暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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2012年2月

年の速度

 いやあ、昨日の雪には、たまげた。

 朝寝して寝ぼけ眼で窓の外を見たら、一面真っ白......、なおも白いものがひひと降り

続いている。

 見ているだけで寒くなった。

 会社や学校に行く人は大変だなあと思いながら、毎朝の楽しみ、カマちゃんこと風間

雅昭さんのブログ「半畳記」をのぞいたら、

「朝、雨が雪に変わったので、散歩に出ました。

清洲橋を渡って深川図書館から仙台堀川沿いに冬木まで、

その先は道へ出て葛西橋通りを仲町まで。

けっこうな降りでした。

写真はすべてS95です。

二度クリックでアップロードサイズです。」

 なんと、いざゆかん雪見にころぶところまで か、すごい人だなあ。

 日本橋人形町という粋なところに住んでいる東京っ子は、散歩好きの写真家で
ある。

 いつもプロの目がとらえた写真と、ユニークな批評、感想のコメントを楽しませても

らっている。

 Eメールを開いたら、畏敬する先輩、豊田二郎さんから──。

「2月29日。朝からさかんな雪でした。

 さっそく、アダモの「雪は降る」をかけてみました。

 「あなたは来ない」歌詞は暗いのですが、それほどには感じません。

 私は雪には明るく華やかなものを感じます。

 戸を開けると、雪片が舞い込んできます。

 ながい旅を経て、我が家で終えるところです。

 雪はほっとした表情で消えていきます。

 ──略──

 雪がうれしくて、メールしました。」

 いや、どうも、雪を見て、おどろき、ふるえているのは、おれだけみたいだな。

 豊田さんが本名の福田茂の名で上梓した、『うちに帰りたい もう死にたい』(日本

文学館)は、「亡き妻が病床から語る ありのままの生涯」を、敬子夫人の独白体でつ

づった、しみじみ心に沁みる名著、点字にも翻訳されている。

 一字一句、指でたどりながら閉ざされた目頭を熱くする人も多いだろう。

 豊田さんメールの連想で、ポール・ギャリコの『雪のひとひら』(矢川澄子訳。新潮

社)を思いだした。

 ある寒い冬の日、はるかな空の高みで生まれた「雪のひとひら」が、地上に舞い落ち

て「雨のしずく」と出会い、さまざまな喜びと悲しみを体験し、天に召されて、

「ごくろうさまだった。ようこそお帰り」と迎えられる。

 女の一生を「雪のひとひら」に仮託したファンタジー形式の小説である。

 夕方、原稿の件で編集者の坂井宏明さんへのお願いメールに、

「すごい雪でしたね。出勤、大丈夫でしたか?」と書き添えたら、

「ホント、すごい雪でしたね。

 朝は電車が遅れたぐらいでしたが、ホームに立っているだけで、芯まで冷えました。

 帰ったら雪かきかと思っていたら、雨に変わって溶けたようですね。

 ショウガ紅茶でも飲んで、温まってください。」と。

 なんかようやく同憂の友に会えたようだった。

 ──さて。

「一月往(い)ぬ、二月逃げる、三月去る」という。

 年が明けたのは、ついこの間のような気がするが、もう三月だ。

「ただ過ぎに過ぐるもの 帆かけたる舟。人の齢(よわい)。春、夏、秋、冬。」は、

『枕草子』。

 清少納言の時代の最も早い乗り物は帆かけ舟だった。

 今は過ぎに過ぐるもの、ジェット機、新幹線、人の齢。

 いや飛行機も電車も最高速度が決まっているが、年齢の心理的速度は年ごとに速くな
る。

 子どものころは1年がとても長かった。

 青年のころの1年も濃密で変化に富んでいた。

 老年の1年は短い。

 去年も今年も同じ水の流れのように淡く速く過ぎ去る。

 年をとるほど1年が短く感じられる現象を、「ジャネの法則」というそうだが、私見

では、それは「年の分母」が大きくなるためである。

 例えば、3歳の子の1年は、分母が3で分子が1、3分の1であるのに対して、60

歳の1年は、60分の1だ。

 20倍速く過ぎ去るように感じるのは、当然だろう。

 ま、しかし、その老年の1年は、変化のないことこそを喜ぶべきだろう。

 去年同様、今年もまずまず元気で、何事もないことを、よしとしなければなるま

い。

 ちなみに、ジャネの法則とは、19世紀フランスの心理学者、ポール・ジャネの、

「心理的な時間の長さは、これまで生きてきた年数の逆数に比例する」という説。

 算術オンチは、「年数の逆数」よりも「年の分母」のほうがわかりやすいと思うの

だが、どうだろうか。


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頭を打った!

 脳は豆腐

 明日から春三月だというのに、全国的に真冬に逆戻り。

 都心でも積雪――とテレビがいっている。

 二月より三月寒し又も雪(子駿)って、ホントだな。

 どちらさまも凍った道で滑って転んだりしないよう気をつけてください。

 ━━というところで、本題。

 長生きのコツを聞かれて、「転ぶな、風邪ひくな、義理を欠け」と答えたのは、91歳の天寿を全うした岸信介元首相だった。

 老人の風邪は肺炎に進展しやすい。

 転ぶと、骨折しやすく、太ももの付け根を折って寝たきりになったり、頭を打って大ごとになる例が少なくない。

 脳は、豆腐のように軟らかい組織で、周りを脳脊髄液で囲まれ、頭蓋骨の中に浮かんでいる。

 豆腐の入ったボウルをゴツンとぶつけると、豆腐がゴシャゴシャと動くように、頭を打つと、その衝撃で脳が1秒の10分の1とか100分の1といった速さで振動する。

 頭蓋骨の中で脳が強くゆさぶられ、片方に寄る。

 脳の機能が一時的に障害されて短時間、意識を失ったり、判断力が鈍ったり、記憶喪失を起こしたりする。

「脳振盪(しんとう)」と呼ばれる状態だ。

 たいていすぐに回復して、大したことにはならないのだが、とっさの防御反応が鈍くなった人は、頭をまともに打って、脳の中に血液がたまる「硬膜下血腫」ができることがある。

 硬膜下血腫

 転んで頭を打っても、コブなどはできない。

 頭の外側には何の変化も認められない。

 だが脳の表面が傷つき、出血して、脳の表面と脳を覆っている硬膜の間に血液がたまり、血腫ができることがある。

 硬膜下血腫という。

 出血量の多い「急性硬膜下血腫」の場合、数時間内に意識を失うなどの異常が生じる。

 しかし、チョロッと出血したぐらいでは症状はほとんど出ないと、脳神経外科の専門家、平川公義・東京医科歯科大学名誉教授。

「症状が出たとしても、手足の力がなんとなく弱いとか、歩くときにちょっとふらつくとか、せいぜいそんなものです」

 ──そして1日か2日で元に戻る。出血が吸収されてしまうからだ。

「しかし、2、3日たってもどうも頭が痛い、へんな感じがあるというようなら病院に行ってください。

 何もなければそのまま何もしないで、むしろ1カ月か1カ月半たってなんだかおかしいと感じたら、CTで検査してもらい、確定診断を受けたほうがよいでしょう」

 ──そのとき脳では「慢性硬膜下血腫」が発生している。

 脳の硬膜の内側に血の塊ができる「慢性硬膜下血腫」は、高齢者に多くみられる脳障害で、頭を打ってから1カ月、ときには2、3カ月たってから徐々に症状が現れてくる。

「頭重や頭痛も訴えますが、足がふらつき、体の片側に軽いまひが生じることもあります。

 なんとなく周囲の状況がよくわからない感じで、ボーッとして反応が悪くなります。

 高齢者の慢性硬膜下血腫はよく見逃されたり、誤診されて老年性痴呆と間違われることがあります。

 ぼけてしまったということでほうっておかれると、治る認知症を見逃すことになります」

「また、例えば、正常圧水頭症といって、脳の中の脳脊髄液の循環が悪くなって、脳に水がたまってくる病気でも、ふらついたり、言葉がもつれたり、意識が悪くなったり、失禁したりします。

 お年寄りの頭の具合がだんだんおかしくなってきたら、頭の中で何が起こっているか、詳しく調べて、原因を突き止めなければいけません」

 以上、平川公義・東京医科歯科大名誉教授のアドバイス。
 

 急告! 愛酒家諸兄

 飲酒後に転倒や交通事故で頭部外傷を負うと、直後の検査では異常がないのに、半日~2日後に急死するケースがある。

 頭がむくんだり腫れたりする「脳浮腫」の悪化が原因とみられていた。

 松本博志・札幌医科大学教授(法医学)の研究チームは、「飲酒ラット」と「しらふラット」による実験で、そのことを確かめた。

「飲酒」したうえで頭を損傷したラットは、6時間後までは異常はなかったが、24時間後に脳浮腫が生じ、脳浮腫の原因の一つとされるたんぱく質「アクアポリン4」が大幅に増加し、約半数のラットが死んだという。

(2012年2月5日毎日新聞 大場あい記者の記事を要約した)。

 諸君、花見酒の季節も近い。

 おたがい、気をつけようぜ。

 飲んだら、転ぶな!


長生きの証拠


 トシをとると、だれでも体のあちこちが痛くなる。

 首の骨が変形して、首筋の痛み、だるさ、肩こりなどが起こってくるのは変形性頚椎(けいつい)症。

 それが第一段階で、さらに変形が進むと、神経根や脊髄が圧迫されて、指先がしびれたり、腕が重だるかったり、腕が激しく痛んだりする。

 割合短期間のうちに症状が消える人が多いが、なかには症状がいつまでも消えないばかりか、手の甲の筋肉がやせてくることがある。

 注意したいのはこのケース。

 放っておくと症状がさらに悪化する恐れがある。

 手遅れにならないうちに整形外科を受診し、牽引療法と、首輪で固定する装具治療などを続けると、多くの場合、手術しないですむようだ。

 脳にいく血管が圧迫されると、めまいやフラフラ感が起こることもある。

 これも装具治療を続けるとたいていよくなるという。

 症状が出てきたからといって、いちいちビクビクせず、これは人間の老化現象で長生きしている証拠だとおおらかに受け止めよう。

 そのうえで適切な治療を──と、専門医は助言している。



憩室・憩室炎

 大腸の袋

 毎度お世話になっているのにこう言ってはナンだが、『広辞苑』の語釈には、どうも硬くてお歯に合わないところがちょくちょくある。

 例えば──、

「けいしつ[憩室](医)食道・胃腸・気管・膀胱・尿道など管腔性の臓器に見られる限局性の腔拡張」なんてのが、そうだ。

 同じ語を『新明解国語辞典』で引いてみると──、

「けいしつ[憩室] 消化器の一部が袋のように飛び出してふくれたもの」と、ずっと平易で明解だ。

 が、残念ながらこの説明、明解ではあっても正確ではない。

『広辞苑』がいうように消化器以外の臓器にできる憩室もあるからだ。

 しかし、最も普通にみられるのは、十二指腸、小腸、大腸の憩室だから、実際的な説明としてはこれでいいのだろう。

 大腸の内視鏡検査を受けた身内の者から、「ケイシツがあるって言われたけど、どういうこと?」と聞かれて、

「大腸の袋みたいなものだよ。心配いらないと思うよ」と答えた。

 半分無責任な私的意見はそれとして、本当はどうなのかと、

『広辞苑』にお伺いを立てたところ、冒頭の説明に出合った、というワケ。

 袋の炎症

 大腸に「憩室」があると言われた身内の者に「年をとれば誰にでもできるんだ。心配いらない」と答えたあとで、ちょっと心配になって、調べた。

『広辞苑』にも、

「十二指腸・結腸に多く、しばしば炎症(憩室炎)をおこす」とある。

 だが、専門書によると、十二指腸にできる憩室は、炎症を起こすことはまれで、治療の必要はない。

 小腸にできる先天性の憩室はメッケル憩室と呼ばれ、二歳までの幼児期に発見されることが多い。

 大腸の憩室には上行結腸にできる右側憩室と、下行結腸およびS状結腸にできる左側憩室があり、日本人には右側結腸が、欧米人には左側結腸が多くみられるという。

 大腸の憩室は、年をとるにつれてできやすく、同時にたくさんできやすい。

 憩室ができても普通は無症状だが、憩室内に腸の内容物がたまって炎症を起こしたり、穴があいたり、出血したりすることがある。

 なかには年中「憩室炎」を起こし、入退院を繰り返している人もある。

 憩室の発生や憩室炎を予防するには、便秘をしないのが一番。

 野菜をたくさん食べ、玄米、七分づき米、胚芽米などを常食し、リンゴをよく食べるのもよい。


急性冠症候群

 
 先ごろの田子ノ浦親方(元前頭久島海)の若過ぎる急死はなんとも痛ましく、おどろいた。

 死因は「虚血性心不全」と、相撲協会は発表した。

 突然、心臓の血管が詰まって、虚血(血液の欠乏)をきたし、心臓の働きが低下する病気だ。

 発症後2時間以内の突然死がとても多く、虚血性心臓突然死といわれる。

 待ったなしの怖い病気だ。

 これを防ぐには早く病変を見つけて、適切な治療を受けること。それしかない。

 それには心臓の血管が狭くなっているだけの状態なのか、狭くなったうえに詰まりかけている状態なのかを、早い段階で区別し、手を打たなければならない。

 そこで生まれたのが、「急性冠症候群」という新しい心臓病の考え方だ。

 心臓を冠状に取り巻いている3本の血管(冠動脈)の内壁に「プラーク」と呼ばれる病変が生じ、血管が狭くなっている病気が、虚血性心疾患だ。

 プラークには、破れやすいものと、そうではないものがある。

 破裂しにくい「安定プラーク」によって冠動脈が狭くなり血液が流れにくくなるのが、一般に多くみられる安定狭心症だ。

 一方、破れやすい「不安定プラーク」の破綻によって引き起こされるのが、急性冠症候群。

 冠動脈が完全に閉塞すると、急性心筋梗塞や虚血性突然死を招き、ほぼ閉塞しかけている状態だと不安定狭心症になる。

 突然死とそうではないケースは、詰まった血管の場所によって違ってくる。

 冠動脈は、心臓の左側の前面を下る左前下行枝、後ろのほうへ回る左回旋枝、右冠動脈とあるが、このうち左の2本の血管の幹に当たる左主幹部と、左前下行枝が最も重要だ。

 血液を大動脈に送り出す左心の広い範囲を養っている血管だからだ。

 左主幹部や左前下行枝の上部が詰まると、ほとんど突発的に死を招く。

 ほかの部位の梗塞も、血管が詰まってから時間がたつほど心筋の壊死(体の組織の部分的な死)の範囲が広がり、致命的な結末を迎えることもある。

 狭心症は、胸が締めつけられるように痛くなり、動悸、息切れがするが、5分~10分ぐらい安静にしていると治まる。

 心筋梗塞は、胸中の重苦しい強い痛みや、焼けつくような激しい痛みが30分以上続く。
 一刻も早く心臓病の専門医のいる病院へ搬送しなければいけない。

 病院では、多くの場合、体への負担の少ない心臓カテーテルによる血管内治療(冠動脈インターベンション=PCI)が行われる。

 PCIの方法にもいくつかあるが、いま最も普及しているのは、金網状のステント(筒)で血管を押し広げて補強する冠動脈内ステント留置術だ。


続・心臓を大切に!

 心臓と運動

「ドリンカーズ・リバー(酒飲みの肝臓)」、「ローファーズ・ハート(怠け者の心臓)」といわれる。

 意味は説明するまでもないだろう。

 肝臓に対するアルコールと、心臓に対する運動不足のリスクを指摘した警句だ。

 運動不足の生活を続けていると、心臓の筋肉を養う血管が細く狭くなる。

 反対に長期間激しい運動を続けていると、心臓が肥大する"スポーツ心臓"になることもわかっている。

 心臓の健康のために最適なのは、汗がじわっとにじむ程度の運動を習慣的に続けることだ。

 ここまでは常識だが、朝の寝床の中では、しばらく怠け者のようにぐずぐずしてから起きるのが、心臓を丈夫に長持ちさせるコツだそうだ。

 目が覚めるなり、すぐさまベッドを飛び出すのは、感心しない。

 目覚めた直後の急激な運動は、心臓に大きな負荷をかけることになるからだ。

 目が覚めたら五分ばかり寝床の中で、顔や頭、胸や腹などをマッサージしたり、思いっきり手足を伸ばしたり、曲げたりし、深呼吸をしてから起きるのがよい。
 ━━と、心臓病の専門医に教わった。

 健康心臓12カ条

 心臓の血管が狭くなったり詰まったりする虚血性心臓病(狭心症、心筋梗塞)のもとになるのは動脈硬化だ。

 動脈硬化の危険因子は、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満──かつては「死の四重奏」といわれた。

 メタボリック症候群のことだ。

 四つのうち一つ持っている人は、持っていない人の1・5~2倍、心臓病になりやすい。

 複合すると数倍になるという。

 これを防ぐ12カ条─。

 1 血圧と血中コレステロール値を正常に保つ。

 2 脂質の摂取は植物性のものを中心に(サフラー油などリノール酸系の油よりも、しそ油などαリノレン酸系の油を多く)。

 3 塩分は控えめに。

 4 甘い物を食べ過ぎない。

 5 栄養のバランスのよい食事を。

 6 腹七~八分目に。

 7 日常適度の運動を(努めて歩く)。

 8 十分な睡眠(一日7~8時間)。

 9 ストレスを上手に発散。

 10 適正飲酒を守る。

 11 禁煙または節煙。

 12 毎年1回は健康診断。

 ──こうした生活を心がけていれば、心臓のみならず全身の健康を守ることができる。


心臓を大切に!


 アスピリン

 天皇陛下の心臓手術が報じられたころ、親しい友人が狭心症の発作に襲われ、救急車で搬送されるということがあった。

 心細いこと限りなし......。

 狭心症の発作は、胸の真ん中辺りか、少し左寄り、ときには首やあごの辺りまでの一帯に、数十秒から十数分間、圧迫感や苦しさ、痛みを訴える人が多いようだ。

「左手がしびれる」という人や、背中や胃、歯、歯茎の痛みを訴える人もあり(放散痛という)、心臓とは気づかない人もあるようだ。

 同じ虚血性心疾患でも心筋梗塞のほうが痛みの程度が強く、長く続くが、痛みの性質は狭心症とよく似ている。

 どちらも心臓を動かす筋肉(心筋)への血流が一時的に途絶える(虚血)ために起こるからだ。

 友人は、病院で一泊し、ニトログリセリンの錠剤とアスピリンをもらって退院した。

 ニトロは、こんどまた発作が起きたときに用いる(舌下に含む)。

 アスピリンは、発作を予防するための薬で、1日おきに1錠のむようにいわれたという。

 アスピリンが、心臓病患者の再発予防に有効であるのは、1970年代から知られていたが、健康な人の心臓発作予防にも有効であることが、90年代半ばにハーバード大学の研究グループが確認し、報告した。

 心臓発作の原因は、心臓の血管(冠動脈)が部分的に狭くなって、血液の流れがとどこおったり(狭心症)、そこに血栓ができて血管が詰まったりする(心筋梗塞)ためだが、アスピリンは、血栓をつくる血小板の凝集を抑える。

 ところが、アスピリンには、血小板の凝集を促す逆の薬理作用もあることが、近年の研究でわかった。

 量が少ないばあいは血小板の凝集を抑えるが、量が多すぎると血小板が凝集しやすくなる。

「アスピリンジレンマ」と呼ばれるこの薬理作用に対応するには、アスピリンの服用量を必要最小限にしなければならない。

 1錠を1日おきにのむのが丁度いいそうだ。

 ハートケア情報

 心臓病が脳卒中を追い抜き、がんに次ぐ日本人の死因2位となったのは、1986年だった。

 心臓病にもいろいろあるが、死因の大半を占めるのは、心筋梗塞だ。

 生まれてから死ぬまで休みなく働きつづける心臓は、心筋という特別な筋肉でできている。

 この心筋に血液(酸素と栄養)を供給しているのが、心臓を冠状に取り巻いている3本の大きな血管=冠動脈だ。

 冠動脈の一部が狭くなって、血液が流れにくくなるのが、狭心症。

 狭くなったところに血栓が詰まって、血流がストップしてしまうのが、心筋梗塞だ。

 まとめて虚血性心疾患と呼ばれる。

 虚血とは、血液が虚する(不足する)という意味だ。

 長生きというのは、要するに心臓が長持ちしているということであり、

 冠動脈の中をサラサラ血液が、スムーズに流れている。

 健康の第一条件は、それだ。

「心臓の鼓動─それはあなたの健康リズム」

 ──とは、WHO(世界保健機関)の、ある年の世界保健デーのスローガンだった。

 心臓を長持ちさせるには、まずあなた自身の日ごろの心がけが大切である。

 その手助けをしてくれるのが、ハートケア情報委員会のホームページ。

 季節ごとの心臓病情報、ハート用語集、専門医の相談室などを提供している。

 小冊子「防げる、治せる、心臓病」<予防編><検査編><治療編>、「患者さん体験談」を無料配布している。

 詳しくは同委員会のHPを──。


漱石&文彦の猫


 猫と聞いて、すぐ頭に浮かぶのは、夏目漱石の「吾輩は猫である」だ。

「名前はまだ無い」と登場し、ついに名無しのまま、最後はいたずらで飲んだビールに酔っぱらって、水がめに落ちて昇天した。

 後にも先にもあれくらい有名な猫はいないだろう。

 もうひとつ、猫で思い出す挿話──。

 日本最初の国語辞典『言海』の「ねコ」の項の語釈は、

「─略─。人家ニ畜ウ小サキ獣、人ノ知ル所ナリ。温柔ニシテ慣レ易ク、又能ク鼠ヲ捕フレバ畜フ。然レドモ窃盗ノ性アリ。形、虎ニ似テ、二尺ニ足ラズ、性、睡リヲ好ミ、寒ヲ畏(おそ)ル。─略─」というものだった。

 これを後年(1924年)、漱石の弟子の芥川龍之介にからかわれて(そのことを気にしたのか)、『言海』を増補した『大言海』(1932~37年刊)からは、

「然レドモ窃盗ノ性アリ」というユーモラスな一行は削られた。ニャンとも惜しい!

 大槻文彦が16年にわたる心血を注いだ『言海』の刊行は1889~91(明治22~24)年、漱石が「猫」を書いたのは1905(明治38)年から翌年にかけてだ。

 机上には『言海』が載っていたはずだが、「ねコ」の項は見なかったのか?

 見ていたら、漱石流の鋭い諧謔が読めただろうに、これまたニャンとも惜しいことではある。


猫の問題

 トキソプラズマ症

 2月22日は「ニャン、ニャンニャン」の語呂合わせで「猫の日」。

 猫大好き人間の文化人たちが決めたそうだ。

 ニャンとも、のどか、太平楽でご同慶の至りだが、ちょっとヤボな水を差すと、猫には健康上いくつか問題がある。

 1は、トキソプラズマ症の感染源となり、妊婦が感染すると新生児にリンパ腺炎や水頭症などが現れることがある。

 2は、猫の毛やフケは、ぜんそくのアレルゲンになりやすい。

 3は、冬にはやる食中毒のカンピロバクター菌を猫が媒介することがある。

 急いでつけ加えるが、これらのトラブルは犬でも起こりうる。

 犬や猫と遊んだあとは、必ず手をよく洗おう。

 注・トキソプラズマ症=猫の糞便中や豚などの生肉にみられるオーシスト(トキソプラズマ原虫の虫卵)が、口から入って感染する。

 犬はトキソプラズマの中間宿主であるため、猫のように小腸に寄生してオーシストを排泄することはない。

 感染してもほとんど無症状のまま経過するが、発熱、発疹、リンパ節炎などの症状がみられることがある。

 恐ろしいのは、胎盤を介しての胎児への感染。

 妊娠中に感染すると、流産、死産を引き起こし、生後、脳水腫などの急性症状を示して死亡することがある。 

 バルトネラ症

 犬ではみられず、猫だけで起こるのが「猫ひっかき病」。

 猫に引っかかれたり、かまれたりしたあと、リンパ節が腫れる病気だ。

 悪寒や発熱などの全身症状がみられる例もあるが、重いものではない。

 猫によく接触する子どもがかかりやすい。

 狂犬病は現在ほとんど起きてないが、猫ひっかき病の発生は秋から冬にかけて多く、小流行の報告もある。

 猫ひっかき病は、1950年にフランスの医師が初めて報告した。

 92年、原因病原体が、猫の赤血球の中に寄生する「バルトネラ・ヘンセレ菌」という細菌とわかり、「バルトネラ症」とも呼ばれるようになった。

 猫が感染しても猫には何の症状も出ないが、2年以上も保菌している。

 ある調査では約7%が「保菌猫」だった。

 猫に引っかかれて数日後、その部分が発赤し、小さい水疱(すいほう)ができる。

 これは自然に治るが、それから2、3週間後にリンパ節が腫れて、発熱、頭痛が起こる。

 化膿することもある。

 脳炎になったり、肝臓が腫れたり、パリノー症候群という眼球の異常症状が起こることもあるが、死亡例はなく後遺症もない。

 予防法はまず猫ノミを駆除すること。

 猫の血を吸ったノミがフンをして菌を猫の体表にばらまき、猫の爪や口の中にくっつき、引っかき傷やかみ傷から人にうつる。

 引っかかれたりしたら傷口を消毒し、猫をなでたら手をよく洗おう。


くすり川柳

 くすりの適正使用協議会(大橋勇郎会長)が、薬を正しく使うことの大切さの普及・啓発を目的とし、全国の小学生以上を対象に募集した、第3回〈くすり川柳〉の入賞作品が決定、発表された。

 特別審査員として、各部門の最優秀賞、優秀賞を選定したコピーライターの中畑貴志氏は、応募作品の傾向として、

「テーマは、〈薬の正しい使い方〉、寄せられた句を見ると、周知度は比較的高いと思われます。とくに子供たちの表現を見ると、よく理解していることに驚かされました。

 もっとも、句を作るために、今回学んだ効果であるとも言えますから、〈薬の適正使用〉の促進は、一方的に情報を流すだけではなく、受け手がその情報を活用(表現)することで、より深い浸透につながると思われます」と話している。

 入賞作品と講評──。

 子供部門(応募155句)

 最優秀賞

「兄ちゃんの 薬を私に 飲ませるな」

 新潟県 平田千紘さん(9歳)

 中畑氏評=大人の句だと「家族でも」となるところです。何かにつけて先を行く、おにいちゃんの意識が潜んでいるところが可愛い作品です。

 優秀賞

「兄弟でも わけあいっこは しちゃだめよ」

 神奈川県 橋本真菜さん(6歳)

 中畑氏評=なんでも分け合って暮らす、良き生活感が出ています。いつもは仲良しで、わかちあう兄弟でも薬だけはいけませんね。

 一般部門(応募5251句)

 最優秀賞

「飲めば効く いえいえ正しく 飲めば効く」

 埼玉県 荒井達也さん(41歳)

 中畑氏評=「飲めば効く」という言葉を「いえいえ正しく」でつないだシンプルな構成が秀逸。「飲めば効く」という思い込みに警鐘を鳴らす句意にふさわしい姿です。

 優秀賞

「けちじゃない 自分の薬は 自分の分」

 神奈川県 谷川ミヤ子さん(73歳)

 中畑氏評=「いいじゃない、一つぐらい」と言われても、薬はあげないのがその人のため。「けち」というひと言が句の強度をうまく上げています。

 子供部門佳作賞

「夜はこれ ぼくはじいじの くすり番」

 岐阜県 大熊蒼平君(8歳)

「飲むときは ジュースで飲まず お水でね」

 大阪府 西林遥奈さん(14歳)

「飲み忘れ 昼にまとめちゃ ダメですよ」

 宮城県 須藤ゆりのさん(10歳)

 一般部門佳作賞

「家族でも 分かちあえない 処方薬」

 神奈川県 水上美智子さん(58歳)

「薬には もったいないは 禁止です」

 大阪府 三宅真由さん(23歳)

「善意でも ダメよ薬の おすそ分け」

 神奈川県 梅山すみ江さん(54歳)

 くすりの適正使用協議会は、「医薬品の本来の姿を提示して、医薬品の正しい用い方を促進し、患者さんの治療や、OQL(生命・生活の質)に貢献する」を理念とし、1989年、研究開発指向型製薬企業11社により設立された。現在会員数20社、個人会員2名。



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