暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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2012年11月

健康な耳鳴り

 以前、石原慎太郎氏が、自分の耳鳴りについて話している記事を読んだことがある。

 耳鳴りに悩まされている人はけっこう多い。

 一度発症すると、えんえんと続く例が少なくないからだ。

 「耳鳴りは、100人のうち1人でも治れば、その治療法は成功だ」と言った耳鼻科の大家がいた。

 それくらい治しにくい。

 だから「耳鳴りは健康な人にもあるのだから、あまり気にしないで、<耳鳴りを友として>つき合っていけばよい」と、患者に因果?を含める医師もあるようだ。

「それは耳鳴りの苦痛をご存じない人の言うことです。健康な耳鳴りと、病的な耳鳴りは全く違います」と、めまい・耳鳴り治療の名医として知られる、坂田英治・埼玉医大名誉教授。

 健康な耳鳴りは、内耳のリンパ液の微かな揺らぎによるもので、静かなところではその揺らぎを感じて、誰でも耳が鳴る。

 夜がシンシンと更けるとか、林がシーンと静まるという、あれは耳鳴りからきた表現だという。

 むろん病気でもなんでもない。

 病的な耳鳴りはとてもそんなものではない。


円形脱毛症

 頭の中に1個か2個、いわゆる「10円ハゲ」ができる円形脱毛症の9割は、放っておいても1年以内に治る。

 残りの1割がやっかいで、だんだん広がって頭の毛が全部抜ける全頭脱毛症や、まゆ毛やわき毛など全身の毛が抜ける汎発(はんぱつ)性脱毛症に進展する。

 治りやすいものと、そうでないものとを見分ける一つの目安は、脱毛した部分の周りの毛を引っ張ってみるといい。

 すっと抜けてくるようだと、病気は進行性で活動期にある。

 抜けなければ、一応そこで止まっているといえるそうだ。

 円形脱毛症の原因は、ストレス説、自律神経障害説、血管障害説、ウイルス感染説、内分泌異常説、遺伝説などさまざまあった。

 近年の研究で、脱毛が起きた部分の毛根部にリンパ球がいっぱい侵入して毛包(毛を作り出す組織)を攻撃し、働きを失わせていることがわかり、自己免疫疾患説が有力になった。

 発症して半年以内なら免疫抑制剤のステロイドの点滴治療が70%以上有効という。

 10円ハゲが広がる気配が見えたら早めに皮膚科へ。


夢追い人

「ハゲに胃がんなし」の真偽を確かめる研究を、若い医局員に勧めた、脇坂順一・久留米大教授(当時)は胃がん手術の名医だった。

 長年、胃がん患者を診てきた印象が、示唆のヒントになったらしい。

 高齢登山家としても知られた脇坂先生は、1961年、48歳のときスイス・メンヒ山で海外峰初登頂。

 以来、世界各国の山に挑み続けて、1993年、80歳にしてアルプスの最高峰・モンブランをきわめ、海外150登頂を果たした。

 その折の新聞には「80歳はまだ現役」とあり、毎朝6時半起床、足踏み300回、鉄アレイ60回、冷水摩擦、ひざの屈伸400回、腕立て伏せ170回をこなす独自の鍛錬と、大豆を主食とする高たんぱく・低カロリーの食生活に徹し、「精進の積み重ねで、たいていの夢はかなう」と話している。

 98年、85歳で海外200登山を達成。

 90歳での250回を目標とし、2000年8月で243回になったが、03年3月、夢追い人89年の生涯を閉じた。

 肺炎だった。

 漫画「サザエさん」のファンだったという。


ハゲと胃がん

 「ハゲに胃がんなし」という俗言がある。

 これがあながち迷信ではないことを、30年以上も昔、統計学的に証明した医師がいる。

 久留米大学医学部外科の若い医局員だった柿添健二医師だ。

 胃がん手術の名医だった脇坂順一教授に、

「ハゲと胃がんの関連を調べてごらん」と言われ、

 実に10年がかりで胃がん患者1001人(男性663人、女性338人)と、一般人(軽い病気の通院者=男性約7000人、女性約5000人)のハゲ率を調べあげた。

 結果、胃がん患者には明らかにハゲが少ないことがわかった。

 例えば40代の男性では一般人のハゲ率は8.6%だが、がん患者では0%。50代男性のそれは前者が14.3%、後者が2.3%だった。

 50男が100人集まれば、14人はハゲだが、同年代の胃がん患者だと2人しかいない計算になる。

 「ハゲに胃がん、ごく少なし」というわけだ。

 とはいえ、ヨロこんでばかりもいられない。

 「ハゲに脳卒中あり」「ハゲに前立腺がんあり」という俗説にも、かなり信ぴょう性があるらしい。


女性化乳房

 緒方知三郎先生は、唾液腺ホルモン剤「パロチン」の開発者としても知られた(後年、その効果には否定的論説が多くみられるようになったが)。

 趣味の手品は玄人はだしだった。

 70代で前立腺がんを発病、当時の定番的治療法だった女性ホルモン薬をずっと常用していた。

 先生のあと日本医大老人病研究所所長を継いだ金子仁先生から聞いた話──。

「女性ホルモンを長く使っていると、女性化乳房といって、おっぱいがふくらんでくる。

 洒脱なお人柄だったので、よく冗談をおっしゃった。

 おい、触らせてやろうか、と」

 当時(1960年代)、日本人の前立腺がんはごく少なく、治療法もいまとは格段の差があったはずだが、90歳という長寿を全うされ、80歳からの5年間で、ユニークな項目分類を行った『常用医語事典』(金原出版刊)の執筆・編さんを成し遂げた。

 人の名のついた病気や体の器官などを集めた「第Ⅲ部人名編」は、ページをめくっていてあきない。

「身は医者に 心は神に任すべし 智慧ありて 苦しむ者を 人という」

緒方先生、晩年の一首だ。


ハゲの6型

 男性型脱毛症は、男性ホルモンの影響で発症することがわかっている。

 男性ホルモンのテストステロンが分解されたDHT(ディハイドロテストステロン)というものが、毛髪細胞に作用し、毛の成長を抑える。

 そのため太い硬い毛(終毛または硬毛)が、先祖返りして赤ん坊のときの軟らかい毛(軟毛)に戻る。

 ハゲるのは主に前頭部から頭頂部にかけてで、側頭部と後頭部はハゲないのが普通だ。

 男性ホルモンに対する毛髪細胞の反応が違うためだ。

 ハゲの型を、

 ①総退却型。

 ②てっぺんハゲのち雪だるま型。

 ③知恵ハゲ型。

 ④ ②と③の混合型。

 ⑤法界坊型。

 ⑥かっぱ型─の六つに分類した人は、ご自分もハゲていた緒方知三郎先生だ。

「おがた・ともさぶろう 病理学者。東大教授。唾液腺内分泌、老化機構などを研究。共著『病理学総論』など。文化勲章。(一八八三─一九七三)」と『広辞苑』にはある。

 補足すると、江戸後期の蘭医、緒方洪庵の孫で、東大退官後は東京医大初代学長、日本医大老人病研究所初代所長を歴任された。


ハゲと政治の関係

 A=チビ、B=デブ、C=ハゲは男の外見の三ペケとされる。

 自慢じゃないが、おれはその三つとも完備している。

 も一つおまけにD=ガニマタだ。

 むろん初めからそうだったわけではない。

 20代ではAとDだけだったが、30代後半までにBが完成し、40代で老眼が始まったころCが加わった。

 秋、落葉の季節(木の葉髪という季語もある)にちなみ、Cの話を─。

 一口にハゲといっても20種類以上もあるというが、最も一般的なのは円形脱毛症と男性型脱毛症だ。

 前者は病気で、後者は体質だ。

 普通、ハゲと呼ばれるのは後者のほうで、日本人男性の約30%にみられる。

 少数派である──と書いて、気づいたのだが、政治家にはわれらの仲間がきわめて少ない。

 歴代総理の頭部を思い浮かべてみても、吉田茂と中曽根康弘ぐらいだ。

 いやらしいほど大量の頭髪所有者である小泉純一郎は別格としても。吉田の孫、吉田のライバルだった鳩山一郎の孫、岸信介の孫などの元首相たち、彼らに続く「前」や「現」の首相も、けっこうふさふさ、ハゲの兆候さえ見えない。

 これ、なにか理由があるのだろうか?

 このごろの政治がダメなのは、まさかそのせいではあるまいな?

 政治は不毛、政治家は多毛なんて、しゃれにもならない。


アロマテラピー

 秋の庭に立ち、咲き盛る菊の香りに包まれると、気持ちがすきっと引き締まるようだ。

 中国では菊の花は頭痛に効くとされ、菊が咲いている家には頭痛の人はいないといわれるそうだ。

 香りに鎮静、興奮の作用があるのは脳波の実験でも証明されている。

 これを医療に用いるのがアロマテラピー。

 不安症状が強く、精神安定剤も思うように効かなかった人の病室で朝夕2回、白檀(びゃくだん)をたいたら症状が軽快した──といった臨床例がある。

 植物の種、花、葉などから抽出した精油の香りをかいだり、ふろに入れたり、マッサージに用いたりする。

 精油は200種類もあるが、よく使われるのは、ラベンダー、ローズマリー、カミツレ、ネロリ、バラなど。

 落ち込んだときは、かんきつ系の香り、集中力を高めたいときは、レモン2滴とローズマリー1滴の組み合わせ、情緒を安定させたいときはスイートオレンジ2滴とマンダリン1滴の組み合わせが、お勧めだそう。

 不眠によく効くのはネロリ(しゃれではない)だそうだ。



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