマンズ・ヘルスパートナー・コールセンター」が、「骨盤臓器脱・尿もれ」に特化した電話相談サービス「ウロギネホットライン(無料)」は、

電話番号=0570-056-922

受付時間=月曜日~金曜日(祝祭日を除く)の午前10時~午後4時。

WEBサイトは、http://www.traube.co.jp/

骨盤臓器脱

骨盤の中にある子宮、膀胱(ぼうこう)、尿道などの臓器がだんだんと下がってきて、最終的に膣(ちつ)を通って膣壁と一緒に体外に出てくることがある。

体外に出た臓器の種類によって「子宮脱」「膀胱瘤(りゅう)」「尿道瘤」「小腸瘤」「直腸瘤」に分けられる。

まとめて「骨盤臓器脱」と呼ばれる。

骨盤内の臓器(膀胱、子宮、直腸)が落ちないように支えている骨盤底筋群が、出産によって傷ついたり、加齢や肥満によってゆるむことにより、尿や便がもれてしまったり、骨盤内臓器が膣から身体の外へ出てきてしまう。中高年の女性に多くみられる病態だ。

膣(ちつ)の辺に何か異物があるように感じる、午後になると、おなかの中が下がってきたように感じる、座ると陰部の辺で何かが押し込まれる感じがする、尿が出にくくなった、残便感がありスッキリしない、

─といったいままで経験したことのない違和感を覚えることがあったら、骨盤臓器脱かもしれない。

最も多くみられる膀胱瘤では、尿もれや、逆に尿が出にくい、出るのに時間がかかる排尿障害が起こりやすい。

「膣から軟らかいボールのようなものが出てくる感じがする」と訴える人もある。

症状は午後から夕方にかけてひどくなる。

放っておくと、進行することはあっても改善することはない。

一人で悩まず、スパッと思いきって病院へ─。

メッシュ治療

骨盤臓器脱の治療には、手術による根治療法と、リング状の装具(ペッサリー)を膣(ちつ)の中に入れて、臓器を支える保存療法がある。

ぺッサリー療法は、日本では年間7万2千人以上が受けている。

リングは患者の体格や骨盤臓器脱の状態に合わせて選ばれる。

感染や炎症、出血、膣の壁の損傷などが生じることがあるので、定期的な受診が必要だ。

骨盤臓器脱を根治する方法は手術しかない。

以前は患者本人の膀胱(ぼうこう)や子宮の周りの組織を使って補強する手術が行われた。

が、使用する組織そのものが傷んでいるために再発することがあった。

近年、メッシュを使った径膣(開腹しない)手術が普及、よい成績を上げている。

丈夫でやわらかい人工素材で編み上げたメッシュ状のテープで尿道をハンモックのように支えて、尿による腹圧がかかった際の尿道周辺のサポート力を回復させる。

術後の痛みや体への負担が軽く、再発例も少ない。これからの治療の主流になるとみられている。

手術時間は通常1~2時間、入院期間は約1週間。

むろん健康保険が適用される。

受診は泌尿器科か産婦人科へ─。


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帯状疱疹&帯状疱疹後神経痛(3)

痛みの刺激を伝えるしくみ

神経障害性疼痛の代表は帯状疱疹後神経痛だが、これと同じように末梢神経(中枢神経=脳・脊髄から分かれて全身にひろがる神経)が障害された痛みには、糖尿病性の神経障害、三叉神経痛、神経根の圧迫に伴う首や背中、腰などの慢性疼痛がある。

一方、中枢神経が障害された神経障害性疼痛には、脳卒中後の痛み、脊髄損傷後の痛みがある。

そのとき、神経ではどんなことが起こっているのか。

たとえば、帯状疱疹の炎症が治ったあとの損傷を受けた神経線維の上には、異所性ナトリウムチャネルやαアドレナリン受容体が発現する。

ナトリウムチャネル(ナトリウムの出入り口)とは、普通は神経の末端にあって、何か刺激が起きたときにそのチャネルが開いて、そこにナトリウムが流れ込んで、電気信号が脳へ送られる。

ところが、神経のケーブルの途中(異所)に、そのチャネルができたり、アドレナリン(副腎から分泌されるホルモン。神経伝達物質でもある)を受け取る受容体ができたりすると、そこが発電機になってしまい、ジリジリと痛みが出てくる。

そのほか、ケガをしたりすると、自律神経の一つの交感神経が、ものを感じる知覚神経の方へ枝を出して興奮させる。

自律神経というのは「自律」だから、勝手に興奮し、勝手に枝を出し、痛みを伝える神経を興奮させるので、何もないのに痛みを感じてしまうことになる。

痛みの神経ルートでめちゃくちゃ無秩序な混乱が起こっているわけだ。

それは帯状疱疹後神経痛にかぎらず、よくある例では、採血のときの注射針で腕の神経を突いたとか、手術のときに神経が切れて、そのあとそういうことが起きる可能性もある。


神経ブロック療法

帯状疱疹の重症例には神経ブロック療法やレーザー治療が非常に効果的だ。

早くからそれを行えば、帯状疱疹後神経痛は防げる。

薬物療法では、国際疼痛学会や欧州神経学会などの主要学会がプレガバリン(商品名リリカ)という薬を第一選択薬として挙げている。

この薬が、日本ではようやく2010年4月にまず帯状疱疹後神経痛の薬として承認され、10月により広い末梢性神経障害性疼痛の薬としても承認された。

世界的に第一選択薬として認められている薬を日本では長く使えなかったので、海外の学会などに行くと、

「日本はなぜ、帯状疱疹後神経痛の治療にプレガバリンを使わないのか」と聞かれる。

「まだ国が承認していません」と答えなければならない。こんな恥ずかしいことはなかったそうだ。

プレガバリンの作用機序(薬の効くしくみ)を簡単にいえば、神経系に分布しているカルシウムチャネルに結合して、カルシウムの流入を少なくして、神経の過剰な興奮を抑え、痛みを和らげる作用だ。

カルシウムチャネルの流通は、神経機能の維持にとって必要なものなので、完全に遮断してしまうのではなく、いくらか狭めて少し機能を弱くする。

リリカを飲んで、カルシウムの流入がセーブされると、興奮性神経伝達物質の放出が少なくなって、神経の過剰な興奮が抑えられるので、痛みが緩和される。

だからこれは飲んですぐ効く薬ではない。たとえば、頭が痛いときにセデスを飲んだり、ひざが痛いときにロキソニンやボルタレンを飲むと、わりとすぐに効いてくるが、リリカにはそんな即効性はない。

効果が現れるのに1週間ぐらいかかる。

脳に作用してパッと効くのではなく、興奮性神経伝達物質の放出を抑えて、神経の過敏な状態を落ち着かせる薬だからだ。

では、その1週間はどうしたらいいか。


世界的アルゴリズム

世界的に認められている末梢性神経障害性疼痛のアルゴリズム(問題を解決するための定型的な手法)は、帯状疱疹後神経痛のような痛みに対しては、まずリドカインのパッチを使おう、というものだ。

さっき異常なナトリウムチャネルができるといったが、リドカインは局所麻酔薬で、ナトリウムチャネル遮断薬なので、これを最初に使って、痛みを鎮めるというわけ。また、神経ブロックをしても、痛みは一時的に止まる。

そして、アルゴリズムの続きだが、リドカインパッチがダメな場合は、プレガバリン(リリカ)と同時に、ガバペンチン(抗けいれん薬)、抗うつ薬のTCA(三環系抗うつ薬)かSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)を使い、もう少し効果を強くしたいときは、トラマドールを含むオピオイド(非麻薬性鎮痛薬)の併用をしよう─というのが、全世界的に認められている末梢性神経障害性疼痛の治療アルゴリズムである。

抗けいれん薬やうつ病の薬が、なぜ神経障害性の痛みに効くのか?

ガバペンチンは、リリカとほとんど同じ作用機序をもつ薬であり、うつ病の薬が効くのは、脳内の神経伝達物質の分泌がふえるからだ。

神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンが欠乏して、うつ病になると、痛みの伝達回路に異常が生じ、痛みを制御するしくみの調整が悪くなる。それがうつ病の痛みの原因である。

そうした薬とリリカでは作用機序が違うので、どちらか先に使ってみて、患者に合う方、副作用の少ない方にすればいいし、もし、片方で効かなければ、たとえば三環系抗うつ薬とリリカを併用する。

もう一つ、神経障害性疼痛は慢性の痛みなので、痛みだけではなくて、睡眠、気力といったものに影響する。

痛み以外に不眠、無気力、眠気、集中力の低下、うつ症状、不安、食欲不振といった症状があると答えた人はかなり多く、特に不眠の訴えは60%にものぼる。

しかしリリカを飲み始めると、1週間後からよく眠れるようになるという。


ペインクリニック

治療を受けるには何科を訪ねたらいいか。

帯状疱疹になったときに最初にかかるのは皮膚科だから、皮膚科に通っている人が多いが、適切な治療をきちんと受けるには、ペインクリニック(痛みの専門外来)を訪ねるのがよい。

帯状疱疹後神経痛はもとより、糖尿病の痛みやしびれなどの末梢性神経障害疼痛の人も、ぜひペインクリック(痛みの専門外来)を受診されるようお勧めする。


日常的注意

寒さや冷たさが、痛みを強くすることが多いので、冬には保温、夏はクーラーの冷たい風に直接当たらないようにする。

お風呂で体が温まると、血液の循環がよくなり、痛みが和らぐ。

3回にわたる「帯状疱疹&帯状疱疹後神経痛」に関する記事は、小川節郎・駿河台日本大学病院院長/同大学医学部麻酔科教授(当時。現在=同大学総合科学研究所教授。日本慢性疼痛学会理事長)にお話しいただいた、雑誌『壮快』2011年3月号のQ&A形式の記事「名医に聞く」を短くリライトしたものです。

小川先生の親切で有益なご教示に改めて感謝いたします。



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