暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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2011年11月

糖質制限食

 血糖値の高い状態が長く続いていると、細い血管が詰まって、目(糖尿病網膜症)や腎臓(糖尿病性腎症)が侵され、手足の指先が腐り(糖尿病性えそ)、さらに太い血管の動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞にもなりやすい。

 しかし、血糖値が常に正常にコントロールされていれば、そうした最悪の結末を防ぐことができる。

 血糖値のコントロールは、「一に食事、二に運動、三、四がなくて五に薬」といわれる。

 食事療法の基本は、米飯・めん類・パン・イモ類などの炭水化物(糖質)を極力減らす「糖質制限食」だ。

「血糖値を上昇させるのは糖質です。糖質を摂取しなければ血糖値は上昇せず、糖尿病は必ず改善します」と、糖尿病の治療でめざましい成績を上げている名医、京都・高尾病院理事長の江部康二先生は、力強く言い切っていられる。

 その理論的根拠は──、

 1、血糖値を上昇させるのは糖質である。

 2、糖質を摂取しなければ血糖値は上昇しない。

 3、糖質制限食を実践すれば血糖値は上昇せず糖尿病は改善する。

 ──と、単純明快、反論の余地のない生理学的事実である。

 実際にはどんなものをどのように食べたらよいか。

 先生が勧める「糖質制限食10カ条」はこうだ。

 1 魚貝・肉・豆腐・納豆・チーズなどタンパク質や脂質が主成分の食品はしっかり食べてよい。

 2 糖質特に白パン・白米・麺類及び菓子・白砂糖など精製糖質の摂取は極力控える。

 3 主食を摂るときは未精製の穀物が好ましい(玄米、全粒粉のパンなど)。

 4 飲料は牛乳・果汁は飲まず、成分未調整豆乳はOK。水、番茶、麦茶、ほうじ茶もOK。

 5 糖質含有量の少ない野菜・海草・茸類は適量OK。果物は少量にとどめる。

 6 オリーブオイルや魚油(EPA、DHA)は積極的に摂り、リノール酸を減らす。

 7 マヨネーズ(砂糖無しのもの)やバターもOK。

 8 お酒は蒸留酒(焼酎、ウィスキーなど)はOK、醸造酒(ビール、日本酒、など)は控える。

 9 間食やおつまみはチーズ類やナッツ類を中心に適量摂る。菓子類、ドライフルーツは不可。

 10 できる限り化学合成添加物の入っていない安全な食品を選ぶ。 

 「糖質制限食」には三つのパターンがある。

 1 スーパー糖質制限食=三食とも主食なし。効果は抜群で早く、一番のお薦め。

 2 スタンダード糖質制限食=朝と夕は主食抜き。

 3 プチ糖質制限食=夕だけ主食抜き。嗜好的にどうしてもデンプンが大好きな人に。

 *抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類などの炭水化物。

 「ぼくら」シリーズの人気作家、宗田理さんも、それを実践している一人。

  第12回ハートの日の座談会で、

「糖質制限食を試したら、不思議なことに見事に血糖値が下がった」と話したら、

「宗田先生、それは不思議でもなんでもないです。必然ですよ」と、江部先生。

 糖尿病を治すため・防ぐために──、

江部康二著『主食を抜けば糖尿病は良くなる! 糖質制限食のすすめ』 (東洋経済新報社刊)を、ぜひ!


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一病息災

 世界糖尿病デーの11月14日、国際糖尿病連合(IDF)は、世界の糖尿病患者が3億人を突破したと発表した。

 1位は中国の9000万人で、2位インド、3位アメリカと続き、日本は6位の1070万人だ。

 このまま進むと、2030年の世界の糖尿病人口は5億5200万人に達するという。

 いまや糖尿病は全人類共通の課題だ。

 糖尿病になると全身の血管がしだいに侵され、心臓病、脳卒中、失明、下肢切断、腎不全の原因となる。

 こうしたさまざまな合併症の背景には、糖尿病性の細小血管障害(失明、腎不全、壊疽<えそ>の原因)と、大血管障害(心筋梗塞、脳卒中、足の動脈硬化症につながる)がある。

 元をただせばインスリン抵抗性(血糖を処理するインスリンが働きにくい状態)や肥満があり、さらにその前に生活習慣の悪化がある。

 このそもそも大本の生活習慣の改善をすることが、どの合併症を防ぐためにも絶対的な第一条件だ─と、糖尿病の専門医は口をそろえて強調する。

 生活習慣の基本は、食事と運動だ。
栄養のバランスがとれて、過剰にならないカロリー摂取。
運動は中程度の有酸素運動(ジョギング、ウォーキングなど)を1日30分程度。
これだけでかなり効果的に血糖コントロールができる。

 だから糖尿病のための生活習慣は、万人共通の健康生活の基本でもある。

 8万5千人を対象とした前向きコホート研究(地域、職域などの一定集団を長期間にわたり追跡し、病気の起こり方などを調べる研究)によると「三原則のよい生活習慣」だけで糖尿病を88%予防できる。

 よい生活三原則の

 1は、食事。栄養のバランスをきちんと考え、腹7~8分目に摂取カロリーを抑えたよい食事を─。

 2は、適正体重。BMI(体重キロ÷身長メートル÷身長メートル)が25未満─つまり肥満していない。

 3は運動。1日30分程度の運動(推奨されるのは速足歩き)を週5回以上している。

 こうした三つの生活習慣によって、100人中88人は、糖尿病の発症を予防できると疫学研究は教えている。

 糖尿病という病気を完治する方法はない。患者と家族は一生、治療と向き合って生きなければならない。

 しかし、糖尿病でも「一病息災」で元気な長生きを楽しんでいる人が多い。

 糖尿病と糖尿病の合併症の危険性についてよく知り、正しい知識をもち、血糖値、血圧、脂質を適切に管理しコントロールしている人たちだ。

 つまり頭のいい自制心の強い人たちだ。


世界糖尿病デー

 紀元前1500年ごろのエジプトの医書に「多尿を駆逐する薬」として奇妙な処方が記されてあるのが、糖尿病に関する最古の記載だという。

 古代インドで「蜜(みつ)の尿」と形容された病気や、漢方で「消渇(しょうかち)=のどが渇き、尿が多く出る」と呼ばれた病気も、糖尿病にほかならない。

 そんなにも昔から知られていて、多くの国の医師たちが治療法を模索し続けたがかなわず、この「不思議な病気」は、一度かかると死を待つしかない病気だった。

 だが現代の糖尿病患者は、

「永い暗黒時代の末に、今世紀初めて手にしたインシュリンのお蔭で生き永らえ、現代生活を享受しております」と、『インシュリン物語』の著者は述べている(二宮陸雄訳=岩波書店刊)。

 インスリンは、1921年の夏、カナダ・トロント大学の「ネズミの出没する薄暗い研究室で、仕事を始めた29歳の外科医、フレデリック・バンティングと、まだ医学生だった22歳のチャールズ・ベスト」によって発見された。

 国連が定めた「世界糖尿病デー」の11月14日は、バンティングの誕生日である。

 なお、前出の「消渇」については、誤解が多い。詳しくは、「それ、ウソです(37)鎌倉以来の誤解」を─。

 ブルーサークル

 11月14日の世界糖尿病デーは、IDF(国際糖尿病連合)とWHO(世界保健機関)が1991年に制定。

「Unite for Diabetes(糖尿病との闘いのため団結せよ)」と全世界で糖尿病啓発運動を推し進めてきた。

 2006年12月20日、国連総会は、IDFの要請による「糖尿病の全世界的脅威を認知する決議」を加盟192カ国の全会一致で可決し、IDFとWHOが毎年行ってきた世界糖尿病デーを公式の国連デーとし、2007年からは国連が定める記念日となった。

 世界中で糖尿病の治療と予防を呼びかけるキャンペーンが展開される。

 運動のシンボルマーク「ブルーサークル」の円は生命と健康の象徴、ブルーは空の色であり、国連の旗の色だ。

 11月14日、日本では東京タワー、東京都庁、レインボーブリッジ、通天閣など各都市のランドマークがブルーライトアップされた。 

 全国糖尿病週間

 上記のように世界糖尿病デーが始まったのは、1991年だが、日本ではそれよりもずっと早い1965年から日本糖尿病協会が、11月の第2週を「全国糖尿病週間」とし、啓発活動を行ってきた。

 世界のほうはインスリンの発見者バンティングの誕生日にちなむものだが、日本の週間は、

「農家の収穫も終わり、柿の実の赤くなるころ、日ごろ忙しくて気にかけずにいた糖尿病のことも調べてみよう、というような意味で始まったもので、何かを記念したものではなかった」。

 だが、07年からは世界糖尿病デーを含む1週間を全国糖尿病週間としている。

 ことしは14日(月)~20日(日)。

 テーマは『連携による糖尿病治療の継続』

 標語は『続けよう!ブルーで繋がる 連携の輪』


HRT効果

 女性ホルモンのエストロゲンは、もの覚えに密接にかかわり、アルツハイマー病の予防に役立つなど、脳にとってきわめて大切な作用をしている。

 では、男性は関係ないのか。そんなことはない。

 男性の場合も、男性ホルモンのテストステロンが体内でエストロゲンに変わって、同じ働きをしている。

 むろん、年を取ればテストステロンの分泌は減るが、女性の閉経期のような急激な減少は、男性にはみられない。

 実際、更年期以後の女性と同年齢の男性を比べると、体内のエストロゲンの量は男性のほうが多い。

 そこで、閉経期前後の女性にエストロゲンを補うホルモン補充療法(HRT)が行われる。

 その効果はとてもシャープで、HRTを三カ月間受けただけで、記銘力テストの成績が明らかによくなることが証明されている。

 これは効きそうだという感じは、飲み始めて数日でわかるそうだ。

「お化粧ののりがよくなる。肌の状態がよくなる。一番敏感なのはそれかなと思います」と、自分でもHRTを行っている婦人科の専門医は話している。

 このようにホルモン補充療法(HRT)は、更年期のさまざまな症状を治し、脳の働きをよくし(認知症の予防)、骨の量を増やし(骨粗しょう症の予防)、動脈硬化の進行を防ぎ、大腸がんのリスクを下げるなど、メリットは十指に余るほど多い。

 気になるのは副作用だ。

 以前はHRTを5年以上行うと、乳がんのリスクがやや増える─その割合は1000人中11人といわれた。

 ところが最近、乳がんの発症はむしろ減るという報告が相次いでいる。

 1例を挙げると、国際閉経学会は2006年、エストロゲンを七年間、投与した群では乳がんが24%減少したと発表した。

 日本では、厚労省研究班が、乳がん患者3434人と同年代の女性2427人を調査して、乳がん患者のHRT経験者は5%で、HRT経験者のほうが乳がんになるリスクは57%低いと報告している。

 世間に言いふらされている、これが効く、あれが効くにふり回されず、更年期に詳しい医師に相談し、自分でしっかり選び、前向きに─と、NP0法人メノポーズ(更年期)を考える会は勧めている。


人生の秋

 秋だから更年期の話─。

 思春期が人生の春なら、更年期は豊かな実りの秋、人生80年の折り返し点─後半生の出発のときだ。

 辞書を見ると、「更」は「新しくなる。変わる」という意味。

 更年期は、年齢が更新される時期といっていいだろう。

 そう思うと、この用語、案外わるくない。

「更年期は女性ならば一度は越さなければならない人生の峠である。

 美しく老いる準備期間と考えて有意義に過ごしたいものである」とは、産婦人科領域で優れた業績を残した川島吉良・元浜松医大学長の言葉。

 更年期とは、閉経(平均年齢50.5歳)の前後数年間。

 卵巣機能が低下し、女性ホルモンのエストロゲンの分泌量が急激に減る。

 エストロゲンは、肌や骨、血管、脳などに大きな働きをし、自律神経系にも作用しているので、心身にさまざまな症状が現れる。更年期障害だ。

 が、その程度は人によって異なる。

 エストロゲンの減少以外、個人の性格や体力、生活環境も大きく影響するからだ。

「更年期は、自分らしい生き方の始まりのとき。自分に合った対処法を─」と川島先生は話しておられた。

 ところで、更年期障害の症状はざっと200もある。

「更年期に出てきたそれまで経験しなかった症状は、みな更年期障害を疑っていいと思います」と、東京女子医大成人医学センター婦人科の東館紀子准講師。

 人によってさまざまな症状が現れるが、最も多い訴えは、ほてり、のぼせ、発汗─と婦人科学の教科書には記されてある。

 気温とは関係なく、寒いところでも、昼でも夜でも突然、顔がほてったり、汗をバーッとかいたりする。

 寝具に寝汗の跡が人型についたり、人前で汗がポタポタしたたり落ちたり、顔が急に真っ赤になって、どうしたの? と不思議がられたりする。

 これらは自律神経が乱れて、一時的に血管が拡張する血管運動神経障害だ。

 逆に血液の循環が悪くなって手足が冷えることも多い。

 冷えとのぼせ、あべこべの症状が同じ人に起こるのは、その根に自律神経の乱れがあるからだ。

 大本の原因は、女性ホルモンの急激な減少。

 ホルモンの中枢と自律神経の中枢は、どちらも間脳の視床下部にあり、交差しているためだという。

 脳とホルモン

 更年期障害の最も多い症状は、ほてり、のぼせ、発汗だと教科書には書いてある。

 が、慶応大学病院の更年期外来の受診者519人に聞いたアンケートの結果は、首や肩がこる(82%)、眼が疲れる(75%)、もの忘れが多い(74%)が三大症状で、顔がほてるは8位、汗をかくは9位、のぼせるは18位だった。

 一方、夜眠っても目をさましやすい、くよくよし、憂うつになることが多い、興奮しやすく、イライラすることが多い、いつも不安感があるといった精神症状の訴えが、10位前後にずらりと並んでいる。

 こうした更年期のうつ症状は、うつ病とは違う。

 したがって抗うつ剤を用いてもあまり効果がない。ホルモン剤がよく効くそうだ。

 女性ホルモンのエストロゲンは、脳神経に対して保護作用、修復を促進する作用、栄養的な作用をする。
 だからホルモン補充療法(HRT)は、もの忘れにも効くし、アルツハイマー病の予防にもなるといわれる。

「閉経後、早い時期からのHRTは、記憶機能の維持に一定の効果がある」と、専門医は指摘している。

 明日は、そのHRTの効果について─。


ストレス冷え

 秋冷の候だが、季節を問わず「日本人はみんな、冷えています」と、川嶋朗・東京女子医大自然医療研究所クリニック所長。

「自分のおなかに、手をじかに当ててみてください。

 ひんやりしているようなら、要注意です」

 この冷えが血液を汚し、体の機能を低下させ、さまざまな慢性疾患の誘因になる。

 病気にならなくても、体に及ぼす悪影響は計りしれないと、川嶋先生は明言する。

 特に男性は、冷えに対してあまりにも無防備だ。

 冷えは女性特有の症状だと思い、自分の体の冷えについて無関心なのだという。

「現代人に冷えによる健康障害が増えている大きな原因の一つは、ストレスです。

 心身にストレスがかかると、交感神経(自律神経の一つで、身体活動を高進させるように

作用する)が緊張しますから、血管が収縮し、血液の流れが悪くなり、東洋医学でいう瘀血

(おけつ=古い血)が滞り、冷えてくるのです」

 どうしたらいいか。

 一言でいえば「温める」こと。

 冷たい食事をとらない。

 食物には火を通す。

 半身浴をする。


 湯治効果

 体の健康を保つには適当な体温が必要だが、冷えのために体温が低くなると、安定した状態が保てない。

 細胞が傷つく。

 反対に、高熱が加わっても細胞は損傷される。

 傷ついた細胞を修復するために、生体は、HSP(ヒート・ショック・プロテイン=熱ショックたんぱく質)70という酵素を大量につくり出す。

 この修復酵素にとっての至適温度は37℃。

 体温とほぼ同じだが、体の外からの熱だと40℃近辺の温度がHSP70を最もよく産生

することがわかっている。

「HSP70は、早くいえば体を守るたんぱく質で、あらゆる種類の細胞異常に対応して、

細胞の損傷を修復します。

 例えば関節が痛むとき、患部を体温よりも2度くらい高いもの(湯たんぽ、温熱シートな

ど)で温めると、HSP70が生成され、痛みを和らげてくれます。

 日本には昔から<湯治>という体を温める治療がありましたが、HSP70の発見で、そ

のシステムが解明されたのです。

 多くの慢性病が、体を温めることでよく治っています」

 と、東京女子医大自然医療研究所の川嶋朗所長は話した。


食休み

「親が死んでも食休み」

 食事の後に休みをとることの大切さを説いたことわざだ。

 ある疫学調査によれば、胃がんにかかった人は、同年齢の健康な人に比べて、昼の食休みをとる割合が明らかに低い。

 昼休みをとらず、食後すぐに働き始めると胃がんになりやすいのではないかと考えられている。

 食後すぐに体を動かすと、自律神経の一つで、身体活動を高進させる交感神経が緊張し、心臓・循環器系の働きが促進して、胃などの消化器系の働きは逆に抑制される。

 結果、胃へ流れるはずの血液は筋肉のほうへ流れ、胃液の分泌も少なくなり、消化活動が不活発になる。

 そのためいつまでも食物が胃にもたれることになる。

 もし、仮に食べた物のなかに発がん物質があったとしたら、それが胃に作用する時間が長くなる。

 そして胃粘膜を刺激し、びらん性の変化を起こしやすくするのではないか―と調査をした研究者は言っている。

 昼食に限らず、食後はなるべくゆっくりとくつろいで過ごしたいものだ。

 胃をいたわるために、家族団らんのために......。

 蛇足。

 食欲の秋、もう一つ忘れてはならぬ食のことわざ、

 「腹八分に医者いらず」。



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