暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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脳と神経の病気

帯状疱疹&帯状疱疹後神経痛(3)

痛みの刺激を伝えるしくみ

神経障害性疼痛の代表は帯状疱疹後神経痛だが、これと同じように末梢神経(中枢神経=脳・脊髄から分かれて全身にひろがる神経)が障害された痛みには、糖尿病性の神経障害、三叉神経痛、神経根の圧迫に伴う首や背中、腰などの慢性疼痛がある。

一方、中枢神経が障害された神経障害性疼痛には、脳卒中後の痛み、脊髄損傷後の痛みがある。

そのとき、神経ではどんなことが起こっているのか。

たとえば、帯状疱疹の炎症が治ったあとの損傷を受けた神経線維の上には、異所性ナトリウムチャネルやαアドレナリン受容体が発現する。

ナトリウムチャネル(ナトリウムの出入り口)とは、普通は神経の末端にあって、何か刺激が起きたときにそのチャネルが開いて、そこにナトリウムが流れ込んで、電気信号が脳へ送られる。

ところが、神経のケーブルの途中(異所)に、そのチャネルができたり、アドレナリン(副腎から分泌されるホルモン。神経伝達物質でもある)を受け取る受容体ができたりすると、そこが発電機になってしまい、ジリジリと痛みが出てくる。

そのほか、ケガをしたりすると、自律神経の一つの交感神経が、ものを感じる知覚神経の方へ枝を出して興奮させる。

自律神経というのは「自律」だから、勝手に興奮し、勝手に枝を出し、痛みを伝える神経を興奮させるので、何もないのに痛みを感じてしまうことになる。

痛みの神経ルートでめちゃくちゃ無秩序な混乱が起こっているわけだ。

それは帯状疱疹後神経痛にかぎらず、よくある例では、採血のときの注射針で腕の神経を突いたとか、手術のときに神経が切れて、そのあとそういうことが起きる可能性もある。


神経ブロック療法

帯状疱疹の重症例には神経ブロック療法やレーザー治療が非常に効果的だ。

早くからそれを行えば、帯状疱疹後神経痛は防げる。

薬物療法では、国際疼痛学会や欧州神経学会などの主要学会がプレガバリン(商品名リリカ)という薬を第一選択薬として挙げている。

この薬が、日本ではようやく2010年4月にまず帯状疱疹後神経痛の薬として承認され、10月により広い末梢性神経障害性疼痛の薬としても承認された。

世界的に第一選択薬として認められている薬を日本では長く使えなかったので、海外の学会などに行くと、

「日本はなぜ、帯状疱疹後神経痛の治療にプレガバリンを使わないのか」と聞かれる。

「まだ国が承認していません」と答えなければならない。こんな恥ずかしいことはなかったそうだ。

プレガバリンの作用機序(薬の効くしくみ)を簡単にいえば、神経系に分布しているカルシウムチャネルに結合して、カルシウムの流入を少なくして、神経の過剰な興奮を抑え、痛みを和らげる作用だ。

カルシウムチャネルの流通は、神経機能の維持にとって必要なものなので、完全に遮断してしまうのではなく、いくらか狭めて少し機能を弱くする。

リリカを飲んで、カルシウムの流入がセーブされると、興奮性神経伝達物質の放出が少なくなって、神経の過剰な興奮が抑えられるので、痛みが緩和される。

だからこれは飲んですぐ効く薬ではない。たとえば、頭が痛いときにセデスを飲んだり、ひざが痛いときにロキソニンやボルタレンを飲むと、わりとすぐに効いてくるが、リリカにはそんな即効性はない。

効果が現れるのに1週間ぐらいかかる。

脳に作用してパッと効くのではなく、興奮性神経伝達物質の放出を抑えて、神経の過敏な状態を落ち着かせる薬だからだ。

では、その1週間はどうしたらいいか。


世界的アルゴリズム

世界的に認められている末梢性神経障害性疼痛のアルゴリズム(問題を解決するための定型的な手法)は、帯状疱疹後神経痛のような痛みに対しては、まずリドカインのパッチを使おう、というものだ。

さっき異常なナトリウムチャネルができるといったが、リドカインは局所麻酔薬で、ナトリウムチャネル遮断薬なので、これを最初に使って、痛みを鎮めるというわけ。また、神経ブロックをしても、痛みは一時的に止まる。

そして、アルゴリズムの続きだが、リドカインパッチがダメな場合は、プレガバリン(リリカ)と同時に、ガバペンチン(抗けいれん薬)、抗うつ薬のTCA(三環系抗うつ薬)かSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)を使い、もう少し効果を強くしたいときは、トラマドールを含むオピオイド(非麻薬性鎮痛薬)の併用をしよう─というのが、全世界的に認められている末梢性神経障害性疼痛の治療アルゴリズムである。

抗けいれん薬やうつ病の薬が、なぜ神経障害性の痛みに効くのか?

ガバペンチンは、リリカとほとんど同じ作用機序をもつ薬であり、うつ病の薬が効くのは、脳内の神経伝達物質の分泌がふえるからだ。

神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンが欠乏して、うつ病になると、痛みの伝達回路に異常が生じ、痛みを制御するしくみの調整が悪くなる。それがうつ病の痛みの原因である。

そうした薬とリリカでは作用機序が違うので、どちらか先に使ってみて、患者に合う方、副作用の少ない方にすればいいし、もし、片方で効かなければ、たとえば三環系抗うつ薬とリリカを併用する。

もう一つ、神経障害性疼痛は慢性の痛みなので、痛みだけではなくて、睡眠、気力といったものに影響する。

痛み以外に不眠、無気力、眠気、集中力の低下、うつ症状、不安、食欲不振といった症状があると答えた人はかなり多く、特に不眠の訴えは60%にものぼる。

しかしリリカを飲み始めると、1週間後からよく眠れるようになるという。


ペインクリニック

治療を受けるには何科を訪ねたらいいか。

帯状疱疹になったときに最初にかかるのは皮膚科だから、皮膚科に通っている人が多いが、適切な治療をきちんと受けるには、ペインクリニック(痛みの専門外来)を訪ねるのがよい。

帯状疱疹後神経痛はもとより、糖尿病の痛みやしびれなどの末梢性神経障害疼痛の人も、ぜひペインクリック(痛みの専門外来)を受診されるようお勧めする。


日常的注意

寒さや冷たさが、痛みを強くすることが多いので、冬には保温、夏はクーラーの冷たい風に直接当たらないようにする。

お風呂で体が温まると、血液の循環がよくなり、痛みが和らぐ。

3回にわたる「帯状疱疹&帯状疱疹後神経痛」に関する記事は、小川節郎・駿河台日本大学病院院長/同大学医学部麻酔科教授(当時。現在=同大学総合科学研究所教授。日本慢性疼痛学会理事長)にお話しいただいた、雑誌『壮快』2011年3月号のQ&A形式の記事「名医に聞く」を短くリライトしたものです。

小川先生の親切で有益なご教示に改めて感謝いたします。


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帯状疱疹&帯状疱疹後神経痛(2)

帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹は治っても、一件落着とはならない例がけっこう多い。

発疹や水疱が消えたあとのきれいな皮膚に奇妙な激しい痛みが生じる。

「私、ここがものすごく痛いの」と訴えても、目で見るかぎり別にどうということはない。

そのため、周りの人に辛さをわかってもらえなかったり、この病気をあまりよくご存じでない医師には、「大したことはないよ」といわれたりする。

痛みのつらさに加えてもう一つ、別の苦悩が加わることになる。


リスクファクター

帯状疱疹から帯状疱疹後神経痛に移行しやすいリスクファクター(危険因子)をもつのは、どんな人か?

①高齢者(60歳以上)。

②皮膚病変が重症。

③急性期の疼痛が重症。

④神経障害性疼痛の症状の存在(アロディニア、知覚異常など)。

⑤免疫不全状態の存在。

最も多いのは、高齢者だ。

普通、若い人ほど比較的すうーっと治っていくが、年をとればとるほど、帯状疱疹後神経痛になりやすい。

50歳の人が帯状疱疹になると50%、60歳では60%、70歳では70%が帯状疱疹後神経痛に移行するといわれる。

男がなりやすいとか、女がなりやすいといった性差は、ほとんどない。

2番目と3番目は、帯状疱疹のときの皮膚の症状や痛みがひどい人。

これは神経がそれだけやられていることを意味する。

急性期の炎症、ウイルスによって神経が激しく損傷されて発症するのが、帯状疱疹後神経痛。神経がやられて起こる痛みだから「─神経痛」なのである。

4番目の神経障害性疼痛とかアロディニアというのは、奇妙な感じのさまざまな知覚障害のこと。アロディニアは「異痛症」とも呼ばれる。

普通の痛みではなく、ちょっと触っても飛び上がるような鋭い痛み、電気が走る、針で刺される、焼ける、ピリピリする...など、いろいろな表現を患者はする。下着が触れても痛いという人が多い。

5番目の免疫不全状態は、エイズ(後天性免疫不全症候群)、がん、糖尿病など。

体の免疫状態の低下した人は、帯状疱疹後神経痛に移行する可能性が強い。

これらのうち一つでもあれば要注意。

二つ以上ある場合は、急性期からの適切な疼痛対策が必須とされる。

帯状疱疹の症状には個人差があり、それによって神経損傷の程度も変わってくる。

急性期の激しい痛みを脳が記憶し、それが慢性の痛みにつながる。

帯状疱疹になったら、とにかく早く正しい診断と適切な治療を受けることが、最も重要だ。

体の片側に赤い帯状のブツブツが出てきて痛いときは、帯状疱疹に詳しい専門医の診察を受けるのが、病気をひどくしない心得の第一條といえる。


神経障害性疼痛

帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛の神経障害性疼痛は、神経が障害された痛みなので、普通の切り傷、骨折、火傷などの痛みとは、痛みの性質が違う。

体にはありとあらゆるところに神経が網の目のように張りめぐらされていて、その神経線維の1本、1本は、電線が絶縁体で覆われているように、髄鞘(ずいしょう=ミエリン)という被膜で覆われている。

ミエリンがウイルスに壊されて起きるのが、神経障害性疼痛である。

痛みの刺激は、電気信号で脳へ伝わるのだが、その電線の絶縁体が壊されて、電線同士がショートし、くっつき合ってしまう。

すると、インパルス(刺激を伝える神経の興奮)が神経から神経へ乗り移って、ちょっと触っても、脳は痛いッ! と感じる。

普通の痛みとは、痛みの伝わり方や性質が違うわけで、痛みの電気的短絡(英語ではエファブスという)が起こるのも帯状疱疹後神経痛の症状の一つである。

たいていは1~2ヵ月で治るが、1年以上続く人や、なかには10年以上も苦痛に耐えている人もある。

絶え間なく続くときもあれば、間が空くこともあり、寒さや冷たさが痛みを増強させる例も多い。


痛みの種類

痛みは、その発生機序(起こるしくみ)や性質によって、①侵害受容性疼痛、②神経障害性疼痛、③心因性疼痛の3種類に分けられる。

侵害受容性疼痛というのは、手を切った、骨が折れた、火傷をしたといったようなケガのとき普通に感じる痛み。

傷や炎症によって活性化される発痛物質が、侵害受容器(体を侵すさまざまな刺激を感受する器官、細胞)を刺激することによって引き起こされる疼痛─と定義されている。

肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)の痛みや関節リウマチの痛みなどもこれに含まれる。

神経障害性疼痛は、そうしたケガなどによって神経が壊されて、ケガが治ったあとも続く慢性の難治性の疼痛である。

神経の損傷あるいはそれに伴う機能異常によって生じる、さまざまな知覚異常を伴う痛みで、神経の損傷部位により末梢性と中枢性に分けられる。

心因性疼痛は、今日は会社に行きたくないなぁとか、学校に行きたくないなぁと思うと、おなかが痛くなるといった種類の痛み。

体のどこにも病変はなく(仮にあったとしても、それほど大きな痛みを伴うことは考えられない)、心理的原因による疼痛だ。

こうした痛みは、個々に独立して起こるだけではなく、重なり合って起こることもある。

たとえば、慢性腰痛や頸肩腕症候群(首、肩、腕、手指にかけての痛み、こわばり、しびれ、脱力感、冷感などさまざまな症状が起こる)などは、侵害受容性と神経障害性の要素が合併した疼痛の代表的なものだ。


治療法

痛みの種類が違えば治療法も当然、違う。肩関節の痛みとか関節リウマチなどは、ケガと同じ侵害受容性の、組織が壊れて、炎症が起こっている痛みなので、NSAIDs(エヌセイド=非ステロイド性鎮痛消炎剤)がよく効く。

しかし、神経障害性疼痛は、すでに炎症は治まっているのだから、これに対してNSAIDsのボルタレン、ロキソニンといった薬をいくら使っても効かない。

でも、実際の臨床の場では神経障害性疼痛なのにNSAIDsを処方されて、よくならない人が少なくない。

「先生、この薬、効きません」といっても、「それはあなたの気のせいだ」とかいわれて、気まずい関係になる例がままあるようだ。

ドクターショッピング、病院のはしごが始まることにもなる。

それから、がん性疼痛(がんに伴うさまざまな痛み)に対しては、いま一般的に強い関心がもたれ、プロモート(啓発運動)も盛んに行われているが、がん性疼痛の3割から7割は神経障害性疼痛なので、モルヒネや医療用麻薬だけではとれない痛みも少なくない。

それに対しては鎮痛補助薬の抗けいれん薬などが適している。

詳しくは、明日の「帯状疱疹&帯状疱疹後神経痛(3)」に─。


帯状疱疹&帯状疱疹後神経痛(1)

帯状疱疹

ある日、体の片側、胸とか腹とかに赤いぶつぶつが点々と出てくる。

水ぶくれができてチクチク刺すように痛い。

この「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」という病気は、昔からよく知られていて、全国各地に、つづらご、おびくさ、胴まき、たすき、へびたん...など、さまざまな方言がある。

古い話だが、サッカー日本代表のオシム監督が重い脳梗塞で倒れたとき、日本サッカー協会の川渕三郎キャプテンが帯状疱疹になって、心労のためでは...といわれた。そういうこともある。


原因

帯状疱疹は、皮膚に小さな水疱や膿疱(のうほう)ができる「ヘルペス(疱疹)」の一種。

原因は、子どものころにかかった水痘(水ぼうそう)のウイルスだ。

水ぼうそうが治ったあとも、そのウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)は体内の神経節に潜んでいる(潜伏感染という)。

そして、加齢やストレス、過労などが引き金となって、免疫力が低下すると、潜んでいたウイルスが再び活動を始め、神経を伝わって皮膚に到達し、帯状疱疹として発症する。


症状

初めは体の左右どちらか一方にチクチクするような痛み、あるいはピリビリする感じが起こり、しばらくしてその部分に赤い発疹が現れ、小さな透明な水ぶくれができてくる。

やがて水ぶくれが破れてただれ、かさぶたに変わる。

帯状疱疹という名のとおり、神経に沿って帯状に広がり、皮膚と神経の両方でウイルスが増殖し、炎症が起き、非常に強い痛みが生じる。

できるところは、胸から背中にかけてが最も多く、腕や腹部にもよくでる。

頭、顔、首などもわりあい発症しやすい部位だ。

顔面の三叉神経(眼、上あご、下あごの三枝に分かれる神経)に沿って出る帯状疱疹は、注意が肝要だ。

髄膜炎を誘発する恐れがあり、目の角膜炎や結膜炎を併発し、失明することさえある。こわい!

まれに耳鳴りや難聴、顔面神経マヒなどが生じることもある。ラムゼイ・ハント症候群と呼ばれる。


治療

このように症状の程度はさまざまだが、普通は、医師の指示に従って安静にしていれば自然に治る。

精神的あるいは肉体的に疲れているときに発症しやすいので、睡眠と栄養を十分とって心身の回復をはかることが大切だ。

なお、帯状疱疹は、通常は生涯に一度しか発症しない。

ただ、免疫がひどく低下している場合、再発することがある。

治療は、症状に応じて抗ウイルス薬(アシクロビル、ビダラビン、ファムシクロビルなど)、鎮痛薬、ビタミン剤などを用いる。

皮膚症状に対しては抗ウイルス薬の軟膏が効果的だ。

重症例には、局所麻酔薬を用いた神経ブロック療法(神経の伝導を遮断する治療法)が著しく効果的である。

水ぶくれを破ると細菌感染を起こして化膿しやすいので、破ってはいけない。

入浴も控えよう。

そうして治ると一件落着か?

それがそうではない例がけっこう多いのが、帯状疱疹のイヤなところで、そのあと「帯状疱疹後神経痛」というやっかいな病気に移行する人がある。

それについては、明日の「帯状疱疹&帯状疱疹後神経痛(2)」に─。


睡眠に関する諸問題

眠らない国

旧聞で失礼。9月3日は「秋の睡眠の日」だった。

日本人の睡眠時間は、よく寝ているフランスに比べると1時間も短く、韓国に次ぐ世界2位の「眠らない国」だ。

なんらかの不眠症状に悩む人は、成人の30%以上。

眠れぬ夜が長く続くと、心身の健康をそこね、ひいては寿命にも影響する。「眠り短かければ、命短し」である。

不眠の解消には、睡眠薬を上手に使うのも一法。


睡眠障害のリスク

睡眠不足や睡眠の質の低下が続くと、高血圧や動脈硬化が進行、心血管疾患、がん、認知症など、加齢に伴い発症が増える疾患のリスクが上昇する。

また、睡眠障害は糖尿病の症状を悪くし、糖尿病は睡眠の質を悪くする。

で、睡眠障害を防ぐ薬は、睡眠の質だけでなく、糖尿病も改善すると報告されている。

最近の研究で、血糖値が高いほど、深い睡眠の時間が減少し、朝の血圧上昇が高まり、血管障害のリスクが増えることがわかった。


睡眠不足=老化

睡眠不足は生物学的老化を促進する。

たった一晩の睡眠不足が、生物学的老化を促進する。

質の良い睡眠を十分にとることが、老化を抑え、体を若々しく保つために必要だ。

米カリフォルニア大学の精神神経免疫学センターのジュディス・キャロル氏らが、米国睡眠医学会の年次集会で発表した。

61~86歳の男女29人に4夜、研究施設に滞在してもらって行った実験によって、たった一晩の睡眠不足でも、細胞が分裂し、新たな細胞を産生する「細胞サイクル」が阻害され、細胞の損傷が増えることが明らかになった―という。

過去の研究では、睡眠不足により、皮膚の細胞の染色体が不均等になり、肌の弾力性が失われることが確かめられている。

「人は誰もが老いますが、たった一晩の睡眠不足で老化スピードが加速し、病気にかかりやすくなることが生物学的に確かめられました。

一般的に一晩に7~8時間の睡眠をとることが勧められています。

今回の研究は、生活習慣病の予防・改善に、睡眠を十分にとる必要がある理由を解明したものです」と、キャロル氏は話している。


歩いて睡眠改善

睡眠の量と質を高めるために効果的なのは、運動を習慣として行うことだ。

ウォーキングなどの運動をする習慣のある人は、十分な睡眠をとっている傾向があることが、約43万人の米国人を対象とした調査で明らかになった。

米ペンシルベニア大学のマイケル・グランドナー博士らは、生活習慣病の予防や健康促進の効果的な方法を探るために行われている大規模研究に参加した42万9110人のデータを解析した。

参加者に過去1ヵ月間にどのような運動をしたかを質問し、睡眠時間の平均を尋ねた。

結果、運動を習慣として行っている人は、睡眠時間を十分にとっている傾向があることがわかった。

過去の研究では、平均睡眠時間が7時間以下であると、健康状態が悪くなることが示されている。

ウォーキングなどの運動を習慣として行っている人は、7時間以上の睡眠時間を確保している割合が高かった。


体のリズムと睡眠

ヒトの体には、「概日リズム」(サーカディアンリズム)と呼ばれる、ほぼ24時間のリズムで体内の環境を調整する機能が備わっている。

体内時計の周期と24時間の周期との間のずれを修正できない状態が続くと、望ましい時刻に入眠し、覚醒することができなくなる。

運動や身体活動を毎日行うと、概日リズムが調整されやすくなり、夜の決まった時刻に自然に眠れるようになる。

「交感神経が活発に働いている時間である夕方、特に夕食後に運動をすると、心拍数の増加と筋肉の血流量の増加により、体脂肪の燃焼率が活発になり効果的です。食後の血糖値の上昇も抑えられます」と、グランドナー博士。

ウォーキング以外にも、サイクリングやランニング、筋力トレーニング、エアロビクス、ガーデニング、ヨガ、ピラティス、ゴルフなどの運動も効果がある。

ただし、家事や育児に関連した身体活動が多過ぎると、睡眠不足のリスクが上昇することも分かった。

仕事や家事で毎日が多忙で手一杯であると、概日リズムが乱れやすくなる可能性がある。


「ウォーキングを毎日行うだけでも、睡眠の量と質を改善できます。

さらにランニングやヨガなどの目的のある運動を組み合わせると、より効果的であることが分かりました。

逆に運動不足は睡眠の質を下げる要因になります。運動習慣をもたない人は、いますぐ運動をはじめるべきです」と、グランドナー博士はアドバイスしている。


居眠り? 病気?

お盆休み最後の夜を楽しむ繁華街に猛スピードの乗用車が突っ込んだ。

昨夜(8月16日午後9時過ぎ)、東京・池袋駅近くの歩道に乗用車が乗り上げ、通行人を次々とはね、ビル1階の衣料品店に激突した。

41歳の女性薬剤師が頭を強く打ち死亡。

25~71歳の男女4人が骨盤骨折などの重軽傷。

車を運転していたのは、53歳の医師。

地下駐車場に車を止めて、ラーメン店で食事をした後、車に戻り、駐車場を出て、右回りにUターンしかできないレーンを直進し、約50㍍先の歩道に乗り上げた。

現場にブレーキをかけた跡はなかった。

「ラーメンを食べ終えて駐車場を出るところだった。運転していたのは間違いないが、歩道上に突っ込んだ記憶はない。疲れて居眠りしていたので、覚えていないのかもしれない」と供述しているという。

同人の呼気からアルコールは検出されず、車内や所持品からも薬物は見つかっていない。

尿の簡易検査でも薬物は検出されなかった(「毎日」と「朝日」の17日夕刊の記事をダイジェストした)。

記事を読んで、「ナルコレプシー」の症状に酷似していると思った。

突然、猛烈な眠気に襲われ、無意識のうちに眠ってしまい、しばし眠ると、あとはスッキリするという病気。

人と話をしている最中でも、車を運転していても、突如として眠くなって自分の意志ではどうにも制御できない。

作家の色川武大さんは麻雀をしながら眠ったそうだ。

発作は、軽い場合は1日2~3回、意識がぼうっとする程度だが、多くの場合は1日数回、数分から十数分眠り込んでしまう。

また、大笑いしたり、驚いたりした直後、ひざや肩の力がガクンと抜け、口がもつれる「情動脱力発作」や金縛り「睡眠麻痺」、寝入りばなの鮮明な夢「入眠時幻覚」を伴うことが多い。

原因は長く不明とされていたが、脳内の覚醒物質「オレキシン」の欠乏で起こることが、近年の研究でわかった。

薬物療法と生活指導で十分コントロールできる。

高い有効性と安全性で欧米では第一選択薬になっている「モディオダール」が、2007年、日本でも承認発売された。

受診は精神科へ。


もの忘れ検診

 人の名が思い出せない。

 ローマ字やカタカナの略語、新語の類など、読むはじから忘れてしまう。

 計算がのろい。

 漢字の偏だけ書けてつくりが出てこない。

 老眼鏡が必要な年ごろになると、たいていの人がこんな健忘症状を経験するようになる。

 小生など、いまや一日中ひっきりなしで、「だいぶぼけがきてるわね」と言われている。

 だが、それは本物のぼけ(認知症)とは関係のない、脳の生理的加齢現象だ。

 単純なもの忘れと、認知症の始まりは、どこが違うのか。

 ①無表情・無感動の傾向が見られる。

 ②ぼんやりしていることが多い。

 ③生きがいがない。

 ④根気が続かない。

 ⑤一日や一週間の計画が立てられない。

 ⑥仕事をてきぱきと片づけられない。

 ⑦反応が遅く、動作がもたもたしている。

 ⑧同じことを繰り返し話したり、尋ねたりする。

 ⑨相手の意見を聞かない。

 このうち4項目以上が当てはまると、軽度の認知症と判定される。

 おかしいと思ったら、まずは自治体の「もの忘れ」検診を受けてみよう。

 問い合わせは保健所へ。


がんの痛み

痛み訴えるべし

 がんが恐れられる理由の一つは、強い痛みだ。

 がん患者の三割強は痛みを訴え、末期には七割が強い痛みに襲われるといわれる。

 このがん性疼痛について、WHO(世界保健機関)が1986年、鎮痛薬の段階的使用法などを含む「WHO方式がん疼痛治療法」を公表、各国で80~90%の患者が痛みから解放された。

 だが日本のみ先進国中最低の成績が続いている。

 緩和医療の専門医、がん対策情報センターの的場元弘・情報サービス室長は、医師をはじめ医療者の「痛み」についての過小評価が、日本のがん疼痛治療を妨げている大きな要因と指摘している。

 半面、我慢が美徳─という日本人的な心情も働き、少々の痛みは医師に訴えない人が多い。

 高齢者ほどその傾向が強いという。

「痛みの感じ方は人それぞれで、他人にはわかりません。はっきりしているのは、痛みは伝えてもらわなければ、無いものとして扱われかねないということです。我慢せずに、まずは訴えるべきです」 
 患者側の意識変革も必要なようだ。
 

 知覚の過敏化

 がんの痛みがひどくなると、立ったり座ったりするのもつらく、自分でトイレに行けない、眠れない、食べられない、いつもイライラして不安...など日常生活が破壊される。

 緩和医療の専門医、的場元弘さんは、メディアセミナーで次のように話した。

「痛みは治療しないで放置すると、しだいに強くなっていきます。

 例えば手にけがをすると、その刺激が腕から脊髄に入って脳に伝わります。

 そのとき痛みの刺激が次々に来ると、脊髄の神経単位の入り口が敏感になっていき、同じ刺激でも強く感じるようになります。

 これが知覚の過敏化です。

 がんの痛みでも同じことが起こります。

 内臓の痛みではさらに複雑なことが起きることがあります。

 ある内臓に痛みがあると、その内臓の高さの脊髄から出ていく自律神経、運動神経、あるいは皮膚の知覚神経のすべてが影響を受け、皮膚にも痛みが現れたり過敏になるだけでなく、筋肉が収縮し、呼吸困難が起こることがあります。

 がんの痛みに早期から対応しなければならない理由の一つです」


認知症の貼り薬

 認知症の治療は着実に進歩している。

「アリセプト」しかなかったアルツハイマー型認知症の治療薬に、2010年、「メマンチン」(商品名・メマリー)と「ガランタミン」(商品名・レミニール)が加わり、2011年には貼り薬の「リバスタッチパッチ」と「イクセロンパッチ」がデビューした。

 1日1回、背中や腕、胸などに貼るだけでよい。

 皮膚から浸透した成分(リバスチグミン)が、脳内の神経伝達物質のアセチルコリンを分解する二つの酵素の働きを妨げる。

 結果、アセチルコリンの量がふえて、アルツハイマー型認知症の進行を抑える。

 アセチルコリンは、脳を活性化する役目をしている。

 これが不足するとアルツハイマー型認知症が起こる。

 パッチ剤は、経口薬に比べて、嘔吐などの副作用が少ない。

 薬の成分が血中でほぼ一定の濃度を維持できる。

 貼るのも剥がすのも簡単で、手間がかからない。

 入浴でもゴシゴシ洗わなければ、シャワーや湯に漬かるぐらいでは、剥がれない。

 薬の「のみ忘れ」や「二度のみ」は、認知症にかぎらず、あらゆる病気の服薬に伴いがちな失敗だ。

 パッチ剤のメーカー、小野薬品工業とノバルティスファーマが行った、認知症患者をもつ家族へのアンケートの概要を見ても、

 日常の介護のなかで最も負担に感じるのは、「日常の見守り」「周辺症状(問題行動)への対応」に次ぐ三番目が「薬の投与・服薬管理・服薬確認」だ。

 パッチ剤はこの「服薬管理」の面倒をあらかた解消してくれる。

(パッチに日付・時間を油性ペンで書き込んでおけば、さらに完全だ)

 もう一つ、パッチ剤の大きな利点は「スキンシップ」効果が加えられることだ。

 藤井昌彦・山形厚生病院理事長(東北大学医学部臨床教授)らは、

 施設入所者を対象に、

 単にリバスタッチを貼付する群と、

 介護従事者が気持ちを込めて身柱(しんちゅう=背骨の第3胸椎突起の真下にある万能ツボ)を1~2分マッサージした後にリバスタッチを貼る群で、

 認知症の人のBPSD(行動・心理症状)を、NPI(精神症候の評価尺度)で評価した。

 結果、身柱マッサージ+リバスタッチ群では、NPIの点数が有意に改善した。

「リバスタッチという薬物療法と身柱マッサージという非薬物療法を組み合わせた<ハイブリッド医療>により、よりよい医療の提供が可能になる」

 藤井先生は、そう話した。

 ご家庭でもぜひお試しください。


認知症の疫学

 認知症急増、305万人!

 65歳以上の1割!

 厚生労働省が2010年の要介護認定のデータをもとに推計した結果だ。(2012年8月24日発表)

 2025年には470万人、高齢者全体の12.8%にのぼる見通しだという。

 世界の認知症患者は、現在3560万人。

 世界人口70億人の約0.5%。200人に1人の割合だ。

 これが毎年770万人ずつふえつづけて、30年に6570万人、50年には1億1540万人に達する見通し。

 2012年4月11日、世界保健機関(WHO)は、認知症に関する初の報告書で、そんな予測を発表した。

 国連の人口推計に当てはめると、2050年の人類は、100人に1人以上が認知症患者という時代を迎える。

 それどころか、

「ある試算によれば、生涯のうちに2人に1人は認知症をわずらう」とさえ指摘されている。

 認知症では、知的障害、精神障害、身体障害の三つが併存する。

 これに対応していくには、医者:患者という「点」での治療関係ではなく、かかりつけ医:専門医、医師:介護関係者、専門医:専門医など多くの専門職の役割分担や連携による「線」、あるいはそれ以上の「面」の関係を構築し、患者とその家族を支えていくことが求められる。

 これは従来の、感染症、生活習慣病、がんなどとは異なる「防疫体制」を、社会が構築する作業になる。

 認知症の治療では、単に薬を処方するだけではなく、人と人との関係性がこわれるのを防ぐ姿勢や、偏見に陥らない支援が欠かせない。

 認知症という病気は、「目に見えない」病気である。

 目に見えない、この病気への偏見をなくしていくには、この病気の特性を多くの人がよく知ることによって、「見える」ようにすることが大切である。

 武知一・京都大学医学部講師(老年内科診療科長)は、先ごろ開かれたプレスセミナーでそう話した。


二種類の不眠

 いやあ、眠い!眠い!
 たが、気持ちのいい、納得の寝不足だ。
 なでしこジャパン、よくやってくれた。

 さて、本題。それとは別の寝不足の話。

 暑い夏の夜はだれでも寝つきが悪く、眠りが浅くなるが、季節を問わずよく眠れないと訴える不眠症には、神経症性とうつ病型の二つのタイプがある。

 神経症性の不眠は、寝つきが悪い。

 しかし、いったん眠ると昼ごろまで寝たりする。

 実際にはたっぷり寝ているのに、「眠れない。苦しい」と訴える。

 一方、うつ病型の不眠は比較的寝つきはいいが、2、3時間眠ったかと思うと目が覚め、明け方まで眠ることができない。

「終夜睡眠脳波」などをとって睡眠の状態を調べてみると、実際、あまり眠っていない。

 神経症の人は概して自己中心的で自分本位の性格。

 他人に対する「攻撃性」が強い。

 それに対して、うつ病の人は概して他人本位で自罰的だという。

 だからうつ病の人は眠れなくても家人を起こさないようにじっと我慢しているが、神経症の人は隣に寝ている人を起こしにかかるのだそうだ。

 神経症性不眠の治療は心理療法が適当だ。

 うつ病性不眠には、うつ病自体の治療とともに睡眠剤の投与が必要になる。

 いずれも精神神経科か心療内科を受診するとよい。



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