暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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2012年7月

水は命なり

 乾燥の過程

 あるところで『水六訓』という額が掲示されてあるのを見た。

「あらゆる生物に生命力を与えるは水なり」という一条ではじまり、最後は「水を心とすることが、平和と健康と長寿の妙薬である」と結ばれていた。

 だれの言葉かは知らないが、まさに水はあらゆる生物に生命を与えるものだ。

 水がなければ命はない。

 太陽系の中で地球だけに生物が存在するのは、地球が唯一、水のある惑星だからだ。

 人類のルーツに当たる生物は、海で発生した。

 海から陸に上がるときに、その母なる海の水を体内に包み込んできた。

 それが人の体の水分だ。

 体の中の水分すなわち体液の量は、成人男性では体重の約60%、女性では約55%だ。

 女性は男性よりも皮下脂肪が多いので、そのぶん水分の割合が少なくなるわけだ。

 乳児の水分は体重の約80%だが、老人では50%以下になる。

 で、「老化とは乾燥の過程である」といわれる。

 人間の一生は、80%から50%まで、30%の水分を喪失する過程であるともいえるようだ。 

 細胞内の水

 70過ぎても、みずみずしい肌の張りを失わぬ人もいれば、50をいくらも出てないのに、すでに老人の風貌になりかけている人もいる。

 その差は体内の水分の減りぐあいの差だといってもいいようだ。

 成人男子では体重の60%が水分だが、これを細胞の中と外でみると、細胞内液のほうが多く体重の約40%だ。

 高齢者ではこれが約30%に減る。

 年をとって皮膚にしわができる原因の一つは、細胞内液が減って、皮下組織が委縮するためだ。

 細胞内液では、カリウムが主なイオン(電気をもつ原子)で、細胞外液ではナトリウムが主なイオンだ。

 高齢になって、細胞内液が減少してくると、カリウムの量も減ってくる。

 老化現象の一つとして、必ず認められるのが、カリウムの欠乏だ。

 反対にナトリウムは過剰になり、細胞の中にまでナトリウムが入ってくるようになる。

 と、神経系と筋肉の異常症状(意識障害、筋肉のけいれん、まひ、筋力の低下、しびれ・痛み)などが出てくる。

 このカリウム欠乏・ナトリウム過剰の原因の多くは、体内の水分が少ないことだ。

 若さの水

 老人ホームに送られてきた患者に、体液の異常ではないかと、カリウムを多く含む輸液(点滴による体液の補給)をしたら、体が元気になり、計算能力など脳の働きもよくなったと、英国の医師が報告している。

 なぜ、年をとるにつれて体液(体内の水分)がへってくるのか。次のような理由が考えられている。

 1 年をとると、細胞の働きが低下し、細胞内の水分が減る。

 2 年をとると、体の新陳代謝が衰えてくるため体の中でできる水の量がへる。

 3 年をとると、腎臓の働きが低下し、水分の再吸収の効率が悪くなり、薄い尿がたくさん出るようになる。

 このように細胞内の水分も、体の中でつくられる水分も減ってしまうのに、体の外へ出ていく水分は逆にふえる。

 体内の水分が不足してくるのは当然の現象といえる。

 その水分の不足が老化をさらに進めることになるのだから、これにブレーキをかけるには、日常、水分を十分にとらなければいけない。

 水はまさに百薬の長。

 若さと健康を保つためにも水を上手に飲みたい。


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夏風邪流行中?

 夏風邪がはやっているのだろうか?

 東京五輪招致のためにロンドン出張を予定していた都知事が、

「風邪をひいて発熱が続いている」ので中止した、という記事をすこし前の新聞で読んだ。

 昔の人は、「夏の風邪は猿でもひかぬ」と言っているが、そんなことはないことを半世紀以上も昔の「太陽の季節」の作家が証明してくれたわけだ。

 夏風邪の原因のウイルスは三つ。

 アデノウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス。

 冬にはやるインフルエンザウイルスは乾燥した空気が好きで、空気中の湿度が低いほうが長時間活動できる。

 夏風邪のウイルスは、それとは反対に湿度の高い環境で勢いよくはびこる。

「プール熱」はその典型で、以前は衛生管理のわるいプールでよくはやった。

 三ウイルスとも、インフルエンザウイルスと同じように呼吸器から感染する。

 また、便の中に排せつされたウイルスによる経口感染も起こる。

 夏風邪は、口からもうつるのだ。

 呼吸器から侵入するウイルスを防ぐには、うがいを励行するのが一番。

 経口感染を防ぐには食事の前やトイレの後などのこまめな手洗いが肝要。

 過労や睡眠不足を避けるのも大切な心得だ。

 ひいてしまったら、脱水を起こさないよう水分をきちんととること。

 熱中症予防の第一心得と同じだ。


ゴキブリ火事

 いつだったか、東京の下町のスナックでゴキブリが原因の火事があった。

 調理場の壁のコンセントにゴキブリが入り込み、そのゴキブリの死がいや排せつ物などに通電して出火したのだという。

 同様のゴキブリ火事が、この何年かの間に都内で数件発生しているそうだ。

 夏場はゴキブリの活動が活発になる。

「見つけたら極力、駆除を!」と、東京都衛生局ならぬ消防庁が呼びかけている。

 ただし「コンセントにゴキブリがいても、殺虫剤は水分だから使用は厳禁。素人がコンセントのふたを開けたりするのも危険」とのことだ。

 ゴキブリは、暖かく、湿度が高く、暗く狭いスキ間を好み、雑食性で、人間の食べるもののほかにビニール製品、電気のコード、たんやつばまで食べる。

 ゴキブリ退治のポイントは、ゴキブリの生活場所とエサを取り上げること。

 ガスレンジ、流し台の下、冷蔵庫の裏などを掃除し、食品や食器棚を整理する。

 残菜は密閉容器に入れる。

 ゴキブリの数が少ないときは、ゴキブリ捕獲器の利用が手軽だ。

 大量に出現するときは「ホウ酸だんご」が最もよく効いたという人が多い。


肝臓の火を消せ!

 一面にひろがり咲いた204の聖なる火の花が、その茎を高く伸ばしながらひとつに集まり、天をも焦がすように大きく燃え上がった。
 ...............。

 全世界的スポーツの祭典の幕が開いた、きょう7月28日は、「第1回日本肝炎デー」でもある。

 WHO(世界保健機構)が、世界的レベルでのウイルス肝炎のまん延防止と、感染予防の推進などを目的に、B型肝炎ウイルスの発見者、バルーク・ブラムバーグの誕生日のこの日を、「World Hepatitis Day(世界肝炎 デー)」と定めたのは、2010年。

 世界のほうは「第3回」になるわけだ。

 ことしのテーマは、「This is hepatitis(これは肝炎である)」、
 スローガンは、「Its closer than you think(それはあなたが思うよりも近い)」。

 記念すべき「第1回日本肝炎デー」に合わせて、世界肝炎連盟の会長、チャールズ・ゴア氏が来日した。

 ゴア氏自身、C型肝炎に罹患した経験をもつ。

 本年は、WHO加盟の約200ヵ国の中から世界肝炎デーに活動する場を日本に定めた。

 滞在中は、超党派の国会議員向けの勉強会、一般市民の啓発イベント、患者会との懇談会、肝炎の新薬を研究・開発している企業との意見交換会、小宮山厚生労働大臣とのイベント参加など一連の行事が予定されている。

 この体のなかの〝炎〟は、燃え盛るまえに消し止めなければならない。

 肝炎のABC

 肝炎の原因になる5種類のウイルス──A、B、C、D、E──のうち、日本人に特に縁の深いのはA型とB型とC型だ。

 A型は口からうつる消化器伝染病の一種。

 一度かかれば免疫ができて二度とかからない。

 昔は数年おきに流行し、流行性肝炎と呼ばれたが、今は激減した。

 発展途上国への旅行で感染する例がままみられる。

 抗体を持ってない人は、旅行前に予防ワクチンの接種を受けるとよい。

 B型肝炎ウイルスは、血液、体液を介して感染する。

 ウイルスが体に居ついてしまう持続感染(キャリア)と、急性肝炎で治ってしまうものとがある。

 出生時や乳幼児期にうつるとキャリアになりやすいが、免疫機構が正常な成人では、A型と同じように一過性の感染で済む。

 ワクチンと免疫グロブリンによる予防が、1986年から始まり、今はもうキャリアになる子どもはほとんどいない。

 数十年後にはB型の慢性肝炎、B型の肝硬変、B型の肝がんは消滅するだろう。

 残るはC型肝炎だが、これの多くは大人になってからの感染で、60~70%がキャリアになり、肝硬変、肝がんに進む人がいる。

 国民的肝炎

 毎年約3万4000人が肝臓がんで亡くなっている。

 その原因の8割がC型肝炎、1割がB型肝炎だ。どちらも血液を介して感染する。

 B型は、出生時や乳幼児期の母子感染と、昔の集団予防接種での注射針の使い回しなど、医療行為による感染が多かった。

 C型は、血液から作った薬や輸血などによって広がった。

 俳優の渡辺謙さんも、1989年に発症した白血病の治療で輸血を受けたさい、C型肝炎に感染したと、自著『誰? WHO AM I?』(ブックマン社)の中に書いている。

 大人になってから感染したB型は慢性化しないが、C型は慢性肝炎になる。

 患者・持続感染者は、B型100万人以上、C型150万人以上とみられる。

 国民病といってもいいだろう。

 慢性肝炎は自覚症状がほとんどなく、感染に気づいてない人も多い。

 治療法は劇的に進歩。

 インターフェロンを改良したペグイントロンと抗ウイルス薬リバビリンの併用による完治例が増えている。

 渡辺さんもこの治療法によって「非常にいい状態をキープしている」そうだ。

 お知らせ。

 出産や手術における大量出血などのさいの、特定の血液製剤の投与によるC型肝炎ウイルス感染者への給付金のしくみがある。

 請求手続は、2013年1月15日まで。

 詳しくは、厚生労働省HPまたは相談窓口。

 電話 0120-509-002  (平日9時30分~18時)


トキソプラズマ

 尻なめた舌でわが口なめる猫 好意謝するに余りあれども    寒川猫持 

 寒川氏は「歌人・目医者」で「猫持」はむろん筆名。

 軽妙な筆致のエッセイ集が何冊もある。

「犬と違って、猫が飼い主をなめるのは余程のことである。

 アイ・ラブ・ユーの印である。

 なるべく黙ってなめてもらうことにしているが、尻をなめた舌で口を、となると話は別である。

 猫のウンチにはトキソプラズマという原虫がいる。

 そんなものを口移しされたのではたまらない」と、猫持先生。

 トキソプラズマは、哺乳類や鳥類に寄生する原虫。

 最終的に(「終宿主」という)ネコの体内で生殖し、糞便中にオーシスト<胞嚢体(ほうのうたい)>というタマゴみたいなモノが出てくる。

 また、ブタやヒツジなどの筋肉の中にはオーシストを膜状の袋<包嚢(ほうのう)>でくるんだシスト<嚢子(のうし)>が寄生している。

 人間には多くのばあい猫糞(ねこばば)の中のオーシストや、豚肉などの中のシストから感染する。

 人間にうつったトキソプラズマは、普通は何の症状も現れない(不顕性感染という)が、まれに発病すると発熱、発疹(しん)、リンパ節炎(ぐりぐり)、肺炎、脳炎、脈絡網膜炎(目の病気)などを起こす。

 妊娠中の女性が初めて感染すると、胎児にも感染して、流産や死産をひき起こし、これを免れたばあいでも水頭症、小頭症、脈絡網膜炎などの赤ちゃんが生まれる(先天性トキソプラズマ症)。

 矢野明彦・千葉大学医学部教授(寄生虫学)の調査によると、過去3年間に全国で19人の新生児がトキソプラズマに感染し、9人が水頭症などにかかり、うち2人が死亡、残りの7人も重い障害が残った。

 ほかの10人は妊娠中の検査でトキソプラズマの感染がわかり、治療するなどして新生児の発症はなかった。

 成人のトキソプラズマ症同様、この先天性トキソプラズマ症も、以前はめったにみられない病気だったのだが、近年ややふえているのは、日本人にはびこっている「超清潔症候群」のせいだと、『笑うカイチュウ』などの著者、東京医科歯科大学の藤田紘一郎教授(寄生虫学)は言っている。

「トキソプラズマは、ネコの便から感染するというので、ネコが悪者扱いされているが、感染経路はネコよりもむしろ加熱の不十分な豚肉のほうが多い。

 それにしても感染率は下がっているし、仮に感染してもどうってことはない。

 問題は、妊婦が妊娠中に初めて感染すると、母親は大丈夫だけど胎児に感染して、新生児に重大な影響が出ることです。

 子どものうちにかかっていたら何でもない病気なのに、感染率が下がってくると、妊婦が初めて感染する率はそれだけ上がる。

 感染率が下がったぶん、逆に胎児に行く発症率はふえている、という妙な時代になっている。

 猫の糞(ふん)なんかこわがらないで、妊娠年齢になる前にうつっといたほうがいいんですよ」と、藤田紘一郎・東京医科歯科大学名誉教授。

 近年、トキソプラズマ症がややふえている理由は、ペットブームのせいではないか、と矢野教授は指摘している。

「飼い猫のフンなどに含まれたトキソプラズマがソファーなどに付着、空気中に舞い上がったものが口から入ることが考えられる」そうだ。

 なお、猫から人にうつる感染症猫から人にうつる感染症としては、他にパスツレラ症、猫ひっかき病などがある。


夏ゴルフの心得

 いやあ、暑い!

 どちらさまも熱中症にご用心ください。

 暑さにもめげず、ゴルフにお出かけのみなさまは特に!

 冬場のゴルフにも健康上の問題が多いが、真夏のゴルフにもさまざまな落とし穴がある。

 最も気をつけなければいけないのは、暑さ(太陽光線)対策と尿量(水分摂取)の維持。

 直射日光を浴び過ぎないようにし、水をよく飲んでお叱呼をたくさん出すこと、だ。

 太陽光線(とりわけ紫外線)の害は、皮膚と眼と全身に現れる。

 皮膚に現れる害は、日焼けと、そのあとにできる、しみ、しわ、たるみ。

 皮膚の老化は、その人がそれまでに浴びた太陽光線の量に比例するといわれていて、皮膚の「光老化」という。

 最悪の場合、皮膚がんの原因にもなる。

 夏のゴルフ場は、太陽光線が思うさまふりそそぐ光のシャワールームだ。

 近年、高齢者に激増している加齢黄斑変性症(目の網膜の中で最も視力の鋭敏な黄斑が、加齢に伴って変性する病気)の危険因子の筆頭は、たばこ、2番目が直射日光といわれている。

 必ず帽子をかぶり、できれば日傘をさして歩きたい。

 紫外線は白内障の原因にもなる。

 白内障は、目のレンズの水晶体が白く濁ってくる病気。

 初期には日常生活にはほとんど支障はないが、逆光に向かうと、ものがよく見えなくなる。

 水晶体の中に部分的な濁りが入ると、光が一点に集中せず拡散するため、光の乱反射が起きるからだ。

 たとえば、夜間、車を運転すると、対向車のライトがまぶしくて見えにくかったり、ゴルフ場で、逆光でボールを打つと、ボールの行方を見失ったりする。

 白内障になるのは、水晶体のたんぱく質が変性するからで、その一因と疑われているのが、紫外線だ。

 眼に入る紫外線の量をなるべく減らすようにすれば、白内障の予防になり得る。

 それにはUV(紫外線)カットの眼鏡をかければ、よい。

 紫外線の浴び過ぎは、体の免疫力も低下させる。

 暑い日にゴルフをしたあと体調を崩すことがあるのは、そのせいだ。

 肝臓病や糖尿病、高血圧など慢性的な病気をもっている人は、特に気をつけてください。

 もう一つ、特に気をつけてほしいのは、痛風もちの人だ。

 痛風発作は、血液の中の尿酸が、関節にくっつくために起こる。

 尿酸は、細胞の新陳代謝によってでき、その大半は尿から排泄される。

 大汗をかくと、尿の量が減る。汗には尿酸はまったく含まれていないから、尿の量が減れば、体の外へ排出される尿酸の量も減る。

 すると血液中の尿酸量がふえて、痛風発作が起きやすくなる。

 痛風もちの人は特に心がけて水分をよく取り、尿の量を減らさないようにすべきだ。

 ただし、尿量が増えるからといって、ビールはいけない。

 アルコールが肝臓で代謝されると、尿酸ができる。

 痛風もちの人は、ビールではなく、水をどうぞ!


献血を!

愛の血液

 7月は「愛の血液助け合い運動」月間だ。

 医療に必要なすべての血液製剤は、国内献血で自給する必要がある。

 毎年、約700万人の心優しい人の協力を得ているが、まだまだ十分ではない。

 去年3月、あの未曾有の大厄災のあと、若者の献血がめざましく増加したという。

 日本は大丈夫だ!

 献血には400cc献血、200cc献血、成分献血とある。

 健康な人間は、全血液の15%(体重60キロの男性で約720cc、50キロの女性で約520cc)までなら失っても日常生活には影響はない。

 献血できる人の条件は、下のとおり。

 1 年齢=16歳~64歳。

 2 体重=男性45キロ、女性40キロ以上。

 3 血液比重=1.052以上。

 4 最高血圧=102~200ミリHg、最低血圧50~100ミリHg。

 5 妊娠していないか、出産後6ヵ月以上経過した人。

 6 前回の献血から1ヵ月以上経過した人。

 7 現在、病気にかかってない人。

 8 HIV(エイズウイルス)感染の可能性がないこと。

 エイズなどの検査を目的に献血をすることだけは絶対にやめてほしい。

 献血者にはサービスとしてコレステロール、肝機能、腎機能などの検査結果が通知される。


 魔の血液

 ずいぶん以前の話だが、日本赤十字社の血液供給事業で、HIV(エイズウイルス)感染者の血液を輸血された患者がHIVに感染するということがあった。

 献血血液のHIV抗体検査で、陽性と確認されると、その血液は破棄される。

 だが、抗体が検出可能な濃度になるのは、HIVに感染してから6~8週間後だ。

 それまでの空白期間(ウインドーピリオド)に採血された血液は陰性を示し、輸血に使われてしまう。

 HIVに感染した可能性のある人は、絶対に献血してはいけない。

 なかには献血をHIV感染の検査に利用する不心得者もあるようだ。

 ある関係者は、「そういう人の顔は悪魔に見えます」と話した。


お茶と気管支拡張剤

 鉄欠乏性貧血の治療で鉄剤を服用中は、茶のカテキン(タンニン)が鉄の吸収を妨げるからお茶は飲むなと、昔はいわれた。

 だが、鉄欠乏性貧血があれば、カテキンがあってもなくても、鉄は必要なだけ吸収されることがわかり、茶を禁じるのは意味がないということに今はなっている。

 現在、お茶をたくさん飲んではいけないといわれるのは、ぜんそくなどの治療で気管支拡張剤を用いているときだ。

 薬の主成分のテオフィリンと、お茶のカフェインと作用が似ているため、薬が効きすぎて副作用が出やすくなるからだ。

 テオフィリンは気管支を広げて、呼吸をらくにするが、それとともに心臓を刺激する作用や胃酸分泌作用もある。

 緑茶に限らず、紅茶、コーヒー、コーラーなど、カフェインを含む飲料をたくさん飲むと、テオフィリンの気管支拡張以外の作用が強く出て、イライラや頭痛、不眠、頻脈(脈が早くなる)が現れたり、胃がムカムカしたり、気持ちが悪くなったりする。

 カフェインは、風邪ぐすりや眠気防止のドリンク剤などにも含まれている。

 注意が必要だ。


グレープフルーツと降圧薬

 高血圧の治療に使われる降圧薬の一つにカルシウム拮抗剤という薬がある。

 末梢の血管を広げる作用があるので、血液の流れがよくなり血圧が下がる。

 このカルシウム拮抗剤とグレープフルーツジュースを一緒に飲むと、血液中の薬の濃度が上がり、効き過ぎ状態になる。

 血圧が下がり過ぎてふらふらしたり、頭痛、ほてり、めまいなどが現れやすくなる。

 これはグレープフルーツジュースの苦みをつくるフラボノイド類の作用による。

 肝臓の中にあって、薬を分解し排せつしやすくする酵素の働きを、このフラボノイド類が妨げるため、血液中の薬の濃度が上がるのだという。

 では、カルシウム拮抗剤を服用している人は、グレープフルーツジュースは絶対禁止かというと、そんなことはない。

 薬とジュースとの間隔が3時間ぐらい開いていれば大丈夫だ。

 薬の血中濃度を上げるグレープフルーツジュースのこの性質を利用すると、これまでより少量の薬で同じ効き目が期待できそうで、研究が進められているという。


納豆とワーファリン

 薬の中には、食べ物や飲み物との相性の悪いものがある。

 そのため、薬効が弱くなったり、逆に作用が強くなって副作用が出ることもある。

 よく知られているのが、納豆とワルファリン(製品名=ワーファリン)という抗凝固剤(血管の中で血栓ができるのを防ぐ薬)との関係だ。

 血液は、血管の中ではさらさらと流れているが、けがや手術などで血管の外へ出る(出血する)と、速やかに固まるようになっている。

 血管の中でも、人工弁などの「異物」があったり、血管が非常に狭くなったりすると、血液が固まることがある。

 このとき働く材料の一つがビタミンKだ。

 ワーファリンは、ビタミンKの働きを抑えて、血液が固まらないようにする。

 だから人工血管や弁を使っている人、心筋梗塞や脳塞栓症の治療・予防に用いられる。

 ところが、納豆にはビタミンKが多く含まれているうえ、腸の中でも納豆菌がさらに多くのビタミンKを作り出す。

 そのためワーファリンの働きを弱めてしまう。

 で、ワーファリン服用者は納豆禁止とされる。

 納豆以外でも、パセリ、アシタバ、クレソン、ホウレンソウ、小松菜、ニラ、ブロッコリーなどにはビタミンKが割合多く含まれている。

 ワーファリンをのんでいるときは、こうした野菜をたくさん食べるのはやめるべきだ。

 ビタミンKを含むビタミン剤がダメなのは言うまでもない。

 ところで、納豆に含まれるナットウキナーゼという成分も、やはり血栓ができるのを防ぐ作用をもつことで知られている。

 心筋梗塞や脳梗塞の予防に役立つわけで、特に中高年者は納豆を食べるよう勧められる。

 つまり、抗凝固剤のワーファリンを服用しているときは、納豆を食べてはいけないが、そうでない人には何の問題もない。

 納豆を食べたからといって血液が固まりやすくなることはない。

 それどころか、反対に血液が固まるのを防いでくれるすぐれものなのだ。



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