暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

バナー原稿 468×60 (140228)imp

2012年6月

ナルコレプシー

 夜よく眠ったあとでも、日中、突然耐えがたい睡魔に襲われて、所かまわず眠ってしまう。

 試験中だろうが、商談中だろうが、極端な例では戦場で鉄砲を撃ちながら、眠ってしまう。

 名うての雀豪だった作家の色川武大(麻雀小説の筆名は阿佐田哲也)氏は、しばしばマージャンの最中に眠り込んだらしい。

 少し眠るとスッキリするのだが、危なくて車の運転などできない。

 ナルコレプシーという病気だ。

 驚いたり喜んだりしたとき首がガクンと落ちたり、ひざが抜けたりする「情動脱力発作」や、寝入りばなに金縛りが起こる「睡眠まひ」、ヘビが首に巻きつくといった奇妙な夢にうなされる「入眠時幻覚」が合併する人もある。

 多くは思春期に発症し、全国に約20万人の潜在患者がいると推定されるが、正しく診断され治療を受けているのは約2000人程度だという。

 原因はまだよくわかっていないが、薬物療法と生活指導で十分コントロールできる。

 高い有効性と安全性で欧米では第一選択薬になっている「モディオダール」が、2007年、日本でも承認発売された。

 受診は精神科へ。


スポンサードリンク

一笑一若

「一怒一老」の対語は「一笑一若」だ。

 笑いは、血管を開いて血圧を下げ、心臓、肺、胃腸など内臓器官の働きをスムーズにし、ホルモンの分泌を盛んにする。

 よく知られている研究だが、漫才などで大笑いしたあと、がん患者のNK細胞の活性度が著しく上昇した。

 NK(ナチュラルキラー)細胞は、免疫を担うリンパ球の一つ。

 感染症のウイルスやがん細胞をやっつける力をもっている。

 免疫力を高める薬を使って、NK活性を同じ程度に上昇させるには三日前後かかるそうだ。

 関節リウマチの女性患者に落語を一時間聞いてもらったら、リウマチを悪化させるインターロイキン6という物質が減少し、痛みが楽になったという研究報告もある。

 笑うときの横隔膜の上下運動は呼吸と血行を促進する。

 だからよく笑う人は血色がいい。

 笑声はけいれんの一種なのでそのあとに弛緩(しかん)がきて緊張が緩和する。大声で笑えば、筋肉の緊張がゆるみ、人間関係の緊張も緩和される。

「商売は笑売」「笑顔にまさる化粧なし」「元気に笑顔が重なれば、鬼に金棒」

「笑」の古字は「咲」。

「花笑」は花開くことだ。


一怒一老

 出典は知らないが「一怒一老・一笑一若」という成句がある。

 怒れば年をとり、笑えば若くなる。

 つまり怒りは体に悪い、笑いは健康によいというのだろう。

 大脳生理学者も「不快感、怒り、恐れはいわば戦時体制の心構え」と言っている。(時実利彦「人間であること」岩波新書)

 怒ると、自律神経の一つの「戦時用」の交感神経系が緊張し、心臓の拍動が激しくなり、血管が収縮し、血圧が上がり、気管支が拡張し、瞳孔が開き、消化液の分泌が減少し、肝臓から糖分が血中に流れ出て燃やされる...というように体内で「さまざまな戦闘状況」が展開される。

 結果、体力を消耗し、胃が痛くなったりもする。

「素問霊枢(そもんれいすう)」という東洋医学の古典には、

「怒れば肝を害し、おびゆれば心を害し、憂うれば肺を害し、考えれば胃を害す」とあるそうだ。

 心身症やストレス性の病気の原理を言い当てた言葉といえるだろう。

 とはいえ、人間、怒るべきときは断固、怒らねばならぬ。

 思い切り怒ったら、強い酒のあとに水を飲むように親しい人と笑い合おう。

 笑いは怒りの解毒剤だ。


魚類の不幸

 100年ほど前のアメリカの医学者(ハーバード大学の生理学教授)で、機知あふれるエッセイストとしても知られた、オリバー・ウェンデル・ホームズは、じつに徹底的な薬嫌いだったらしい。

「あらかたの薬を海に投げ込んでしまえば、人類にとってはこんな幸福はないが、魚類にとってはこんな不幸はないだろう」などと言っている。

 わが貝原益軒先生も相当な薬不信論者だったようだ。

『養生訓』を開くと、

「病ある時、もし良医なくば、庸医(ようい)の薬を服して、身をそこなふべからず。

 只、保養をよく慎み、薬を用ひずして、病のおのずから癒るを待つべし。」

 ──病気のとき、いい医者が見つからなかったら、ヤブ医者の薬を飲んで、よけい体を悪くしてはいけない。

 薬を飲まずに養生して、病気が自然に治るのを待つべきである、とか、

「薬はみな、偏性ある物なれば、その病に応ぜざれば、必ず毒となる。

 この故に、一切の病にみだりに薬を服すべからず。

 病の災いより薬の災い多し。」

 ──薬にはみんな偏った性質があり、その病気に合わないと必ず毒になる。

 むやみに薬をのんではいけない。

 病気の災いよりも薬の災いのほうが大きい。など、なかなか強硬だ。

 非常によく効く薬が、どんどんつくられて、大いにその恩恵を得ている人がたくさんいる現代にあっても、本質的な事情は変わらない。

 わかりきったことを言うが、毒にも薬にもならないようなモノは薬ではない。

 のみ方しだいで薬になり、まかり間違えば毒にもなるのが薬である。

 先日の肺がん治療薬「イレッサ」訴訟の判決報道の記事を読んで、そんなことを思った。

 イレッサによって劇的に快癒した人もあれば、間質性肺炎で亡くなった人もある。

 いちばん肝要なことは、効くのか、効かないのか、かえって危ないのではないか、その見きわめだろう。

 薬を正しく上手に使う技術は良医の第一条件といえるだろう。


視野テスト

 緑内障はかなり進行するまで自覚症状がない。

 そのことは緑内障の患者組織─緑内障フレンド・ネットワーク(柿澤映子代表 会員1650人)が行った会員対象の調査にもよく現れている。

「緑内障と診断される前」に、

「特に目の不調や変わったできごとはなかった」と答えた人が48%と最も多かった。

「本や新聞を読んでいるとき文字が読みにくく、疲れることがあった」人は32%、

 そのうち「緑内障を疑った」人はわずか9%。

 ほかの人は、目の疲れや視力低下、老眼だろうと思っていた。

 緑内障の自己チェック(視野テスト)は、わりあい簡単にできる。

 1 番組が放送されてない砂嵐のように見えるテレビ画面の中央に、目印になるシールを張る。

 2 片目を閉じ、そのシールから視点を動かさないようにして、画面のどこかに砂嵐が動かない部分や黒っぽく見える部分、あるいは全く見えない部分があれば、視野が欠けている可能性がある。

 すぐ眼科で詳しい検査を─。

 緑内障フレンド・ネットワークは、6月11~17日、緑内障についての電話相談「緑内障ホットライン」=03・3548・8225を開設する。


日本的緑内障

 きょう6月7日は「緑内障を考える日」だ。

 日本人の中途失明原因の第1位は、ずっと糖尿病網膜症だったが、2004年からそれが緑内障に代わった。

 同年、厚生労働省が発表した「視覚障害の原因」は、

 緑内障25%、糖尿病網膜症20%、黄斑変性症11%、網膜変性症11%の順だ。

 緑内障は、眼球内の圧力(眼圧)が高くなって視神経が損傷され、視野が狭くなる病気。

 近年、眼圧は正常範囲でも視神経が侵される「正常眼圧緑内障(NTG)」が非常に多いことがわかった。

 日本では40歳以上の20人に1人が緑内障で、その70%がNTGと推定される。「NTGは日本人に特徴的な緑内障のタイプといえる」と専門家は指摘している。

 5年、10年単位でじわじわ視野が欠けていくが、かなり進行するまで自覚症状はほとんどない。

 気づいたときは手遅れという例も少なくない。

 早期発見のためには、眼圧検査だけでなく眼底検査、視野検査が必要。とくに、

 ▽家族に緑内障の人がいる。

 ▽強い近視。

 ▽頭痛もち。

 ▽冷え性などの人はぜひ早めに眼科へ──。

 眼圧と緑内障

 眼圧は正常範囲内なのだが、目の神経が侵されて視野が狭くなる「正常眼圧緑内障(NTG)」は、日本人に特徴的に多い緑内障といわれる。

 かなり進行するまで自覚症状がないために治療が手遅れになる例も少なくない。

 しかし、早期に発見し治療を始めると、病気の進行を抑えることができる。

 眼圧は正常なのに、なぜ視神経障害が起こるのか?

 視神経がもともと弱く、眼圧がその眼の許容範囲を超えて高くなる(言い換えると、「正常」な眼圧が、その人にとっては「異常」に高い)ことで発症すると考えられている。

 だからNTGの治療も、やはり眼圧を下げる点眼薬から始まる。

 そして、視野障害の進行がみられない(薬が効いている)場合は、同じ薬による治療を続ける。

 進行が認められたら点眼薬を替えたり、追加したりして薬物治療を続け、それでもなお進行していく場合は、房水の排出を促進する(ひらたく言えば眼球内の水はけをよくする)レーザー治療や外科手術を行う。

 ともあれ、40過ぎたら一度は目の検診を──。


歯の末期(まつご)

 中唐の詩人、韓愈は歯周病だった。

 その症状は、

「去年、一牙(いちが)を落し/今年、一歯を落す/俄然(がぜん)として六七を落す」と始まる詩「落歯」に詳述されている。(牙は奥歯、歯は前歯)。

「去年は奥歯が1本ぬけ、今年は前歯が1本ぬけた。にわかに6本7本とぬけてゆき、ぬける勢いはいっこうにおわりそうにない。

 あとに残っているものもみなぐらぐら...(筧文生訳)」

 ──これ、歯周病の末期症状にほかならない。

「一つまさに落ちんとする時毎(ごと)に、凛凛(りんりん)たること恒(つね)に己にあり。

 叉牙(さが)として物を食らうことを妨げ、顛倒(てんとう)して水に漱(すす)ぐことを怯(おそ)る。

 今来、落つること既に熟せり。

 落つるを見れば空しく相似たり。」

 ──1本抜けかかるたびに、びくびくもので、物を食べるのも、水で口をすすぐのも、おっかなびっくりだった。

 だが、このごろでは抜けるのにもなれっこになり、またかと思うだけだ。

 いや、なんともお気の毒。

 こうなる前にぜひとも歯科医を訪ねるべきだ。

 歯周病については、また、別の日に──。


歯は老いず

 昔から男の老化は「歯、目、...」の順で進むといわれている。

「...」に当たる単語は、語感がロコツだから「...」にしたが、もとは梵語で、

「仏道修行を妨げ、人の心を惑わすもの」(広辞苑)だそうな。なるほど!

 江戸後期、「今一休」と呼ばれた仙崖和尚の「老人六歌仙画賛」も、

「歯はぬける 耳は聞こえず 目はうすくなる」と嘆いているように、昔は年をとれば歯は抜けるものとされていた。

(注=狂歌「老人六六歌仙」の作者は、俳文集「鶉衣」で知られる江戸中期の俳人、横井也有といわれている。)

 目の老化(老眼)はほとんど防ぎようがないし、もう一つの...の能力も体質や努力による個人差はあるにせよ、やはりトシには勝てず、下向きになりがちなのは避けられない。

 歯も、そうなのか?

 サンスターが40~60代の男女930人に聞いた意識調査の一項目「老化を感じ始めた年齢とその部位」によると、

 頭髪(抜け毛や白髪)が最も早くて、44・7歳。

 次が、歯の45・4歳。

 肌(しわ、しみ)の45・7歳。

 目の46・7歳の順だ。

 しかし、歯は心がけしだいでずっと長く若さを保つことができる。

 全身の健康を保つことにもつながる。

 ハゲやシラガが健康にかかわることは全くないが、歯の残存本数は健康に密接に関係する。

 特に高齢者では健康度を左右する。

 80歳以上で歯が20本前後残っていて、食物がよくかめている人は、

「生活の質および活動能力が高く、運動・視聴覚機能に優れている」ことが明らかにされている。

 また、70歳以上で、自分の歯が20本以上残っている人は、19本以下の人と比べ、神経や循環器などの病気で通院する日数が約3分の1少なく、4本以下の人よりも、医療費が1カ月平均約9000円少ないという調査もある。

 丈夫な歯は丈夫な体のしるし。

 一昔前のCMではないが、「歯がいのち」であるのは、「芸能人」だけではない。

 さらにいえば、目や...とは違って、歯は老いない。

 繰り返すが、心がけしだいで、いつまでも若さを保つことができる。

 実際、80歳になっても自分の歯を20本以上残そうという「8020運動」が始まった1980年代末に、その条件を満たしていた人は8%に過ぎなかったが、6年に1度の調査のたびに増え続けて、去年2011年には38%(3人に1人強)に達した。

「歯を失う原因の歯周病を予防する意識が高まってきたためではないか」と厚生労働省はみている。

 昨日の朝日新聞の夕刊にそう出ていた。

 では、歯周病を予防するにはどうしたらいいか?

 簡単だ。

「食べたらみがく」──それだけでよい。

 多くの歯科医がそういっている。

 液体ハミガキでクチュクチュとやってからなら、なおよい。


歯の日の成果

 3月3日の「耳の日」は1956年。

 8月7日の「鼻の日」は1961年。

 10月10日の「目の日」は1947年にそれぞれ制定された。

 これらのどれよりもずっと古く1928年に定められたのが、6月4日の「虫歯予防デー」だ。

 1958年からは「歯の衛生週間(4日~10日)」に拡大された。

 近年は、4月2日の「歯列の日」。

 4月18日の「よい歯の日」。

 8月8日の「歯並びの日」も加わった。

 その成果か、文部科学省の学校保健統計調査によると、児童・生徒の虫歯は過去10年間で20ポイント減少。

 12歳の永久歯の虫歯本数は、10年前の4.17本から2.28本に減った。

 国立保健医療科学院の花田信弘・口腔保健部長は、

「少子化で子どもに親の目が届くようになり、寝る前に甘いものを食べないとか、歯みがきの習慣がついた。

 フッ素入り歯磨きも普及し、キシリトールなどの代用糖の利用拡大など、複合的な減少の要因がある」と分析。

「子どもの虫歯は、戦後に激増したものなので、まだまだゼロに近づけられる」と話している。


むずむず脚

 きのう6月2日は「むずむず脚症候群の日」だった。

 一度聞いたら忘れない面白い名前だが、正式の医学用語ではない。

「正しくはレストレス・レッグス・シンドローム(RLS)か、

 下肢静止不能症候群ですが、専門医以外にはまだあまりよく知られていません」と、清水徹男・秋田大学大学院教授。

 夜、布団の中に入ると、脚の内側に「むずむずする」「虫がはっている」「ピクピクする」など奇妙で不快な異常感覚が生じ、眠れなくなる。

 その症状から「むずむず脚症候群」とも呼ばれるこの病気の有病率は人口の2~5%、治療を必要とする患者は約200万人といわれる。

 だが、患者の会が行った調査によると「まだ診断を受けていない」人が70%もあり、その9割が「自分がむずむず脚症候群かどうか知りたい」と答えている。

「つらい病気に悩み苦しんでいる多くの人が1日でも早く適切な診断を受けられるように─」と、むずむず脚症候群友の会が設立された6月2日を、むずむず脚症候群の日と決めた。

 原因と治療薬

「むずむず脚症候群」ことRLS(レストレス=じっとしていられない レッグス=脚 シンドローム=症候群)が、一般人だけでなく、専門外の医師にもまだあまり知られていないのは、

「今、一人前の医師が医学教育を受けたころには、全く教わらなかった病気だからです」と、清水徹男・秋田大学大学院教授。

「日本最初のRLS臨床例5例が報告されたのは1977年で、94年の全国調査でかなり患者が多いことがわかりました」

 RLSは、鉄欠乏性貧血、慢性腎不全、パーキンソン病などさまざまな病気による症候性(二次性)のものが約3割で、約7割は原因がわからない特発性(一次性)だ。

 妊娠中の女性がなることもある。

 症状が軽度の場合は──、

 寝る前に短時間歩く、

 温かい風呂に入る、

 手足のマッサージをするなどの生活療法を行う──などで軽快する。

 重症の場合は薬物療法になるが、これまではよく効く薬が保険では使えなかった。

 2010年1月、特効薬の中の1種類のみがまず保険適用になった。

 受診は、睡眠障害外来か神経内科へ─。

 ドーパミン

 むずむず脚症候群友の会が、2009年9月に開設した「むずむず脚ホットライン」には1週間で296件の相談が寄せられたが、その約7割はまだ診断を受けていない人かその家族だった。

 脚がむずむずする、ピクつく...といった奇妙な症状のせいで皮膚科や整形外科、内科を訪ねる人が多いが、睡眠障害を伴う神経の病気だから、神経内科か睡眠外来でないと適切な診療が受けられない。

 患者の7割ぐらいは、脳の中で神経伝達物質のドーパミンの作用が悪くなったため発症すると考えられ、ドーパミン・アゴニスト(作動薬)が劇的に効く症例が多い。

 逆にアレルギー性鼻炎や花粉症などに用いる抗ヒスタミン薬は、ドーパミンの作用を妨げるので、症状を悪化させる。

 むずむず脚症候群の患者が、眠りたいと思って、抗ヒスタミン薬の成分を転用した市販の睡眠改善薬を使うのは逆効果だ。



Page: 1 < 2  次の10件>>
TOPPAGE  TOP 
RSS2.0