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睡眠不足は肥満も招く!

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「春は眠くなる。猫は鼠(ねずみ)を捕る事を忘れ、人は借金のある事を忘れる。時には自分の魂の居所さへ忘れて正体なくなる」

ご存じ、夏目漱石「草枕」の一節だ。

春に眠くなるわけは、気候変化(寒暖の差)の影響で―、

①自律神経のバランスが崩れる。

②ホルモン分泌が乱れる。

③新陳代謝が盛んになり、ビタミンB1が不足する。

─など諸説ある。

それらがこもごも相まって疲労感を増し、眠い、だるい、に結びつくのだろう。

中国のことわざに「春困秋乏」というのがある。

「春は眠くてけだるく、秋は疲れやすい」の意味だという。

朝寝せり孟浩然を始祖として  水原秋桜子

「春眠暁を覚えず」と詠んだ孟浩然(もうこうねん)は、ざっと1300年前、盛唐の詩人だ。

人間の体のしくみが1000年やそこらではすこしも変わるものではないことを教えてくれる。

そこへもってきて、24時間型社会の現代人の睡眠時間は短くなるばかりで、春のみならず年中眠い。

日本人の平均睡眠時間は7~8時間、サラリーマンの週日のそれは6~7時間。寝不足が常態化している。

寝不足の朝は頭も体もしゃきっとしない。それが何日も続けば体をこわす。

睡眠不足は栄養失調や運動不足と同じように─いや、あるいはそれ以上に大きな問題だ。


「睡眠時間と生活習慣病のリスク」を調べたいくつかの文献によると、睡眠不眠の中年の男性は、そうでない同年の男性に比べて、4年後の高血圧のリスクが約2倍、8年後の糖尿病のリスクが約2~3倍、12年後には約4.8倍と、睡眠不足が続けば続くほどリスクが高くなっている。

肥満の発症と睡眠時間の変化との関係性を調べた研究データをみると、睡眠時間の短い人ほど肥満の発症率が高い。

なぜ、そんなことになるのか?

睡眠不足だと、インスリン抵抗性が低下し、食欲にかかわるレプチンとかグレリンといったホルモンの分泌がアンバランスになるためだという。

インスリン抵抗性とは、糖質を処理するインスリンの作用─インスリンの「効き具合」のこと。

レプチンは、物を食べておなかがいっぱいになってくると、脂肪から分泌されるホルモンで、脳の視床下部にある摂食中枢に「満腹」のサインを送る。

グレリンは、胃や十二指腸から分泌されるホルモンで、「空腹」のサインを送って、食欲を亢進させる。

睡眠時間を短くすると、レプチンの分泌はへり、グレリンの分泌がふえることがわかっている。

つまり睡眠不足だと、糖質を処理するインスリンの効力が落ちるうえ、満腹のサインは出にくくなり、空腹のサインが出やすくなる。

寝不足の日は食欲がないように思われがちだが、実際は反対で、食欲(特に甘い物への欲求)が亢進し、肥満に直結しやすいことが実験的に確かめられている。

また、睡眠時間が短い人は欠食が多い、喫煙率が高い、寝酒をすると睡眠がかえって障害される─など、睡眠は、さまざまな生活習慣と密接に関係している。

これまで生活習慣病の予防は、食事、運動、酒、たばこ―の四つの生活習慣を主として対策が進められてきたが、睡眠が五つ目の生活習慣として非常に重要であることを示すエビデンス(医学的証拠)が集積されつつある。

人間は一生の3分の1近くは眠って過ごすわけだから、これが生活習慣病に無関係であるはずがない。

睡眠習慣は、酒やたばこと違って、特定の人だけではなく、すべての人にかかわる生活習慣だ。

元気に長生きするためには睡眠を含めた包括的な健康づくりが大切なのである。

あってはならぬ「過労死」にしても、煎じつめると「睡眠不足死」といえるのではないか。

よく眠り、よく働こう。

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