暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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歯と口の病気

「大人むし歯」と「口臭問題」

成人のむし歯は「再発むし歯」

厚生労働省歯科疾患実態調査を見ると、子どものむし歯は減りつつあるが、20代~80代の約8割以上がむし歯を経験し、高齢者のむし歯が年々増加している。

成人・高齢者のむし歯の大半は「二次う蝕」と「根面う蝕」だ。

二次う蝕は、むし歯治療後の詰め物の隙間にむし歯菌が入り込んで発症する「再発むし歯」。

根面う蝕は、加齢・歯周病によって歯ぐきが下がり、歯の根元の象牙質が露出することでできる「根元むし歯」。

サンスターは、そうした「大人むし歯」をもつ15歳~69歳の男女624人の意識調査を行った。

結果、8割近い人が二次う蝕(再発むし歯)を知らず、一度治療をした歯はむし歯にならないと思っていることがわかった。

また、歯をみがいているにもかかわらず、むし歯になってしまった人が非常に多かった。

原因は、「歯のみがき方が良くなかった」が66%と最も多かった。

再発むし歯の予防にはフッ素が有効だが、そのことを「知らなかった」人は69.1%。

サンスター財団附属千里歯科診療所の鈴木秀典所長はこう話している。

「二次う蝕(再発むし歯)を多くの人がご存知でないことは、臨床においても実感しています。

一度治療をした歯、特に神経を取った歯はむし歯にならないと思っている人がほとんどです。

しかし、実際には歯科医院におけるむし歯治療の大半が二次う蝕の再治療です。

治療回数を重ねるたびに歯質は徐々に失われ、詰め物も大きくなり、やがては詰め物から冠(かぶせもの)になり治療費もかさんでいきます。

1本の歯に対し、5~6回の再治療で歯は抜歯に至るといわれています。

再発むし歯の発症を抑制することは歯の寿命を延ばすことに直結します」。


口臭は「生涯のお口トラブル」

日本歯科医師会が、全国の10代~70代の男女1万人を対象に行った「歯科医療に関する意識調査」の「お口の悩みのトップ3」は、1位「ものが挟まる」=43.2%、2位「歯の色」=32.7%、3位「口臭」=27.1%だった。

そのなかの「口臭」についてすこし詳しくみてみよう。

① 口臭は年代や性別に関係なく全世代が悩むトラブルで、80.6%が自分の口臭が気になった経験がある。

② 男性(76.2%)よりも女性(85.3%)のほうがより気にしている。

③ 30代は口臭心配度の男女間ギャップが最大になる。男性=75.2%、女性=89.3%。

④ 口臭が気になる相手は「配偶者」や「会社の上司や同僚」など。

女性が最も気になるのは配偶者の口臭で、夫が妻の口臭を気にする(59.3%)より、妻が夫の口臭を気にする(83.6%)割合が圧倒的に高い。

夫は年をとれば妻の口臭をあまり気にしなくなるが、妻はいくつになっても夫の口臭がずっと気になっているようだ。

⑤ 配偶者に次いで気になる相手は、会社の上司や同僚(69.8%)、男友だち(67.6%)の順。

⑥ 口の臭いを他人から指摘された経験があるのは約4割(41.5%)。

女性(37.1%)より男性(46.7%)の方がやや多い。

口の臭いを態度やジェスチャーで他人から示された経験があるのは、4人に1人(25.5%)。

具体的には、「距離をあけられる」(41.8%)、「顔をそむけられる」(31.3%)、「会話中にイヤな顔をされる」(29.0%)。

⑦ 「口臭の原因の多くが、歯周病・むし歯・入れ歯の汚れなどの口の中の病気にあること」は、7割近く(65.7%)が認知。

⑧ しかし「糖尿病、腎臓病、胃炎、腫瘍などが口臭の原因となることもある」の認知率は3割(31.0%)と低い。

⑨ 口の臭いが気になった時の対策、「歯を磨く」(66.0%)、「ガムやタブレットをかむ」(51.8%)、「うがいをする」(38.4%)。

⑩ 口の臭いが気になったとき「歯科医院を受診したほうがよい」の認知率は17.0%。実際に「歯科医院に行く」は9.4%。

─以下、口臭外来の専門医のコメント。

「口臭の原因は、歯の磨き残しや歯周病、舌苔など、口のトラブルが9割。

残りの1割は、副鼻腔炎など耳鼻科の病気がほとんど。

口と鼻の病気のほかには、糖尿病や腎臓病でも特有のにおいが出ることがある。

口臭を気にして〈口臭外来〉に来る人の多くは、歯磨きは丁寧にしているが、舌苔で舌が真っ白なことがよくある。

歯磨きとともに舌苔を落とす「舌みがき」もするとよい。

実際には口臭がないのに、あると思い込んでしまう〈仮性口臭症〉で苦しむ人もいる。

専門外来では、時間をかけて問診し、口臭を測定する機器で客観的に口臭の強さを測定、口臭がないことを納得してもらう。

口臭を指摘されたら歯科医の指導を受け、歯と舌のケアを─」


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歯はみがくだけでいいのか?

 ああ、いい本だなあ!

 何度となくそう思いながらページをめくった。

 蒲谷茂『歯は磨くだけでいいのか』(文春新書)。

●肺炎から身を守る1本の歯ブラシ

●歯がない人はボケやすい

●自前の歯があれば簡単に転ばない

●寝たきりになる原因は歯にあった

●歯は脳へ刺激を与えている

●歯周病は心筋梗塞の危険因子

●糖尿病と歯周病は表裏一体

●歯を磨かない人ほどがんになりやすい

 同書のなかのいくつかの章節のタイトルだが、なぜ、そうなのか、そうならないようにするためにはどうしたらよいのか。

 最新の研究にもとづく詳しい解説が、わかりやすく(そのうえじつに面白く)理路整然と展開される。

 話し上手の人のよどみない話をじかに向き合って聞いているようで、少しもあきない。

 虫歯も歯周病も細菌による感染症であり、その影響は全身に波及し、さまざまな病気のもとになる。

 口の中の細菌が血液中に入り込むと、血管の壁にくっついて炎症を起こし、動脈硬化を促進し、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)や脳卒中につながる。

 そういったことが、内外の多くの確かな研究データを示しながら、説得力に満ちた語り口でじゅんじゅんに説き明かされる。

 興味深い話がぎっしり詰まっていて、"行数稼ぎ"のムダな記述など1行も、ない。

 パラッと開いたページに目を走らせると、たちまち引き込まれて、もう手放せない。

 いま、最も油の乗った仕事をしている医療ジャーナリストの会心の一書である。

 で、さて、歯はみがくだけでいいのか?

 いいえ。

 いくらしっかりみがいても、歯みがきだけでは歯を完全に守ることはできない。

 みがき残した歯と歯の間、奥歯の裏側、歯の根元などにバイオフィルム(菌膜=虫歯菌や歯周病菌の巣)ができるからだ。

 これの除去は、歯科衛生士というプロの手を借りなければならない。

 しかし、3ヵ月に1度、それをきちんとやってもらえば、虫歯も歯周病も確実に防ぐことができて、歯とつながる体や脳のさまざまな生活習慣病を防ぐ道筋が開ける。

 ─ということが、この本を読めば、すっきりわかる。

 最新の歯学、医学に関心のある人、元気に長生きしたい人、必読の一冊であるだろう。


舌の汚れ

 口臭の最大原因は、舌の表面にたまった白っぽい、または淡黄色の汚れ=舌苔(ぜったい)だ。

 この舌の汚れに何らかの対処をしているか? という質問に「していない」と答えた人が58%、過半数を占めた。

 一方「ほとんど毎日している」人は、20代では22%、30代以上では15%に過ぎない。

 では、その人たちがどんな方法を行っているかといえば、

 「歯みがきのついでに歯ブラシでこする」がトップで34%、「うがい」10%、「お茶や水を飲む」9%と続き、

 最も適切な「専用の舌ブラシを用いる」は8%、「舌ケア・口中ケアのタブレットを食べる」はわずか3%。

 20代~50代の男女対象の、江崎グリコ調査の結果だ。

 うがいやお茶の舌苔除去効果はあまり高くない。

 歯ブラシで舌の表面をこするのは、効果的ではあるが、強くこすり過ぎるとデリケートな舌を傷つけるおそれがある。

 舌苔は、食物と舌との摩擦や唾液の分泌でもある程度は除去される。

 が、舌の汚れを取るために「よくかんで食べる」人は1%そこそこだった。


 朝の舌みがき

 口臭予防には、舌の汚れ=舌苔の除去が有効だ。

 歯みがきのついでに歯ブラシで舌をこする「舌みがき」でも効果はあるが、硬いブラシの毛で舌の表面を傷つけるおそれがある。

 専用の舌ブラシを用いるのが、望ましい。

 ①鏡に向かい、舌をできるだけ前に突き出し、舌の奥にブラシを当てる②奥から先へ1~2回、舌の表面をこする③ブラシについた汚れを水で洗い落とす。

 この①~③を数回繰り返すと舌苔はきれいに落ちる。

 また、舌苔は、食事による摩擦や唾液の分泌でもある程度は除去できる。

 舌・口中ケアのタブレットを、舌の上で転がすように食べることも効果的──と、八重垣健・日本歯科大教授編「臨床家のための口臭治療のガイドライン」(クインテッセンス出版)にはある。

 夏は食欲が減退し、朝食を抜いたり、飲み物だけですませる人が多い。

 舌みがきができていないうえにそれでは一層、口臭が生じやすい。

 さわやかな息を保つために朝食をしっかりかんで食べ、舌ブラシによる「朝の舌みがき」を──。


口臭調査

 口臭は胃などの内臓の病気や歯周病でも生じるが、健康な人では舌に付着する汚れ=舌苔(ぜったい)が原因の大半を占める。

 舌苔は、食べかすや口内のはがれ落ちた粘膜が舌にたまったもの。

 唾液(だえき)分泌が少なくなる睡眠時にたまりやすい。

 だから口臭は起床時に最も強くなる。

 全国の20代~50代の男女800人に、江崎グリコが行ったインターネット調査によると、

 口臭を「とても気にしている」人は17%(20代女性では27%)、

「まあ気にしている」44%、

「いくらか気にしている」30%──トータル91%。

 口臭が気になるときは(複数回答)「起床時」74%、

「においの強い食品を食べたとき」61%、

「食後」44%、「胃の調子が悪いとき」37%、

「緊張したとき」23%......と起床時がトップ。

 なのに、自分の口臭の最大の原因だと思うのは「歯垢(しこう)」と「歯周病」がそれぞれ14%、

「においの強い食品」が13%で、「舌の汚れ」と答えた人は9%だけだ。

 口臭はすごく気になるのに、その一番の原因を知らない人がとても多かった。


歯の末期(まつご)

 中唐の詩人、韓愈は歯周病だった。

 その症状は、

「去年、一牙(いちが)を落し/今年、一歯を落す/俄然(がぜん)として六七を落す」と始まる詩「落歯」に詳述されている。(牙は奥歯、歯は前歯)。

「去年は奥歯が1本ぬけ、今年は前歯が1本ぬけた。にわかに6本7本とぬけてゆき、ぬける勢いはいっこうにおわりそうにない。

 あとに残っているものもみなぐらぐら...(筧文生訳)」

 ──これ、歯周病の末期症状にほかならない。

「一つまさに落ちんとする時毎(ごと)に、凛凛(りんりん)たること恒(つね)に己にあり。

 叉牙(さが)として物を食らうことを妨げ、顛倒(てんとう)して水に漱(すす)ぐことを怯(おそ)る。

 今来、落つること既に熟せり。

 落つるを見れば空しく相似たり。」

 ──1本抜けかかるたびに、びくびくもので、物を食べるのも、水で口をすすぐのも、おっかなびっくりだった。

 だが、このごろでは抜けるのにもなれっこになり、またかと思うだけだ。

 いや、なんともお気の毒。

 こうなる前にぜひとも歯科医を訪ねるべきだ。

 歯周病については、また、別の日に──。


歯は老いず

 昔から男の老化は「歯、目、...」の順で進むといわれている。

「...」に当たる単語は、語感がロコツだから「...」にしたが、もとは梵語で、

「仏道修行を妨げ、人の心を惑わすもの」(広辞苑)だそうな。なるほど!

 江戸後期、「今一休」と呼ばれた仙崖和尚の「老人六歌仙画賛」も、

「歯はぬける 耳は聞こえず 目はうすくなる」と嘆いているように、昔は年をとれば歯は抜けるものとされていた。

(注=狂歌「老人六六歌仙」の作者は、俳文集「鶉衣」で知られる江戸中期の俳人、横井也有といわれている。)

 目の老化(老眼)はほとんど防ぎようがないし、もう一つの...の能力も体質や努力による個人差はあるにせよ、やはりトシには勝てず、下向きになりがちなのは避けられない。

 歯も、そうなのか?

 サンスターが40~60代の男女930人に聞いた意識調査の一項目「老化を感じ始めた年齢とその部位」によると、

 頭髪(抜け毛や白髪)が最も早くて、44・7歳。

 次が、歯の45・4歳。

 肌(しわ、しみ)の45・7歳。

 目の46・7歳の順だ。

 しかし、歯は心がけしだいでずっと長く若さを保つことができる。

 全身の健康を保つことにもつながる。

 ハゲやシラガが健康にかかわることは全くないが、歯の残存本数は健康に密接に関係する。

 特に高齢者では健康度を左右する。

 80歳以上で歯が20本前後残っていて、食物がよくかめている人は、

「生活の質および活動能力が高く、運動・視聴覚機能に優れている」ことが明らかにされている。

 また、70歳以上で、自分の歯が20本以上残っている人は、19本以下の人と比べ、神経や循環器などの病気で通院する日数が約3分の1少なく、4本以下の人よりも、医療費が1カ月平均約9000円少ないという調査もある。

 丈夫な歯は丈夫な体のしるし。

 一昔前のCMではないが、「歯がいのち」であるのは、「芸能人」だけではない。

 さらにいえば、目や...とは違って、歯は老いない。

 繰り返すが、心がけしだいで、いつまでも若さを保つことができる。

 実際、80歳になっても自分の歯を20本以上残そうという「8020運動」が始まった1980年代末に、その条件を満たしていた人は8%に過ぎなかったが、6年に1度の調査のたびに増え続けて、去年2011年には38%(3人に1人強)に達した。

「歯を失う原因の歯周病を予防する意識が高まってきたためではないか」と厚生労働省はみている。

 昨日の朝日新聞の夕刊にそう出ていた。

 では、歯周病を予防するにはどうしたらいいか?

 簡単だ。

「食べたらみがく」──それだけでよい。

 多くの歯科医がそういっている。

 液体ハミガキでクチュクチュとやってからなら、なおよい。


歯の日の成果

 3月3日の「耳の日」は1956年。

 8月7日の「鼻の日」は1961年。

 10月10日の「目の日」は1947年にそれぞれ制定された。

 これらのどれよりもずっと古く1928年に定められたのが、6月4日の「虫歯予防デー」だ。

 1958年からは「歯の衛生週間(4日~10日)」に拡大された。

 近年は、4月2日の「歯列の日」。

 4月18日の「よい歯の日」。

 8月8日の「歯並びの日」も加わった。

 その成果か、文部科学省の学校保健統計調査によると、児童・生徒の虫歯は過去10年間で20ポイント減少。

 12歳の永久歯の虫歯本数は、10年前の4.17本から2.28本に減った。

 国立保健医療科学院の花田信弘・口腔保健部長は、

「少子化で子どもに親の目が届くようになり、寝る前に甘いものを食べないとか、歯みがきの習慣がついた。

 フッ素入り歯磨きも普及し、キシリトールなどの代用糖の利用拡大など、複合的な減少の要因がある」と分析。

「子どもの虫歯は、戦後に激増したものなので、まだまだゼロに近づけられる」と話している。


歯周ポケット

 明眸皓歯(めいぼうこうし)──目がパッチリで歯が真っ白──は、美人の象徴。

「芸能人は歯が命」というCMもあった。

 丈夫な歯の効用はそんなものじゃない。

 早い話、よい歯でよく噛んで食べれば物がおいしい。

 消化がよくなり、脳が活性化される。

 噛めば、命の泉わく。

 健康な歯は健康な老後に直結する。

 高齢者の残存歯数(残っている歯の数)と認知機能の関係を調べた研究がある。

 一つは、財団法人ぼけ予防協会(現認知症予防財団)の、

「高齢者の歯、および口腔状態が認知症発症におよぼす影響」という調査研究だ。

 結果の数字だけを示すと、健常群の高齢者には平均14.9本の歯が残っているのに対し、認知症の疑いのある人は9.4本と少なかった。

 もう一つは、東北大学歯学部の報告。

 高齢者の残存歯と認知症との関係を調べたところ、残っている歯が多い人ほど認知症の度合が少なく、そして、脳の萎縮が小さかった。

 人が歯を失う原因は一に歯周病、二に虫歯だ。

 20代までは虫歯、30過ぎると圧倒的に歯周病が増える。

 歯周病の初期症状の歯周炎の罹患率は、24歳以下は1割未満だが、45歳以上は約半数だ(厚労省「歯科疾患実態調査」)。

 歯周病は、歯と歯ぐきの間にできた溝(歯周ポケット)にプラーク(細菌の集合体)がたまり、歯ぐきが溶ける病気。

 歯が抜け落ちるばかりか、糖尿病を悪化させ、動脈硬化を促進し、誤嚥(ごえん)性肺炎のもとになり、心筋梗塞や脳梗塞の誘因になり、早期低体重出産を招くなど、全身の健康に影響する。

 歯周病の初期はほとんど全く無症状だ。

 目盛りのついた探針(ポケットプロープ)で、歯周ポケットの深さを測れば、わかる。

 深さが4ミリ以上だと、歯周病と診断される。

 歯周病を防ぐには一にも二にも歯みがきだが、歯ブラシの毛先は、狭い歯周ポケットの奥までは届きにくい。

 半年に1回、ポケット内にできた歯石をとってもらうようにしたい。

 ミクロコンビ

 歯周病を防ぎ・治すためには、歯周ポケットの奥にひそむ細菌を除去するとともに、歯肉の炎症を抑えることが肝要だ。

 しかし、歯周ポケットは深くて狭いため、歯ブラシの毛先と歯みがきの薬用成分が奥まで届きにくい。

 花王の新製品「ディープクリーン」は、毛束の先端を直径1ミリにした歯ブラシと、それとほぼ同じ約0.2ミリのゲルカプセル含有のハミガキを組み合わせたミクロのコンビだ。

 通常毛束のハブラシより約2倍、歯周ポケットの奥まで毛先が届き、その毛先に押されて、抗炎症・血行促進の薬用成分とカテキンEX(収れん剤)を閉じ込めたゲルカプセルが薬効成分を行き渡らせるのだという。

「ゲルカプセル」というのが不思議なオドロキで、目をこらしてみたが、むろん見えなかった。


歯と脳

 正月もまだ松の内だというのにちょっと寂しい話で恐縮。

 唐の詩人、韓愈の「落歯」という詩をまず読んでください。


 昨年奥歯が一本抜けてしまい

 今年になって前歯が一本抜けてしまった

 急に七、八本も抜けてしまい

 抜けるのが止まりそうもない

 残っているのもみなぐらぐらで

 どうやら全部抜けたら止まるらしい。

 (訳・黎波)。


 全部抜けたらそりゃ止まるだろう。

 寂しいけどなんだかおかしくて笑ってしまった。


 先年、東北大大学院の渡辺誠・歯学研究科長らのグループは、歯が減ると脳も萎縮すると、国際老年学会議で発表した。

 仙台市内の70歳以上の高齢者1167人のうち、健康な652人には平均14・9本の歯があったが、認知症の疑いのある55人は平均9・4本と少なく、歯の数と知能との関連が示唆された。

 さらに、高齢者195人(69~75歳)の脳をMRIで撮影し、残っている歯や、噛み合わせの数と、脳組織の容積との関係を調べた。

 歯が少ない人ほど大脳の海馬周辺と前頭葉の容積が減少していることがわかった。

 海馬は、大脳の側頭葉の内側にあり、記憶や学習のメカニズムを担っている。

 アルツハイマー型認知症は、脳が萎縮してくる病気だが、海馬とその周辺が最初に障害される。

 そのため、まずもの忘れが始まる。

 そして病変はしだいに広がり、しまいには前頭葉が冒される。

 前頭葉は理解や判断など高次の脳機能にかかわっているから、本格的な痴呆症状が出てくる。

 歯の根元は、歯根膜神経という精密なセンサーが取り巻いていて髪の毛1本挟まってもわかる。

 歯がなくなると、その脳との通信がプツンと切れる。

 脳へのインプットも、脳からのアウトプットも極度に少なくなるわけで、

「噛むことで脳は刺激されるが、歯がなくなり、歯の周辺の神経が失われると、脳が刺激されなくなる。

 それが脳の働きに影響を与えるのではないでしょうか」

 と、渡辺誠・東北大大学院の歯学研究科長は話している。

 歯と脳とのこうした関係は、ガムを噛んだときの脳の活動状態を観察した、小野塚実・神奈川歯科大学教授(生理学)の研究でも確かめられている。

 歯は履歴書

 小野塚教授は、ガムをかんだときの脳の活動状態を、fMRI(機能的磁気共鳴画像化装置)で観察し、記憶力を補う前頭前野の働きが活発になることを確かめた。

 13人の高齢者に2分間ガムをかんでもらって、風景の間違い探しテスト(100点満点)をしたところ、かまないときの平均73・8点が80・3点に上がった。

「歯を大事にし、ものを食べられる状態を保つことが一部の痴呆予防に役立つ可能性がある」と、教授は示唆している。


 人生は歯のようなもの

 充実した日々を過ごせるのを人は当たり前と思っている

 毎日なんでもかめるのを人は当たり前と思っている

 けれど、あるとき突然、歯は壊れ始める

 人生も同じ。

 難しいことに出くわす

 このときになってその大切さに気づく

 ──以下略──

「人生は歯のようなもの」という、このシャンソンの訳者でもある石川烈・東京医科歯科大学名誉教授は、

「私の立場から言えば、歯は人生のようなもの。

 歯はその人の履歴書です」と話している。


歯ぎしり

 歯ぎしりには、睡眠中に上下の歯をキリキリとすり合わせる普通にいう歯ぎしりのほか、上下の歯を強く噛み合わせた状態を続ける「食いしばり」や、上下の歯をカチカチとぶつけ合わせる「タッピング」がある。

 専門的には「咀嚼(そしゃく)筋群の異常緊張を伴う不正咬合(こうごう)習性」ということになるそうだ。

 歯ぎしりの原因(誘発因子)としては次の三つが挙げられている。

 ■上下の歯の咬合異常  噛み合わせのアンバランスで、親知らずが生え始めたとき、歯が抜けたとき、入れ歯を入れたとき、虫歯の穴につめた詰め物が高過ぎたときなどをきっかけとして、始まることが多い。

 ■歯の咬耗(こうもう)  歯の表面がすりへったり、欠けたりしたことが、口腔(くう)の異常刺激となり、歯ぎしりを誘発する。

 ■精神的ストレス  過度の緊張や不安、過剰なストレス、欲求不満などによって歯ぎしりが起こることがけっこう多い。

 なぜ、精神的ストレスが歯ぎしりを引き起こすのか?
 脳の異常な興奮が睡眠中に間違った指令を口腔内に伝えるのではないか、と考えられている。
 
 歯ぎしりの治療

 歯ぎしりをかむのは、いったいに神経質な人、まじめで他人の思惑を気にし過ぎるような人が多い、といわれている。
 なるべく精神の安定の心がけ、神経を図太く鍛えることが歯ぎしり解消のポイントといえる。

 歯ぎしりの治療は、原因(誘発因子)によって異なる。歯並びの悪いところを矯正したり、入れ歯を作り変えたり、虫歯のつめ物の高すぎる部分を削るだけでピタリと治る例も多い。

 精神的な原因からきている歯ぎしりには、不安や緊張をほぐす心理療法が効果的だ。
 精神安定剤や自律神経安定剤が用いられることもある。

 根本的な治療法ではないが、即効性のある歯ぎしり防止具としてすぐれているのが、ナイトガード。
 合成樹脂で作った一種のマウスピースで、これを下の歯にすっぽりかぶせ、上下の歯が直接触れ合わないようにする。
 いわば歯ぎしりの緩衝装置だ。
 本格的な治療に先だってこのナイトガードを使用することもある。

 歯ぎしりが長期間続くと、顎の関節に異常をきたす恐れがある。
 ぐずぐずと思い悩むのはやめて、早く専門医に相談したほうがいい。
 歯科の総合病院へ―。



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