暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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2012年5月

たばこ、やめませんか!

 小児とたばこ

 5月31日は世界禁煙デー。

 WHO(世界保健機関)が、喫煙者に対しては24時間の禁煙を呼びかけ、各国の政府・自治体・諸機関・個人に対しては、喫煙と健康問題の認識を深め、適切な対策の実践を求める日だ。

 1988年(この年のみ4月7日)の第1回の「たばこか健康か─健康を選ぼう」以来、毎年、掲げてきた標語の2008年のそれは、「若者をタバコから守れ」だった。

 日本小児科学会は、はるかな以前から、「子どもをタバコから守れ」と訴え続けている。

「日本小児科学会雑誌」106巻3号(2002)掲載の、「こどもの受動喫煙を減らすための提言」は、深刻な事実の指摘から始まっている。

「たばこの煙には、先端から立ち上がる副流煙、喫煙者の吐き出す煙があります。

 こどもの喫煙のほとんどは、これらを吸う受動喫煙です。

 それによって、気道アレルギーが悪化して、ぜんそくが治りにくくなったり、乳幼児突然死症候群(SIDS)が増えるなどの健康被害が報告されています。」

 たばこの煙は、直径1ミクロン以下の微粒子だから、気流とともに浮遊する。

 閉鎖された室内では、数分後には部屋全体に広がって薄められ、見えなくなる。

 しかし、壁やカーテンなどに沈着するのはごく一部で、粒子の大半は長時間にわたって空気中に滞留している。

 その目に見えないたばこの煙を知らず知らず、長時間にわたって吸うことによって、子どもの受動喫煙の大半は起きていると、日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会は指摘している。

 子どもの受動喫煙への影響は、母親の喫煙が最も大きいとの調査結果がある。

 子どもが不在のときに吸うたばこの煙に注意がいかず、部屋を閉め切ったままで子どもを迎えることも、子どもの受動喫煙量を増やしている。

 同委員会は、次の2点を提言している。

 ① 子どものいる家庭では、たばこは室内では吸わず、屋外で吸うようにしましょう。

 ② 室内で吸った場合、必ず窓を開けて換気しましょう。

 とくに対面する2カ所の窓を開けて自然換気するのが効果的です。

 受動喫煙意識調査

 たばこでいちばんの問題は、言うまでもなく受動喫煙による健康被害だ。

 喫煙者本人が健康を害するのは、いわば自己責任、冷たくきめつければ自業自得だ。

 自分でもそれを承知で吸っているわけだから、はたでとやかく口出しするのは、よけいなお節介だろう。

 しかし、人に迷惑をかけてはいけない。最低、最悪である。

 たばこの先から発生する副流煙には、喫煙者自身が吸い込む主流煙よりも多くの有害な化学物質が含まれている。

 受動喫煙で、肺がんや心筋梗塞やぜんそくのリスクが高まるのはよく知られているが、最近の疫学調査では糖尿病にもなりやすいことがわかった。

 糖を処理するインスリンをつくる膵臓の働きが悪くなり、インスリンが効きにくくもなるためのようだ。

 繰り返すが、たばこでいちばんの問題は、受動喫煙である。

 たばこのみ本人もそのことはよくわかっているようだ。

 5月31日の世界禁煙デーを前に、製薬会社のファイザーが行った意識調査では、

 喫煙者の83.5%が、自分のたばこの煙が周囲の人に与える影響を気にしており、

 85.6%が、周囲に人がいるところでは「たばこを控える」と回答している。

 この調査は、47都道府県9400人(各都道府県喫煙者・非喫煙者/各100人、計200人)を対象に、インターネットで行った。

 たばこの煙で不快な思いをした場合、

「吸うのをやめてほしいとハッキリ言う」人は、わずか3.8%。

「言いたいが我慢する」「その場を立ち去る」人が92.5%とほとんどだ。

 傍若無人のたばこのみが、遠慮深い人たちに黙認されているわけである。

 そうした状景を減らす最も効果的な施策は、人の集まる場所での喫煙を制限する「受動喫煙防止条例」だろう。

 すでに同条例が制定されている神奈川県と兵庫県以外の回答者9000人に、

「受動喫煙防止条例のような公的ルールを、お住まいの都道府県に設けることに賛成ですか?」という質問に、

 3570人(39.7%)が「賛成」、

 3194人(35.5%)が「どちらかといえば賛成」と回答している。

 喫煙者に限定しても、「賛成」が14.9%、「どちらかといえば賛成」が40.0%と、半数以上が条例の制定に肯定的である。

 このほか、いろいろ興味深い調査結果は、ファイザーのサイトで、どうぞ。

 肺の生活習慣病

 たばこがつくる病気といえば、肺がん。これは昔からよく知られている。

 いま世界的な大問題は、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)だ。

 有害な空気を吸い込むことによって、空気の通り道の気道(気管支)や酸素の交換を行う肺(肺胞)などに障害が生じ、呼吸がうまくできなくなる病気。

 最大の原因が長期間の喫煙習慣であることから、肺の生活習慣病といわれる。

 2001年のWHO(世界保健機関)調査では、高所得国における死因の第5位、低・中所得国では第6位だ。

 2020年には心疾患、脳卒中に次ぐ第3位になると予測されている。

 2000年に行われた大規模疫学調査によれば、日本人の有病率は8.6%、40歳以上の約530万が罹患していると推定される。

 だが厚生労働省の2008年の患者調査によると、医療機関でCOPDと診断された患者数は17万3000人に過ぎない。

 この病気の初期は自覚症状が少なく、ゆっくりと進行するため病気に気づいていない人が多いためである。

 代表的な症状は、息切れだ。

 階段や坂道の上がりで息を切らし、同年代の人と一緒に歩いていて、歩くペースが遅れがちになる。

 せきとたんがしつこく続き、病気が進むと口すぼめ呼吸をし、胸の前後の幅が増大してビヤだる状になる。

 まず禁煙!

 どんな病気でもそうだが、COPDの治療も、早く始めるほど、よい。

 ① 40歳以上で、たばこを吸っているか、吸っていた人(長期喫煙者の7人に1人がCOPDになるといわれている)。

 ② せき、たんがしつこく続く。

 ③ 階段を上るとき息切れがする人は、ぜひ「肺機能検査」を──。

 息をいっぱい吸って、吐き出すだけの簡単な検査だ。

 治療は、まずたばこをやめること。

 禁煙外来や禁煙教室のある病院を受診し、禁煙を助ける薬を用いるのも一法だ。

 たばこをきっぱりやめて適切な治療を受ければ、病気の進行を遅らせ、せきやたん、息切れなどの自覚症状を抑えることができる。

 治療は、気管支を広げる気管支拡張薬になるが、症状によっていくつかの薬を組み合わせて用いる。

 とにかく、早く診察を受け、根気よく治療を続けることが何よりも大切。

 ある専門医はこう言っている。

「何年か先に、健康な人に近い生活を楽しめるか、ほとんどベッドの上で過ごすか。それはあなた次第です」


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子どもの肥満とやせ

 小児メタボ

 生活習慣病の予防は子どものころから始めるべきだ。

 小中学生(6~15歳)を対象とする、厚生労働省の「小児のメタボリック症候群」の診断基準は──、

 男・女児ともウエストが80センチ以上で、それに加えて、

 血圧125―70mmHg以上、血糖値100mg/dl以上、高脂血症(中性脂肪120mg/dl以上、HDLコレステロール40mg/dl未満)の2項目以上があてはまるもの──とされている。

 肥満児の5~20%がこれにあてはまる可能性があるという。

 文部科学省によれば、標準体重の120%以上の「肥満傾向児」は、この30年間に3倍近く増えて、およそ10人に1人。

 子どもでも肥満の増加と2型糖尿病(普通にみられる成人型の糖尿病)の増加は見事に相関し、肥満が増えるのに伴って2型糖尿病も増えて、年間10万人当たり8~10人の子が、2型糖尿病を発症している。

 子どもの2型糖尿病など、昔は考えられなかったことだが、今は大問題。

 1992年からは学校健診で尿糖の検査が行われるようになっている。

 半面、肥満とは反対のやせの心配もしなければならない現状もある。

 やせの問題

 肥満児が増える一方、低体重児も、同じくらい増えている。

 文部科学省は、標準体重に対して80%以下の体重の子を「痩身(そうしん)傾向児」としているが、この20年間に2倍、特に女の子では3倍近く増えている。

「以前は子どものやせは、栄養障害とか慢性疾患など病気のためと考えられていた。

 しかし、病気がそんなに増えるわけはない。

 若い女性の<ファッションとしてのやせ>が、子どもたちにも増えている。

 これは大きな問題だと認識しなければいけません」と、子どもの食育に詳しい村田光範・和洋女子大教授(元東京女子医大小児科教授)。

 やせ過ぎも、肥満と同じように死亡リスクが高くなることがわかっている。

 体重(キロ)を身長(メートル)の二乗で割ったBMI(体格指数)が18.5未満の「やせ」は、BMI22~24.9の「標準体重」に比べて、女性では約3倍、男性では約2.5倍、死亡率が高い。

 骨密度の低下による骨折も増える。

 若い女性は生理不順になりやすいし、不妊症になることさえあるという。


妊娠肥満vsやせすぎ妊婦

 赤ちゃんが小さくなり続けているのは、やせすぎママがふえているからだ。

 一方、妊娠中に体重がふえ過ぎる「妊娠肥満」にも問題がある。

 妊娠糖尿病や妊娠中毒症のリスクが高くなったり、お産が重くなったりしやすい。

 妊娠による体重増加は、体格による個人差はあるが、一般的には7~10キロ程度が望ましい。

 昔はよく「おなかの赤ちゃんの分まで食べなければ...」と言われた。

 日本人一般の食生活に問題の多かった時代、そう言って弱い立場の嫁(母体)の栄養補給を助けたのだろう。

 産科医によると、妊娠中に必要とされる摂取エネルギーの基準は1800キロカロリー。20代女性よりも少ない。

 妊婦は安静にしていて激しく動くことがないからだ。

 これに妊娠前期(15週まで)は1日150キロカロリー、中期(16週~27週)は1日250キロカロリー、後期(28週以降)には450キロカロリーをプラスしたものが、妊婦の標準摂取エネルギーになる。

 だがそれを超える過食、偏食などによる体重増加が15キロを超える人がある。

 半面、妊娠中のダイエット(極端な食事制限)のために体重増加が5キロ未満という人が、近年非常にふえている。

 昨日、記したようにこれも大問題だ。

 妊娠中に大切なのは、食物の質と食べ方をよく考えて変えていくこと。

 摂取エネルギーはそれほどふやす必要はない。

 へらすのは、もちろん、論外だ。

 妊娠中の栄養・食生活

 妊娠中の肥満を避け、丈夫な赤ちゃんを産むためには、摂取エネルギーはむしろ減らしながら、母体と胎児の成長にとって必要な栄養素(たんぱく質、カルシウム、鉄)を増やすことだと産科医は助言している。

 その基準付加量は─、

 妊娠前期は、たんぱく質=10グラム、カルシウム=0.4グラム、鉄=3ミリグラム。

 後期は、たんぱく質=20グラム、カルシウム=0.4グラム、鉄=8ミリグラムとされている。

 これだけの量を増やすのは、実はけっこう難しい。

 たとえば妊娠前期のエネルギー付加量150キロカロリーは、牛乳1杯(140cc)と卵1個(50グラム)に相当するが、この場合、たんぱく質は10グラムで合格だが、カルシウムは0.7グラム、鉄は1ミリグラムしかとれない。

 特に妊娠前・妊娠中に注意しなければならないのは鉄の不足だ。

 妊娠中は造血機能のバランスの乱れで貧血を起こしやすくなる。

 新しい生命を健やかにはぐくむために鉄を十分蓄え、補給しなければならないが、鉄分にはカルシウムにとっての牛乳のような即効性のある効果的な食べ物がない。

 鉄分補給の食生活に気を配る必要がある。

 妊娠中の鉄分補給のために大切な心がけは、分かりきった話だが鉄分を多く含む食品を意識的にとること。

 鉄分の多い食品は、なんといってもレバー。それから、ひじき、煮干し、のり、しじみ、あさり、ゴマ、豆類、きな粉、切り干し大根、ほうれんそう...など。

 料理に鉄なべを使うことも食物中の鉄含有量を増やす。

 ところで、妊娠中の食生活でもう一つ注意したいことは、アレルギーについて。

 母親自身、または父親や家族のなかで食物アレルギーの人がいて、アレルゲン(アレルギーの原因物質)がわかっている場合、その食品を避けるか、3~5日に1回の割合にしたほうがいいと専門医は言っている。

 家族にアレルギーの人がいなくても、たとえば牛乳を水がわりに1日1リットル飲んでいたお母さんから牛乳アレルギーの赤ちゃんが生まれたり、大豆がいいからと毎日どっさり食べていたお母さんの子が大豆アレルギーになった例があるそうだ。

 卵、牛乳、大豆の三大アレルゲンは、必要以上とり過ぎないようにしよう。

 体によいといわれる食品でもそればかり毎日食べるといったことは避けよう。


少子化&小子化

 赤ちゃんがだんだん小さくなっているらしい。

 厚生労働省の乳幼児身体発育調査によると、赤ちゃんが最も大きかったのは。1980年。

 男児の出生時体重は平均3230グラム。女児のそれは平均3160グラムだった。

 以来、年ごとに小さくなり続けて2010年には男児が平均2980グラム、女児が平均2910グラム。

 どちらも250グラム減った。

 背景に、若い女性のスリム化と、少子化で初産の割合がふえたことがある、という。

 低体重の女性が妊娠すると、低体重児を出産する傾向があり、その子が成長すると生活習慣病になりやすい。

 ヨーロッパで栄養状態が悪かった1930~40年の新生児を追跡調査したデータから導かれた仮説だ。

「妊婦さん しっかり食べて」という朝日新聞5月23日の記事によれば、最近の日本の調査研究でそのことが実証されている。

 名古屋大の玉腰浩司教授(公衆衛生学)らの調査(35~66歳の男女約3100人)によると、

 出生時の体重が2500~3000グラムのグループは高血圧(最高140以上、最低90以上)の比率が26.1%だった。

 一方、3000~3500グラムは22.8%、3500グラム以上は19.4%と、出生時の体重が少ないほど、高血圧の割合が高い傾向がみられた。

 新潟大医歯学総合病院の内山聖院長(小児科)や菊池透小児科講師らは、

 6歳~15歳の肥満の男女約960人を出生時体重の軽い順に4グループに分けて、血中のインスリン濃度など糖尿病になりやすいかどうかを調べた。

 結果、出生時体重が軽いほど、インスリンの働きが弱いなど糖尿病になるリスクが高かった。

「胎内が栄養不足になると、胎児の体内で低栄養に対応しようと変化が起こるようです。

 それが成人になって、栄養が足りた状態になると、悪さをしているのではないかと考えられています」

 ──と内山院長は説明している。

 人類は、長い飢餓の歴史のなかで、体のエネルギーの消費を抑え、エネルギーを倹約してため込む「倹約遺伝子」を獲得した。

 胎児期に母体から受ける栄養が少ないと、倹約遺伝子が強く発現する体の状態になってしまい、生まれたあともエネルギーをため込んで、うまく使えない。

 その体質が、インスリン抵抗性(糖質を処理するホルモン=インスリンの働きを妨げる作用)をつくり、生活習慣病につながるのではないか。

 かつて新生児体重が増加傾向にあった時代には、妊婦が太り過ぎると妊娠中毒症や妊娠糖尿病のリスクが高まる心配や、小さい赤ちゃんだと分娩(ぶんべん)が楽といったことから、

「小さく産んで大きく育てよ」と言われた。

 しかし、いまは低体重の女児が、低体重の女性に成長し、低体重の子を出産すると、生活習慣病の予備群がふえる。

 長い目で見ると、そういうことが言えるわけだ。

 やせ過ぎの子どもがふえているのは、肥満と同じように重大問題だと、専門家は指摘している。


中高年の運動障害

 絶好の運動日和が続いている。

 それとともに運動障害の件数も増えている。

 運動にはどんな注意が必要か。

 特に中高年者に対する助言を専門家に聞いた。

 種目別にあげてみよう。

 ゴルフ=ゴルフによる障害には主に二つある。

 一つは打球練習のしすぎで、肋骨や頚椎の突起を折ってしまう。

 ゴルフ骨折だ。

 集中的な打球練習は毎日ではなく1日おきにしたり、1日の打球は200球以下にしたほうがよい。

 もう一つは心臓発作だ。

 早起きのための睡眠不足とゴルフ場までの運転の神経的疲労が重なって、特にグリーン上で、パットに全神経を集中するようなときに発作を誘発しやすい。

 リラックスしてやろう。

 テニス=多いのは「テニス肘(ひじ)」だ。

 肘の腱(けん)や靱帯(じんたい)を酷使し続けたことで起きる。

 放っておくと痛みが増し、重い物を持ち上げることができなくなる。

 肘に痛みを感じたらすぐにテニスを止めて、整形外科で診てもらおう。

 そのあと、肘を伸ばした位置で、硬いボールを握っても痛みを感じなくなるまで、ラケットを握ってはいけない。

 ジョギング=隣の人とときどき声をかわせるくらいのスピードで走ろう。

 アメリカの著明なスポーツトレーナー、F・マフェトン博士は、180から自分の年齢を差し引いた数の心拍数になるトレーニングが、安全で最も効率がよいとしている。

 この「180公式」で自分に適切な心拍数を計算し、それを目安にして運動すればよい。

 ただし、高血圧や心臓病、糖尿病など慢性の病気をもっている人は、主治医の指導・注意をきちんと守るようにしたい。

 慣れると速度、距離、時間ともにいっぺんに上げる人がいるが、これは危険。

 少しずつ上げよう。

 走るときは言うまでもなく、かかとから着地する。

 水泳=プールサイドに来るなり飛び込み、そのまま全力で泳ぐというようなやり方は、障害を招くもと。

 ゆつくりと、休み休み、長く泳ぐようにしよう。

 中高年になると、自覚症状はなくても脊椎の変形が徐々に進んでいる。

 バタフライの呼吸動作や、飛び込み、長時間の平泳ぎなどは背中、腰、首を強くそらすために首や腰を傷めることがある。

 中高年の場合、バタフライは基本的にはやめて、クロールや背泳を中心にするのがいい。

 ──と専門家は助言しているが、私は古式泳法の抜き手と平泳ぎが一番楽だと思う。

 柔軟体操=柔軟運動をするとき、弾みをつけたり、他人に押してもらうのは避ける。

 体をやわらかくする効果は少なく、かえって肉ばなれや骨折を起こす原因になりやすい。

 自分が保てる姿勢を20~30秒間続けるという形でやるのがいいそうだ。


佐々学先生

人体に病害を与える動物と、それによる病気を研究する学問は、かつては「医動物学」または「寄生虫学」と呼ばれた。

 が、前者はマウスやモルモットなどの実験用動物と間違えられることがあり、後者だと病害昆虫やダニの類が無視されやすい。

「人体病害動物学」と呼ぶことにしようと提唱した人が、佐々学・東大医科学研究所寄生虫研究部長だった。1957年のことだ。

 先生は、そののち同研究所所長、国立公害研究所所長を経て、富山医科薬科大学学長、富山国際大学学長を歴任、2006年4月、肺炎で亡くなった。90歳だった。

 遺志により葬儀は行われなかった。

 壮年のころの佐々先生は知的な二枚目(五木寛之さんの脚を10センチ長くしたような...)だったが、身辺にはひょうひょうとした感じが漂っていた。

 ネズミの足は4本、昆虫は6本、ダニは8本。

 足の多い動物は面白いよ、とおっしゃるので、2本足はダメですか? と反問したら、

「そりゃメスは2本足がいちばん面白いです」

 当時、杏雲堂病院の佐々廉平院長、関東逓信病院の佐々貫之院長、同姓の著明な医人が二人おられた。

 初めてお会いしたとき、

「あの両先生とはなにかご関係おありなんですか?」とたずねたら、

「ええ、まぁ、関係ないこともないです」

「どのような?」

「廉平は父で、貫之は叔父です」

 思わず笑った。笑わせてもらった。


リーダーの役目

「人間は新しいことをやるたびに失敗する。失敗に早く気がついて直すのが、賢い人間です」

 ──と話した人は、風土病や熱帯医学の研究で知られた佐々学先生。

 その好例として、パナマ運河を挙げた。

 スエズ運河の開通に成功したフランスのレセップスは、パナマ運河には見事に失敗した。

 原因はマラリアと黄熱病だった。

 そこでアメリカは、最初の2、3年は、蚊の駆除など衛生事業だけに取り組んだ。

 そして人間が住める環境を作ってから運河を掘り始めて、成功した。

「だから予防医学というのはペイする学問なのです」

 日本も最初はレセップスのわだちを踏んだ。

 ボルネオやラオスやアフリカに、国内の工事と同じような飯場を作って行った。

 マラリアにバタバタやられた。

「そうなることは、専門家は知っていても、土建会社の社長さんはご存じなかった。

 だがそれがわかったら早く手を打てばいい。

 試行錯誤というやつで、トライして、小さいエラーのうちに直す。

 そうすればジグザグではあっても、進む方向は正しい。

 ジグザグの幅を極力狭くするのが、リーダーの役目です」

 佐々先生のこの言葉を、いま、この国のおえらい人たちに呈上したい。


ダニの話

 みそのダニ

「塩こうじ」ブームに後押しされ、発酵食品が人気を集めている。手軽に作れる塩こうじや甘酒のほか、手間と時間のかかるみそやしょうゆを自宅でつくる人もいる。(朝日新聞5月22日朝刊)。

 ──という記事を読んで、むかし、「ダニ学」の権威、佐々学・東大名誉教授に聞いた話を思い出した。

 東大医科学研究所所長、富山医科薬科大学学長などを歴任された佐々先生の医科研教授時代(だから、30数年前)の話だ。

 近ごろのみそにはダニがいなくなったと嘆いておられた。

 昔のみその中には必ずサトウダニがいた。

(「サトウダニは粗製の砂糖に多く繁殖し、時には1gに数百疋にも達する。また、ミソにはほとんど全例に検出され、従って日本人の糞便中によく見出され、Sarcoptes intestinalisともよばれた」=佐々学著『人体病害動物学』医学書院1957年発行)。

 そのダニが消えたのは、みそに防腐剤を使うようになったからだ。

 ダニのいるみそを何百年と食べ続けても、なんら健康被害は生じなかった。

 防腐剤を毎日、何年も食べさせられたらどうなるか? それはまだわかっていない。

 肝臓やられてバタバタいくなんてことが起こらねばいいが、と言われた。

 いま、台所をのぞいて、みその容器を見てみた。

「防腐剤無添加。みそが生きているため、白いカビ状の酵母が発生したり、膨張することがありますが、中身は問題ありません」と記されてあった。

 家人によれば、いまのみそにはほとんど防腐剤は使われていない。

 保存料のアルコールも加えてないものが多いという。

 碩学の心配は杞憂に終わったようだ。

 よくは知らないが、専門家の指摘、賢い消費者の主張と、生産者の適切な対応があったのだろう。

 もし自家製のみそにダニがわいたとしても、目にはみえないし(サトウダニは体長0.3mm)、むろん心配ご無用である。 

 地球のダニ

 佐々学先生は、風土病や熱帯病の研究で知られた。

「ダニ学」はその重要な一項目だった。

 ダニの種類は無慮数万。

 動物で最も種類の多いのは昆虫だが、その昆虫のそれぞれの種類に数種類のダニがくっついている。

 人間の皮膚にも、生後数カ月までの乳児を除けば、みんなダニがいる。

 土の中にもいっぱいいて、ミクロの世界で大地を耕している。

 もしダニがいなかったら土壌の─ひいては地球の様相は、かなり変わっていただろう。

 ダニには、眼のあるのも、ないのもいる。

 あるダニの眼は肩についている。

 そして生殖器がのど仏にある。

 交尾のさいは両者立ち上がって"ハッケヨイ"と組み合った形で行う。

 シラミダニというのの子は、生まれてくるなり、ただちに交尾する。

 メスだけで(オスとの交渉はナシで)子を産むダニもいるし、オスが精子を袋に入れて置いておくと、それを見つけたメスが、いそいそと腹の中に押し込み、子を産むダニもいる。

 ぜんそくの原因になるチリダニ、夏場に繁殖し人を刺すツメダニ、かいせんをつくるヒゼンダニ、果実の害になるハダニなど、いろいろ厄介なダニもいるが、ダニのほとんどは無害で、「益ダニ」もけっこう多い。

「街のダニ」なんて形容は、ダニに失礼だ。


多発性関節症

 年をとって、体のふしぶしに多少の痛みが生じるのは、いわば自然現象だ。

 当家などは年中、「あっちが痛い、こっちが痛い」の夫婦競演で明け暮れている。

 体のどこかが痛いのは生きている証しみたいなものである。

 しかし、その関節痛があまりにもひどくて、笑ってなどいられない人もある。

 親しい知人がそれで、リウマチ、痛風、膠原(こうげん)病関係の各種検査を受けても診断が確定しない。

 こうした病気では血液検査で特有の反応を示すことが多いが、その変化は認められず、老化現象と関係のある「多発性関節症」といわれたという。

 現在の症状は、ひざ、手指の関節、首、腰などに痛みが多発し、ひざは正座ができなくなり、階段の昇降や立ったり座ったりする動作で痛みが生じる。

 手指の末節関節がコブ状にふくらんで軽い痛みを伴い、肩、首の痛み、こり、手指のしびれ、体の曲げ伸ばしのたびに腰痛が起こるという。

 とても単なる老化現象とは思われない。

 多発性関節症の原因疾患は多数ある。

 関節リウマチと変形性関節症の頻度が高い。

 ──と医学辞典にはあるのだが。


もったいない!

 初めて行った町で仕事を終えて夕方の道を駅へ歩いていると、路傍の電柱に旧友経営の歯科医院の広告を発見した。

 うれしくなって電話をかけたら、「素通りはなしだぜ」と言われた。

 友人は、歯科医師会雑誌の俳句欄の選者であり、考古学に詳しく、稀覯(きこう)本の蔵書家でもある。

 野に遺賢あり。

 名は、中脇恒夫という。

 自分の手で発掘したという縄文土器の欠片や古書珍本を見せてもらい、興味深い話を聞いた。

 しかし、いま私の記憶に最も鮮明なのは、夫人手づくりの卯(う)の花あえの味覚だ。

 以前、京都のおばんざい屋で食べて感嘆した風味を思い出した。

 豆腐は日本人の国民食だが、豆腐のしぼりかすのおからは、今はほとんど食べられない。

 おからには、大豆のたんぱく質の約20%が残っているうえ、腸のクリーナーの役目をする食物繊維が大根葉の2倍、玄米めしの4倍も含まれている。

 これを食べないという法はあるまいに捨てて顧みないのは、なぜか。

 考えてみるに、おからを上手に味つけするのはとても難しい。

 だから家庭で作らない(作れない)し、食べなくなったのだろう。

 もったいない!



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