暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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2011年8月

後ろ歩きのすすめ

 例年より18日遅れで始まった、プロ野球のペナントレースもあと40試合ばかり。
 胸突き八丁に差しかかろうとしている。

 優勝は、パはソフトバンク、セはヤクルトか? 「メークドラマ」があるかどうか。

 こないだうち、朝日新聞の夕刊でミスタージャイアンツ長嶋茂雄さんの回顧談を面白く読ませてもらったが、長嶋巨人軍時代のある年、開幕早々、主力投手陣の斎藤、槙原がそろって「大腿裏症候群」のために戦列を離れたのがひびき、終始、下位を低迷するということがあった。

 大腿裏症候群とは、その名のとおり太ももの裏に生じたいろいろな病的変化。
 最も多いのは、ハムストリングス(大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋など)の肉ばなれなど、筋肉をいためる例のようだ。
 これを防ぐには「後ろ歩き」がよいと、運動生理学の専門家が言っている。

 後ろ向きに歩くと、ふだんは使わない足の筋肉を使うことになる。特に太ももの裏の大腿二頭筋、ふくらはぎの腓腹筋、その下の平目筋、アキレス腱が使われる。

 やってみるとわかるが、後ろ歩きを始めると、太ももの裏に軽い痛みが生じ、筋肉が張ってくる。前歩きに戻ると、体がすっと浮くように感じる。

 最初はそう長くはできない。
 しかし、慣れてくると、そうした痛みや張りは感じなくなる。

 後ろ歩きは、大腿裏症候群のみならず変形性膝関節症を防ぎ・治すのにも役立つ。
 大腿の筋肉が強くなるとひざの安定性が増すからだ。

 後ろ歩きは、前歩きよりもずっと運動量が大きい。
 すぐ体が温まる。つまりそれだけ血行がよくなっているわけだ。
 血行がよくなり、足腰が鍛えられるのだから腰痛などにも効果的だと思う。

 はばかりながらかく申す拙者、後ろ歩きの達人でござって(なぜか、急にサムライ言葉になったが)、30年来、毎日小1時間のウォーキングの途中500メートル以上、後ろ歩きをやっとり申す。

 おかげでこの年(79歳)になるまでひざ痛、腰痛を知らない。
 変形性膝関節症患者の典型とされる、ひどいガニ股なのだが。

 老年のひざ痛や腰痛を防ぎたかったら、あなたも、ぜひ、足腰の達者なうちから後ろ歩きを──!

 ただ、最初のうちは足にかかる力のバランスを崩しやすい。
 ふらついて足首をくじいたりする恐れがある。
 慣れるまでは静かに少しずつやることだ。
 この点、くれぐれもご注意ください。
 健康のための運動でケガをしてはなんにもならない。

 場所の選択も大切。見えない後ろへ向かって歩くのだから危険防止にはじゅうぶんな注意が必要だ。
 ①自動車の走っていない所。
 ②人とぶつかる恐れのない所。
 ③平坦でデコボコしてない所。
 ④石ころなどがない所。
 ⑤真っ直ぐな道。──がよい。

 学校の運動場、公園の遊歩道、(それほど自転車が走ってないときの)サイクリング道路などは、格好の後ろ歩きの場といえる。

 さらにもってこいの場所はプールだ。
 水の抵抗が加わる分、運動量が増す。
 体を軽く左右にひねりながら後ろへ歩くと腰痛、ひざ痛、太もも痛を防ぎ・治す効果抜群と、専門家はいう。

 陸上でも、この「後ろひねり歩き」を混ぜながらやるといいようだ。

 さて、ところで、昨日誕生したドジョウ宰相の野田さんは、25年間毎朝、選挙区の駅前でつじ立ち演説を続けたという。
 マイク片手に熱弁をふるう野田さん、そのかたわらを足早に通り過ぎる人たち......。
 ほとんど無意味な徒労としか思えない光景を、テレビで見て(それを25年間毎日と思うと)ただただ感嘆、敬服するばかりであった。

 センエツながら、拙者もその驥尾に付し、だれも見てくれない「ブロ愚」を、毎日書き続けていこうと思っている。
 何の意味も目的もない愚直な一人相撲ではあるが...。


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さあ、歩こう!

 適度の運動を続けていると、狭くなった血管が広がり、詰まった血管のわきにバイパス(側副血行路)ができる。
 これはすでに心臓病をもっている人には効果的なリハビリになるし、健康な人の場合は、狭心症や心筋梗塞の最上の予防法になる。

 米大リーグ、デトロイト・タイガースのヒラー投手は、心臓病を運動療法で克服、カムバックして年間最多勝利を上げたし、心筋梗塞で倒れたあと、運動療法によるリハビリをやってボストンマラソンを完走したランナーもある。

 しかし、だれもが、やみくもに運動をすればよいというのでは絶対、ない。
「ジョギングの教祖」といわれたJ・F・フィックスが、ジョギング中に心臓発作を起こして急死した例をあげるまでもなく、過剰な運動はときとして重大な危険を招いてしまう。
 
 どんな運動を、どのくらいやればいいか? 

「運動強度さえ50%程度(自分の力の半分)に抑えたものなら、何をやってもいいのですが、私が一番お勧めしたいのは歩くこと。早足で息が切れない程度に歩くと、だいたい50%程度になります」と、生活習慣病の運動療法「荒川方式」の提唱者、規矩男・福岡大学名誉教授。

 早足歩きを毎日30分──といっても、週のうちに1日や2日やらなくても、別段どうということはない。
 むろん30分でやめる必要もなく、疲れがなく、やりたければ1時間でも2時間でも結構だ。

 例えば、家から駅まで早足で歩けば15分かかる。
 これを朝夕歩くとか、30分以内の距離は時間さえあれば歩く、エレベーターやエスカレーターには乗らない、といったやり方が一番いい。

 荒川先生がおっしゃるこの「ニコニコペース」(ニコニコ笑いながらやれるペース)の運動は、肥満の解消にも向いている。
 
 減量するのには食事療法(減食)が手っとり早いが、減食だけで体重を落とすと、筋肉も衰えてしまう。
 減食と運動を並行してやると、脂肪だけが燃えて筋肉はむしろ発達する。

 運動強度が50%を超えると、糖質が燃えて、脂肪は燃えにくくなる。
 50%のときがいちばん脂肪が燃えやすい。
 ニコニコペースの運動は肥満解消にも最上の方法なのだ。

 がんも防ぐ?

 エアロビクスの提唱者、米国のクーパー博士らは、ダラスに住む約1万4千人の成人を8年間、追跡調査した。

 そのデータをみると、心筋梗塞、脳卒中の発症率は、運動をしてなかった群が最も高く、軽い運動を習慣的にやっていた群が最も低かった。
 注目すべきことは、がんまで同じ結果が出ている。

 なぜ適度の運動ががんの発生を防ぐのか?
 そのメカニズムはまだ解明されていないが、体の免疫力が上がるのだろうと考えられている。
 
 今後はがん予防の運動療法が脚光を浴びるようになるかもしれない、と荒川先生。

 ただし、運動をやり過ぎると、体の中に発がんを促す悪玉の活性酸素ができることも、わかっている。

 しかし、50%程度の運動では活性酸素はほとんどできない。心臓を鍛え、血圧を下げ、肥満を解消し、がんまで防ぐ。

 メリットは最大、デメリットは最小というのが、ニコニコペースの運動だ。
 さぁ、歩こう! 歩こう!


ニコニコ歩き

「東京に行ったとき、浜松町でモノレールを降りたら帝国ホテルとか、パレスホテル、ホテルオークラぐらいまでは歩くことにしています。帝国ホテルまで30分、オークラまで40分、パレスまででも50分かかりません。東京駅からだとニューオータニが50分、オークラもやはり50分ぐらいです」と、荒川規矩男・福岡大学名誉教授。
 
 循環器学の権威で、先生が開発した生活習慣病の運動療法は「アラカワ・メソッド(荒川方式)」と呼ばれ、WHO(世界保健機関)も推奨している。
 荒川方式とは、その人が最高に頑張って出せる力の、半分程度の力で、早足歩きなどの運動をすること。

 運動量がその人のもつ能力の50%を超えると、エネルギーとして使われる糖質が不完全燃焼するため、血液の中に「疲労物質」の乳酸がたまってくる。

 これを裏返すと、その人がもつ能力の50%以下に抑えた運動であれば、疲労物質は血液中にたまらず、らくに運動を続けることができるわけだ。

 この自分の持てる力の半分を出す運動を荒川先生は「ニコニコペース」(ニコニコ話し合いながら歩ける速さ)と名づけて、軽症の高血圧や心臓病の患者たちに勧めた。
 
 軽症高血圧(最大血圧160ミリHg前後または最小血圧90~104四ミリHg)の患者の約半数が、10週後には最大血圧が20ミリHg、最小血圧が10ミリHg下がり、20週後には約8割の人が正常血圧になった。

 血圧が下がれば、心臓の負担が減る。
 また、運動によって心臓の血管にバイパスができ、狭心症の発作がぐんと少なくなる。

 心臓の血管(冠動脈)が、動脈硬化のため狭くなり、血液の流れが悪くなるのが狭心症、血管が詰まって血流がストップするのが心筋梗塞だ。

 冠動脈は、3本の大きな幹から何本もの枝が分かれているが、枝の側に普段は血液の流れてない別の血管(側副血行路)がある。

 心臓に適度の負荷(わずかにきつめの運動)を加えると、心臓は軽い低酸素状態になり、ふだんより多くの酸素を取り入れる必要が生じ、そのため血管が拡張する。
 そして、側副血行路が開いて血液が流れるようになり、血管のバイパスができる。

 これは、すでに狭心症をもっている人には効果的なリハビリになるし、健康な人にとってはあらゆる生活習慣病の最良の予防法の一つである。
 歩く時間は1日30分でOK。

「雨の日も風の日も歩けとは言いません。1日や2日、休んでもどうってことはない。そこが薬と違うところです。薬を1日のみ忘れると具合の悪いこともありますが、運動にはそんな心配はいりません」と、荒川先生はそう請合ってくださった。

追記・上記の「乳酸=疲労物質」説は、近年の生理・生化学的研究で否定された。
だが、運動強度が50%を超えると、乳酸の血中濃度が上昇し、疲労が生じるという現象じたいは事実である。詳しくは後日━(2016年4月3日)。


パニック障害

 若い友人(38歳。会社員)が「パニック障害」にとりつかれた。

 6月初旬のある朝、出社のため乗った地下鉄の三つ目の駅で、ドアが閉まったとたん、わけもなく奇妙な不安感に襲われた。

 いまにも窒息しそうなほど息苦しく、鼓動が激しくなり、あぶら汗が噴き出て、足が震え、満員の電車の床に座り込んでしまった。
 次の駅でふらふらと下車。
 
 受診した病院で「パニック・ディスオーダー(パニック障害)」と診断された。
 2週間おきの通院治療が効を奏し、8月以降、発作は起きてない。

 パニック障害は、以前は不安神経症の一種とされていたが、1992年、独立した疾患として、WHO(世界保健機関)の「国際疾病分類」に登録された。比較的新顔の病気だ。

 当時は医療関係者にもまだあまりよく知られてなく、病名がわからぬまま病院をわたり歩く人が多かったようだ。

 近年は一般的な認知度が高まり、患者の会もできている。

 検査をしても、身体的には何の異常も認められず、心の病気とされているが、最近は脳機能障害としてとらえる考えもある。

 ただ、症状の多くが自覚的なものなので、周囲の人から「気の持ちよう」「心がけのせい」などといわれ、本人も落ち込んでうつ状態になったり、初期治療が適切でなかったため、病気が慢性化する例もあるようだ。

 なるべく早く専門医(精神神経科、心療内科など)を受診すべきだ。
ある種の抗うつ薬と抗不安薬がよく効くといわれている。
  
 この病気を自己診断するためのチェックリストがある。

 ①突然、理由もなく、強い不安に襲われる。

 ②その際、以下のうち4項目以上の症状が出る。
  ●心臓がドキドキする、脈が速くなる。
  ●息切れ、息苦しさ、ハーハー息をする。
  ●息が詰まり、窒息しそうになる。
  ●胸(心臓)が痛い、苦しい、圧迫される。
  ●めまい、ふらふらする、頭がボーッとする、気が遠くなる。
  ●手足や体のふるえ。
  ●発汗。顔や体がカーッと熱くなる、手足が冷たくなる、寒気がする。
  ●吐き気、腹部の不快感。
  ●自分が自分でないような感じ、現実感がない。
  ●今にも死んでしまうのではないかと思う。
  ●気が変になるのではないか、何かとんでもないことをしてしまうのではないかと思う。

 ③発作は4週間に4回以上起こる。または、1回起きたあと、また起こるのではないかと恐れる状態が1ヵ月以上続く。

 ④心臓その他、体の病気が原因ではない。
 以上4項目のすべてに該当すれば、パニック障害が疑われる。

 NPO法人 全国パニック障害の会のホームページ(http://www.jpdc.or.jp)を開くと、医療機関の案内その他、親切な助言が得られる。


夏バテ解消法

 8月も半ばを過ぎるころ頭がボーッとして、食欲が落ちる。
 疲れがひどく、何もやる気が起こらない。
 イライラがつのる。
 夏バテにやられたのだ。

 夏バテとは、文字通り夏の暑さのため体がバテてしまうこと。
 ぐったりと疲れて、食欲がなくなるのが主症状だが、ときに頭痛、多汗、不眠、下痢などを伴うこともある。

 夏バテの解消法は──、
 ①睡眠を十分とる。
 ②水分を補給する。
 ③栄養のバランスのとれた食事を(三食きちんと)とる。
 ④直射日光を避ける―といったところだろう。

 夏バテの最大の原因の一つは睡眠不足。
 睡眠不足を放っておくと体に疲労が蓄積して慢性疲労になりかねない。
 日中できれば15分~20分ぐらい昼寝するとよい。
 椅子にかけたままの居眠りもけっこう効果的だ。

 体の生理機能を正常に保つためには、水の摂取と排泄のバランス(「水出納」という)が正しくコントロールされていなければならない。
 汗をかいたときにそれと同量の水分を補給しないと、体は脱水状態に陥り、体温が上がり、体力が消耗する。
 血液中の水分が少なくなると、血液が凝縮し、血栓ができやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞の危険性が大きくなる。
 尿路結石や痛風も発症しやすい。
 朝、起きたらまず水を一杯、日中の水飲みも......。

 栄養を過不足なく摂ることも大切だ。
 特にビタミンB群は気温が高いと多く消費されるから夏には他の季節の3~4倍も使われる。
 ビタミンB群(特にB1)が不足すると、炭水化物の分解がうまくいかなくなり、分解途中の中毒物質であるピルビン酸とか乳酸などが体内にたまってくる。
 これらは疲れたときにできる疲労毒素と呼ばれる物質と同じものだから、ビタミンB1が不足すると疲労感や倦怠感が生じる。

 ビタミンB群を多く含む食品は、大豆、ピーナッツなどの豆類、シイタケ、セロリ、ニラ、タマネギ、サツマイモ、はい芽米、麦など。肉類では豚肉に最も多い。

 太陽光線を過剰に浴びると、皮膚の老化が進み、白内障や皮膚がんの素地をつくる。
 昔の人も「夏日恐るべし」といっている。

 夏バテの個人差

 ひどい夏バテては、低血圧の人に多くみられる。

 だいたい人間の血圧は冬高く、夏は低くなるのが普通だ。

 寒いときには体の表面の血管が収縮して血液の流れがわるくなるため、血圧が上がり、反対に暑いときには血管が拡張するため血圧が下がる。

 で、もともと高血圧気味の人は、血圧の下がる夏はかえって体調がよくなるくらいだが、低血圧の人は血圧が下がりすぎてしまい、もとからの低血圧症状(めまい、疲労倦怠感、頭痛、動悸、食欲不振、不眠、肩こりなど)がいっそうひどくなる。

 また、ふだんから呼吸器系の弱い人は、多汗、微熱、体の衰弱といった症状が現れやすいし、消化器系の弱い人は、下痢が続き、体が弱るというふうに夏ばての症状はその人の身体的な素因によっても違ってくる。

 低血圧には、背景になにかの病気がある続発性のものと、そうではない体質的なものがある。後者のほうがずっと多く、上記のようなさまざまな症状を訴える。

 いったいに、自分の健康を気にし過ぎるのが、低血圧の人の特徴で、年中、体の不調を訴えながらも、結局は長生きする人が多い。
 そこが脳卒中や心臓病など重大な病気につながることの多い、高血圧とは違うところだ。

 体に気をつけるのはわるいことではないが、度を越すとかえってマイナスになる。あまり気に病まないようにすれぱ、楽になれるのではないだろうか。

 だいじなことは秋の健康チェック。夏バテがどんな形で体にたまっているか、ほかの病気はないか、よく診てもらおう。


長寿サプリ

 レスベラトロールというサプリメント(栄養補助食品)がたいへんな売れ行きらしい。

 先年、空前の大ブームを現出し、いまなお高い人気を維持しているコエンザイムQ10以来のブームだという。

 レスベラトロールとは、なにか?
 植物性のポリフェノール(植物の苦みや渋み、色などのもとになる成分)の一種で、赤ブドウの果皮、赤ワインなどに含まれている。
 これが、抗老化遺伝子とか長寿遺伝子と呼ばれる「サーチュイン遺伝子」を活性化し、寿命を延ばしてくれるのだという。

 では、そのサーチュイン遺伝子とやらは、なにか?
 だれもが持っている遺伝子で、老化を遅らせ、寿命を延ばす働きをする。
 だが、普段は眠っていて働かない。
 生きものが、長い飢餓の歴史のなかで獲得した遺伝子なので、飢餓やカロリー制限によって目覚め、細胞のミトコンドリアを活性化させ、エネルギー効率を高める。
(注=ミトコンドリアとは、細胞の10~20%を占める小器官で、多くの役割を担っているが、最も重要な一つがエネルギーを作りだす働きだ)

 老化要因を抑えて、肌、血管、脳など、さまざまな器官が若く保たれ、結果、寿命が延びることが実験で確かめられた。

 この「衝撃の発見」を、NHKスペシャル「あなたの寿命は延ばせる 発見!長寿遺伝子」は、萩本欽一さんの案内で詳しく伝えた(6月12日放映)。

 番組では、米ウィスコンシン大チームが、約20年前にスタートさせた、アカゲザル集団の比較実験が紹介された。

 実験は、アカゲザル76匹を2群に分けてA群には好きなだけ餌を与え続け、B群はカロリーを約30%減らした餌で飼育した。

 結果、飽食のA群は、38匹中14匹(37%)が糖尿病、がん、心疾患、脳委縮などで死んだ。生き残ったサルも、毛が抜けたぶよぶよの年寄り顔である。

 減食サルのほうは5匹(13%)が死んだが、あとはみんな元気で毛のツヤも良く、きりっと締まった壮年顔だ。

 減食ザルの脳の断層写真を見ると、萎縮はなく、記憶力もすぐれていた。

 サルの実験では40%減食で最もサーチュイン遺伝子の増加がみられたが、これは人では長続きしそうもないので、25%減がよいとされていた。

 NHKの実験では、40代~60代の被験者4人が、30%減らした食事を、3~7週間続けた。それだけで明らかにサーチュイン遺伝子が目覚めて働き始めた。
 腹7分目の長寿効果が実証されたわけだ。

 さて、話が一段と面白くなるのは、このあとだ。
 番組はそれに続いて、サーチュイン遺伝子を活性化する薬物として、レスベラトロールを紹介した。
 このものは、1939年、北海道帝国大学の高岡道夫という人が、バイケイソウという植物の根から発見した物質である。
 1939年といえば、昭和14年、70年以上も昔の話だ。

 それがサーチュイン遺伝子を活性化させることが、近年の研究でわかった。
 動物実験では、長寿、抗炎症、抗がん、血糖降下、放射線障害抑止などの効果が確認されている。

 毎日服用すれば、食事制限なしでサーチュイン遺伝子を活性化できるのだという。

 つまり長寿遺伝子、サーチュインのスイッチをオンにするには、
 ① 毎日の食事のカロリー制限をする(毎食、腹7分目か8分目を守る)。
 ② レスベラトロールを摂取する(減食はしなくてもよい)と、二つの方法があるわけである。

 さあ、どっちがいい?
 そりゃ、聞かれるまでもないよ──というので、レスベラトロール・ブームが起こったのだろう。

 と、ここまで書いて、レスベラトロール、前にもどこかで聞いたことがあったな? と思い出して、「サプリメント」関係の記事のスクラップ帳をめくってみた。あった!

 目に効くサプリの№1、「アサイーベリー Five Star」の説明書にこうある(一部を引用)。

 アントシアンをたっぷり含んだアサイーベリーに、さらなるハッキリ&クッキリ効果を加える成分として、レスベラトロール、クロセチン、ルテイン、ゼアキサンチン、メグスリノキを配合しました。

 アサイーベリー=アマゾンの大自然が育てたミラクルフルーツ。瞳に優しいアントシアニンをブルーベリーの約5倍も豊富に含んでいます。

 レスベラトロール(長寿ポリフェノール)=赤ぶどうに含まれるポリフェノールの一種。優れた働きが日本眼科学会で発表され注目を集めている成分です。─以下略─。

 この「アサイーベリー Five Star」を、血液サラサラ・サプリで知られる「梅肉黒酢」のメーカー心美寿有夢が開発したのは2008年──3年前だ。

「当時、レスベラトロールは、全く知られていませんでしたが、優れた素材であり、いつか脚光を浴びる確信があったので配合したのです」と、同社の印藤晴子社長は話している。

 なお、余談ながら、カロリー制限が老化を遅らせるというサルの実験についての知見は、別の拙稿サイトにすこし詳しく記した。
 興味のある向きは、検索サイトで「それ、ウソです」の「24 名医の誤信?」をクリックしてみてください。


即席めん半世紀

「インスタントラーメン」の元祖、日清食品の「チキンラーメン」が発売されたのは、1958(昭和33)年8月25日だった。

 袋には「体力をつくる 最高の栄養と美味を誇る完全食」とあり、1食(1袋)35円は、東京の中華料理店のラーメン(並)の標準価格40円とほぼ同じ。

 ちなみに、この年の大卒銀行員の初任給は1万2700円、同年12月1日には1万円札が発行された。高度経済成長幕開きの時期だった。

 発売当時の年間生産量は1300万食にすぎなかったが、その後、みそ味、冷やし中華、焼きそば、カップめんなどが次々と誕生。

 いまや世界中の国々で850億食以上が消費され、「国民食」どころか「世界食」になりつつある。
 戦後日本人の食生活を変えた最大の発明の一つだろう。

 その名のとおりインスタント(即時)に食べられるのが、なによりのとりえだが、栄養的にみると、
①糖質に偏っている。
②塩分が多い。
③油で処理したものが古くなると過酸化脂質ができやすいなど、いくつか問題がある。
 
 主食だけで主菜・副菜のない食事と同じようなものだから、例えば「肉入り野菜いため」を加えるなど、栄養のバランスを整えるようにしたい。

 ごはんやパンなどと比べて栄養成分で特徴的なことは、カロリーが高いことと、塩分が多いことの二つだ。

 しかし、ごはん(100グラム=茶碗1杯)や食パン(100グラム=1斤6枚切りの1枚半)には普通おかずがつくからその分を加えるとカロリーの差はほとんどなくなる。

 スープに含まれる塩分は1食で約3グラム、塩分の取り過ぎを避けたい人は、スープを飲み残せばよい。

 アメリカでは、肉食に比べ、小麦粉製のラーメンはダイエット向きで健康にも良いと信じられているそうだ。

 購入のさいは製造年月日の古くなったものや、日なたにおかれたものは避けたほうがよい。


ホウレンソウと貧血

 ビジネスマン心得の「ほうれんそう」は、報告、連絡、相談。

 緑色野菜の代表のホウレンソウは、鉄分が豊富だから貧血に効くとされる。

 子どものころから顔色がよくない、貧血気味だといわれ、頬紅メークでなんとかごまかしているという知り合いの女性。
 長年、レバーやホウレンソウをせっせと食べてきた。健康雑誌にのっていたとおり生で食べて、ご亭主に〃ウサギ女〃なんて言われていたそう。

 ところが、ホウレンソウはかえって貧血によくないという研究報告があることを知り、青白い顔がよけい青くなってしまった。
 本当なのかと、聞かれた。

 結論を先にいうと、本当だが、そう心配するほどのことはないようだ。

 ホウレンソウには鉄分が大量に含まれているので(生100グラム中2・0ミリグラム。ハクサイやキャベツなどの7倍)、鉄欠乏性貧血の改善に効果的といわれてきた。
 
 それがそうではないどころか、あべこべに貧血を助長するという動物実験の結果を報告をしたのは、広島女子大の研究グループだ。

 実験は、血液を4分の1抜いて、人工的に貧血状態にしたラット(実験用シロネズミ)を三つの群に分け、それぞれ、同じ量の鉄分が摂取できるように調整してある①ホウレンソウを混ぜた餌。②小松菜を混ぜた餌。③シュウ酸を加えた小松菜を混ぜた餌を6週間与え、血液を調べた。

 結果、ホウレンソウを与えた群は、血液中のヘモグロビン(血色素)が、小松菜群と比べてはっきりと少なくなり、貧血症状が一層進んだ。

 また、小松菜にシュウ酸を加えた群もホウレン草群と同じようにヘモグロビンが減少した。

 つまり問題はホウレン草に多く含まれるシュウ酸で、これが鉄分の吸収を妨げることがわかったというわけだ。

 もっとも、実験は(ネズミと人間の体重比からして)人が通常食べる量に換算すると、数倍の量のホウレンソウで行われている。

 健康な人が普通に食べる分にはほとんど何の問題もないし、ホウレンソウにはカロチンやビタミンCも豊富に含まれている。

 ただ、貧血の改善に役立たないことははっきりしたわけだからその目的でホウレンソウを毎日たくさん食べ続けるのは逆効果になりかねない。


夏とビタミン

 2、3日、急に涼しくなって、「夏の甲子園が終わると、秋がくる」というのはホントだなと思っていたが、今日からまた暑くなるらしい。
「B足らん」に気をつけよう。

 体内のビタミンB1は、気温の高さに比例して消費される。
 夏にはほかの季節の3~4倍、多く使われる。

 B1は糖質(でんぷん、糖分)を分解するときに必要なビタミンだから、B1が不足すると、糖質の分解がうまくいかなくなり、分解途中にできるピルビン酸や乳酸などの「疲労物質」が体にたまってくる。

 昔の日本人は、肉やバターなどはほとんど食べず、米のめしを栄養源としていた。
 言い換えると、エネルギー源の60%以上を糖質でとっていた。当然、ビタミンB1の必要量が高くなる。

 なのに、玄米を精白するとB1はほとんど失われる。
 昔、「江戸わずらい」と呼ばれたのは、白米を常食したためのビタミンB1欠乏症(脚気)だった。

 今も偏食のせいで軽い脚気のような疲労倦怠感を訴える人が多いが、夏には特に増える。

 アルコールの分解にはビタミンB1は必要ではないが、アルコールがB1の働きを妨げる。
 暑気払いの一杯が過ぎると、B1不足に拍車がかかる。
 酒のつまみには、B1の多い豚肉、のり、ヒマワリの種、枝豆、ピーナッツ、こんぶなどがお勧めだ。

 デスクワークのとき必要なエネルギーは成人男子で1日約2200キロカロリーだが、激しい運動や労働をする人のそれは、約3500キロカロリー。
 夏の炎天下の運動では、それよりさらに多くのエネルギーが必要になる。

 それだけ多くのエネルギーを取ると、それを燃やすためのビタミンも余分に必要になる。
 糖質を燃やすのにはB1が、脂肪を燃やすのはB2、パントテン酸、ビオシンが必要だ。

 激しいエネルギー消費時にはビタミンEが多く消費される。
 カルシウムの吸収、骨の形成にはビタミンDとKが欠かせない。

 運動をすると疲労物質の乳酸の血中濃度が上がり、反対にB1の血中濃度が下がる。
 しかし、運動前にB1とEをのんでおくと、乳酸はあまり上がらず、B1は下がらない。
 運動後の回復も早いことが確かめられている。

 また、果糖はグリコーゲン(エネルギー源となる糖質)をうまく保存し、エネルギーが出せる。
 だが、果糖を取らないとグリコーゲンのムダづかいが生じることも最近の研究でわかり、多くのスポーツ選手は、プレー前に果物(果糖)を食べるようになっているという。


五木さんの養生法

 健康法と養生。どちらも同じようなものだろうと思っていた。

 五木寛之さんのかんがえは、そうではない。

「健康法は、身体を大切にする方法です。それに対して、養生は、命を大切にする生き方です。ほんのちょっとの違いではあります。だが、そのちょっとの違いに何かがある。そう思って今日まで養生につとめてきました」
 と、近著『きょう一日』(徳間書店)のなかで述べている。

 同書をもとに構成した、壮快 2011年 10月号の特集「五木寛之さんの養生法」によれば、五木さんは、子どものころから体が弱く、50代半ばまで体調不良が続いた。健康を維持するためにさまざまな方法を試してきた。

壮快 2011年 10月号 [雑誌]


 結果、この秋9月には79歳になる現在も、大作『親鸞』の新聞連載をはじめ、壮年期と変わらぬ活力を保ち、仕事を続けておられる。

「身体の言葉に耳を傾け」ることで、五木さんが効果を確かめながら続けてきた養生法の数々を、医学ジャーナリストの速水千秋さんがまとめたこの特集、じつに味が濃くて、滋養がたっぷりつまっている。

 なかの二つ三つを、短くご紹介しよう。

 五木さんは、朝、目覚めると、布団の中で寝たまま、両手をすり合わせたり、指をそらしたり、爪をもんだり、耳をつまんで引っ張ったり......といった刺激を、30分くらいかけて行う。

 心臓や脳など、重要な中心部は、手先、足先、皮膚、耳などの末端で支えられている。
 末端が大事、というのが五木さんの持論。

 手の爪の生えぎわを、もう一方の手の親指と人差し指で押しもみする「爪もみ」をやっていると、「胃腸がキューッと音をたてて鳴ることがある」そうだ。

「基本的に怠け者で、好きなことしか続かず、しかも意志が弱い。三拍子そろった人間」と自認する五木さんが、心身を整えるには禅もやりたい、呼吸法も必要。
だったら、寝転がって、呼吸をやったら......と思いついたのが、五木流「寝禅」+「呼吸法」だ。

 仰向けに寝た姿勢で、両足の裏をぴったり合わせて、両手でひざを左右に開く。
このポーズで深呼吸をすると、自然と腹式呼吸になる。

 一度、軽く息を吐いたあと、一、二、三で吸って、その息をゆっくり一五まで数えて、吐き切る。

 それから、両足を軽く開いて伸ばし、両手をへその下(丹田)に当てる。
そして、そこに宇宙の中心があるつもりで、深呼吸をしながら、なにか自分で元気になるような言葉をつぶやく。
 毎日、自分を支えてくれる身体に対して、ありがとうと感謝する気持ちを、口に出して言う。
 言葉はなんでもかまわない。
 自分で作った言葉、自分が好きな言葉、それがだいじだ。

 五木さんの養生法の基本は、無理をしないということ。
 好きなこと、楽しいこと、面白いことだけをやる。

 いくつか例を挙げると、五木さんは、夏でも冬でも、必ずソックスを重ねてはき、腹を冷やさないようにシルクの腹巻きを巻いて、寝る。

 風呂は、朝晩2回。温度はその日の気温と、自分の体感で、ちょうど「いい加減」に調整する。
 時間があれば1時間でも2時間でも湯につかって、文庫本を読み、ヨーグルトを食べる。

 こうした五木流養生法の一つ、一つについて、それがどのように理にかない、心身のしくみを改善するのに役立っているかを、免疫学者の安保徹・新潟大学大学院教授が、わかりやすく解説し、助言しているのも、この特集のもう一つの読みどころである。

 ところで、爪もみ、寝禅、腹式呼吸、靴下の重ねばき、半身浴その他、五木さんの養生法には、『壮快』がこれまでしばしば特集し、広めてきたものが少なくない。
 これ、なにかとても興味深く思われるのである。



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