暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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2011年10月

英語と独語のおベンキョー

 1990年代の初め、米NIH(国立衛生研究所)の学術用語委員会は、専門家や一般の識者などの意見も聞いたコンセンサス・カンファレンスの結果、

「インポテンス」という用語を使うのはやめよう。「Erectile dysfuntion(エレクタイル・ディスファンクション=勃起障害)略してE・D」にしよう──と提言した。

 インポテンスに含まれる侮蔑的なニュアンスが、学術用語にはふさわしくないという理由だった。

 以来、医学論文にはインポテンスないしインポテンツは全く使用されなくなった。

 日本でも1995年、「日本インポテンス学会」は、「日本性機能学会」と改名した。

 そして1998年、バイアグラ発売に伴う大々的宣伝の結果、いまでは世間一般ももっぱら「ED」で通っている。

「インポ」は死語になりつつある。

 手元の医学辞典2冊(1987年刊、1992年刊)を見比べてみると、一つは「インポテンス」、もう一つは「インポテンツ」という見出し語になっている。

 インポテンツはドイツ語で、インポテンスは英語。

 むろんどちらも間違いではない。

 似た例はほかにもいろいろある。

 手っ取り早いところで、この欄のタイトルの肉太の文字は、英語ではゴシック、独語ではゴチックだ。

 出版・印刷業界の人は略して「ゴチ」と言ったりするが、「ゴシ」とは言わない。

 インポテンスに関連する、あの器官の名称は、英語も独語もスペルは同じpenisだが、英米人はピーニス(またはペニス)、ドイツ人はペニスと発音する。

 口内炎もスペルは同じaphthaで、アフサ(英)、アフタ(独)と語尾音が異なる。

 polypは、ポリップ(英)、ポリープ(独)。

 virusは、英語はヴァイラス、独語はヴィールスまたはウイルス。

 日本のポリープ、ビールス、ウイルスはドイツ流なのだ。

 虫垂(appendix)は、アペンディクス(英)にアッペンディクス(独)。

 手術(operation)は、オペレーション(英)にオペラチオン(独)。

 で、お医者さんたちは、「アッペのオペみたいに簡単だ」てなことをおっしゃる。

 医学界ではドイツ語がまだだいぶ健在だ。

 カルテは、日本の現代医学が、ドイツ医学によって開かれたことのゆるがぬ証拠だろう。

 いうまでもなくカルテは、英語のカード、ポルトガル語のカルタ、フランス語のカルトなどと同義語だが、日本語ではそれぞれ別の意味で使われている。

 カルテは診療記録。

 カードは小形長方形の厚紙。

 カルタは遊戯・ばくち用具(いろはガルタなど)。

 カルトはア・ラ・カルト(一品料理)といったふうに──。

 つまり、まずポルトガルから遊戯を、次にドイツから医学を、英米からビジネスを、フランスからは料理を、輸入し学んだというわけだ。

 似ている例にドイツ語のIdee(イデー)と英語のidea(アイデア)がある。

 元をたどればどちらもギリシャ語のイデアに行きつく同義語だ。

 が、日本語では、イデーは理念、観念などと訳される哲学用語で、アイデアは、考案、思いつき、着想などの意味で用いられている。

 もっとも、ある哲学者の文に「プラトンのアイデア」とあるのは観念の意味だろう。

 アイデアリズムという英語は、理想主義または観念論と訳される哲学用語だそうだ。

 昔、がんは治すことができず、末期には体の外から手で触れてもわかるほど硬く腫れた。

 岩のような肉の塊だったから「癌(がん)」という字が作られた。

 やまいだれの中の嵒(がん)は岩の正字。

「岩は俗字」と漢和辞典にはある。

 英語のcancer(キャンサー)やドイツ語のKrebs(クレブス)も同じように末期がんの形態をイメージ化した語で、どちらもカニのことだ。

 がんの告知がいまのように一般的でなかったころ、医師たちは患者にわからないように「キャンサー」とか「クレブス」という語を使っていた。

 しかしそれが患者のほうにも知られてしまったので、今は別の語が使われている。

 なんという語か、知りたかったらメールをください。

 あなただけにお教えします(^-^ )。

癌腫 腫物(はれもの)ノ一種。

 略シテ、癌トノミモ云(い)ウ。

 体中、処処ニ発シテ、極メテ治シ難シトス、多クハ、上流ノ人ニ多シ。」

 と、昭和7年発行の『大言海』にはある。

「上流ノ人ニ多シ」というのがおもしろい。

 つまり当時は「上流ノ人」ででもないと、がんができるまで長生きはできなかったのだろう。

 今、がんは国民の2人に1人はかかる。

 早く見つけて適切な治療をすれば治る。

 その実態は「嵒」でも「カニ」でもない。


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乾癬はうつらない!

 きょう10月29日は「乾癬の日」だ。

 乾癬はいろいろな意味で「隠れた」病気である。

 乾癬をもたない人は乾癬という病気をよく知らず、乾癬をもつ人の多くは周囲の無知・無理解に苦しんでいる。

 それを変えるためWHO(世界保健機関)は、この日を「世界乾癬デー」と定めた。

 乾癬にかかると、皮膚が赤くなって(紅斑=こうはん)、盛り上がり(浸潤、肥厚)、その表面に銀白色の垢(鱗屑=りんせつ)が付着し、フケのように剥がれ落ちる(落屑=らくせつ)。

 鱗屑を無理にはがすと、出血することがある。

 かゆみには個人差があり、全然かゆくない人もあれば、強いかゆみが生じる人もある。

 乾癬は、症状の違いによって、次の5種類に分けられる。

 尋常性乾癬(局面型乾癬) 尋常性とは、「最も普通の」という意味。

 乾癬の約90%はこのタイプで、上に記したような皮膚症状が現れる。

 乾癬性紅皮症 尋常性乾癬が広がった状態で、全身が真っ赤になる。

 膿疱(のうほう)性乾癬 カサカサした部分だけでなく、少しジクジクとして真っ赤な部分が生じ、その中に膿疱(膿をもつ小さな発疹)ができる。

 関節症性乾癬(乾癬性関節炎) 皮膚症状に加え、手足の指、背骨、腰などの関節に痛みや変形などが現れる。

 関節リウマチに似ているが、血液検査でのリウマチ反応は陰性がほとんどだ。

 急性滴状乾癬 風邪、扁桃炎などに引き続いて、全身に水滴ぐらいの小さい紅斑が急速に現れる。

 乾癬の原因はまだはっきりとはわかっていない。

 乾癬になりやすい体質は遺伝することがあるが、体質があっても必ず発症するわけではない。

 体質的素因と、食生活、気候、ストレスなどの環境因子が重なり合って発症するとかんがえられている。

 一つ、ハッキリわかっているのは、非感染性である(伝染しない)ということだ。

 プールやお風呂、接触などで、他の人にうつることは決してない。

 うつる人は一人もいない。『発病』することは、誰にもおこりうる(WHOのポスター)。

 乾癬は、決して「一生の病気」ではない。

 症状のコントロールができる病気であり、生活環境の改善や治療などにより、皮膚が完全に正常な状態に戻る人もたくさんいる。

 近年は生物学的製剤(3剤ある)も開発されて治療効果が一段と上がっている。

 乾癬で悩む人は、全国に約10万人。

 各地に患者友の会がある。

 正しい治療情報を知ることができる。

 独りで悩まず、ぜひお訪ねを─。

 連絡先は日本乾癬患者連合会(JPA)のHpでわかる。


ふくらはぎ健康法

 年をとると血のめぐりが悪くなり、足腰が弱くなるが、なかでも、ふくらはぎの血液の循環が悪化する。

 それはふくらはぎの温度が下がるからだ。

 名古屋市立大医学部の蟹江良一医師はサーモグラフィ装置を使ってそのことを証明した。

 蟹江先生によると、成人では太ももの表と裏、すね、ふくらはぎの四つの部分の平均温度にはほとんど差がないが、高齢者はふくらはぎの温度が太ももより二度近くも低い。

 そのため足腰全体の血のめぐりが悪くなる。

 高齢者が足腰を強くするには、ふくらはぎを鍛える運動をすればよい。

 そうすると、ふくらはぎの温度が上がり、血流がよくなる。

 ふくらはぎを鍛えるためには、つま先立ち運動をゆっくり繰り返したり、寝床で足首の曲げ伸ばしをすると、効果的だという。

 このふくらはぎと、血液循環の関係に早くから注目して、ふくらはぎを中心とした理学療法を行っているのが、東京・六本木のイシカワ・クリニックの石川洋一院長だ。

 ふくらはぎの血行は、全身の血液循環に関係がある。

 そのことに石川院長が気づいたのは、脱水患者の治療中だったそうだ。

 そのとき、石川医師は、体が弱って脱水症状を起こしていた患者の腕に点滴をしていた。

 ところが、点滴がスムーズに落ちていかない。

 思案にくれて、なにげなく患者の足をさすってみた。

 と、ポタリ、ポタリと点滴液が落ち始めた。

 足をさすったことと、点滴となにか関係があるのだろうか。

 確認するため、大腿部、ひざと部位を変えてもんでみたところ、ふくらはぎが異常にかたくなっていることに気づいた。

 で、両足のふくらはぎをもんだり、さすったりしていると、青ざめていた患者の顔に赤みがさしてきて、点滴がさらにスムーズに落ち始めた。

 ふくらはぎをもむと、腕や顔の血行が促進されるようだった。

 以後、石川医師は、いろんな人のふくらはぎに関心をもち、観察を続けた。

 それでわかったのは、健康な人のふくらはぎは温かく、やわらかいが、病気の人のふくらはぎはかたくて、冷たいということだ。

 病気の人でも腎臓病ではかたくはないが、弾力がない。

 糖尿病の人のふくらはぎも、冷たく湿った感じで弾力がない。

 肝臓が悪いとやわらかすぎて抵抗感がないそうだ。

 石川医師の観察では、ふくらはぎのかたい人は肩こり、頭痛を訴えることが多く、血圧の高い人のふくらはぎも、全体にかたく締まっていた。

 そこで、高血圧の人のふくらはぎを丹念にもみほぐしたところ、最大血圧200以上あったものが、170まで下がった。そういう例を数多く経験した。

 また、脳梗塞で倒れた男性を往診、病院へ運ぶ救急車に同乗し、患者に酸素吸入をしながら、ふくらはぎをずっともみ続けた。

 すると、病院に着く直前に意識を取り戻し、数日後退院できた。

 そのほか、肝臓や胃腸などの病気にも効果がある、と石川医師。

 やり方は簡単で、うつぶせに寝た患者のふくらはぎを両手でつかみもみし、もみほぐす。

 これを毎日やる。毎日やらないと、やわらかくなった部分が再びかたくなる。

 自分では、入浴中にやるのが最も手軽で効果的だ。

 ぬるめの湯の浴槽の中でゆっくり時間をかけて、もみほぐす。

 毎日続けていると、体調がよくなるし、こむら返りの予防にもなる。

 詳しくは、石川洋一著『万病に効くふくらはぎマッサージ』(マキノ出版刊)を―。


軽い運動

 健康や体力維持のためにスポーツをする人はとても多い。

 が、なかには逆効果になっている人がいる。

「スポーツをすると体力がつく、それが健康なんだと思っている人が多い。
 しかし、それは必ずしも正しくない。
 強い運動をして体を鍛えないと、健康は獲得できないと思い込み、そのため体の具合を悪くした人が大勢います」と、東京慈恵医大健康医学センター・スポーツ医学科の小原誠教授。

 健康のために始めたはずの運動で、体を壊したのでは何もならない。

 それよりも、こんなレベルでは運動にならないといわれていた軽い運動を見直すべきだ。

 軽い運動は体力の向上にはつながらないが、健康の維持には効果が高いといわれている。

 例えば、ジョギングよりはウォーキング。

 歩くだけでは心拍数はそれほど上がらないし、筋肉も付かない。

 しかし、病気への抵抗力は上昇する。
 よく眠れる、食欲も出てきた、風邪をひきにくくなったなどの効果が現れる。

 スポーツ医学科は、健康維持や生活習慣病予防のためには、どんな運動をどの程度していけばいいか、人それぞれのスポーツのメニューづくりをしてくれる。

 筋肉痛のメカニズム

 快晴の日曜日。

 運動会やソフトボール大会に参加。

 適当に走ったり投げたりしたあと、うまいビールを飲み、夜はぐっすり眠った。

 そこまではよかったが、翌日から2、3日は、体を動かすたび「イテテッ!」と顔をひきつらせることになる。

 特に階段を下りるときが痛い。

 筋肉は、アクセルをかける(動きを加速する)ときは、その長さを短くしつつ力を発揮する。

 これを短縮性筋活動という。

 反対にブレーキをかけるときは、筋の長さが伸びつつ力を出す。

 この伸長性筋活動で、筋肉痛が発生しやすい。

 しかし、なぜ発生するのか。

 それも半日以上もたってから症状が出てくるのか。

 生理学的な理由はわかってないそうだ。

 サイクリングや水泳は主に短縮性筋活動で行われるから翌日以後の痛みはまず生じない。

 ジョギングやハイキングは、足が接地するたびにブレーキがかかるので筋肉痛は十分に起こり得る。

 登山では山頂まではアクセルだから、山小屋では何ともない。

 が、下りはブレーキばかりだから下界に戻ってから苦しむことになる。

 以上、国際武道大学・大道等教授のお話の受け売り。


くすり教育

 従来、小・中学生への薬についての教育はほとんど行われていなかった。

 2008(平成20)年3月に公示された文部科学省の新しい学習指導要領で、中学3年で学ぶ事項として「医薬品は正しく使用すること」という一文が加えられた。

 日本の医薬品教育も欧米のレベルに一歩近づいたと、くすりの適正使用協議会は評価している。

 埼玉大学教育学部付属中学校の宮川厚子・養護教諭が行った「くすり教育」の授業後、生徒が書いたワークシートを何例かご紹介しよう。

 ●今日は薬のきまりがなぜあるのかよくわかった。

 私はいままで説明書を読んだことはなく、お母さんが用意したものを飲んでいただけだった。

 これからは自分で説明書を読むようにしたい。

 ●薬は「決められた時間」に「決められた量だけ」飲むこと。

 そうでないと最もよい効果が得られない。

 ●薬のカプセルは湿ったものにくっつきやすい。

 それがのどで起こると、カプセルが溶けて粘膜に炎症を起こすというのには、とてもおどろいた。

 薬は十分な水で飲むべきだとわかった。

 あ、なるほど......。

 引き写しながら、じいさんも、教えられました。


家庭薬の出番

 ちょっとした病気やケガを自分で治療するセルフメディケーション。

 またはお医者さんに行く前に取りあえず自分で処置するセルフトリートメント。

 そんなときが家庭薬の出番だ。

 いわばワンポイント・リリーフの投手か、ビンチヒッターのようなものだから、いつでもすぐ使える薬を常備しておくとよい。

 どんな種類の薬をそろえたらいいか。

 ▽解熱鎮痛剤

 ▽風邪薬

 ▽胃腸薬

 ▽外用薬(傷薬、張り薬)、包帯、ばんそうこう

 ▽目薬。

 だいたいこれくらいあればいいだろうが、問題は長期間保存による薬効の劣化だ。

 内服薬だけでなく傷薬も、開封してから繰り返し使用するうちに薬効成分が不安定になる。

 こうしたデッド・ストック(死蔵)による薬の変質を防ぐため、薬は一度にたくさん買わないようにし、古くなった薬はのまないようにしよう。

 かかりつけ薬局を決めて始終、相談にのってもらうようにすれば買い置きを少なくできる。

 期限&保存法

 薬は、自分の症状・体質に合ったものを薬剤師によく聞いて選び、説明書をしっかり読んで、決められた量を決められた時間にのむようにしよう。

「有効期限」が切れた薬はもちろん、期限内でも開封後、日数がたったり、保存状態が悪かったりすると、変質していることがある。のまないほうがよい。

 開封した薬の有効期限は、錠剤、散剤、カプセル剤が約6カ月。

 内服用液剤は10日前後。

 目薬は2、3カ月。

 薬を開封したらその年月日を箱や瓶の余白に記しておけば、捨てる時期の目安になる。

 薬は光と高温、多湿を嫌う。

 変質を防ぐには正しい保存法が大切だ。

 たんすの上などはペケ。

 暖房をする冬にはそこが最も高温の場所になる。

 押入れにしまうのも感心しない。

 ほこりやカビの温床になりがちだ。

 いちばんいいのは風通しのいい冷暗所。

 説明書に「冷所保存」とある冷所とは、15℃以下の場所のこと。

 シロップや目薬、座薬などがそう指示されてあることが多い。

 それらは冷蔵庫に保存するとよいが、凍らせてはいけない。


高齢者の薬

 正しく飲んでこその薬。

 医師・薬剤師の指示どおりに服用することを「コンプライアンス(服薬順守)」というが、コンプライアンスが悪いと、病気の治りも悪くなる。

 しかし、お年寄りの場合、説明を受けても忘れてしまうことがある。

 そばにいる家族が注意してあげよう。

 病院・薬局で薬を出してもらうときは、家族が、何の薬であるか、服用の仕方を確認する。

 朝と晩の二回服用の薬と食後服用の薬がある場合は、朝、昼、夕、寝る前と、袋に入れ直し、間違えないようにする。

 高齢者は、肝臓や腎臓の機能が低下するため、若いときとは薬の効き目が異なり、副作用も出やすい。

 大友英一・浴風会病院院長は、

「老齢患者には、薬は少なめ、絶えず副作用を警戒する」と話している。

 ただ、小児と違い、老化は個人差や臓器差が大きい。

 肉体年齢の個人差の幅は、65歳で16年、80歳では20年にも広がるといわれている。

 画一的な処方は難しい。

「医師は、患者が指示を守っているかを把握する一方、患者は、不都合があったら遠慮なく医師に言うこと」と、大友先生は強調する。

 医師主導の受け身の「コンプライアンス」に対して、患者が治療法や治療方針を理解・納得し、積極的に治療に加わる一歩進んだ考え方を「アドヒアランス」という。

 吾人はすへからく(いやどうも硬いなあ)、われわれはぜひともそのような賢明な患者でありたい。


薬の相互作用

 ウナギと梅干し、テンプラとスイカ......などは、科学的根拠のない俗信の「食い合わせ」だが、薬には科学的に証明された「飲み合わせ」がある。

 先年、帯状疱疹の治療薬の抗ウイルス剤と、ある種の抗がん剤を一緒に用いた人が16人も死亡する事故があった。

 改めて薬同士の相互作用が注目された。

 一般に薬は何種類かが組み合わされて処方されるから、医師や薬剤師は薬の相互作用(いわば飲み合わせ)には常に注意を払っている。

 2ヵ所以上の医療機関にかかって、それぞれから薬をもらっている場合は、どちらの医師にも必ずそのことを告げる(薬の現物を見せる)ようにしよう。

 飲み合わせは薬同士だけではなく、薬と飲食物の間にもある。

 よく知られているのは、納豆と、抗血栓薬(血液が固まるのを防ぐ薬)のワーファリンだ。

 納豆に含まれるビタミンKがワーファリンの作用を弱めてしまうからだ。

 ビタミンKを多く含むクロレラ、パセリ、シソ、アシタバ、シュンギクなども同じような相互作用を示すという報告もある。

 半面、納豆には血栓を溶かす酵素(ナットウキナーゼ)が含まれていることも知られている。

 薬と飲食物との相互作用の例では、鉄欠乏性貧血の治療に用いられる鉄剤と、お茶の関係が昔からよく言われてきた。

 お茶のカテキン(タンニン)が鉄の吸収を妨げるというのが、その理由だった。

 しかし、鉄欠乏性貧血があれば、カテキンがあってもなくても、必要なだけ鉄は吸収されることがわかって、現在ではお茶を禁じるのは、あまり意味はないとされている。

 近年、注目されているのは、薬とグレープフルーツジュースの飲み合わせ。

 カナダの西オンタリオ大学のベイリー博士らの研究によると、高血圧の治療に用いるカルシウム拮抗薬とグレープフルーツジュースを同時にとると、薬の血液中の濃度が上がり、薬が効き過ぎてしまう。

 別の研究者たちの調べでは、免疫抑制剤や精神安定剤などでも、グレープフルーツジュースが薬の血中濃度を上げることがわかった。

 このジュースの中の濃度を上げる成分を、東北大学薬学部の山添康教授が突き止めた。

 グレープフルーツジュースは、ビタミン、ミネラルなどを多く含んでいるが、薬の服用時は医師の指示を守ることだ。


五つの質問

 毎年、10月17日から23日までの1週間は、薬の情報の大切さと、薬剤師の役割をよく知ってもらうための「薬と健康の週間」。

 日本薬剤師会では、「ゲット・ジ・アンサーズ(答をもらおう)」というキャンペーンを行っている。

 これは、「薬のことをはじめ、治療に必要な医療情報を入手し、自分自身の医療に積極的に参加しよう」と、1993年に米国で始まった市民運動のキャッチ・フレーズでもある。

 日本薬剤師会は、薬を上手に安心して用いるため、薬を求めるさいは次の「五つの質問」を―と、呼びかけている。

 1 この薬の名前は?

 2 何に効くの?

 3 飲むときに注意することは?

 4 副作用は?

 5 ほかの薬や食べ物との飲み合わせは?

 このほか、薬について気になること、心配なことがあれば、何でも気軽に薬剤師に質問し、「ゲット・ジ・アンサーズ(答をもらおう)」というわけ。

 おすすめは、頼りになる「かかりつけ薬局」を家の近くにもつこと。頼りになるかどうかは、「五つの質問」をしてみれば、わかる。


育毛剤余話

 ところで、お訊ねするが、男にとって、AGA(早くいえばハゲ)と、ED(漢字で書けば勃起不全)と、どちらがより重大問題だと、貴殿は思われるか?

 拙者の小さな見聞では、どうも前者のほうのようである。

 ─というのは、先年、バイアグラとリアップが、鳴り物入りで発売されたさいのことである。

 メディアへの製品発表に参集した記者たちの数(拙者のおおまかな目勘定)は、バイアグラのときは約150人、リアップのときはざっと300人はいたようだ。

 仄聞だから真偽は請け合えないが、大いによろこんだリアップ発売元の大正製薬の広報担当者が、「勝った!」と叫んだそうだ。

 むろん、バイアグラだってけっしてハンパな数ではない。

 ほかの薬のときは、たいてい50人かそこらなのだから、バイアグラのすごさ(言い換えると、EDに対する男たちの関心度の強さ)が、よくわかる。

 しかし、それをはるかに凌駕したリアップの人気からかんがみるに、インポよりハゲが重大事、といえるのではあるまいか?

 ─というわけで、育毛剤の話。

 ご存じのように、リアップは、もともと血管を拡張させる高血圧の薬として開発された。
 が、その臨床試験中に薄くなった頭に毛が生えてくる育毛促進効果が確認され、方向転換して製品化されたものだ。

 バイアグラも、やはり血管を拡張して血圧を下げる、狭心症の薬として研究開発中に勃起不全を改善することがわかった薬である。

 ちなみに、後発製品のレビトラ、シアリスも、バイアグラと同じPDE5(勃起組織の中にある酵素)阻害薬なので、狭心症の治療に用いる硝酸薬(ニトログリセリンなど)と併用すると、血圧が急激に下がり、生命にかかわる危険性がある。
 どちらも血管拡張作用があるからだ。

 リアップやバイアグラのような例は、ほかにもけっこう多く、緑内障の薬(点眼薬)を使っていたら、まつ毛が太く、長く伸びたので、まつ毛育毛剤「ラティッセ」がつくられた。

 このような偶然の価値ある発見を、セレンディピティというそうだが、土中の元素からつくられた、養毛料「AUGEN(アウゲン)」もその一例といえる。

 洗剤開発の研究実験で毎日、何種類もの土をいじっていたら、手の甲に黒い太い毛が生えてきた。

 土のどれかに含まれる物質のしわざに違いないと研究を進め、ある特定の微量元素を突き止めた。

 その「生命に必須のバイオエレメント」が、毛髪の幹細胞の増殖・分化を促し、生育周期を調整するのだという。

 シャンプー後に頭皮によくなじませて洗い流すだけで「髪が元気を取り戻し、ハリやコシが出てくる」と説明書にはある。

 根強い愛用者をもっているようだ。

 男女兼用。約3カ月分で1万3650円。

 土から生まれた養毛料─草木繁茂のごとき効果があるか?

 試してみるとするか。




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