暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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泌尿器の病気

水の正解・誤解

水を飲もう! だが飲みすぎるな!


夏の甲子園の熱闘が続いている。

気がかりなのは熱中症だ。

水分、きちんと補給しているだろうな。


◎運動中の水分補給

昔の運動指導者は、運動中は水を飲ませなかった。

胃がだぶついて呼吸運動に影響したり、競技のリズムが狂ったり、汗を余計にかいてそれだけ疲労度が大きくなる─といった理由だった。

この考えには科学的根拠がないばかりか、非常に危険だと専門家は断言している。

汗をかいて体重の2~3%に相当する水分が失われると、循環機能に影響が出始める。

5%程度になると持久力が低下し、7%になると幻覚が現れる。

10%以上になると意識がなくなり、最も重症の熱中症(熱射病)で死ぬケースが出てくる。

運動によって失われた水分は、運動中に補給したほうが、そのあとの運動能力が向上することが、現在のスポーツ医学では証明されている。

体内の水分が足りなくなると、普通はのどの渇きを覚えるが、激しい運動中は興奮や緊張で渇きを感じないことがある。

長時間運動をするときは、あらかじめ水を飲んでおくべきだ。

朝の起き抜けにジョギングやウォーキングをする習慣の人も多いし、夏休みには早起きのラジオ体操の会も開かれる。

そんなときは必ずコップ1杯の水を飲んで、家を出よう。


◎脱水状態vs多飲頻尿

渇きを覚えたら(いや、渇きを覚える前に)水を飲もう。

夏、29℃の室内では、じっとしていても1日約3㍑(1時間124cc)も発汗する。

日盛りの道を1時間歩くと約500cc、ジョギングをすると倍の約1㍑、汗をかく。

つまりそれだけ体内から水分が失われる。

体の中の水分は、体温の調節、全身の組織への栄養と酸素の供給、組織からの老廃物の排出などの役目を果たしている。

体重の2~3%に相当する水分が失われると、体温上昇が目立ちはじめ、循環機能に影響が出る。

汗をかいたとき、それと同量の水を飲まないと、脱水状態を招き、体温が上がり、体力を消耗する。

汗をかき、尿が濃くなると、尿路結石(腎臓結石、尿管結石、膀胱結石)ができやすい。尿酸の体外への排出が悪くなるから痛風発作も起こりやすい。

半面、水、よく飲むべし─の勧めが裏目に出てしまうことがある。

お年寄りの「多飲による頻尿」だ。

頻尿を訴えて受診する人に、「排尿日誌」をつけてもらうと、1日の尿量が3000~4000㍉㍑ということがある。

「これは明らかに水分の取り過ぎによる多尿で、これが頻尿や過活動膀胱の症状となって現れてくるのです」と、鈴木康之・東京慈恵医大泌尿器科診療副部長は話している。

過活動膀胱というのは、さまざまな要因によって膀胱が過敏になって、排尿の回数が異常にふえる頻尿、尿意を感じたとたん漏れそうになる尿意切迫感、漏らしてしまう失禁などが起こる病気で、高齢者にとても多い。

その一因が、水の飲み過ぎだという。

「お年寄りがたくさんの水分を取るのは、決して悪いことではありません。お年寄りは、のどの渇きを感じにくく、体内の水分が足りなくなっているのに、水分をとるのを忘れるので、脱水が進みやすいからです。

夏場、家の中にいても熱中症になるお年寄りが多いのは、このためです。脱水を防ぐためにも積極的に水分は取るべきでしょう。

でも、だからといって、頻尿で困るほどたくさん取る必要はありません。

また、よくあるのが、かかりつけの内科医から、『脳梗塞の予防のため、水分をたくさん取るように』といわれ、水を飲みすぎるパターンです。

『寝る前に水分を』という助言を拡大解釈して、おなかがガボガボになるまで飲むのは賢い選択ではありません。

健康のためには何事も中庸が大切。水分もほどほどに─を心がけましょう」


注意! 人によっては水が「毒」になることもある。たとえば腎炎の急性期とか、人工透析を受けている人などは、水分の摂取は厳重に制限される。ご病人は主治医の注意をよく聞いてください。


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一人で悩まないで!

尿もれ克服の日

2月20日は「尿もれ克服の日」だった。

尿もれを克服した元患者の団体「ひまわり会」が、

「女性の4人に1人が尿もれに悩んでいる現状をふまえ、女性の尿もれに関する認識を広く一般に深め、尿もれで悩む女性がゼロになること」を目的として設定した。

220を、ニ、モ(2=two→too)、レ(0)と読む語呂合わせだそう。

ジョンソン・エンド・ジョンソン社がサポートする、女性の健康に関する電話サービス「ウーマンズ・ヘルスパートナー・コールセンター」に寄せられた、1年間の全相談の約31%が「尿もれ」だったという。

尿もれには、腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁がある。

腹圧性尿失禁は、重い物を持ち上げたり、クシャミをしたり、笑ったり......など、おなかに圧力がかかり、膀胱がグッと収縮する瞬間、もれてしまうもので、女性の尿失禁の70~80%は、これ。

最大の原因は、出産だ。

出産のときの産道損傷や骨盤底筋(骨盤内におさまっている子宮、膀胱、膣、尿道、直腸などを支え、尿道をしめている筋肉群)の下垂が、年を重ねるにつれて大きくなるのだという。

──であるなら、それはつまり人間のいのちをつないだ、母なるひとの証し、なのである。

子よ、老いた母の尿もれをあだおろそかに思うなかれ!

笑ったりしたらバチが当たるぞ!

もう一つの切迫性尿失禁は、尿意を感じたとたん尿が漏れそうになり(切迫尿意)、漏らしてしまうもので、排尿を調節する自律神経が狂って、膀胱の異常収縮が誘発されるために起こる。

女性では腹圧性との混合型として10%ぐらい、

男性では、前立腺肥大症や前立腺がんの症状として、ままみられる。じつは当方も体験者。その切ない苦痛は、拙著『「がん」はいい病気』(マキノ出版)に笑述した。

人に知られたくない...、トシのせい...、と一人で悩んでいられるご婦人が多いようだが、尿もれは、適切に対処すればかならず改善される。

尿失禁の専門外来、女性泌尿器科、泌尿器科・婦人科連携のウロギネ外来(Urologie=泌尿器科、Gynecologie=婦人科)を訪ねるとよい。

その前に知りたいことなど、ネットで調べたり、電話でたずねたりするのもよろしいでしょう。

「ウーマンズ・ヘルスパートナー・コールセンター」が、「骨盤臓器脱・尿もれ」に特化した電話相談サービス「ウロギネホットライン(無料)」は、

電話番号=0570-056-922

受付時間=月曜日~金曜日(祝祭日を除く)の午前10時~午後4時。

WEBサイトは、http://www.traube.co.jp/

骨盤臓器脱

骨盤の中にある子宮、膀胱(ぼうこう)、尿道などの臓器がだんだんと下がってきて、最終的に膣(ちつ)を通って膣壁と一緒に体外に出てくることがある。

体外に出た臓器の種類によって「子宮脱」「膀胱瘤(りゅう)」「尿道瘤」「小腸瘤」「直腸瘤」に分けられる。

まとめて「骨盤臓器脱」と呼ばれる。

骨盤内の臓器(膀胱、子宮、直腸)が落ちないように支えている骨盤底筋群が、出産によって傷ついたり、加齢や肥満によってゆるむことにより、尿や便がもれてしまったり、骨盤内臓器が膣から身体の外へ出てきてしまう。中高年の女性に多くみられる病態だ。

膣(ちつ)の辺に何か異物があるように感じる、午後になると、おなかの中が下がってきたように感じる、座ると陰部の辺で何かが押し込まれる感じがする、尿が出にくくなった、残便感がありスッキリしない、

─といったいままで経験したことのない違和感を覚えることがあったら、骨盤臓器脱かもしれない。

最も多くみられる膀胱瘤では、尿もれや、逆に尿が出にくい、出るのに時間がかかる排尿障害が起こりやすい。

「膣から軟らかいボールのようなものが出てくる感じがする」と訴える人もある。

症状は午後から夕方にかけてひどくなる。

放っておくと、進行することはあっても改善することはない。

一人で悩まず、スパッと思いきって病院へ─。

メッシュ治療

骨盤臓器脱の治療には、手術による根治療法と、リング状の装具(ペッサリー)を膣(ちつ)の中に入れて、臓器を支える保存療法がある。

ぺッサリー療法は、日本では年間7万2千人以上が受けている。

リングは患者の体格や骨盤臓器脱の状態に合わせて選ばれる。

感染や炎症、出血、膣の壁の損傷などが生じることがあるので、定期的な受診が必要だ。

骨盤臓器脱を根治する方法は手術しかない。

以前は患者本人の膀胱(ぼうこう)や子宮の周りの組織を使って補強する手術が行われた。

が、使用する組織そのものが傷んでいるために再発することがあった。

近年、メッシュを使った径膣(開腹しない)手術が普及、よい成績を上げている。

丈夫でやわらかい人工素材で編み上げたメッシュ状のテープで尿道をハンモックのように支えて、尿による腹圧がかかった際の尿道周辺のサポート力を回復させる。

術後の痛みや体への負担が軽く、再発例も少ない。これからの治療の主流になるとみられている。

手術時間は通常1~2時間、入院期間は約1週間。

むろん健康保険が適用される。

受診は泌尿器科か産婦人科へ─。


おれのがん

「これ、肥大じゃないな。がんですよ」と、シャウカステンのX線写真を見て、医師。

 おれの10年余にわたる前立腺がんとの深い親しいつき合いは、この一言から始まった。

 1999年10月25日、前立腺肥大症の温熱療法を受けるための事前検査の結果を聞きに行ったときのことだ。

 男性の膀胱の出口のところにある前立腺は、精液(の一部)をつくる器官だが、50代も半ばを過ぎると、それがだんだん大きくなって、尿道を圧迫する。

 ために、尿が出にくく、トイレが近くなる。

 おれの場合もまず尿線が細くなり、睡眠の持続時間が短くなった。

 夜12時ごろ寝床に入ると、夜明けの4時か5時には必ずおしっこに起こされてしまうのだ。

 しかし、そんなものはまだほんの序の口だった。

 やがて最低2度、しばしば3度(約2時間おきに)、起きなければならないようになった。

 それもなかなかつらかったが、なんといっても、切なくつらい思いをさせられたのは、尿意を感じたとたん、たちまち漏れそうになる、切迫尿意だった。

 ある夜、池袋で一杯やって、山手線の内回り電車に乗り、次の目白駅を発車したとたん尿意が生じた。

 と、次の瞬間、あわや失禁しそうになったから大いにあわてた。

 いまパソコンの「駅すぱあと」で確かめたら目白─高田馬場間は「2分」だが、あの2分間の苦しさといったらなかった。

 高田馬場駅で電車が停まって、ドアが開くなり飛び出したのだが、トイレへの階段を駆け降りる途中、ついに生温かい液体が股の内側をしたたり落ちた。

 いや、その情けなさ!

 いまも忘れることができない。

「もっと早く受診すべきだった」と、ほぞをかんだ。

 前立腺肥大症の治療には、

 ①尿路の神経の緊張を緩めて尿の出をよくする飲み薬、

 ②肥大した腺腫を電磁波で加熱し縮小させる温熱療法、

 ③先端に電気メスのついた内視鏡で腺腫を削り取る経尿道的前立腺切除術(TURP)などがある。

 失禁を招くまで放っておいた、わが前立腺肥大症(と、独り決めしていた)は、すでに薬が効くレベルは超えてしまっただろう。

 最終的には手術ということになるのかもしれないが、とりあえずは日帰りの温熱療法を受けてみよう。

 そう思って、温熱療法専門のクリニックを訪ねて、超音波やX線CTなどを含む事前の検査を受けたところ、思いもしなかった、がんが見つかったというわけだ。

「PSAはいくつですか?」とたずねたら、

「241です」

 これには本当におどろいた。

 思わず、「それじゃナベツネどころの話じゃないですね」と口走っていた。

 PSA(前立腺特異抗原)は、前立腺にだけある糖たんぱくで、がんになると血液中にふえる。

 90%以上の確率で前立腺がんを発見できるので「血液検査でわかるがんは、白血病と前立腺がんだけ」といわれる。

 天皇陛下の前立腺がん診断のきっかけとなったのも、毎年受けておられたPSA検査だった。

 PSAの正常値は血液1ミリリットル中4ナノグラム以下、

 4.1~10は「がんを疑うグレーゾーン」、

 10.1~20は「がんの疑い」、

 20以上は「がんの疑い濃厚」とされる。

 渡辺恒雄・読売新聞会長の前立腺がんが見つかったときのPSA値が14.4で、ホルモン療法によって0.1まで下がった。

「このまま手術をしなくても2年から5年は心配ないが、そのあと、ホルモン療法が効かない低分化がんが発生する可能性が残る。

 これを未然に防ぐため前立腺を全摘する根治手術を受ける」と、記者会見して公表したのが1998年1月のことだった。

 PSA値281と聞いて仰天し、「ナベツネどころの......」と口走ったのは、そのことが頭にあったからだ。

 もはや日帰りの温熱療法どころじゃない。

 大学病院の泌尿器科を受診、そこでの精密検査で、おれの前立腺がんは、低分化型という悪性度の高いタイプで、前立腺の被膜に浸潤した段階(まだ骨などへの転移は認められない)のステージCと診断された。

 がんが、前立腺内に限局しているステージAとBならば根治手術、リンパ節や骨などに転移しているステージDだともう根治は望めないので、がんの増殖を抑えるホルモン療法が主体になる。

 では、ステージCは?

「ステージCに対する治療法の選択がいちばん難しい。根治手術の成績があまりよくないのです」というのが、主治医のH先生の説明で、当面、LH─RHアゴニストという注射薬を主剤とするホルモン療法が行われることになった。

 ホルモン療法と聞いて、ホルモンを補充する治療法かと思ったのだが、そうではなく、ホルモンの分泌を抑えるのである。

 先生の説明を要約すると─、

 前立腺がんは、男性ホルモンのテストステロンの作用で増殖する。

 この男性ホルモン依存性を遮断するのが、前立腺がんの進行を抑える最も効果的な治療法で、その手っ取り早い方法は、テストステロンの約95%をつくっている精巣(睾丸)をとってしまう手術である。

 近年、それと同程度の効果を示すLH─RHアゴニストが開発されて、前立腺がんの治療は進歩した。

 薬は、成分が徐々に放出される「徐放剤」なので1回の注射で約1カ月、効果が持続するということで、以来、毎月1度、通院し診療を受けることになった。

 この薬、おれには(おれにも)、じつによく効いた。

 あのつらい切迫尿意の症状がたちまち完全に消失し、241という驚異的数値だったPSA値が、検査のたびにストン、ストンと下がり、2001年1月には0・02を記録した。

 頻尿だけは依然として続いていたが、どこも痛くもかゆくもないし、失禁の心配など全然無用、友人たちの「元気そうじゃないか」に、「がんになったおかげだ」と応じるのが決まり文句の返事だった。

 しかし、がんは、やはりがんだ。

 そういつまでもおとなしくしていてはくれない。

 0.02まで下がったPSA値は、こんどは上昇に転じ、じりじりと上がり続けて04年3月には11に達した。

 ここで、H先生が行ったのが、それまでLH─RHアゴニストと併用してきた抗アンドロゲン(男性ホルモン)剤など3種類の内服薬を一切中止するという〝治療法〟で、それによって次の月のPSA値は一気に0.5に下がった。

「アンチアンドロゲン除去症候群」と呼ばれる、体のリアクション現象なのだそう。

 上がったり、下がったり、それからもPSAのシーソーゲームは続き、06年5月には再び2.7に上がり、いよいよ最終的ながんの本格攻勢を覚悟すべきかと思ったとき、先生の新しい提案は、放射線治療だった。

 前立腺の周囲には尿道、直腸、膀胱などが入り組んでいるため、放射線を一方向から照射する定位放射線治療は不向きだが、最近開発された強度変調照射法(IMRT)は、コンピューターを使い、複数の方向からの照射を組み合わせて、放射線を凹凸状に照射するもので、前立腺がんの治療にすぐれた効果を上げているとのことだった。

 そして06年6月から8月まで毎週月~金の8週間(40回)通院して受けた、放射線治療によって、PSA値は0.008未満と限りなくゼロに近づき、これでもう一件落着だなと喜んでいた。

 ところが、一難去ってまた一難、08年11月の尿検査で潜血反応がみられ、詳しい検査の結果、左の尿管にがんが見つかった。

「前立腺がんの転移ですか?」

「いいえ、原発がんです」とのことで、同年12月、H先生の執刀により、がんが発生した左の尿管と腎臓を摘出し、膀胱の一部を切除する手術が行われた。

 ──と、以上のような経過をたどって、2012年10月現在、PSA値はまた上がって14・3、ときたま尿管がんの手術跡が鈍く痛んだりはするが、まずまず元気で、毎日小1時間のウォーキング(後ろ歩き500㍍つき)で汗をかき、妻と缶ビールを半分ずつ飲んだりしている。

 ただ一つ、難儀なことは、毎晩ほとんど2時間おきにトイレに起きなければならないことだ。

 おまけに尿線が細く、ちょいちょい途切れるので、ひどく時間がかかる。

 だが、かんがえてみると、たとえ細々とでも出てくれるから生きていられるので、これが出なくなったら、命にかかわるだろう。

 一つだけ残った腎臓は、がんばって尿をつくり、出口の狭まった膀胱が、けんめいに収縮し排出してくれている。

 そうおもうと、なにかありがたい気持ちになる。

 むかし、田舎の家の炉ばたの茶飲み話に、だれかが、

「あそこの家のばあちゃん、歩きながらおしっこ、ぽたぽた...」と笑ったら、祖母が、

「おしものことを笑うちゃいかん」とたしなめたことを思い出す。

 あの祖母だったら、いまのおれに、こう言ってくれるのではないだろうか。

「おしもを大切にしなさいよ。おしもは、いのちなんよ」


温暖化結石

 熱がある地球はどこで診てもらう?

 浜松市の小学6年生、江間弓華さん作の川柳。

 毎日新聞2012年9月28日夕刊のコラム、近藤勝重「しあわせのトンボ」で読んだ。

 さまざまに問題大きい地球温暖化は腎臓結石にも大きく影響する。

 米国では2050年までに新たな患者が225万人増えるだろうと、テキサス大の研究チームが、米科学アカデミー紀要に発表した。

 尿が作られる腎臓から、尿が排出される尿道までの尿路にできる石を「尿路結石」といい、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石とある。

 人類最古の手術は紀元前に行われた膀胱結石の手術だったといわれるほど古くてありふれた病気だ。

 尿路結石がなぜできるのか。

 水分の摂取量が少なかったり、体内の水分が失われると、カルシウムなどが結晶化して発症すると考えられている。

 米国では暖かい南東部の発症率は、寒冷な北西部の1.5倍だという。

 妙なことに文明が進むにつれ下部尿路結石(膀胱・尿道結石)が減り、上部尿路結石(腎・尿管結石)」が増えている。

 日本では昭和20年以前は膀胱や尿道の結石が多かったが、今は腎臓と尿管の結石が大半を占めている。

 専門医が勧める予防法は、水分をよくとり、よく体を動かすことだ。

「ビールを飲んでダンスをしなさい」


PNHとその薬

 ある日突然、夜間に溶血(赤血球の破壊)が起こり、ヘモグロビン(血色素)尿が見られる「発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)」という病気がある。

 夜、寝る前には何ともなかったのに、朝起きると、紅茶色やコーヒー色の尿が出て、その後はだんだん色が薄くなっていき、日中は普通の尿の色に戻る。

 そういう症状をPNHと呼ぶ。

「しかし、厳密にはこの病名は正しくない」と、この病気の専門医、西村純一・大阪大学医学部血液・腫瘍(しゅよう)内科助教は話した。

「症状が認められなくとも、溶血は常に起こっているので〈発作性〉ではなく、溶血はわずかであっても継続的に起こっているので〈夜間〉だけではなく、PNHの患者さんの4分の3では〈ヘモグロビン尿〉は見られないからです」

 PNHは、何の前ぶれもなく発症する。

 発症の平均年齢は30代前半だ。

 見過ごされて、診断が遅れる症例も多い。

 原因不明の血栓症は、PNHが根本原因の可能性があり、再生不良性貧血や骨髄異形成症候群などの骨髄障害に合併する例も多い。

 PNHの薬

 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は、体内に侵入した異物を排除する免疫システムの一つである「補体」が、自分の体の赤血球を破壊(溶血)することによって引き起こされる。

 従来、PNHに対して行われた輸血やステロイド剤などの治療は、溶血によって生じるさまざまな症状(腹痛、貧血、息切れ、疲労感その他)を和らげるための対症療法に過ぎなかった。

 だが2007年3月、アメリカで生まれて、2010年6月から日本でも使えるようになった新薬「ソリリス」は、補体と直接結合し、赤血球に対する補体の攻撃をブロックすることによって、溶血を抑える。

 PNHの唯一、有効な根本的治療薬だ。

 PNHはきわめてまれな病気だ。

 欧米の患者数は約8000人~1万人。

 1999年の厚生省疫学調査によると、日本の潜在患者数は430人だ。

 こうした希少疾病用の医薬品は、採算が合わないため製薬会社は開発に取り組みにくい。

「オーファン・ドラッグ(略してOD。オーファン=孤児)」と呼ばれる。

 ODはほかにもいくつもある。話を聞くと、頭が下がる。

 ソリリスを発見・開発したのは、バイオ製薬会社アレクシオンファーマだ。


血管内治療

 腎動脈狭窄(きょうさく)症は初期には自覚症状がない。

 放置すると、慢性腎臓病(CKD)や腎不全へ進行する。

 人工透析の原因疾患は、糸球体腎炎31%、糖尿病23%、腎動脈狭窄症12%、腎臓がん12%......の順だ。

 心不全による入院患者の約35%に腎動脈狭窄が認められたとの報告もある。「腎動脈狭窄症の意外な落とし穴は、狭心症、心不全です」と中村正人・東邦大学医療センター教授(循環器内科)。

 腎動脈狭窄症の最も効果的な治療法は「血管内治療」だ。

 足の付け根や腕の血管から腎臓までカテーテル(細い管)を通し、カテーテルの先端に取り付けた風船をふくらませて、狭くなった血管を押し広げ、ステント(金属の筒)を血管内に置いてくる治療法だ。

 腎機能の改善はもとより、治療前に心拡大や肺うっ血などが認められた症例では、それらも改善される。

 だが、正しい診断が得られず治療の適期を逸している症例が少なくない。

「腎動脈狭窄症は、まず疑うことが大切です」と中村教授は話した。


夜の失敗

 夏休み!

 臨海学校や合宿に出かける子どもも多いだろう。

 そこで心配になるのが、おねしょ。

 小学生になってもまだおねしょをしている子はけっこう多く、旅行の前になると、「夜中に一度、起こしてください」と、担任の先生に頼みに来る母親が何人もいるそうだ。

 で、旅行から帰って来た子が、「僕だけじゃなかったよ。夜中にトイレに行ったら、みんないたよ」と明るい声で報告、それをきっかけにおねしょが治ったという例もある。

 夜尿には、1 多尿型、2 膀胱型、3 混合型、4 正常型、と四つのタイプがある。

 1は、睡眠中に作られる尿の量が多いタイプ。

 人間は普通、昼間より夜間のほうが尿の量が減る。

 夜、寝ている間は、尿の産生を抑える抗利尿ホルモンが多く分泌されるためだ。その分、尿は濃くなる。

 赤ちゃんのときは昼も夜も同じように排尿するが、3~4歳ごろになると、抗利尿ホルモンの分泌や、排尿にかかわる自律神経のバランスがうまくとれるようになり、夜、寝ているときには排尿をしなくなる。

 多尿型の子どもは、抗利尿ホルモンの分泌が不十分なために、夜間にもたくさんうすい尿ができ、尿を貯める膀胱の容量を超えて、漏らしてしまう。

 ついでにいえば、年をとると抗利尿ホルモンの分泌がへる。

 高齢者の夜間頻尿の一因は、それだ。

 2は、作られる尿の量は通常だが、膀胱の発達が未熟なために貯められる尿の容量が少なく、尿があふれて夜尿をしてしまうタイプだ。

 3は、1と2の両方がみられるタイプ。

 4は、尿の量も多くはなく、膀胱の容量もほぼ正常で、データ的には異常はないが、夜尿をする。

 その大部分は1、2、3が改善し、もうすぐ治るという状態になっているもので、夜尿の程度や頻度も少なく、ある日突然、治ってしまうものがほとんどだ。

「夜尿症は、一つの病気ではありますが、そのほとんどが自然に治っていくものです。

 だからといって、いつまでも放っておいてよいということではありませんが、あまり早くから心配しすぎるのも考えものです」

 と、新都心こどもクリニック(さいたま市)の赤司俊二院長。

 治療は、体には何の異常もないことをはっきりさせて、本人を安心させる。

 自信をつけさせる。薬物療法、アラーム療法(パンツに小さなセンサーをつけ、尿がちょっと漏れると水分に反応してブザーが鳴って、目が覚める)などいろいろあるが、中心は生活習慣の改善だ。

 夜尿のタイプに合った食事や水分の摂取コントロール、排尿訓練、そして家族の協力だ。

 夕方からの水分摂取はなるべく減らし、夕食は就寝の3時間前までに─。

 料理は塩分を少なめに─(尿は塩分を排泄するために作られるので、塩分の多い食事は尿の量を多くする)。

 昼間に排尿を我慢する排尿訓練は、膀胱の容量を大きくしていく効果がある。

 こうした夜尿を治すための食生活や排尿訓練は、最低でも数カ月以上かかる。

 必須条件は「根気」だ。

「だからこそ家族で話し合い、夜尿を治すために全員で協力していくことが、とても大切なのです。

 焦っても夜尿は治らない、怒っても良いことはなにもない、夜は起こさずよく寝かせる──焦らず、怒らず、起こさない──が三原則です」と、赤司先生。

 先生の本『夜尿症―その正しい理解のために』(悠飛社=1470円)のご一読を、子どものおねしょに悩むお母さんにお勧めしたい。

 なお、ときには、大人でもおねしょをすることがある。

 精神的なストレスが原因となることが多い。

 以前に見たテレビドラマで、大口の得意先を失ったデパートの外商部の課長が睡眠中に失禁するシーンがあったが、そうした強い精神的過労による夜尿も珍しくないようだ。

 むろん、このような夜尿自体は心配無用である。

 なお、子どもの夜尿については去年12月にも「叱らないで!」と題して、記した。


牛乳療法

 久しぶりに会った友人が喫茶店でホットミルクを注文した。

 腎臓が少し悪いので「牛乳は薬」なのだと言った。

 家庭医学の本に書いてあったそうだ。

 腎臓病の牛乳療法は、19世紀の末ごろ、ロシアの医師、フィリップ・J・カレルが提唱した。

 急性腎炎などの患者に絶対安静を指示した上で、1日量800ミリリットルの牛乳を一回200ミリリットルずつ4回に分けて、5日から1週間飲ませるという治療法だ。

 日本にも移入された。

 日本人の体格に合わせてリンゴジュースなどを加えた「カレルの変方」も用いられた。

 ひとくちに腎臓病といっても、急性腎炎もあれば慢性腎炎もある。

 多量のたんぱく尿が出るネフローゼもある。

 血圧が高い人もいれば、心臓が弱っている人もいる。

 どんなタイプの、どの時期の腎臓病かによって牛乳療法の適否は異なる。

 慢性腎炎が進行して透析直前の状態の人が牛乳をたくさん飲むと、たちまち病気が悪化する。

 牛乳療法が合うのは、軽い急性腎炎、慢性腎炎の潜在型、ネフローゼなどだと専門医は解説している。

 必ず主治医に相談してその指示に従おう。


小ならぬ問題

 中高年の男性が、尿の出具合がおかしくなると、たいてい前立腺肥大だろう──と泌尿器科を受診する。

 が、女性には前立腺がないので、年のせいと諦めたり、あるいは内科や婦人科を訪ねる。

 そこで、膀胱(ぼうこう)では...? と、泌尿器科の受診を勧めてもらえると、問題が早く解決される。

 もっとも、男性にも問題がないわけではない。

 トイレが近いという男性が来ると、ああ、前立腺でしょうねと、前立腺を調べて少しでも肥大が見つかったら、やはりそうだと、前立腺肥大症の薬が処方される。

たが、ちっとも改善されない。

「それだけならまだいいけど、前立腺の手術をして、よくならないので、医者と患者さんが気まずくなる。そういう例もけっこうあるようです」

 ──と泌尿器科の専門医に聞いたことがある。

 なにしろ、「男性下部尿路症状診療ガイドライン」という2009年発行の指針を見ると、男性の排尿障害の症状は、下のように大きく四つに分けられ、それをさらに細かく分けると25もある。

 蓄膿症状=人間の体は、一日中ずっと尿をため続けていて、排尿する時間はトータルすると10分ぐらいしかない。

 残りの23時間50分の間に起こってくるのが、蓄尿症状で、昼間頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感(尿意を感じたとたんたちまち漏れそうになる症状)、さまざまな種類の尿失禁、反対に尿がたまっても感じない尿意鈍麻、尿意消失とある。

 排尿症状=尿勢低下(尿の出の勢いが弱い)、排尿開始遅延(なかなか出ない)、腹圧排尿(腹に力を入れないと出ない)、尿線散乱(散らばる)、尿線途絶(途中で止まる)、排尿終末時滴下(終わりごろにはタラ、タラっとたれる)といった症状。

 排尿後症状=おしっこをした後に感じる症状で、まだ残っている残尿感、排尿後滴下(終わったと思った後にタラッとたれてくる症状)。

 排尿症状の「排尿終末時滴下」は、まだホースが外に出ているときの症状。

 排尿後症状の「排尿後滴下」はホースをしまってからの症状。

 医学的に正確に分類してあるわけだ。

 生殖器痛・下部尿路痛=膀胱痛、尿道痛、外陰部痛、陰嚢痛、骨盤部痛などいろんな部位で、いろんな病気で起こる症状。

 こうした「下部尿路症状」のもとになっている病気は何か?

 ① 前立腺・下部尿路の疾患・病態。

 ② 神経系の疾患・病態。

 ③ そのほかの疾患・病態。

 ──と三つに大別される。

 ①は、前立腺肥大症、前立腺炎、前立腺がん、膀胱炎、間質性膀胱炎、膀胱がん、膀胱結石、膀胱憩室、過活動膀胱など。

 ②は、脳から尿道までのデリケートな神経のルートに神経系の病気が絡み、排尿に微妙に影響するもので、脳梗塞の後遺症、脊髄損傷などいろいろある。

 ③には薬剤性(飲んだ薬のせいで排尿のぐあいが悪くなる)、睡眠障害、心因性(緊張したときに生じる尿意など)、多尿(水分の取り過ぎ。これについては当ブログでもすでに述べた。2011年7月18日の「水、飲みすぎないで!」をご参照あれ)

 ──といったように全然〝小〟さくないのが、小便問題である。

 おかしい、つらい、と感じたらぜひ詳しい検査を泌尿器科で─。


小ならぬ悩み

 さっき行ったばかりなのに、またすぐ行きたくなる。

 あっと言う間に漏れそうになる。

 ときには漏らしてしまう。

 夜は2度も3度も起きなければならない。

 たかが、おしっこ。されどおしっこ。

 小便の悩みは決して「小」さくはない。

 しかし、それを病気と考える人は、とても少ない。

 製薬会社のアステラスが行った、40歳以上の女性3092人対象の「排尿実態調査」では、実に半数の1547人が「過活動膀胱(ぼうこう)の疑いあり」と判定された。

 だが医療機関を受診した人はその中の15%に過ぎず、8割以上の人たちは、

「年齢による老化現象」

「冬は体が冷えるので回数が増えて当然」

 ──といったように思い、過活動膀胱という病気があることも知らなかった。

 過活動膀胱

 過活動膀胱は、英語の「オーバーアクティブ・ブラッダー(Overactive Bladder=OAB)」という病名を訳したもの。

 膀胱が活動し過ぎてコントロールがきかなくなるという意味だ。

 膀胱が勝手に収縮するため(排尿筋の不随意収縮)、尿が少したまっただけでも尿意が生じ、漏れそうになる尿意切迫感と、トイレがとても近くなる頻尿を主症状とする病気だ。

 推定有病率は40歳以上の12.4%(約810万人)で、60代=12%、70代=23%、80代以上=37%と高齢になるほど増える。

によって引き起こされる。

 排尿筋というのは膀胱を覆う筋肉で、トイレに行って排尿するときだけ収縮して、膀胱にたまった尿を出すしくみになっている。

 それが自分の意志とは関係なく勝手に収縮してしまうので、不意に尿意が生じたかと思うと、たちまち漏れそうになる(漏れてしまう)し、ひっきりなしにトイレ通いをしなければならない。

 なんだか情けない、つらい病気だ。

 脳や脊髄など中枢神経の障害による神経因性過活動膀胱と、原因が分からない特発性過活動膀胱があり、後者のほうがずっと多い。

 過活動膀胱は、命に関わる病気ではない。だが重症の人では生活の質が極度に落ち、人前で失禁すれば自尊心が全壊する。

 死にはしないが、死にたくなるほど打ちのめされる。

 過活動膀胱の治療には、臓器の過剰な働きを抑える抗コリン薬が用いられ、有効率70%以上といわれた。

 その後、開発された薬(ベシケア、デトルシトール、ウリトス)は、より選択的に排尿筋に作用し、もっとよく効く。

 がまんは無意味、早く泌尿器科へ──。



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