暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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2011年9月

オートミール

 ちょっとした仕事で一泊旅行した。
 ホテルの朝、同行のカメラマンが、オートミールを食べた。
「オートミールは血中コレステロールを減らす」と、健康雑誌に書いてあったそうだ。
 真似して食べたらけっこうイケた。

 オートミールは、からす麦のひき割りを煮て砂糖、牛乳、塩を加えたもの。
 いうなら西洋がゆだ。
 栄養のバランスがよく、特にいま注目の食物繊維を多く含んでいる。

 食物繊維にもいくつか種類があるが、オートミールにはセルロース、ヘミセルロースなど不溶性(水に溶けない)の繊維が多く含まれている。
 なかでもヘミセルロースは体内のコレステロールをよくへらすことがわかっている。
 動脈硬化の進行を抑えて、心臓病や脳卒中を防ぐのに役立つ。
 また、便通をよくするので大腸がんの予防効果も期待できる。

 英国王立アカデミーのバーキット博士(故人)は、今日の世界的なファイバーダイエット(繊維食)ブームのきっかけをつくった研究者だが、毎日、朝食のオートミールにさらにスプーン1杯のフスマを加えて食べていたそうだ。

 夏目漱石もオートミールが好きだったようだ。
 英国留学中の漱石が、正岡子規主宰の俳句雑誌『ホトトギス』に寄稿した「倫敦(ろんどん)消息」にこんな一節がある。

 ──(朝、宿舎の食堂へ行って)、例の如く「オートミール」を第一に食ふ。
 是(これ)は蘇格土蘭(スコットランド)人の常食だ。
 もっともあっちでは塩を入れて食ふ、我々は砂糖を入れて食ふ。
 麦の御粥(おかゆ)みた様なもので我輩は大好きだ。
「ジョンソン」の字引には「オートミール」......蘇国にては人が食ひ英国にては馬が食ふものなりとある。
 しかし今の英国人としては朝食にこれを用いるのが別段例外でもない様だ。
 英人が馬に近くなったんだらう。──

「ジョンソン」の字引とは、18世紀中葉に出版されたイギリス最初の英語辞典。
 個性的な語釈で知られる。

 編者のサミュエル・ジョンソンは、8年の歳月をかけて貧困と持病(結核性るいれき)に苦しみながら、これを独力で完成した。

「人はいかなる過酷な条件のもとでも、仕事をする者はする」とは、ジョンソンの伝記を読んだ、作家の中村真一郎氏のことばだ。


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のどの異常感

 知人(47歳男性)は、半年ほど前からのどが狭くなったような感じで、つばを飲み込むと、引っかかり、上向きに寝ると、のどがふさがるようになる。
 どうかすると、横向きでも息苦しい。
 食物を食べるときはなんともないが、ときどき、のどにグリグリした感じが生じることもある。がんではないかと心配になり、二ヵ所の総合病院で診てもらったが、異常はないといわれた。
 
 近年、このようなのどの異常感を訴える人が増えている。
 特に30~40代の女性、次いで同じ世代の男性に多くみられる。
 この年代は、のどの軟骨や筋肉が硬くなる時期で、のどの動きがアンバランスになったり、軽い炎症が出やすい。
 それが、のどの異常感を訴える一つの原因になっているようだ。

 気管食道科の専門医によると、患者の訴えは、異物感(なにかがつかえている感じ)、狭窄感(狭くなっている感じ)、圧迫感、腫脹感(はれている感じ)、腫瘤感(できものがある感じ)、不快感、乾燥感、熱感などさまざまだという。

 しかし、そうした症状は、診断上はあまり意味をもたない。
 つまり、これこれの自覚症状があればこの病気と、決めることはできない。

 のどの異常感の原因は大別して局所的原因、全身的原因、精神的原因(心因)の三つ。
 局所的原因には、咽・喉頭炎、扁桃炎、気管炎、食道炎、気管の入り口にある喉頭蓋(がい)の形態異常、咽頭や喉頭、食道の良性または悪性腫瘍などさまざまなものがある。

 全身的原因としては貧血症、自律神経失調症、内分泌異常、更年期障害などが指摘されている。

 三つ目が心因性で、一番多いのが、これ。
 いったいに心因性の訴えでは、からつばを飲み込むときにはつかえる感じがするが、食べるときには感じないのが普通。
 反対に物を食べるときに異常感を強く感じる場合は、局所に何らかの病気があることが多い。

 二人以上の専門医に診てもらって、なんでもないといわれたら、まず心配はいらない。
 気にしないことが早く治る近道、と専門医は助言している。


カラオケ・ポリープ

 戦後日本の一大発明!? カラオケは中国、韓国、東南アジアの国々、欧米諸国を席巻し、世界中の流行になりつつある。

 結果、カラオケの問題点も指摘されはじめた。
 だいぶ以前の話だが、中国の新聞『長春日報』に載った「カラオケ病に注意」という記事の要約を、新聞の海外短信欄で読んだ。
 カラオケの度が過ぎると「声帯ポリープ」ができるという警告だ。

 会話時の声帯は毎秒50から100回振動するが、歌うときはそれが80から1200回にもなる。
 当然、歌い過ぎると、のどに悪影響を及ぼし、声帯の充血、出血が起こり、ついにはポリープ(軟らかいイボのようなもの)ができる。

 この「カラオケ・ポリープ」の予防法は、何曲も続けて歌わない、風邪などでのどをいためているときは歌わない、自分の音域に合った曲を選ぶことだ。

 長春日報も「自分の好きな歌手をマネして歌い続けるのはやめなさい。自己の力量を考えるように」と助言している。

「自己の力量」に対する配慮に欠けると、自分ののどをいためるばかりか、はた迷惑でもある。
 ぬかみそも腐る。気をつけよう。

 声帯ポリープと同じような声の多用や乱用で起こる「声帯結節(または謡人結節)」という病気もある。
 ポリープは普通、片側の声帯にできるが、結節は両側の声帯にできることが多い。
 ポリープと同じように結節もできはじめは軟かいが、声の乱用を続けているうちに硬い粟粒状のタコのようになる。

 ポリープも結節も、症状はほとんど同じで、声がかすれ、のどに何かひっかかっているような喉頭異物感があり、これを吐き出そうとしてせき払いを頻発する。

 治療は、手術をしてポリープや結節を切り取る方法と、結節の場合、手術せずに声の使い方を制限、結節を小さくする方法がある。

 結節を小さくするためには次のような「声の衛生」を守ること。
 1 声を控える。歌を歌ったり、大声でしゃべったりしない。
 2 せき・せき払いをしない。
 3 のどを加湿する。
 4 刺激物を避ける。禁煙。糖分の多い飲み物も避ける。

 のどを酷使しない限り、カラオケは最上のストレス解消法であり、かなりのエネルギーを消費する運動にもなる。
 心身の健康に及ぼす効用が大きい。
 歌は心のビタミン剤だ。


DOTS

 結核予防会によると、日本の結核の新規患者は、1960年代以後、毎年10.9%ずつ減るという世界でも例のない速さで減少してきた。
 が、78年ごろから減少速度が鈍り、最近の年間減少率は3.5%になっている。
 若い世代と高齢者では反対に増える傾向にある。

 結核は、結核菌に感染した10人に1人しか発症しない。
 人間のほうが細菌より優位な感染症だ。
 栄養のよい食事をとり、安静を守れば、かかりにくいし、治りやすい病気だ。
 昔は「肺病」と呼ばれ「不治の病」と恐れられた結核死が、戦後みるみる減少したのは、抗生物質による化学療法の成果もあるが、最大の原因は食生活の改善だった。

 いま、結核の多くは通院で治療できるが、約6ヵ月間、毎日欠かさず3~4種類の薬を飲み続けなければならない。
 そうしないと、薬が効きにくい性質(多剤薬剤耐性結核)に変わりやすい。

 また、症状がなくなったからと、自己判断で薬の服用を中断すると再発し、重症化しやすい。
 一見、治ったようでも「排菌状態」は続いているので周囲に結核をうつす心配もある。

 そうした不完全な結核治療をなくすためにWHO(世界保健機関)が勧めているのが、「DOTS(ドッツ=直接服薬確認療法)」で、日本も2003年に導入、当時は「直接監視下投薬」と訳された。
 結核菌が完全に消失するまで、患者がきちんと薬を飲み続けるよう、医療関係者が「監視」し、服薬を「確認」する方法だ。

 入院患者の場合は、医師や看護師が毎回、服薬を見届ける「病院DOTS」、1週間~1カ月に1回、薬をもらいに行くときに薬の空袋を薬剤師が確認する「薬局DOTS」、1日1回、患者が保健所の担当者にメールを送り、薬を飲んだと報告する「メールDOTS」など、結核治療の成否は、治癒率85%を超えるという、このDOTS戦略にかかっている。

 昨日もいったが、結核は決して「過去の病気」ではない。
 だが、予防できる病気、治せる病気だ。


結核、健在!

 9月24日から30日は結核予防週間。
 いまごろ結核なんて......と思うのは認識不足。
 厚生労働省によると、昨年1年間の新規患者数は2万3261人。死者2126人。けっして過去の病気などではなく、いまも流行が続く主要な感染症の一つなのだ。

 注目すべき点が三つある。
 1 70歳以上の高齢結核患者が新登録結核患者の半数以上を占め、さらに増加傾向にあること。

 2 大都市での罹患率が高いこと。
 大阪市=47.4、名古屋市=31.5、堺市=28.5、東京都特別区=26.0の罹患率(人口10万人対)は、それぞれ長野県=9.1(全国最低)の5.2倍、3.5倍、3.1倍、2.9倍である。

 3 毎年ざっと40件の集団感染が発生していること。
 感染場所は、病院、職場、パチンコ店、学習塾、ネットカフェ、スクールバス......などさまざま。

 世界に目を向けると、事態はいっそう深刻だ。
 世界保健機関(WHO)は1995年、全世界の成人の死因の第1位は結核で、今後10年間に3000万人が結核で死亡すると予測した報告書を発表した。

 報告書は「現在、全人類の3分の1が結核菌に感染しており、1秒間に1人の割合で感染者が増加している」と指摘している。

 患者は圧倒的に発展途上国に多く、先進国には少ないが、日本は「結核中進国」だ。
 日本の罹患率(18.2)は、米国(4.1)の4.4倍、カナダ(4.9)の3.7倍、スウェーデン(5.6)の3.3倍、オーストラリア(6.4)の2.8倍である。

 結核予防対策が進んだことにより、若い世代では、未感染(ツベルクリン反応陰性)の免疫力をもたない人が増え、職場などで開放性結核の患者に接した場合、結核菌の直撃を受け、容易に感染・発病するケースが多い。

 一方、高齢者は、若いころ(結核の流行が続いていた50年代の半ばごろ)に感染して、肺の中に潜在的に結核菌を持っていても発病していなかったが、その人たちが加齢とともに体力が弱まり、冬眠していた菌が復活し、発症するケースが多い。
 若いときにかかって完治したはずの結核の再発例もあるようだ。

 胃かいようや糖尿病、がんなどのために免疫力が落ちている人が、重症の結核を発病する例もある。
 つまり、結核というのは「免疫ができない病気」なのだ。

 免疫(病原体に対する体の力)は、ウイルスのような小さなものに対しては、とても利口で強い。だから、たとえば麻疹(はしか)のようなウイルスの感染で起こる病気は、一度かかると、もう二度とかからない。
 ワクチンで免疫力をつけることもできる。

 だが、結核菌のような大きい(ウイルスの何億倍もある)ものに対しては、「免疫はバカで弱い」と、免疫学者の奥村康先生は話した。

「結核菌に対するワクチンといわれているのがBCGですが、BCGの注射で結核が防げるか? 防げません。BCGを打っても、ツベルクリン反応陽性でも、せきの飛沫感染で簡単に感染します。結核菌に対してBCGは全く無力です。BCGなんてやっているのは、サミット参加国のなかでは日本だけです」

 ──であるから、結核に対して安全な人は、いない。
 結核は、決して「ひとごと」ではない。

 結核の症状は、風邪と似ている。
 初めはせきやたん、微熱が続き、そのうち寝汗、全身倦怠感、息切れなどが生じ、やせてくる。そして、たんに血がまじり、血を吐く(喀血)。

 そうなる前に治療を始めると、治りも早い。2週間以上、せきやたん、微熱が続くときはぜひ病院へ──。呼吸器内科がよい。


乾いたカビ

 新直木賞受賞作「下町ロケット」を、抄録のかたちながら手早く読みたいと、『オール読物』9月号(文藝春秋刊)を求めた。

 ついでといっては失礼だが、同じ雑誌に収載されてある「時代小説傑作選」の一篇、佐藤雅美「足掛け二十六年の絶望」を味わい深く読ませてもらった。
 さすが直木賞作家の大先輩ならではの巧みな筆さばき、しみじみ心にしみる佳編である。

 ただ、作中の語句「目に一丁字もない」の「一丁字」の振り仮名「いっちょうじ」は、いただけない。
 編集者がルビをふって、校正者も見落としたのだろうが、どこぞの零細通信社の低能編集者ならいざ知らず、文藝春秋ともあろうところで、どうしてこんな稚拙な間違いをしたのだろうか。
 言うまでもないことだが、「一丁字」の正しい読みは、「いっていじ」である。

 ─というところで本題。
 気候の変わり目の秋口には、ぜんそくが起こりやすい。
 ぜんそくのアレルゲン(アレルギーの原因物質)として、ハウスダスト(家の中のチリやダニ)はよく知られているが、近年注目されているのが「好乾性カビ」だ。

 普通のカビは、湿度の高い環境を好むが、このカビは乾燥した室内で増殖する。
 住宅内のカビを調べた環境保健研究所のデータによると、カビ全体の中に占めるアスペルギルス(好乾性カビの仲間で、コウジカビの一種)の割合は、健康な人が住む集合住宅では6・0%、ぜんそく患者の住宅では33・4%と大きな格差があった。

 アレルギー一筋の専門医、鳥居新平・一社アレルギー科こどもクリニック院長(名古屋市)は、名古屋大学医療技術短大教授時代、好乾性カビも、ぜんそく患者のアレルゲンになっているのではないかと推定。ぜんそく患者を対象に、アレルゲン・テストを行った。

 結果、以前からぜんそく患者にとって悪玉とされてきた、高湿度でよく育つカビの陽性率をやや上回る高い陽性反応を、乾いたカビが示すことがわかった。

 乾いたカビも、湿ったカビも毎日、まめに掃除機をかけ、ふき掃除を続けると少なくなる。
 


豚肉とニラ

 夏の盛りのころ、テレビの健康番組が、「夏は豚肉を......」と勧めていた。

 夏バテを防ぐにはビタミンB1を多く含む食品を食べるべきだ。
 ビタミンB1を多く含む食品といえば、大豆、ピーナッツ、麦、サツマイモなどが挙げられるが、肉類では豚肉がズバ抜けている、と。

 見ていてふと、むかし子どもだったころのことを思い出した。
 豚は白豚(ヨークシャー種など)と、黒豚(バークシャー種など)に大別されるようだが、鹿児島県は黒豚の主産地だから、故郷屋久島の豚もみな黒豚で、生肉用として飼われていた。

 だから肉といえば、まず豚か鶏だった。
 牛肉は食べたことがなかった。
 バターを知らない者にとってはマーガリンがバターだが、私における牛肉と豚肉の関係もそのようなものだった。

 もっとも、栄養学的に考察すると、豚肉は少しも牛肉にひけをとらない。
 むしろずっとすぐれてさえいる。
 とりわけビタミンB1の含量(赤肉、生)は100グラム中0.75ミリグラムと、牛肉(同0.09ミリグラム)の8倍以上で、これはあらゆる肉類のなかでも圧倒的な含量である。
 豚肉はビタミンB1の宝庫だ。

 豚肉は、ニラ、ネギ、タマネギなどと一緒に料理すると、ビタミンB1の吸収率が一段と上がる。
 これらの野菜にはアリインという物質が多く含まれているからだ。

 アリインは、ニンニクやラッキョウにも多量に含まれている。あの独特の臭いのもとだが、アリナーゼという酵素の働きでアリシンという物質に変わり、次いでビタミンB1(化学名チアミン)と結合してアリチアミンになる。

 このアリチアミンの化学構造は、非常に安定しているため分解されにくく、ビタミンB1の吸収も、B1単独の場合よりも20倍以上高まる。

 つまり豚肉はニラなどと一緒に食べると、ビタミンB1をむだなく摂取できることになる。

 ニラは、葉が薄緑色で太く短いものがよく、鮮度が落ちると葉先が黄色く変わる。
 調理のポイントは、火を通し過ぎないこと。
 以上、専門的な話は姪の管理栄養士からの受け売り。
 おじさんもトシをとって、負うた子に教えられるようになった。


認知症予防10ヵ条

 敬老の日、お達者な長寿者たちが新聞やテレビで紹介された。
 が、一方には寝たきりだったり、ぼけてしまったりしたお年寄りも少なくない。

 現在、全国の認知症患者数は推計208万人とされるが、予測を上回るペースで増えているというのが専門医の一致した見解で、すでに300万人に達しているともいわれる。

 自宅で家族中心の介護を受けている人が多く、徘徊(はいかい)、失禁、妄想など深刻な症状のお年寄りを抱え、家族は昼夜をわかたぬ介護に疲れ切っている。
 認知症は当人のみならず周囲の人びとの生活も破綻させかねない。

 ぼけないためにはどうしたらよいか。財団法人認知症予防協会が策定した「認知症予防10ヵ条」をじっくり読んでみよう。

 第1条 塩分と動物性脂肪を控えたバランスのよい食事を。
 日本人に多い脳血管性痴呆は、脳卒中を起こさないようにすれば、防げる。
 そのために日常、心がけてほしい食生活の基本がこれだ。
 みそ汁は薄味にし、具を多めに。塩分の多い焼き魚、煮物、潰物、つくだ煮は食べ過ぎに注意。植物性脂肪や野菜、海藻の摂取を心がける。

 第2条 適度に運動を行い足腰を丈夫に。
 運動すると脳が刺激され、活性化される。
 万人向きで、しかも最も効果的な運動は、歩くことだ。せっせと歩こう。
 それとともに、料理を作り、楽器を演奏し、絵を描くなど手先を積極的に動かすことも─。

 第3条 深酒とたばこをやめて規則正しい生活を。
 深酒は、アルコール性痴呆や脳血管性痴呆、アルツハイマー病になりやすい。
 アルコールにして500キログラムを飲むと、ウェルニッケ病(アルコール依存による栄養障害によって生じる脳症状)や、肝障害による脳機能異常を起こし、アルコール性痴呆になることが多い。

 ちなみに、アルコール500キログラムは、日本酒1升瓶ならほぼ1850本分だ。
 そこまでいかなくても、毎日3合以上、飲んでいる人は、そうでない人よりも明らかに脳血管性痴呆になりやすく、アルツハイマー病にもなりやすい傾向があるといわれている。

 たばこは脳血管性痴呆の危険因子とされるが、アルツハイマー病については、喫煙者のほうが非喫煙者よりは危険度が少ないともいわれている。
 だが、そのことを差し引いても、たばこの害を見過ごすわけにはいかない。

 第4条 生活習慣病(高血圧、肥満など)の予防・早期発見・治療を。
 脳の動脈硬化には、高血圧が大きな影響を与えるが、最大血圧が高いことより、最小血圧が高いことがより大きな影響を与える。
 動脈硬化は若いときから出てくる傾向がある。
その原因となる高血圧や肥満を早くから防ぐよい習慣をつけておこう。

 第5条 転倒に気をつけよう。
 頭の打撲はぼけを招く。
 アルツハイマー病の危険因子として第一番に挙げられているのが、過去に受けた頭部外傷。
 ノックアウトの多かったボクサーにみられる「拳闘家痴呆」という病態もある。
 ふだんから運動をして、転倒しても頭を打たないような機敏な体の動きを身につけておこう。
 転倒による頭部外傷を避けるため、ふだんから運動をして機敏に反応できるようにする。
 家庭内では段差をなくし足元の照明にも気を配る。

 第6条 興味と好奇心をもつように。
 自分のライフスタイルに興味と好奇心をもっていることはぼけの防止につながる。
 前向きに注意を集中し、持続させると情報が神経細胞に正確に入りぼけを予防できる。
 興味と好奇心を持って趣味やボランティア活動をすると脳の活性化につながる。

 第7条 考えをまとめて表現する習慣を。
 本を読み読後感を書き、短歌や俳句をつくり、日記をつけ、手紙を書く...など脳の衰えを防ぐためには積極的に頭を使うことが大切だ。
 囲碁、将棋、麻雀も脳の活性化に役立つ。

 第8条 こまやかな気配りをしたよい付き合いを。
 相手の心に添い、細かい点までやさしい心づかいして(理解と受容)、情緒的なゆるやかな信頼と平和な人間関係をつくる。
 誰に対しても、一方的、支配的な人間関係を避けるよう心がける。

 第9条 いつも若々しくおしゃれ心を忘れずに。
 心をいつも若々しく保つためには、いつでも考えを柔軟にもつことだ。
 考えを柔軟に持ち、愚痴はいわない。おしゃれやユーモアの心を大切にし、楽しいときは鼻歌の一つも歌ってみる。

 第10条 くよくよしないで明るい気分で生活を。
 うつは、ぼけへの近道。
 うつ病は体の免疫機能を低下させ、気力や食欲の低下をともなうため、寝たきりからぽけになりやすい。
 うつ病を早く冶し、日ごろから明るい気持ちで過ごす。

 以上の10カ条は大友英一・社会福祉法人浴風会病院院長、長谷川和夫・聖マリアンナ医科大学元学長ら認知症医学研究の基礎、臨床、疫学など各分野の専門家8人で構成する制定委員会が選んだ。


アル中ハイマー!?

 机のわきの壁にかけたスケジュール表の9月21日のスペースに「世界アルツハイマーデー」と記入してある。
 なにかでそのことを知り、「1日1話のネタにしよう」と思って書き込んだのだろう。

 しかし、いつ、何で知ったのか、いつ、記入したのか、まったく記憶にない。
 きれいさっぱり忘れてしまい、なんにも思い出せない。
 思い出せないが、別段なんとも感じない。
 これくらいのことで一々、なにか感じていたらトシヨリはやっていられない。

 とはいうものの、先日、手紙のあて名を書こうとして、神奈川県の「神」の字が出てこなかったときは、ちょっとあわてた。
 ハテ、「鹿」ではないし、「香」でもないし‥‥、しばし苦悶ののち「神」が出てきてホッとしたが、ついにここまできたかと思い知らされるようだった。

 この状態がどんどん進行していくとしたら(進行していくに決まっている)、先行きなんともおぼつかないなぁと心細くなったり、これはこれ、あれはあれ、本物のボケとは違うはずだと思ったり、した。

 ご自分のひどい物忘れを「アル中ハイマー」と自嘲したのは、晩年の山田風太郎氏だったが、拙者ことマルヤマの昨今も、それだ。
 やっぱり酒がイケナかったのかもしれないが、いまごろ気がついても、もう遅いか。

 なお、「世界アルツハイマーデー」は、1994年、スコットランドのエジンバラで開催された第10回国際アルツハイマー病協会国際会議のとき、会議初日の9月21日を、「世界アルツハイマーデー」と制定、WHO(世界保健機関)と共同宣言したことに始まる。

「アルツハイマー病」とは、1906年、この病気の最初の症例報告を行ったドイツの精神科医の名に由来する。


晩年の幸福

 昔は―私などが田舎の子供だった時代は―老人はだれからも敬愛されていた。
 いわば一年中が敬老の日だった。

 爺さん、婆さん、長生きしやれ、米も安なろ、世もよかろ。
 こんな里謡が耳の底に残っている。
 貧しい村ではあったが、日々の暮らしのなかに人の心の通い合いがあったと思う。

 今は、米は求めやすくなったが、世はあまりよくなったとは思えない。
 老人の一員として現状を観じるに、9月のある1日以外の364日は「軽老の日」ではないかと思われる。

 今は一般に年をとることは「老化」で、能力の減退とされる。
 いわゆるエイジズム(高齢者差別)もそんな考えから生まれるのだろう。
 セクハラの類語のようなシルハラというのもあるらしい。
 シルバー・ハラスメントの略だ。

 昔は、老人の知恵が、若い者の生活に役立つことが多かった。
 おじいさんは故事来歴の生き字引だったし、おばあちゃんの体験は家事や子育てに活用された。
 老人は先導者だった。
 だから尊敬された。
 昔の人のほうが晩年は幸福だったか?



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