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2016年1月

帯状疱疹&帯状疱疹後神経痛(2)

帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹は治っても、一件落着とはならない例がけっこう多い。

発疹や水疱が消えたあとのきれいな皮膚に奇妙な激しい痛みが生じる。

「私、ここがものすごく痛いの」と訴えても、目で見るかぎり別にどうということはない。

そのため、周りの人に辛さをわかってもらえなかったり、この病気をあまりよくご存じでない医師には、「大したことはないよ」といわれたりする。

痛みのつらさに加えてもう一つ、別の苦悩が加わることになる。


リスクファクター

帯状疱疹から帯状疱疹後神経痛に移行しやすいリスクファクター(危険因子)をもつのは、どんな人か?

①高齢者(60歳以上)。

②皮膚病変が重症。

③急性期の疼痛が重症。

④神経障害性疼痛の症状の存在(アロディニア、知覚異常など)。

⑤免疫不全状態の存在。

最も多いのは、高齢者だ。

普通、若い人ほど比較的すうーっと治っていくが、年をとればとるほど、帯状疱疹後神経痛になりやすい。

50歳の人が帯状疱疹になると50%、60歳では60%、70歳では70%が帯状疱疹後神経痛に移行するといわれる。

男がなりやすいとか、女がなりやすいといった性差は、ほとんどない。

2番目と3番目は、帯状疱疹のときの皮膚の症状や痛みがひどい人。

これは神経がそれだけやられていることを意味する。

急性期の炎症、ウイルスによって神経が激しく損傷されて発症するのが、帯状疱疹後神経痛。神経がやられて起こる痛みだから「─神経痛」なのである。

4番目の神経障害性疼痛とかアロディニアというのは、奇妙な感じのさまざまな知覚障害のこと。アロディニアは「異痛症」とも呼ばれる。

普通の痛みではなく、ちょっと触っても飛び上がるような鋭い痛み、電気が走る、針で刺される、焼ける、ピリピリする...など、いろいろな表現を患者はする。下着が触れても痛いという人が多い。

5番目の免疫不全状態は、エイズ(後天性免疫不全症候群)、がん、糖尿病など。

体の免疫状態の低下した人は、帯状疱疹後神経痛に移行する可能性が強い。

これらのうち一つでもあれば要注意。

二つ以上ある場合は、急性期からの適切な疼痛対策が必須とされる。

帯状疱疹の症状には個人差があり、それによって神経損傷の程度も変わってくる。

急性期の激しい痛みを脳が記憶し、それが慢性の痛みにつながる。

帯状疱疹になったら、とにかく早く正しい診断と適切な治療を受けることが、最も重要だ。

体の片側に赤い帯状のブツブツが出てきて痛いときは、帯状疱疹に詳しい専門医の診察を受けるのが、病気をひどくしない心得の第一條といえる。


神経障害性疼痛

帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛の神経障害性疼痛は、神経が障害された痛みなので、普通の切り傷、骨折、火傷などの痛みとは、痛みの性質が違う。

体にはありとあらゆるところに神経が網の目のように張りめぐらされていて、その神経線維の1本、1本は、電線が絶縁体で覆われているように、髄鞘(ずいしょう=ミエリン)という被膜で覆われている。

ミエリンがウイルスに壊されて起きるのが、神経障害性疼痛である。

痛みの刺激は、電気信号で脳へ伝わるのだが、その電線の絶縁体が壊されて、電線同士がショートし、くっつき合ってしまう。

すると、インパルス(刺激を伝える神経の興奮)が神経から神経へ乗り移って、ちょっと触っても、脳は痛いッ! と感じる。

普通の痛みとは、痛みの伝わり方や性質が違うわけで、痛みの電気的短絡(英語ではエファブスという)が起こるのも帯状疱疹後神経痛の症状の一つである。

たいていは1~2ヵ月で治るが、1年以上続く人や、なかには10年以上も苦痛に耐えている人もある。

絶え間なく続くときもあれば、間が空くこともあり、寒さや冷たさが痛みを増強させる例も多い。


痛みの種類

痛みは、その発生機序(起こるしくみ)や性質によって、①侵害受容性疼痛、②神経障害性疼痛、③心因性疼痛の3種類に分けられる。

侵害受容性疼痛というのは、手を切った、骨が折れた、火傷をしたといったようなケガのとき普通に感じる痛み。

傷や炎症によって活性化される発痛物質が、侵害受容器(体を侵すさまざまな刺激を感受する器官、細胞)を刺激することによって引き起こされる疼痛─と定義されている。

肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)の痛みや関節リウマチの痛みなどもこれに含まれる。

神経障害性疼痛は、そうしたケガなどによって神経が壊されて、ケガが治ったあとも続く慢性の難治性の疼痛である。

神経の損傷あるいはそれに伴う機能異常によって生じる、さまざまな知覚異常を伴う痛みで、神経の損傷部位により末梢性と中枢性に分けられる。

心因性疼痛は、今日は会社に行きたくないなぁとか、学校に行きたくないなぁと思うと、おなかが痛くなるといった種類の痛み。

体のどこにも病変はなく(仮にあったとしても、それほど大きな痛みを伴うことは考えられない)、心理的原因による疼痛だ。

こうした痛みは、個々に独立して起こるだけではなく、重なり合って起こることもある。

たとえば、慢性腰痛や頸肩腕症候群(首、肩、腕、手指にかけての痛み、こわばり、しびれ、脱力感、冷感などさまざまな症状が起こる)などは、侵害受容性と神経障害性の要素が合併した疼痛の代表的なものだ。


治療法

痛みの種類が違えば治療法も当然、違う。肩関節の痛みとか関節リウマチなどは、ケガと同じ侵害受容性の、組織が壊れて、炎症が起こっている痛みなので、NSAIDs(エヌセイド=非ステロイド性鎮痛消炎剤)がよく効く。

しかし、神経障害性疼痛は、すでに炎症は治まっているのだから、これに対してNSAIDsのボルタレン、ロキソニンといった薬をいくら使っても効かない。

でも、実際の臨床の場では神経障害性疼痛なのにNSAIDsを処方されて、よくならない人が少なくない。

「先生、この薬、効きません」といっても、「それはあなたの気のせいだ」とかいわれて、気まずい関係になる例がままあるようだ。

ドクターショッピング、病院のはしごが始まることにもなる。

それから、がん性疼痛(がんに伴うさまざまな痛み)に対しては、いま一般的に強い関心がもたれ、プロモート(啓発運動)も盛んに行われているが、がん性疼痛の3割から7割は神経障害性疼痛なので、モルヒネや医療用麻薬だけではとれない痛みも少なくない。

それに対しては鎮痛補助薬の抗けいれん薬などが適している。

詳しくは、明日の「帯状疱疹&帯状疱疹後神経痛(3)」に─。


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帯状疱疹&帯状疱疹後神経痛(1)

帯状疱疹

ある日、体の片側、胸とか腹とかに赤いぶつぶつが点々と出てくる。

水ぶくれができてチクチク刺すように痛い。

この「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」という病気は、昔からよく知られていて、全国各地に、つづらご、おびくさ、胴まき、たすき、へびたん...など、さまざまな方言がある。

古い話だが、サッカー日本代表のオシム監督が重い脳梗塞で倒れたとき、日本サッカー協会の川渕三郎キャプテンが帯状疱疹になって、心労のためでは...といわれた。そういうこともある。


原因

帯状疱疹は、皮膚に小さな水疱や膿疱(のうほう)ができる「ヘルペス(疱疹)」の一種。

原因は、子どものころにかかった水痘(水ぼうそう)のウイルスだ。

水ぼうそうが治ったあとも、そのウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)は体内の神経節に潜んでいる(潜伏感染という)。

そして、加齢やストレス、過労などが引き金となって、免疫力が低下すると、潜んでいたウイルスが再び活動を始め、神経を伝わって皮膚に到達し、帯状疱疹として発症する。


症状

初めは体の左右どちらか一方にチクチクするような痛み、あるいはピリビリする感じが起こり、しばらくしてその部分に赤い発疹が現れ、小さな透明な水ぶくれができてくる。

やがて水ぶくれが破れてただれ、かさぶたに変わる。

帯状疱疹という名のとおり、神経に沿って帯状に広がり、皮膚と神経の両方でウイルスが増殖し、炎症が起き、非常に強い痛みが生じる。

できるところは、胸から背中にかけてが最も多く、腕や腹部にもよくでる。

頭、顔、首などもわりあい発症しやすい部位だ。

顔面の三叉神経(眼、上あご、下あごの三枝に分かれる神経)に沿って出る帯状疱疹は、注意が肝要だ。

髄膜炎を誘発する恐れがあり、目の角膜炎や結膜炎を併発し、失明することさえある。こわい!

まれに耳鳴りや難聴、顔面神経マヒなどが生じることもある。ラムゼイ・ハント症候群と呼ばれる。


治療

このように症状の程度はさまざまだが、普通は、医師の指示に従って安静にしていれば自然に治る。

精神的あるいは肉体的に疲れているときに発症しやすいので、睡眠と栄養を十分とって心身の回復をはかることが大切だ。

なお、帯状疱疹は、通常は生涯に一度しか発症しない。

ただ、免疫がひどく低下している場合、再発することがある。

治療は、症状に応じて抗ウイルス薬(アシクロビル、ビダラビン、ファムシクロビルなど)、鎮痛薬、ビタミン剤などを用いる。

皮膚症状に対しては抗ウイルス薬の軟膏が効果的だ。

重症例には、局所麻酔薬を用いた神経ブロック療法(神経の伝導を遮断する治療法)が著しく効果的である。

水ぶくれを破ると細菌感染を起こして化膿しやすいので、破ってはいけない。

入浴も控えよう。

そうして治ると一件落着か?

それがそうではない例がけっこう多いのが、帯状疱疹のイヤなところで、そのあと「帯状疱疹後神経痛」というやっかいな病気に移行する人がある。

それについては、明日の「帯状疱疹&帯状疱疹後神経痛(2)」に─。



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