暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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2012年1月

肺炎は怖い!(2)

 

高齢者の肺炎

 肺炎の症状は、熱が出る。ときには高熱が出て寒けが起こる。

 せきやたんが出る。胸が痛い。

 風邪と似ているところもあるが、胸が痛いという点が違う。

 だから熱が高くて、胸が痛いと、医師は肺炎を疑う。

 ところが、高齢者の肺炎では、そうした症状がなかなか出ない。

 なにかとてもだるいという体の倦怠(けんたい)感と、食欲がないというだけの症状で肺炎だった例が30%ぐらいある。

 そのため発見が遅れて、治療が後手になるのが、高齢者の肺炎を重くする理由の一つになっている。

 高齢者の肺炎の症状が出にくいのは、体の反応が弱いからだ。

 年をとると特に痛みの感覚が鈍くなる。

 肺炎だけではない。

 高齢者の心筋梗塞は痛みがないか、ごく弱いことが少なくない。無痛性心筋梗塞という。

 高齢者の肺炎は、高熱も出ない。

 せいぜい37度台の微熱のような熱が出る程度だ。

 要するに体の反応が鈍いので発病がはっきりしない。

 しかし、それは病気の進行がゆっくりだということではなくて、病気自体は進行している。

 お年寄りがぐったりしているようなときは、ぜひ早めにお医者さんへ──  
 

肺炎球菌

 高齢者がインフルエンザにかかると、肺炎を併発しやすい。

 それにはインフルエンザウイルス自体が肺に広がるウイルス性肺炎と、肺炎球菌などインフルエンザウイルスとは無関係の細菌が肺に広がる細菌性肺炎がある。

 後者のほうがずっと多い。

 インフルエンザ肺炎の合併細菌を調べたデータを見ると、断トツに多いのが肺炎球菌で53%を占める。

「インフルエンザが猛威をふるって、肺炎を併発して亡くなる人が激増するとき、その大半は肺炎球菌肺炎だといっていいでしょう」と、金沢実・埼玉医大呼吸器内科教授は話した。

 肺炎球菌は、健康な人でも40~60%は鼻やのどなどにもっていて、通常は無害だが、免疫力が弱くなると、口の中の細菌が肺に入って肺炎や気管支炎、中耳炎などを引き起こす。

 だから肺炎を防ぐには、風邪をひかないこと、夜寝ている間に口の中の細菌が肺に入らないようにすること、この二つが肝心だ。

 健康な人が起きているときは、喉頭から5センチ下のほうには、ほとんど菌がいないが、眠っている間は、起きているときとは呼吸のしかたが変わるので、気道に陰圧(内部の圧力が外部より低い状態)が生じ、口の中の菌が気管にふっと吸い込まれてしまう。

 それを防ぐには、寝る前に歯をみがきうがいをし、口の中を無菌状態にするのが第一のポイントだ。

 顔をあおむけて喉の奥まで洗ううがいを3回やれば口の中も、喉頭もほとんどきれいになる。

 

未知のウイルス

 一昨年大騒ぎになった新型インフルエンザが、通常の季節性インフルエンザと大きく異なるのは、ウイルス性肺炎が高齢者や妊婦などのハイリスク層だけでなく、基礎疾患のない人にも発症している点だ。

「これからは先入観を持たず、ウイルス性肺炎の合併も常に念頭において、インフルエンザの治療を行う必要があるでしょう」

 ──と、金澤實・埼玉医大教授(呼吸器内科)は注意を促している。

 一方、高齢者には新型インフルの感染者が少ないといわれた。

 それはスペイン風邪など20世紀前半に流行したウイルスの構造と同じだったからで、1918年以前に生まれた90歳以上の人は、抗体を持っていることがわかった。

 これを裏返すと高齢者でも90歳以下の人は安心できない。

 インフルウイルスは「新型」である限り人間にとって「未知のウイルス」なのだ。

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肺炎は怖い!(1)

 

肺と肺炎

 インフルエンザや風邪で最も怖いのは肺炎を併発することだ。

 インフルエンザによる死亡例の90%以上は肺炎死だ。

 特に気をつけなければいけないのは、高齢者と幼児。

 肺炎になっても自覚症状が乏しく、あっという間に重症になる。

 熱が高くならない、セキやタンもあまり出ない、呼吸が苦しいとも訴えないが、顔だけ赤い。

 ぐったりしてしまう。食べない─といった例が多く、いきなり意識障害が起こることもあるという。

 そうなる前に早く気づいて受診しよう。

「肺炎は老人に安らかな死をもたらす最後の友だ」と言ったのは、近代内科学の父、ウイリアム・オスラーだ。

 ま、いずれはそれを望むとしても、なるべくならずーっと先延ばしにしたいものだ。

 肺の最も大切な役目は、空気の中の酸素を血液中に取り入れ、血液中の炭酸ガスを吐き出すことだが、吸い込む空気の中には病原菌がいっぱい混じっている。

 そこへもってきて肺には、全身から心臓に戻った、汚れた(栄養豊富な)血液が、そのまま入ってくる。

 病原菌の繁殖にはもってこいの環境だ。

 繁殖し始めた病原菌を追い出そうと、白血球など体の防衛軍が集まってきて、戦争(炎症)が起こるのが、肺炎だ。

 エックス線写真にはそこは真っ白に映る。

 が、ごく初期の肺炎はエックス線にはまだ影が出ない。

 聴診器のほうがよくわかると、練達の内科医は言う。

「慣れた医者は、聴診器で肺の中の小さな特異な雑音をキャッチし、素早く病変を見つけます」

 

隠れ1位

 抗生物質ができて、肺炎で亡くなる人はずいぶん減った。

 それでも肺炎は、がん、心臓病、脳卒中に次ぐ日本人の死因4位であり、高齢者の場合、病理解剖で死亡の直接の原因を調べると、肺炎が最も多い。

 例えば脳卒中で倒れて入院治療中に亡くなったが、実は肺炎を併発し、そのために死亡したといった例がとても多く、高齢者の死因の隠れ1位といわれる。

 肺炎は依然、きわめて危険な病気なのだ。

 肺炎を防ぐには、どうしたらいいか。

 まず第一に風邪をひかないこと。

 常識的なことだが、なるべく人ごみに出ないようにする。

 外出のさいは寒くない服装をし、マスクをする。

 帰宅したらうがいをし、手を洗う。

 栄養のバランスのいい食事をして、睡眠を十分とる。

 もし風邪をひいても全身の状態がよければ、普通の風邪ですんで肺炎にはならない。

 なぜか?

 肺炎のような感染症は、ホスト・パラサイト・リレーションズ(宿主─寄生体関係)といって、病人の体そのもの(宿主)と、それに寄生する病原体との力関係で、重くもなるし、軽くもなるからだ。

 高齢者の肺炎の死亡率が高いのは、寄生体(ウイルスや細菌=パラサイト)の側に問題があるのではなく、その人の体(宿主=ホスト)のほうの要因による。

 肺炎を乗り切った人と、死亡した人を調べた臨床報告「老年者の肺炎100例」を見ると、亡くなった人たちには、

 1 脱水症状のある人

 2 腎臓や肝臓の機能が低下した人

 3 意識障害(意識がもうろうとなる)が出た人がとても多い。

 だから肺炎だけを治療の目標にするのではなく、全身状態をよくしなければ肺炎は治らない。

 肺炎を防ぎ・治すためには、要するに老化現象が進まないように日ごろから規則正しい活動的な生活をすること─と、老年学の大家は話した。

 普段から健康に気を配って体調を整えておくことが大切だ。

 もう一つ、肺の健康のために大切なことは深呼吸だ。

 普通の呼吸では、肺が完全にはふくらまない。深呼吸で肺を十分ふくらませると気管がリラックスし、肺がまんべんなく活動する。

 朝晩、日中、思いつくたびに深呼吸をしよう。

 ある呼吸器内科の専門医は、

「おやつ代わりに深呼吸を─」と話した。

インフルVSお茶うがい

 インフルエンザの本格的流行が始まっている。  100種類とも200種類ともいわれる風邪のウイルス(インフルエンザウイルスもその一種)の大半は、寒く、冷たく、乾いた環境で活動が活発になり、感染力が強くなる。

 一方、その寒冷刺激は、人間の免疫力を低下させるようにも作用する。

 悪条件が重なり、冬は風邪&インフルがはやる。

 予防の基本は、マスク、手洗い、うがい。

 風邪のウイルスは、患者のくしゃみやせきで空中に飛び、空気感染する。

 マスクは、ウイルスをばらまかないためにも、ウイルスが鼻や口から入るのを防ぐのにも役立つ。

 空中を浮遊したウイルスはそこら中の物にくっつき、それに触った手から人にうつる。

 風邪の季節は特にこまめに手を洗おう。

 そして、うがい。

 イチ押しは「お茶うがい」だ。

 風邪、インフルエンザの予防に、緑茶や紅茶でやるうがいが非常に効果的なことを、20年も前に証明した人は島村忠勝・昭和大学医学部教授(細菌学)だった。

 緑茶や紅茶の渋みのもとカテキン類のエピガロカテキンガレートという物質が、生体の細胞に取りつくウイルスの働きを妨げる。

 実験では、普段飲んでいる緑茶や紅茶を300分の1の濃度に薄めた液でも、インフルエンザウイルスの感染力を100%抑えた。

 島村教授の研究報告を参考にした、茶どころ静岡県のある町の小学校では、毎日、児童にお茶でうがいをさせた。

「周辺の各地では集団風邪で学校・学級閉鎖が相次いだが、当校は無事でした」という校長先生からの毛筆書きの礼状を見せてもらったことがある。

 生ぬるい緑茶か紅茶で、のどの奥までよく洗うように頭を大きく後ろにそらし、口の中だけでなく、少し鼻にも入るようにガラガラやるとよい。

 冬の喫茶店では、レモンティーがお勧め。口の中に長く含むようにして飲めばよい。

 うがいには及ばないが、それなりに効果的。ただしミルクティーは、牛乳のたんぱく質のせいでカテキンの作用が落ちる。

酔いざめ用心!

 おでん酒貧乏ゆすりやめ給へ 倉橋羊村

 俳句歳時記のページを開いて、思わずふき出した。

 わかる、わかる。吹きっさらしの屋台は寒いからなぁ。

 でも熱燗(かん)のコップ酒をぐいっとやると、たちまち体があったまる。

 酒を飲むと体が温かくなるのは、アルコールが中枢神経に作用し、皮膚の血管が広がり、温かい血液が体の表面を流れるからだ。

 言い換えると、体内で発生した熱が皮膚から体の外へ発散しているわけだ。

 温かく感じても、体は冷えていっている。飲んでいるときはポッポしていても、酒が抜けると寒気の直撃を受ける。酔いざめにゾクッときて風邪をひくことがあるのは、そのせいだ。

 この風邪は、ほかの人にはうつらない「寒冒」だ。

 細菌やウイルスが原因の「感冒」や、感染力の強いインフルエンザウイルスによる「流行性感冒」とは違う。

 なお、アルコールは体の中でほとんど燃焼し、最後は水と炭酸ガスになって体の外に出る。つまり体の栄養にはならない。

 おでんを食べ、焼き鳥を食べよう。

肝臓に脂肪!

 

ジュースで脂肪肝!?

 酒もすき餅もすきなり今朝の春 高浜虚子

 ─というわけで、正月の休み明けに会う人の顔が、ふっくら丸くなったように見えるのは、食べ過ぎ+飲み過ぎ+運動不足のせいだ。

「正月太り」ぐらいならよいが、脂肪肝ともなると、ちと厄介だ。

 脂肪肝とは、肝臓に余分な脂肪がたまった状態。

 健康な肝臓には通常3~5%の脂質が含まれている。

 それが30%以上になると、脂肪肝と呼ばれる。

 たまる脂肪は、大部分が中性脂肪で、肥満・アルコール・糖尿病などが原因といわれる。

 しかし、そのどれとも関係のない脂肪肝もかなり多い。

 原因は糖分の取り過ぎと低栄養だと、肝臓の専門医、栗原毅・慶応大教授/栗原クリニック院長は指摘する。

「野菜を食べるかわりに100%果汁飲料を飲んでいる、ジュースを水がわりに飲んでいる、ケーキばかり食べているというような人には、標準体重以下でも脂肪肝がけっこう多いのです。

 それから、果物にも注意が必要です。

 果物は野菜と混同されがちで、実際、ビタミンCや食物繊維が豊富ですが、野菜と同一視してはいけない。

 果糖が非常に多く含まれていて、果糖は砂糖よりも脂肪に変化しやすいからです」

 いま、人間ドックなどの超音波検査では約30%が「脂肪肝」と診断される。

 ある施設のデータを見ると、男性では3人に1人、女性では5人に1人だ。

 原因はアルコール性=23%、肥満性=222.5%、糖尿病性=9.5%。

 残りの45%が原因不明とされるが、糖分の取り過ぎ、低栄養、不規則な食習慣、運動不足などがもとになっていることが多いようだ。

 ジュースの飲み過ぎ、ケーキの食べ過ぎ、そして果物にも要注意だ。

 では、低栄養がなぜ脂肪肝を招くのか? 

「低栄養で脂肪肝が起こるのは、食事から脂肪分を摂取できないと、エネルギー不足を補うために体内の脂肪が肝臓に集まるのです。

 そして、肝臓の外に脂肪を運び出すのにはたんぱく質が必要ですが、たんぱく質の摂取が足りないと脂肪を処理できない。

 この二重の作用によって、低栄養は脂肪肝の原因になりやすいのです」と、栗原毅先生。

 実際、拒食や不自然なダイエットの人のほとんどが、脂肪肝を併発しているという。

「間食と夜食、特に寝る前の3時間は実に吸収がよくて太りやすい。

 また、朝食抜きも太りやすい。空腹だと栄養の吸収率がぐんと高くなるからです」
 

女性の脂肪肝

 脂肪肝には「原因不明」とされるものが少なくない。特に女性では、50歳を過ぎるとその比率が高くなり、60代のやせている女性の脂肪肝がけっこう多い。

 その原因を推測すると、どんなことが考えられるか、栗原毅・慶応大教授(栗原クリニック院長=東京・日本橋)の解説はこうだ。

「女性ホルモンの影響があるかもしれません。

 女性ホルモンのエストロゲンには、脂肪肝に対する『抗脂肪化作用』があるのですが、閉経期になってエストロゲンの分泌が減ってくると、脂肪肝になりやすくなるということが考えられます。

 また、中性脂肪を分解するリポプロティンリパーゼ(LPL)という物質が、加齢とともに減ってくることもわかっています。

 さらに、肝臓の中の細い血管の血液の流れが悪くなると、脂肪肝ができやすくなるといわれています。

 こういったことが複合的に作用して、中高年の女性に原因不明の脂肪肝が増えるのではないでしょうか」

 なお、長期にわたる大量飲酒が脂肪肝に直結するのは常識だが、適量の飲酒はむしろよい働きをするそうだ。

 清酒換算で1日1合程度のアルコールなら善玉コレステロールのHDLを増やし、脂肪肝の予防にもつながるのではないかという。

 もちろん、飲み過ぎたら逆効果だ。
 

脂肪肝の危険性

 脂肪肝は軽症の間は自覚症状はほとんどない。中等度以上になると、体がだるく、気力が薄れ、食欲が減退する。

 肝臓が腫れるので右上腹部が重苦しく、不快感が生じる。

 一般にアルコール性の脂肪肝は酒を飲み続けると進行するが、しかし、酒を止めて食事療法をすれば1~2カ月で治る。

 肥満性や糖尿病性の脂肪肝は、たぶん肝硬変には移行しないといわれている。

 では、あまり心配はしなくてもいいのか?

 とんでもない! と、肝臓病の専門医、栗原毅先生は、首を振った。

「肥満性の脂肪肝というのは、肝臓だけに脂肪がつくわけではなく、全身につくのです。

 皮下脂肪だけならまだしも、血管にも、内臓にも脂肪がつき、当然、動脈硬化が促進されます。

 そして心筋梗塞、脳梗塞、あるいは糖尿病などさまざまな生活習慣病の発生母体をつくります。

 もし20代、30代から脂肪肝になるようだったら、その人の寿命はおそらく短いでしょうね。

 それが一番の問題だと思います」

 脂肪肝自体は比較的軽い病気だが、その状態を放置すると、アルコール性では肝硬変になる可能性がある。

 肥満性などは生活習慣病を増悪させることになる。

 脂肪肝の段階できちんと治すことが大切なのだ。

肝臓をだいじに!

 

沈黙の臓器

 忘年会から新年会、さらには寒さしのぎの一杯......冬は肝臓の受難の季節だ。

 肝臓は、人体の中の化学工場兼貯蔵用倉庫のようなもので、約2500億個の肝細胞が、500種類以上の化学処理の作業をしている。

 食物の栄養素が体の成分に変わるのも、食物の中に含まれている有毒物質が解毒・排せつされるのも、肝臓の働きによる。

 胃や腸で消化吸収された食物の成分は、門脈という血管を通って肝臓に集まる。

 そして糖質はブドウ糖に分解され、たんぱく質はアミノ酸に分解され、脂肪からはコレステロールが作られる。

 一方、化学処理によって不要のもの、毒に変わったもの、外から入ってきた毒(薬や食品添加物、アルコールなどがつくる毒)も害の少ない形に変えられ、排せつされやすくなる。このほか多くのさまざまな仕事を、肝臓は一瞬の休みもなしに黙々と続けている。

 肝臓の能力にはかなり余裕があり、仮に異常が生じても、よほど悪くならない限り、その異常は症状となって現れない。で、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれる。
 

酒と肝臓

 肝臓の能力にはかなり余裕がある。

 そのうえ非常に我慢強い臓器なので、ちっとやそっとでは弱音を吐かず、ぐちもこぼさず、黙々と働き続ける。

 だが、その働き者の辛抱にも限度はある。

 一定量以上の酒を長期間飲んでいると、肝臓に脂肪がたまってくる。脂肪肝だ。

 脂肪肝になっても多少だるいくらいで、それほど強い自覚症状は出ないが、血液中の酵素の量を測定する肝機能検査で、γ(ガンマ)-GTPという酵素の値が高くなる。

 この酵素は、飲酒のマーカーのようなもので、正常値は60以下だが、100を超える。

 それでも飲み続けていると、アルコール性脂肪性肝炎(ASH=アッシュ)から肝硬変へと進行する。

 どれくらい飲めば肝硬変になるか?

 個人差や性差はあるが、男性の大半は、エタノール(純粋アルコール)換算で1トン飲んだときだという。

 日本酒の一升瓶だと三千七百三本になる計算らしい。もちろん脂肪肝の段階で節酒すれば、そうはならない。

 酒が原因の肝臓病は、酒を止めればきっと治ると、肝臓病の専門医は言っている。

血圧の諸問題(2)

 朝の大波

 高血圧をきちんとコントロールしないと、動脈硬化が進み、脳卒中や心臓病を引き起こす。

 それはよくわかっていながら、目標値まで血圧を下げることができない人がとても多い。

 大きな理由は、高血圧は無症状だからだろう。

 痛くもかゆくもないし、めしも酒もうまいから、つい食べ過ぎたり飲み過ぎたりする。

 医師の指示どおり薬を飲まなかったりもする。

 こうした人たちの多くにみられるのが、朝の血圧が異常に高くなる「早朝高血圧」だ。

 朝、目が覚める前後に急上昇する(モーニングサージ=朝の大波)タイプと、夜も血圧が下がらないままなだらかに上昇するタイプ(持続型)がある。

 どちらも日中、病院で血圧を測ってもらうころには、安定しているので、医師も見過ごしてしまいがちだ。

 高血圧と診断されていない人たちの中にも、早朝高血圧の人が多いし、降圧薬を服用している人の50%以上が早朝高血圧だったという研究報告もある。

「家庭血圧の測定が大切。自分で血圧を測って早朝高血圧の早期発見を─」と専門医は勧めている。


 酒と血圧

 寒い日は血圧が上がる。酒を飲み過ぎると、さらに上がる。

 で、1月の朝は、血圧関係の事故が起こりやすい。

 飲み過ぎた翌朝、血圧が上がる理由は、こうだ。

 体にアルコールが入ると血管が広がって血圧が下がる。

 酒の量が多いとその下降幅がさらに大きくなる。

 朝になると、自律神経の働きが活動型の交感神経優位に切り替わり、血管が収縮し血圧が上がる。

 夜の血圧の下降幅が大きいほど、夜と朝の血圧の落差の大きい「早朝高血圧」が生じる。

 そうした悪影響をもたらさないアルコールの適量は、一日30ミリリットル以内(女性はほぼこの半分)。

 ビールなら中びん1本、日本酒は1合、ウイスキーはやや濃い水割り1杯、焼酎は64お湯割り2杯、ワインだったらグラス2杯といったところ。

「酒&血圧日記」に飲んだ量と血圧を記録していると、飲み過ぎた翌朝には血圧がてきめんに上がることに気づき、酒と血圧の因果関係がよくわかる。

 怖くなって酒を控えるようにしたら1週間ほどで血圧が下がったといった実例が少なくないそうだ。

 自己管理は最良のクスリの一つだ。

 ──それについて、ぜひ、お勧めしたいのは、いま発売中の健康雑誌『壮快』3月号の「高血圧」特集だ。

 小林弘幸・順天堂大学医学部教授、安保徹・新潟大学大学院教授、石原結實・イシハラクリニック院長など20人の名医が、高血圧を自力で治す極意を具体的に解説して、非常に説得力がある。

 まずは書店で手にとって立ち読みしてみてください。<
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 血圧の誤解

「上は160だが、下が70だから、まぁまぁじゃないか」と、自分の血圧について、同年の(つまり老齢の)友人が言った。

 そうした誤解をもつ人はけっこう多いようだ。

 上すなわち最大(または最高)血圧は、心臓が収縮して血液を動脈に送り出したときの動脈壁にかかる圧力で、収縮期血圧という。

 下すなわち最小(最低)血圧は、心臓が拡張して血液が心臓に戻ってくるときの動脈壁にかかる圧力で、拡張期血圧という。

 至適血圧は、上が120mmHg未満、下が80mmHg未満だが、動脈硬化が進むと当然、血圧は高くなる。

 高齢者で140─90未満だったら上々だ。では、上が高くても下が低かったら大丈夫なのか? そんなことはない。

 血圧の「上(最大)」と「下(最小)」の差を「脈圧」、脈圧の3分の1の数値プラス下の数値を「平均血圧」といい、血管の状態を判定する指標とされる。

 脈圧は、心臓に近い太い血管の硬化度を示し、正常範囲は40~60。

 平均血圧は、末梢の細い血管の硬化度を示し、理想は90未満だ。

 上が160─下が70だと脈圧は90、その3分の1(30)を70に加えると、平均血圧は100になる。

 ちょっとヤバい状態と言わねばならない。



 百歳の血圧

 心臓に近い太い血管で動脈硬化が進むと「脈圧」の数値が大きくなり、末梢の細い血管で動脈硬化が進むと「平均血圧」が高くなる。

 高齢者の場合、特に脈圧が大きくなるのが普通だ。

 年をとると上は高くなるが、下はそれほどでもなく、むしろ低くなることが多いからだ。

 ところが、東京都老人総合研究所の研究調査によると、センテナリアン(百歳老人)の場合、上は年齢相応に高いが、下は低くなく、脈圧はあまり大きくない人が多いという。

 太い血管の動脈硬化の進行が遅いことを示しているわけだ。

 また、下の血圧の高い百歳老人ほど知能指数が高く、痴呆になる確率が低いという。

「上は高いが、下は低いからまあまあ」とは言えないわけだ。

 毎度の口上だが、動脈硬化の進行を抑えるには、適切な食生活と適度の運動。

 肉も魚も卵も牛乳もバランスよく食べて、よく歩くようにしよう。

血圧の諸問題(1)

 低血圧問題

 冬は、高血圧の人にとっては危険な季節だ。

 寒冷刺激で血管が収縮すると、高い血圧がさらに高くなるからだ。

 一方、低血圧の人は、低過ぎた血圧が上昇するので、むしろ体調がよくなる。

 高血圧(最大血圧140mmHg以上─最小血圧90mmHg以上)と、低血圧(最大血圧100mmHg以下)、どちらが問題かといえば、高血圧のほうだ。

 医学的に低血圧が問題になるのは、血圧が低いためにさまざまな症状に悩まされたり、低血圧による異常がみられる場合だ。

 これといった症状がなく、ただ血圧が慢性的に低いだけなら、とりたてて問題にしなくてもよい。

 だが、程度の差はあるものの、なんらかの自覚症状につきまとわれている人が少なくない。

 最も苦痛に感じる症状は、めまい、易疲労(疲れやすい)、頭痛、動悸(どうき)、食欲不振、肩こり、不眠など。

 寝起きが悪い、耳鳴り、胃もたれ、便秘を訴える人も多く、

「健康状態を気にし過ぎる」のも、低血圧の人の特徴だと専門医は指摘している。

 体に気をつけるのは大切なことだが、度が過ぎるとかえってマイナスに働くことがある。

 体のことは、体にまかせるぐらいの楽天的な気分を、低血圧の人にはお勧めしたい。

 実際、長寿者の多くは低血圧であることが知られている。

 わが故郷、屋久島・永田には「がんない千年」なる俚言がある。

「がんない」とは、弱弱しいといった意味。

「贋萎え」の訛語だろうか?

 年中、あっちが痛い、こっちが痛いとぶつぶつこぼしていても、けっこう長生きすることを言い当てた名言?だとおもう。

 のんびりいくべえ!

 高血圧問題

 低血圧の人は、体の不調をかこつことが多いが、高血圧の人は、一般に症状の出ないうちは元気旺盛で、活動的な人が多い。

 最大血圧が200mmHg前後にも上ると、頭痛、肩こり、めまいなどの症状が出てくる人もあるが、160やそこらでは何の症状もないのが普通だから、つい油断してしまう。それが問題だ。

 元気旺盛な活動家タイプなので、いきおい食事なども早食い大食型になりがちで、肥満を招いてしまう。

 肥満すると血圧はさらに上がり、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病、痛風などの誘因になる。

 高血圧の人はこうした病気によくよく気をつけなければいけない。

 半面、高血圧の人は、感染症やがんには強い傾向がみられるという。

 例えば結核にかかりにくく、かかっても比較的よい経過をたどることは、よく知られている事実だ。

 がんに強いというのは──、

、1 高血圧は動脈硬化を促進する。

 2 動脈硬化の進んだ人は、脳卒中や心臓病になりやすく、

 3 がんになるまで長生きしにくい。

   故に、高血圧はがんに強い──ということのようだ。

   いささか科学的根拠に乏しい、あまりうれしくもない三段論法か。


冬の血圧

「年末以来、血圧が高く、頭痛に悩まされています。

 これまでは上が100前後で、"低い"といわれていたのだけど(10月の人間ドックでは107―68)、

 今は朝が150―90、昼で140―80ぐらいです。

 血圧ってこんなに急に上がるものですか?

 また、人間ドックの頚部の超音波検査で、頚動脈内プラークが認められ、要精密検査とのことで来週受診の予定です」

 身内の者(67歳男性)からのEメール賀状の一部だが、それへの返信をここに流用させてもらいます。

「血圧は、冬になれば誰でも20や30は上がる(寒冷刺激で血管が収縮するため)、

 1日のうちでも『日内変動』といって、やはりそれくらいは上下する。

 朝は高く、昼から夕方は低く、歩いた後や入浴後も下がる。

 150─90は、やや高いが、冬の朝の血圧としてはまず心配無用だと思う。

 頭痛は、通常、高血圧とはほとんど関係ないはずだ。

 どんな頭痛なのか、もう少し詳しく教えてくれ。

 頚動脈内プラークは、年をとれば、みな多少は見られるものだが、近年、脳梗塞との関係が指摘されるようになり、要注意とされている。

 程度によっては、頚動脈ステント留置術などの治療を受けたほうがよいかもしれないな。

 きちんと診てもらってくれよ。

 とにかく、からだ、だいじに、だいじにな。たのむよ。

 注・プラークとは、コレステロールなどの脂質をどっさり含むアテローム(粥腫=じゅくしゅ=おかゆのようなどろどろした固まり)が、血管の壁に入り込んだもの。

 プラークを覆う被膜が薄くて破れやすい状態を「不安定プラーク」といい、冠動脈のそれが破裂すると、そこにたちまち血栓ができ、心筋梗塞が起こる。

 破裂しにくい「安定プラーク」が冠動脈にできて狭くなり、血液が流れにくくなる病気が、一般的な安定狭心症である。


リウマチの最新治療

 抗リウマチ薬


 リウマチの話を続ける─。

 冬は、病気をもつ人には特につらい。

 関節リウマチはその最たる病気の一つだ。寒冷刺激が実につらい。

 そんな人が、全国に少なくとも70万人はいる。

 関節リウマチは、治療しなければ、痛みは激しくなるばかりで、関節が壊れ、寝たきりになることさえある。

「1960年代、関節リウマチの本格的な薬はなにもなかった。

 80年代、痛みのコントロールはかなりできるようになった。

 2000年代、関節破壊の進行をかなり止められるようになった。

 リウマチ治療は確実に進歩している。

 2010年代は治る病気になるかもしれない」

 ──と、山中寿・東京女子医大教授(膠原病リウマチ痛風センター所長)。

 関節リウマチの治療には、

 1 非ステロイド系抗炎症薬。

 2 ステロイド薬。

 3 抗リウマチ薬──と、ある。

 1は痛み止め。

 2は炎症を抑える。

 3は関節破壊の進行を止める。

 治療の中心は3だ。

 いったん破壊された関節は元に戻せない。

 関節リウマチと診断されたら早い時期に抗リウマチ薬による治療を開始すべきだ。

 ただ、抗リウマチ薬は効果が現れるまで時間がかかることがある。

 必要に応じて非ステロイド系抗炎症薬やステロイド薬が用いられる。

 抗リウマチ薬のなかで世界的に広く用いられているのが、メトトレキサート(製品名リウマトレックス)という免疫抑制剤だ。

「切れ味がよい」といわれるよく効く薬だが、これだけでは痛みや腫れなどの炎症症状を抑えられない人がいる。

 メトトレキサートを3カ月以上使用してもじゅうぶんな効果が得られない人に対しては、新タイプの抗リウマチ薬、生物学的製剤が用いられる。


 抗TNF療法


 生物学的製剤は、炎症や関節破壊が起こるしくみを免疫学的に解明し、生物によってつくられるたんぱく質などを利用して開発された。

 リウマチの炎症に関係しているサイトカイン(生理活性物質)の働きを抑える薬や、免疫をコントロールしているT細胞の働きを抑える薬だ。

 サイトカインは多種多様で、さまざまなはたらきをするが、その一つにTNF(腫瘍壊死因子)と呼ばれるものがある。

 TNFは、腫瘍を殺すはたらきへの関与や、体の免疫機能に広くかかわる重要な物質だが、炎症反応などを引き起こす原因にもなる。

 近年の研究で、関節リウマチの人は、関節内にTNFという生理活性物質が異常に増えて、関節の炎症や痛み・腫れ・骨や軟骨などの関節破壊を引き起こすことが明らかにされた。

 このTNFそれ自体をターゲットとする関節リウマチの最新治療が抗TNF療法だ。

 これまでの薬物治療で効果のみられなかった人でも、投与3カ月で約65%に症状の改善が認められた。

 痛みを伴う関節や、腫れている関節の数が減り、体の動きが楽になり、関節破壊の進行を止めることが確かめられている。

 抗TNF療法に使われるサイトカイン阻害薬には、インフリキシマブ(レミケード)、エタネルセプト(エンブレム)、トシリズマブ(アクテムラ)、アダリムマブ(ヒュミラ)、ゴリムマブ(シンボニー)がある。

 T細胞の働きを抑える薬にはアバタセプト(オレンシア)がある。

 レミケードは、点滴で、初回投与後、2週目、6週目と、それ以後は8週間隔で投与する。

 エンブレムは、皮下注射で週に1~2回。

 アクテムラは、点滴で4週に1回。

 ヒュミラは、皮下注射で2週に1回。

 シンボニーは、皮下注射で4週に1回。

 オレンシアは、点滴で初回投与後、2週目、4週目、それ以後は4週に1回。

 レミケードは、メトトレキサートとの併用が「必須」とされているが、他の薬はそうではない。

 これらの生物学的製剤によってリウマチ治療は画期的に変わったといわれる。

 半面、肺炎などの感染症にかかりやすくなる副作用がある。

 免疫機能にかかわる物質なので、体の免疫力が低下するためだ。

 下のような症状が現れたら、次の診察日を待たず、すぐに主治医、看護師、薬剤師に連絡を─。

 ●風邪っぽい(熱っぽい、熱がある。せき、たん。息切れ、息苦しさ。のどの痛み)。

 ●発疹が出た。

 ●疲れやすく、だるさを感じる。

 ●皮膚にかゆみがある。

 ●口内炎がよくできる。

 ●皮膚や白目が黄色くなった。

「よく効く薬は、ときに怖い」と頭に刻みつけよう


 リウマチの手術療法 


 リウマチで関節が破壊されると、関節が痛み、動きが制限され、安定性を失って、日常性に支障をきたす。

 関節が壊れたリウマチは、薬では治せない。

 だからといって、決して悲観的になることはない。

 簡便で、体への負担が少ない手術療法が確立している。

 主な手術法は──、

 1 関節内の滑膜(関節を包む袋の内側にある膜)を、関節鏡で取り去る滑膜切除術。

 これで上がらなかった肩がスムーズに上がるようになる。

 2 壊れた関節面を人工物で置き換える人工関節手術。

 膝関節や股関節の人工関節は、ほとんど半永久的にもつほど安定した治療成績が得られている。

 車椅子の人が歩けるようになる。

 しかし、腕は無理して使うので、関節の壊れ方がひどく、肘や手首、手指のいい手術はできなかった。

 最近は形や材質が進歩し、肘関節や手指の関節の人工関節手術でもよい成績が得られるようになってきた。

 このほか、壊れた骨の表面を削って滑らかにする関節形成術、壊れた関節を固定する関節固定術があり、部位によって使い分ける。

 最後に、越智隆弘・大阪大学名誉教授(前日本リウマチ学会理事長)があげる「リウマチが悪化する三つのポイント」。

 1 睡眠不足、過労。

 2 大きな精神的ショック(身内の不幸など)。

 3 酒の深酔い。

 ほとんど治りかけていた人が酒を飲み過ぎて、たちまちぶり返した例が多くみられる。

「リウマチの人は、睡眠をじゅうぶんとってください。あまりイライラせず、お酒の好きなかたでもあまり飲まないようにしてください」と、越智先生は話した



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