暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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家庭薬・医薬品

「胸焼けに重曹」は逆効果

牛乳を飲めばよい


焼き芋のうまい季節が到来した。

焼き芋や甘いもの、脂っこいものを食い過ぎると胸焼けがする。

このとき、重曹を一と匙、冷たい水で飲み下すと、たちまちスーッとおさまる。

子どものころ、祖母がそれをやっているのを見たことがある。

そのように「胸焼けにはソーダ」は、昔からよく知られている庶民的な健康常識だ。

だが、この「おばあさんの知恵」は、一見ホントみたいだが、ウソである。

たしかに重曹を飲むと、胸焼けの症状はたちまち解消される。

しかしその効果は一時的なものでしかない。

30分もすれば元に戻ってしまう。

なぜか?

胸焼けは、酸性の胃液が食道内に逆流するために起こる。

胃の中にアルカリ性の重曹(炭酸水素ナトリウム)が入ると、胃酸(胃液中の塩酸)と反応し、中和する。

胸焼けがしずまる。

ところが、中和によって二酸化炭素(炭酸ガス)が発生する(ゲップがでるのは、そのためだ)。

この炭酸ガスが刺激となって新たな胃酸が分泌される。

再生産された胃酸は食道へ逆流し、胸焼けが再発する。

「あれ? ソーダー、効かなかった。量が少なかった?」

と、もう一度、重曹を飲むと、また同じことがくり返される。

食道の炎症はさらに悪化する。

つまり、胸焼けの重曹服用は根本的な解消法にはならないばかりか、かえって症状を増悪させる。逆効果でしかない。

では、どうする?

牛乳を飲めばよい。

牛乳も同じように胃酸を中和するが、炭酸ガスは生じない。ゲップはでない。

細かな粒子となって胃壁に付着し、胃を保護する。

ただし、ごくごくと一気に飲むと、胃酸と一度に反応・凝固し、胃壁を保護する効果はえられない。

ゆっくり、唾液と混ざるような感じで飲むのがよい。

ところで、胸焼けにもいくつか種類がある。

焼き芋などを食べ過ぎたときの胸焼けは、糖質や脂質の過剰摂取によって胃酸の分泌促進が起こるためだ。

急いで食事をしたりしたときも、胸焼けがよく起こる。

食道の中の圧力が上がったり、食道の下部が押し広げられ、胃液が逆流しやすいからだ。

食べ物が食道内に入ると、正常では収縮波が食道にあらわれ、食べ物を胃のほうに向かって押し進める。

そうした食道の動きがうまく調節されず、収縮がくり返し起こっても先に進んでいかないことがある。

この場合も食べ物がつかえる感じと一緒に胸焼けが生じる。

高齢者ではこのような胸焼けがよくみられる。

病気の症状として起こる胸焼けも多い。

食道裂孔ヘルニア・逆流性食道炎、胃・十二指腸潰瘍、食道けいれん症などだ。

精神的ストレスによる胸焼けもある。

大きな心配事があり、ものがのどを通らないときの胸やけが、それだ。

妊娠初期にみられる胸焼けには、このような精神的な面も関係しているようだ。

胸焼けがひんぱんに起こるときは消化器内科へ―。

余談。

呑酸嘈囃。なんのことだか、おわかりですか?

『広辞苑』によると、

呑酸(どんさん)は、

「酸味のある胃液が口腔内に逆流する現象。胃酸過多症などの一症状。げっぷ」である。

嘈囃(そうそう)は、本見出しではなく、「むねやけ」の項に、

むねやけ【胸焼け・嘈囃】食道内に灼熱感の起こること。云々―。

と、空見出しとしてだけある。

―てなわけで、ゲップ、胸焼けの症状を、むかしのお医者さんは「呑酸嘈囃」とカルテに記した。

なお、同音類似語の「嘈嘈(そうそう)」は、「①声の調子のはやいさま。②声のさわがしいさま」のことである。


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にせ水虫にだまされるな!

◎ホントの水虫は3分の2

水虫の季節。

皮膚科に駆け込む人がどっとふえているが、このさい、ハッキリ知ってほしいことは、足(ときには手)がかゆい、小さな水ぶくれができて薄皮がむける─といっても、その全部が水虫とは限らないということだ。

ことに足の裏にできたものは、だれでもすぐ水虫と考えがちだが、そんなことはない。

日本臨床皮膚科医会のメディアセミナーで聞いた話だが、「水虫です」といって来院した人の、患部の角質を採取し、顕微鏡で調べる「鏡検」を行ったところ、ホントに水虫だった人は3分の2で、3分の1は水虫ではなかった。

異汗性湿疹=汗疱(かんぽう)、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、接触性皮膚炎その他、紛らわしい皮膚病はいくつもある。

そうした「にせ水虫」を水虫と思い込み、自己診断で水虫の薬を使うと、病気が治らないばかりか、かえって症状が悪化してしまう。


◎水虫が好きな環境

水虫の正体はカビの一種の白癬(はくせん)菌だ。

水虫の人の足からはがれ落ちた乾いた皮膚の中には、白癬菌が巣くっている。

屋内のあちこちに散らばった、その"水虫カビ"が別の人の足にくっつき、水虫をつくる。

もっとも、カビがくっついたからといって、だれでも、いつでも、すぐ水虫になるわけではない。

皮膚に傷がなければ、白癬菌が角質層に入り込むのに24時間以上かかる。

それまでに洗い流せば感染しない。

カビが繁殖するのには高温多湿の環境が必要だ。

蒸れてじめじめした状態が長く続いたとき、はじめて白癬菌はそこに根づき、水虫が発症する。

何日も風呂に入らなかったり、同じ靴下をはき続けたりすると、水虫の発症率はぐんと高くなる。

頑固な水虫もちの夫と何年も一緒に暮らしていても平気だったのに、パート勤めを始めたら水虫ができたという女性の例がある。

それまではいくら白癬菌がくっついても根づくことはなかったのだが、長時間、靴をはき続ける生活を始めたために白癬菌感染の条件が整ったというわけだ。


◎塗れば必ず治る!

昔は水虫に効く薬がなかったので、「水虫の特効薬を発明したらノーベル賞だ」といわれた。

いまはノーベル賞クラスのよく効く水虫薬がいくつもある。塗れば必ず治る。

だが、「皮膚科に行っても治らない」、「薬局で求めた薬を塗っても治らない」という人がとても多い。なぜか?

完全に治ってなくて再発したか、再感染したか、水虫ではなかったか―の、どれかだろうというのが、専門医の答えだ。

塗れば必ず治るといっても、1日1回、4週間きちんとつけないと完治しない。

2週間ぐらい塗ると、かゆみなどの自覚症状がなくなる。

そこで薬をつけるのをやめてしまうと、来年の夏、再発する。


◎民間療法全部ペケ

再感染の例も少なくない。

水虫の人のいる家庭ではそこらじゅうに白癬菌がばらまかれているし、温泉、サウナ、銭湯などの足ふきマットにも100%、白癬菌がいるからだ。

家族に水虫もちがいたら、足ふきマットやスリッパは共用しないほうがよい。

ただ、前記のように菌がくっついたからといって即、感染するわけではない。

毎日入浴して体を清潔に保てば、さほど心配はいらない。

薬局で買った薬が効かなかったのは、水虫ではない湿疹などを水虫と思い込み、水虫の薬を塗ったからだろう。

それだと治るはずがないし、薬にかぶれてかえってひどくなることもある。

市販薬にも医療用の薬と同じ成分が転用されているので、水虫だったら必ず効く。

薬局で買った薬をつけて、症状が軽快しなかったら「ニセ水虫」と断定してよい。

しかし、もし爪の水虫(爪白癬)があったら、それを治さないと、足の水虫も完治しない。爪の水虫には塗り薬が浸透しくいので、飲み薬を用いる。

爪が生え替わるまでの期間、およそ半年~1年の服薬が必要だ。

なお、水虫にもやけどと同じように「民間療法」がいっぱいある。

酢に足をつける。ニンニク、アロエ、ショウガ汁をつける。炎天下の砂浜を素足で歩く。ろうそくの滴をたらす。太陽光線に当てる。

全部ペケだ。


傷と傷跡ケア

湿潤療法

夏休みが始まった。日本中のすべての子どもに呼びかけたい。

ゲームを捨てて、外で遊ぼう!

そこでちょっと心配なのが、ケガ。

元気な子ほどすり傷や切り傷をつくりやすい。

そんなときの応急手当は?

昔は、傷口を消毒し、薬を塗り、ガーゼを当て、包帯を巻いた。

これ、マチガイ。

今は、まず水道水で傷を洗う(ほこりや土にはばい菌がいるので、きれいに洗い流す)。

そのあと被覆材(バンドエイド・キズパワーパッドなど)を当て、ばんそうこうで固定する。

そうすれば傷口から出る浸出液で適度に潤いが保たれ、痛みも少なく、治りも早い。

モイスト・ヒーリング(湿潤療法)という。

だが、この適切な処置方法を半数以上の人が知らなかった。

傷跡ケアの保湿化粧品「バイオイル」の輸入代理店ジャンパールが行った意識調査(全国600人=10代~60代の女性、各年代100人)によると、

水道水でよく洗う=44.5%。

消毒する=46.3%、だった。

傷は皮膚が欠損した状態だ。

それを修復するためのさまざまなしくみが働き、皮膚細胞が再生し、新しい皮膚ができる。

傷口にしみ出てくる体液(浸出液)のなかには、細胞の成長を促し、皮膚を修復するためのいろいろな成分が含まれている。

消毒は浸出液の働きを妨げ、傷の治りを遅らせる。

傷を覆い、湿潤環境を保てば、浸出液が働いて、傷は早くきれいに治る。

繰り返す。家庭で治せるような傷は、水道の水でよく洗い、被覆材を貼るのが一番。

被覆材の用意がなかったら、台所のラップを使えばよい。

意識調査では、やけどの応急手当も聞いた。

「水道水で冷やす」と、96.5%が正しく答えたが、

「30分以上冷やす」は、600人中わずか11人(1.8%)。

「5分以内」が最も多く、235人(39.2%)だった。

余熱でやけどを進行させ悪化させないためには20~30分水道水で冷やすのがよい。

そのあとはすり傷などと同じように湿潤療法を行う。

ただし、日本熱傷学会の調査では、やけどを食品用ラップなどで覆って治す湿潤療法で、かえって症状が悪化する例があることがわかったという。

調査委員会の安田浩・産業医大准教授(形成外科)は、

「湿潤療法の効果は確かめられているが、正しい知識を持つ医師が医療用シートでやらないと危険だ」と注意している。

すり傷・切り傷も、傷口が深かったり、ギザギザになっていたり、ガラスや木くずが刺さっている場合も病院に行ったほうがいい。

傷は適切な処置をすれば、以後は痛まないのが普通だ。

もし、半日か一日もたってから傷口がズキズキと痛んだりするようだったら、細菌の2次感染が始まっていると考えて医師に診てもらうべきだ。

「傷跡ケア」

さて、そうして傷ややけどが治ったあとのケアもだいじだ。

表皮までの軽い傷は、かさぶたをつくらない湿潤療法をすれば傷跡は残らないが、真皮、皮下組織に達した傷は跡が残る。

適切な治療をしたあと、傷跡のある肌を乾燥と紫外線からきちんと守れば、傷跡がひどくなるのを防いで、できた傷跡も薄くできる。

だが、そうした「跡ケア」で傷跡が目立たなくなることを知っていたのは、およそ2割の132人だけ。

残りの468人(78%)は「知らない」と答えた。

「正しい知識さえあればきれいな肌を保つことができるのに、残念なことです」と、ジャンパールの人は言っている。

どうしたらいいか?

傷跡を目立たなくする3ヵ条。

①絶対にダメ! 乾燥!

乾燥大敵! ベタつかずにオイル分を補える美容オイルや、ローション、クリームで保湿を。

②絶対にダメ! 紫外線!

紫外線は過剰な修復の原因になるので遮断が鉄則。

完治後は、日焼け止めや衣類でカバーするよう心掛けましょう。

③絶対にダメ! 摩擦!

摩擦も、引っかくのもNG! 引っかき傷は意外に目立つ傷跡を残します。医療用テープやパッドで保護を。

「どんな傷も治った後は、セルフケアが傷跡を左右します。傷跡を目立たなくする3ヵ条を、毎日の習慣にしましょう」


足のむくみに潜む病気・よく効く薬

 足のむくみ実態調査

 夕方、仕事を終えるころ靴がきつくなる。

 その程度の足のむくみは、だれもが普通に経験していることだが―。

 その背後に厄介な病気が潜んでいることがある。が、そのことを知らない人がとても多い。

 エスエス製薬株式会社(東京都中央区。石橋利哉社長)は、足のむくみについての意識と実態をさぐる調査を行った。

 予備調査(対象=全国の20代~50代の女性10,000人)

 過去1年以内に足のむくみの経験あり=50.9%、経験なし=49.1%。

 経験ありの内訳

 ①症状に非常に悩まされることがある=11.8%

 ②症状にやや悩まされることがある=20.0%

 ③症状はあるが症状に悩まされることはない=19.1%。

 本調査(対象=①②群中の1,000人)

 足のむくみに悩む時期

 1年中=71.1%

 ◎夏の悩み

 太って見える/足が太く見える=62.5%

 足のラインにメリハリがなくなる=36.0%

 全身がだるくなる=33.5%。

 ◎冬の悩み

 靴やブーツがきつくなる=54.7%

 太って見える/足が太く見える=50.9%

 全身がだるくなる=34.5%。

 足のむくみに気づく時間 

 18時~20時台=59.2%

 21時~23時台=36.3%

 15時~17時台=36.2%。

 足がむくんでいると感じるとき

 帰宅して靴下・ストッキングを脱いだとき=42.8%

 お風呂に入っているとき=35.3%

 仕事が終ったとき=34.8%。

 足のむくみの頻度

 ほぼ毎日=28.0%

 週2~3日程度=25.4%

 週4~5日程度=18.0%。

 足がむくむとどうなる?

 靴下の跡が消えない=71.4%

 だるさを感じる=66.5%

 重量感を感じる=51.4%

 冷えやすくなる=43.2%

 足が腫れる=41.15%

 つらさの順 

 足がだるい=42.7%

 足が重たい=24.5%

 足が冷える=20.2%。

 ●足のむくみの原因

 足のむくみ、なぜ起こると思いますか?

 ①冷え=61.1%

 ②運動不足=57.8%

 ③長時間立っていること=45.5%

 ④長時間座っていること=33.0%

 ⑤水分の摂り過ぎ=25.3%

 ⑥姿勢が悪い=24.8%

 ⑦加齢=24.7%

 ⑧太り過ぎ=20.9%

 下記が足のむくみの原因と知っていますか? 知っている(詳しく知っている+なんとなく知っている程度の合計)

 リンパ=75.9%

 血流=71.9%

 血管=46.3%

 静脈=32.1% 

 この病名を聞いたことがある?

 静脈還流障害 ある=19.2% ない=80.8%

 慢性静脈不全 ある=24.3% ない=75.7%

 下肢静脈瘤 ある=48.7% ない=51.3%

 くもの巣状静脈瘤 ある=33.0% ない=67.0%

 足のむくみを病気かも? と疑ったことがある ある=10.6% ない=89.4%

「静脈還流障害」の説明を聞いて、どう思いましたか?

 足のむくみは軽視してはいけない=87.3%

 不安になった=69.6%

 驚いた=66.6%

 ●足のむくみ対策

 普段の足のむくみ対策は? している=90.5% していない=9.5%

 どんな対策を? 

 自分でマッサージ=63.1%

 足を軽く動かす(伸ばす、回す、曲げるなど)=47.6%

 着圧ソックス・ストッキングを履く=40.3%

 バスタブにつかる=40.8%

 ストレッチをする=37.7%

 足を高くして寝る=36.8%

 満足度は?

 満足している=38.3%

 どちらともいえない=40.4%

 満足していない=21.2%

 満足していない理由

 効果がないから/効果が実感できないから=63.5%

 効果が持続しないから=53.1%

 面倒だから=40.1%

 お金がかかるから=14.1%

 足のむくみ対策をしていない理由

 なにをすればよいのかわからない=48.4%

 それほど深刻だとは思っていない=31.6%

 面倒だから=13.7%

 やっても効果が出るとは思わないから=9.5%

 ●まとめ─

 足がむくみ、だるさ、痛み、重たさを感じ、ふくらはぎやくるぶしを指で押すと、くぼみができたりする場合、慢性静脈不全(静脈還流障害)と呼ばれる静脈の病気が潜んでいるかもしれない。

 決して軽視したり、我慢してよい状態ではない。

 足のむくみに悩む人は、20代~50代の女性の半数にも上るにもかかわらず、足のむくみの対策に満足している人は4割にも満たない。

 そのうえ、足のむくみを病気と疑ったことのある人はきわめて少なく、足のむくみの原因が静脈にあることを知っている人も少ない。 

 足のむくみ 静脈に原因のある場合は初期対応が重要

 本調査に関連して、日本静脈学会名誉会長の星野俊一先生(福島県立医科大学名誉教授、福島第一病院理事長)は以下のように解説されている。

「むくみとは、体の細胞と細胞との間(細胞間質)に水分(血液成分)がたまった状態をいいます。

 ヒトは毛細血管から細胞間質へ毎日約20ℓの水分を供給していますが、そのうち約80~90%は毛細血管に静脈血として、残りの約10~20%はリンパ管にリンパ液として、再び取り込まれます。

 一般的には、"むくみの改善=リンパ液の流れをよくすること"と考えられがちですが、老廃物を含む水分を回収して心臓へ戻す役割の多くは静脈が担っているのです。

 この調査の結果でも静脈がむくみの原因であることを知っている人は3割と、静脈の重要性はまだあまり認識されていないようです。

 静脈の機能は一度失われてしまうとなかなか元には戻りません。

 まずは静脈の重要性を正しく理解していただきたいと思います。

 むくみの原因は、むくみが起こる部位によって二つ考えられます。

 一つは全身的に腎機能障害や心臓病、糖尿病などの疾患により血管内の血漿成分が浸出して細胞間質にたまるものです。

 もう一つは下肢(足)の静脈やリンパ管の不全によるものです。

 前者の場合は全身的にむくみの症状が発現し、後者の場合は局所─足にむくみの症状が発現します。

 足は、心臓から遠く離れたところに位置し、

しかも重力に逆らって血液を心臓まで戻す必要があるため、むくみが出現しやすいのです。

 水分を心臓に戻すルートである静脈に通過障害や血流の逆流があると静脈圧が高まり、血管から血液成分が浸出して細胞間質に水分がたまってしまいます。

 それが静脈還流障害による"血管性むくみ"が生じている状態です。

 足の血管性むくみは、一時的には水分の取りすぎや長時間立位か座位でいることによっても引き起こされますが、症状が何日も続く場合には"慢性静脈不全"が隠れていることがあります。

 ●日本人に多い慢性静脈不全

 統計では、慢性静脈不全の罹患者は人口の約40~50%にみられると推定されています。

 日本人には海外よりも慢性静脈不全が多くみられ、特に成人女性の約60%以上は、軽度の慢性静脈不全の可能性があるともいわれています。

 慢性静脈不全の症状は、足のむくみのほか、だるさ、重さ、つっぱり感、痛みなどです。

 運動が制限された長時間の立ち仕事や座ったままでの生活は、下肢の筋肉によるポンプ作用が働かないため、慢性静脈不全になりやすく、加齢、家族歴、肥満なども危険因子に挙げられます。

 たかが足のむくみ...と放置しておくと、静脈瘤や下肢の褐色調変色、下腿の皮膚潰瘍など重症化を招くことになるので、初期の対応が必要です。

 しかし、日本の初期治療は、専門家の指導下での医療用の弾性ストッキングなどによる圧迫療法しか選択肢がありません。

 ヨーロッパでは、西洋ハーブによる治療が薬物療法として早くから確立され、特に初期においてはむくみ治療の代表的な対処法として知られています。

 赤ブドウの葉のエキスが医薬品として長年使われてきて効果が実証されています。

 症状が長く続いたり、痛みを伴うようなら自己判断せず、速やかに医師または薬剤師に相談してください。

 ●慢性静脈不全のチェックリスト

□足にむくみがある(すねを指で5秒以上押して離した後、くぼみが残る)

□足の重量感、だるさ、つっぱる、痛いなどの自覚症状がある

□長時間、同じ姿勢(立ったまま・座ったまま)で過ごすことが多い

□加齢とともに足のむくみがひどくなってきた

□ほとんど運動しない

□足のむくみや重量感、だるさなど自覚症状が起床後も取れない、または何日も続く

□家族に足のむくみや静脈瘤を経験した人がいる

□肥満傾向(BMI25以上)にある

 ※ BMI(ボディマスインデックス=体格指数)は、体重(kg)を身長(m)の二乗で割った数値。疾患罹患律が最小を示す値(日本では22)を標準とする。

 チェック項目に一つでも当てはまる人は慢性静脈不全(静脈還流障害)が疑われます。

 チェックが多くつく人は、すでに慢性静脈不全の可能性。足の静脈の血流を改善するための対策が必要です。

 足だけでなく全身のむくみの症状が出る場合には他の原因が疑われます。


 足のむくみの薬物療法=赤ブドウ葉エキス

 慢性静脈不全(静脈還流障害)の治療法は─、

 ①足がむくむだけの軽度(初期)の場合は弾性ストッキング(圧迫療法)が、

 ②静脈瘤や皮膚色素沈着などからさらに皮膚障害や静脈性皮膚潰瘍などがみられる重度(後期)の場合、静脈瘤硬化療法、ストリッピング治療、レーザー治療などが行われる。

 ヨーロッパでは初期の静脈還流障害を改善する薬物療法として、西洋ハーブ=赤ブドウの葉の乾燥エキスが早くから用いられ、効果が実証されている。

 2001年、欧州医薬品庁(EMA)の生薬委員会は、西洋ハーブ医薬品を分類/整理し、

 A=Well-estabilishd use(科学的根拠のしっかりしたエビデンスデータが揃っているもの)

 B=Traditional use(伝統的に医薬品として販売されているもの)の2群に大別した。

 赤ブドウの葉の乾燥エキスは、A群に認定された。

 日本では、2007年、西洋ハーブを医薬品として認可するための審査方針が厚生労働省より示された。

 生硬な官庁用語で示されたその方針を、ひらたく要約すると、

「先進諸国で一般用医薬品として広く使用されている生薬製剤で、臨床試験や種々のデータにより有効性と安全性が証明され、品質が保証されている」ということになる。

 この厚労省の審査方針にもとづき、2001年1月、ダイレクトOTC医薬品の承認を取得、2013年6月3日、「飲む、足のむくみ改善薬」として発売されたのが、赤ブドウ葉乾燥エキス剤『アンチスタックス』だ。

 アンチスタックスは、日本で最初に発売された西洋ハーブ医薬品で、足のむくみに対応する唯一の医薬品である。

 用法・用量=1回2カプセルを1日1回服用。

 効能・効果=軽度の静脈還流障害による足(ふくらはぎ、足首など)のむくみ、むくみに伴う足のだるさ・重さ・つっぱり感・痛みなどの改善。

 ●アンチスタックス臨床試験

 足に重さや疲れ(だるさ)などの症状を感じ、医師の触診により足の静脈の血流の滞りでふくらはぎなどにむくみがあると診断された179人に、アンチスタックスを1日1回2カプセル、12週間服用してもらった。

 投与終了時の全般改善度は―、

 著名改善=38.5%

 中等度改善=42.5%

 軽度改善=14.0%

 不変=2.8%

 悪化=2.2%

 著名改善+中等度改善の改善率(全般改善率)は81.0%。軽度改善を加えると95.0%、じつによく効く薬といっていいだろう。


服薬実態調査

 子どもの薬の服用に注意を払う保護者は9割以上(93%)だが、自分の服薬については無頓着である人が少なくない。

 くすりの適正使用協議会が、全国の小・中学生の保護者600人(25~59歳)へのインターネット調査でわかった。

 子どもの薬については、1人で勝手に服用しないこと=63%、用量を守る=56%、服用時間を守る=50%と、きちんと気をくばっている人が多かった。

 一方、親自身は72%が処方薬の服用を止めたことがある。

 理由は、回復したと自己判断し止めた=84%、効き目がなかったので止めた=12%、面倒になったため止めた=10%など、自分の判断で服用を止めていた。

 また、家族の余った処方薬を服用した経験がある人は40%で、そのうち7775%が「誰にも相談せず」、25%が「誰かに相談してから服用した」だったが、その相談相手として最も多かったのは家族=84%で、医師、薬剤師=1313%をはるかに上回った。

 また、薬の服用法についても大いに問題ありだった。

 薬は水・ぬるま湯でのむというのは、常識的に知られているはずだが、そうでないのみ方をする人が、よくある=27%、時々ある=40%と7割近い。

 最も多いのは日本茶=52%で、スポーツドリンク=30%、コーヒー=17%、紅茶=10%の順。

「水やぬるま湯以外の飲み物でくすりを服用するのは、くすりの吸収が遅くなったり、効き目が弱くなることがあります。極力避けるべきです。

 また、くすりの種類によっては、決められた期間、服用し続けなければいけないものがあります。

 例えば、血圧が下がり、体調が改善されたと勝手に判断し、降圧剤の服用を途中で止めると、再び血圧が上昇してしまう恐れがあります。

 同じ疾患でも、その時々の体調や、既往症などによって処方される薬の種類、組み合わせが変わる場合もあります。

『家族が服用していたから、自分が服用しても問題ない』と安易に考えるのは危険です」と、同協議会はコメントしている。


優しい薬

高齢者と薬

 65歳以上の高齢者の3人に2人(67.4%)が病院で処方された薬をのんでいる。

 男女1000人(男53%、女47%)に対する東大大学院の澤田康文教授(医薬品情報学)らの調査結果だ。

 降圧薬の33.44%を筆頭にコレステロール低下薬19.8%、睡眠薬9.8%、胃腸薬9.2%、糖尿病薬7.5%、骨粗しょう症薬5.2%、前立腺肥大症薬5.2%、狭心症薬4.8%、ぜんそく薬2.1%、心不全薬1.9%、片頭痛薬0.9%、その他19.1%だ。トータルが118.9%になるのは、複数の薬をのんでいる人が少なくないからだ。

 そうした薬の服用時に嫌な思いをしたことがある人が男性では42%、女性では60%。内容は、のどや食道につかえた、苦い味、変な味がした、口の中に残って不快、大きくてのみにくい、1回にのむ薬の数が多くて大変だ...など。

 それでも90%以上の人は、なんとか我慢して服用しているが、どうしてものむことができず、その薬の服用を中止したという答えが7.6%もある。

 口腔内崩壊錠

 薬がのどにつかえてのみ込みにくく、服用を止める人さえいる。

 同じようなことは乳幼児でもみられる。

 水分摂取が制限されているため、服薬に難渋する患者もある。

 そうした人や障害をもつ人などが容易に服用できる「バリアフリー製剤」として開発されたのが、口に入れるとすぐ溶ける口腔(こうくう)内崩壊錠(OD錠)だ。

 突発的症状のとき、水がなくてものめることから、一般薬にも応用され始めている。

 この第1世代OD錠からさらに進化した第2世代の製剤技術を適用したのが、降圧薬のアムロジンOD錠(大日本住友製薬)。

 高血圧患者の3分の2は高齢者だから、首都圏の老人ホームなどで65歳以上の男女410人に、製剤見本を用い個別に聞き取り調査を行い、つかみやすく、のみやすい、総合的によい錠剤の大きさを決めた。

 体にまひの残る人にものませやすく、介護が楽になったとの家族の声も聞かれるそうだ。

 「家族の気持ちで薬づくりを考える」が、同社のモットーだという。


三つの要因

 ずいぶん以前から言われていることだが、がんの痛みに対する治療は、日本は世界に比べてかなり遅れている。

 世界保健機関(WHO)の指針が示す徐痛率レベルに達しているのは緩和ケア病棟のほかは、がんセンターとがん拠点病院などが約60%、大学病院約40だという。他は推して知るべしだろう。

 日本のがん疼痛(とうつう)治療がなかなか進まない要因として、次の三つを専門家は指摘している。

 ①医師に遠慮して患者が痛みを積極的に訴えない。

 ②医師が抗がん治療のみを考え、痛みを病気が示す症状の一つにすぎないとみて、痛みへの関心が浅い。

 ③痛みの治療に用いる医療用麻薬に対する偏見と誤解がいまだに強い。

 がんの強い痛みへの鎮痛薬として、WHOが推奨している強オピオイド(モルヒネ、フェンタニル、オキシコドン)の使用量は、日本は欧米諸国の3割以下だ。

 緩和ケア普及啓発事業「オレンジバルーンプロジェクト」は、「がんの痛みやつらさを一人で抱えていませんか」と訴えている。

詳しくは、www.kanwacare.netを─。


我慢しないで!

 がんの痛みは、モルヒネなどの医療用麻薬の飲み薬や張り薬を定期的に用いて抑える。

 それによって中毒になったり、死期を早めるということは絶対にない。

 健常者では依存が起こるが、強い痛みを感じている状態では依存が起きないことは、以前から臨床的にはわかっていたが、1990年代後半にそのメカニズムが解明された。

 痛みをとったほうが長生きすることも確かめられている。

 飲み薬や張り薬のほか、①腹腔(ふくくう)神経叢(そう)ブロック②硬膜外ブロックなどの治療法もある。

 ①は神経破壊薬(アルコール、フェノール)を注入し、胃がんや膵臓(すいぞう)がんなど上腹部の痛みを抑える。

 長期間の徐痛効果が得られるので退院が可能となったり、鎮痛薬の量を減らせたりし、患者のQOL(生活の質)改善につながる。

 ②は脊髄(せきずい)をおおっている硬膜の外にカテーテルを通し、麻酔薬を注入し、痛みの神経を遮断する。優れた鎮痛効果が得られる。

 痛みは我慢せず、率直に強く訴えよう。


WHO方式

 がんの痛み治療の基本は、WHO(世界保健機関)が1986年に発表した。

「非オピオイド」「弱オピオイド」「強オピオイド」と3段階に分類された鎮痛薬を、患者が感じる痛みの程度によって処方する。

 オピオイドとは、痛みを感じて脳へ伝達する神経組織のオピオイド受容体に結合して痛みを緩和する「医療用麻薬」の総称だ。

 軽度の痛みには非オピオイドの消炎鎮痛剤──アスピリン、アセトアミノフェリン、イブプロフェン、インドメタシンなどが用いられる。

 軽度から中等度の痛みには弱オピオイドのリン酸コデイン、低用量のオキシコドンを用いる。

 中等度から高度の痛みには強オピオイドのモルヒネ、フェンタニル、通常用量のオキシコドンを用いる。

 弱オピオイドと強オピオイドの鎮痛作用には1:10以上の効力の差がある。

 剤形には経口薬、張り薬、座薬、注射薬とあり、痛みの程度に応じて、薬を追加したり、組み合わせを変えたりする。

 この「WHO方式」によって、がんの痛みの80~90%は抑えられることが実証されている。


麻薬迷信

 もう三年になる。

 北国の秋が深むころ、北村透谷や島崎藤村のすぐれた論究で知られた近代文学研究者、藪禎子氏(享年78)が亡くなった。

 藪さんは、2008年12月、突然の腹痛で入院した病院で胆石症と診断されたが、「胆のうに影がある」と言われ、年が明けて、札幌市内の医大病院に転院した。

 手術の適応を超えている胆のうがんとわかり、抗がん剤による治療が行われた。

 3月中旬にいったん退院、通院治療を受けていたが、しだいに悪化、再入院した。

 食事を一切受けつけず、栄養成分の輸液と点滴が続けられたが、激痛を訴えるようになった。

 伝え聞くところでは、痛みがひどくても、患者ご本人が「モルヒネは怖い」と言い、用いなかったという。

 知識人の間にもまだそんな「麻薬迷信」が残っていたとは!

 おどろき、なげいた。

 事実は全く逆で、モルヒネなどで痛みを抑えたほうが病状も安定し、延命効果もあるとわかっている。

 不肖マルヤマも前立腺がん13年目。

 最期のときは、①極力、痛みを抑え(からきし意気地なしなのだ)、②人工呼吸装置などの延命処置は無用──と主治医に強く望みたい。

 そう心に決めている。



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