暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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慢性疾患

頭が痛い!(2)

 仮病じゃない!
 
 子どもにも頭痛もちは少なくない。

 中学生の5%が片頭痛患者という調査がある。

 だが、周囲の理解不足から、「仮病」と誤解されたり、「怠け病だ」と言われてうつ状態になる子もいる。

「子どもの片頭痛は、頭痛以外の症状、めまいや嘔吐(おうと)が強く現れる例が多いので、診断がつきにくいのです」

 と、頭痛の専門医、清水俊彦・東京女子医大客員教授。

「子どもの片頭痛は、まず乗り物酔い、腹痛、自家中毒など、頭痛以外の症状で出てきます。

 幼児のころにそうした経験をもつ人は、まず間違いなく片頭痛の要素をもっています。

 そして思春期ごろになると片頭痛が始まる。病院でいろいろ検査をされるが、

 『異常なし。ただの頭痛です』と言われる。

 だが動くとガンガン頭が痛くて、学校に行けなくなる。

 そういう子をきちんと診療してあげないと、薬物乱用頭痛になってしまう。

 薬物乱用頭痛の人の話を聞くと、ほとんどの人が子どものときに適切な治療を受けていない。

 適切な片頭痛教育がされてない。

 仮病扱いせず、専門医を受診してください。

 氷山の一角

 頭痛は、一次性頭痛と二次性頭痛に大別される。

 一次性頭痛とは、CTやMRIなどで異常が見つからない、特定の病気を原因としない頭痛だ。

 片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛とある。

 慢性頭痛─いわゆる「頭痛もちの頭痛」だ。

 一方、二次性頭痛は、くも膜下出血や脳腫瘍をはじめさまざまな病気の症状として現れる頭痛だ。

 早い段階で治療をしないと命にかかわったり、重い後遺症を残したりする病気が潜んでいることがある。

「いつもと違う頭痛」とか「なんだか妙な頭痛」と感じたら、すぐ脳神経外科を受診しよう。

「頭痛もちの頭痛」の病態は年齢と共に変わる。生涯を通して同じ症状であり、同じ薬がずっと適応することなどあり得ない。

 だが、片頭痛840万人、緊張型頭痛2000万人といわれる患者のうち、適切な診断と治療を受けている人はほんの一握り、氷山の一角でしかない。
 


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頭が痛い!

 広辞苑的誤診

『広辞苑』にマチガイを見つけた。

「ずつう{頭痛}①前額部・側頭部・後頭部の全部、またはその一部に発する痛みで、諸種の疾患に伴う症状。②心配。心痛。」

「へんずつう{偏頭痛・片頭痛}頭の片側だけに局限された激しい発作性の頭痛」

 ──これらのどこが間違っているのか?

 頭痛は、単に「諸種の疾患に伴う症状」ではない。

 そうした原因疾患によらない、頭痛それ自体が一つの病気である頭痛もある。

 片頭痛はその一種だが、頭痛の専門医によれば、「頭の片側だけ」ではなく、「両側」でも起こるし、痛みが移動する例も多い。

 だが医学生でも、試験の解答に、

「片頭痛とは、頭の片側のみに生じる頭痛」といった広辞苑的不正解を書く者が大半を占める。

 多くの開業医は、

「片頭痛と緊張型頭痛を間違って診断している」

 ──と、専門医は指摘する。

 片頭痛は頭の血管が広がるために生じ、緊張型頭痛は反対に血管が縮むために生じる。

 だから片頭痛は冷やす(血管が縮小する)と楽になるが、緊張型頭痛は温める(血管が拡張する)ほうがよい。

 原因も対処法も正反対の頭痛を誤診されて、治る頭痛が治らない例も多いのだという。

 誤診の理由

 片頭痛は、頭の片側あるいは両側がズキン、ズキンと痛み、吐き気を伴い、光や音に敏感になり、まぶしかったり、騒がしかったりする場所では、痛みがひどくなる。

 いったん発作が始まると、数時間から2~3日は痛みが持続する。

 が、3日以上も続くようなことはない。

 一方、緊張型頭痛は、頭を締めつけられるような痛みが、いつとはなしに始まり、ほぼ毎日だらだらと続く。

 吐き気とか光や音への過敏性は起こらない。

 こんなにハッキリ違うのだから誤診のしようがない。

 頭痛の専門医は、

「診察室に入ってきた初診の患者さんを見て、若い女性だったらまず間違いなく片頭痛、中年の女性だったら薬物乱用頭痛と予想して8割がた当たっている」と言う。

 一方、多くの開業医の意見は、

「片頭痛はめったにない、ほとんどが緊張型頭痛だ」である。

 この違いの理由について、専門医は、閃輝暗点(せんきあんてん)という症状についての思い込みと、もう一つは肩こりについての誤解があるためのようだと言う。

 片頭痛発作の直前の、目の前がチカチカしたり、ギザギザの線が見えたりして、視野が暗くなる閃輝暗点は、片頭痛特有の「前兆」としてよく知られている。

 だがそれが起こる人は1割程度でしかない。

 半面、片頭痛が始まる数時間ないし1~2日前の、異様な首や肩のこり、生あくび、空腹感などの「予兆」は約8割の人にみられる。

 片頭痛は非常につらい。

 強い痛みや吐き気に襲われて寝込んでしまうことも多い。

 それをこわがって、鎮痛薬を早め早めに飲むことを繰り返しているうちに、薬物乱用頭痛になる。

 毎日早朝に頭全体がボワーンとした感じで痛み始める。

 この「元片頭痛・現薬物乱用頭痛」の人が、医師の問診に対して、

「閃輝暗点はない、毎日、頭が痛い、肩がひどくこっている」と答えるのが、緊張性頭痛という診断が増える理由だろうと、頭痛の専門医はみている。

 薬物乱用頭痛と緊張型頭痛は、毎日起こり、症状もほとんど同じなので、混同されがちだが、対処法は全然違う。

 専門医に相談してみよう。


リウマチの最新治療

 抗リウマチ薬


 リウマチの話を続ける─。

 冬は、病気をもつ人には特につらい。

 関節リウマチはその最たる病気の一つだ。寒冷刺激が実につらい。

 そんな人が、全国に少なくとも70万人はいる。

 関節リウマチは、治療しなければ、痛みは激しくなるばかりで、関節が壊れ、寝たきりになることさえある。

「1960年代、関節リウマチの本格的な薬はなにもなかった。

 80年代、痛みのコントロールはかなりできるようになった。

 2000年代、関節破壊の進行をかなり止められるようになった。

 リウマチ治療は確実に進歩している。

 2010年代は治る病気になるかもしれない」

 ──と、山中寿・東京女子医大教授(膠原病リウマチ痛風センター所長)。

 関節リウマチの治療には、

 1 非ステロイド系抗炎症薬。

 2 ステロイド薬。

 3 抗リウマチ薬──と、ある。

 1は痛み止め。

 2は炎症を抑える。

 3は関節破壊の進行を止める。

 治療の中心は3だ。

 いったん破壊された関節は元に戻せない。

 関節リウマチと診断されたら早い時期に抗リウマチ薬による治療を開始すべきだ。

 ただ、抗リウマチ薬は効果が現れるまで時間がかかることがある。

 必要に応じて非ステロイド系抗炎症薬やステロイド薬が用いられる。

 抗リウマチ薬のなかで世界的に広く用いられているのが、メトトレキサート(製品名リウマトレックス)という免疫抑制剤だ。

「切れ味がよい」といわれるよく効く薬だが、これだけでは痛みや腫れなどの炎症症状を抑えられない人がいる。

 メトトレキサートを3カ月以上使用してもじゅうぶんな効果が得られない人に対しては、新タイプの抗リウマチ薬、生物学的製剤が用いられる。


 抗TNF療法


 生物学的製剤は、炎症や関節破壊が起こるしくみを免疫学的に解明し、生物によってつくられるたんぱく質などを利用して開発された。

 リウマチの炎症に関係しているサイトカイン(生理活性物質)の働きを抑える薬や、免疫をコントロールしているT細胞の働きを抑える薬だ。

 サイトカインは多種多様で、さまざまなはたらきをするが、その一つにTNF(腫瘍壊死因子)と呼ばれるものがある。

 TNFは、腫瘍を殺すはたらきへの関与や、体の免疫機能に広くかかわる重要な物質だが、炎症反応などを引き起こす原因にもなる。

 近年の研究で、関節リウマチの人は、関節内にTNFという生理活性物質が異常に増えて、関節の炎症や痛み・腫れ・骨や軟骨などの関節破壊を引き起こすことが明らかにされた。

 このTNFそれ自体をターゲットとする関節リウマチの最新治療が抗TNF療法だ。

 これまでの薬物治療で効果のみられなかった人でも、投与3カ月で約65%に症状の改善が認められた。

 痛みを伴う関節や、腫れている関節の数が減り、体の動きが楽になり、関節破壊の進行を止めることが確かめられている。

 抗TNF療法に使われるサイトカイン阻害薬には、インフリキシマブ(レミケード)、エタネルセプト(エンブレム)、トシリズマブ(アクテムラ)、アダリムマブ(ヒュミラ)、ゴリムマブ(シンボニー)がある。

 T細胞の働きを抑える薬にはアバタセプト(オレンシア)がある。

 レミケードは、点滴で、初回投与後、2週目、6週目と、それ以後は8週間隔で投与する。

 エンブレムは、皮下注射で週に1~2回。

 アクテムラは、点滴で4週に1回。

 ヒュミラは、皮下注射で2週に1回。

 シンボニーは、皮下注射で4週に1回。

 オレンシアは、点滴で初回投与後、2週目、4週目、それ以後は4週に1回。

 レミケードは、メトトレキサートとの併用が「必須」とされているが、他の薬はそうではない。

 これらの生物学的製剤によってリウマチ治療は画期的に変わったといわれる。

 半面、肺炎などの感染症にかかりやすくなる副作用がある。

 免疫機能にかかわる物質なので、体の免疫力が低下するためだ。

 下のような症状が現れたら、次の診察日を待たず、すぐに主治医、看護師、薬剤師に連絡を─。

 ●風邪っぽい(熱っぽい、熱がある。せき、たん。息切れ、息苦しさ。のどの痛み)。

 ●発疹が出た。

 ●疲れやすく、だるさを感じる。

 ●皮膚にかゆみがある。

 ●口内炎がよくできる。

 ●皮膚や白目が黄色くなった。

「よく効く薬は、ときに怖い」と頭に刻みつけよう


 リウマチの手術療法 


 リウマチで関節が破壊されると、関節が痛み、動きが制限され、安定性を失って、日常性に支障をきたす。

 関節が壊れたリウマチは、薬では治せない。

 だからといって、決して悲観的になることはない。

 簡便で、体への負担が少ない手術療法が確立している。

 主な手術法は──、

 1 関節内の滑膜(関節を包む袋の内側にある膜)を、関節鏡で取り去る滑膜切除術。

 これで上がらなかった肩がスムーズに上がるようになる。

 2 壊れた関節面を人工物で置き換える人工関節手術。

 膝関節や股関節の人工関節は、ほとんど半永久的にもつほど安定した治療成績が得られている。

 車椅子の人が歩けるようになる。

 しかし、腕は無理して使うので、関節の壊れ方がひどく、肘や手首、手指のいい手術はできなかった。

 最近は形や材質が進歩し、肘関節や手指の関節の人工関節手術でもよい成績が得られるようになってきた。

 このほか、壊れた骨の表面を削って滑らかにする関節形成術、壊れた関節を固定する関節固定術があり、部位によって使い分ける。

 最後に、越智隆弘・大阪大学名誉教授(前日本リウマチ学会理事長)があげる「リウマチが悪化する三つのポイント」。

 1 睡眠不足、過労。

 2 大きな精神的ショック(身内の不幸など)。

 3 酒の深酔い。

 ほとんど治りかけていた人が酒を飲み過ぎて、たちまちぶり返した例が多くみられる。

「リウマチの人は、睡眠をじゅうぶんとってください。あまりイライラせず、お酒の好きなかたでもあまり飲まないようにしてください」と、越智先生は話した


笑いの臨床

 日本の「笑い療法」では、

 伊丹仁朗・柴田病院難治疾患研究部医師(岡山県倉敷市)、

 吉野慎一・日本医大教授(当時。リウマチ科)、

 中島英雄・中央群馬脳神経外科病院理事長(群馬県高崎市)らの臨床研究がよく知られている。

 伊丹先生は、漫才などのお笑いを見たあと、がん患者のNK細胞(免疫をになうリンパ球)の活性が上昇したことを、

 吉野先生は、落語を聞いたあとの関節リウマチ患者のインターロイキン6(リウマチを悪化させる血液中の物質)が減少し症状が軽快することを、

 中島先生は、定期的に開いている「病院寄席」のあと、脳卒中などの患者の脳の血流が促進し脳波にα波(ストレスを和らげる)とβ波(集中力を高める)が増えることを、

 ──それぞれ確かめて報告している。

 ほかにも、糖尿病患者の血糖値の上昇を抑える、

 糖尿病合併症の腎症への進行を抑える、

 慢性疲労症候群を軽減させる、

 虫歯を防ぐなど、

 笑いの効果報告は枚挙にいとまがない。

 笑いは副作用のない良薬だ。

 腹の皮がよじれる以外は─。

 笑い療法士

 10年ほど前に話題になった映画「パッチ・アダムス」は、「愛と笑い」で患者の心理的ケアをする実在の医師・兼道化師の話だった。

 イタリアでは、この臨床道化師治療を行う病院に国が補助金を出し、道化師役を目指すボランティアが勉強するための費用も援助しているそうだ。

 日本では癒しの環境研究会(代表世話人=高柳和江・東京医療保健大学教授)が、2005年から「笑い療法士」の養成を推進している。

 笑い療法士とは、笑いで患者の自己治癒力を高め、健康な人の発病予防をサポートする医療職。

 全国から書類選考で選ばれた応募者が、脳の仕組みや心理学などの講義を含む2日間の講習を受け、その後の課題実践とテストにより認定される。

 05年の1期生から11年の7期生まで約520人の笑い療法士には、医師、看護師、会社員、教師、主婦などさまざまな職種の人がいる。

 患者自らが笑い療法士になったケースもある。 
 

 商売は笑売

「切れたハンカチを縫っても、糸を抜けばまた2枚に分かれる。

 でも、手術の傷は1週間でふさがり、糸を抜いてもくっついたまま。

 これが私たち生物のもつ自然治癒力です。1日、5回笑って、5回感動し、免疫力を高めましょう」

 と、「笑い療法」のリーダー、高柳和江・東京医療保健大学教授は勧める。

 笑いは人と人との心の潤滑油でもある。

 あのマザー・テレサは、貧しい人びとのために働くシスターたちにこう言い聞かせていたそうだ。

「笑ってあげなさい。笑いたくなくても笑うのよ。

 笑顔が人間には必要なの」

「プレゼントは人にあげたらなくなりますが、笑いは人にあげると自分の笑いも増えるのです」とは、木村洋二・関西大社会学部教授の言葉。

 人間の笑いを数値化し、アッハ(aH)という単位で表す「笑い測定機」を開発した人だ。

 古人も言っている。

「商売は笑売」「笑顔にまさる化粧なし」と。

「笑」の古字は「咲」で、「花笑」とは「花開くこと」と漢和辞典にはある。

 この1年を、花いっぱいの年に!


パーキンソン病

 永さんの症状

「体調がおかしくなってから1年。

 一時は番組そのものが危なくなりかけた」と、永六輔さんが、毎日新聞のコラム「永六輔とその新世界」に書いたのは、2010年10月だった。

 番組というのは、TBSラジオ系で半世紀以上も続く「永六輔の土曜ワイド」だ。

 永さんといえば、やや甲高い早口のおしゃべりと、頭のてっぺんへ突き抜けるような笑い声の、陽気な話術が売り物だった。

 なのに、

「放送の上では言葉が伝わらないという現実的な病状があった。

 何を言っているのかよくわからないという噂(うわさ)もあって自覚もしていた」という。

 だが、

「やっと病名が決まってパーキンソン病」「かつては難病のひとつに数えられていたが、研究の成果が上がり薬も開発され、病気を押さえ込むことが出来るようになった」

「日常生活そのものがリハビリテーション。

 転倒しない注意と加齢による体調の変化を自分で納得しながら過ごせばいいとのこと、一安心した」と書いている。

「声と言葉が戻ってきましたね」

「昔の笑い声になりましたね」など、番組にもいろいろ反応が寄せられ、

 番組でフリートークした大橋巨泉さん、前田武彦さんからも、

「若い時の舌っ足らずでキンキンした声、けたたましい笑い声に比べれば今の方が落ち着いて好きだな」と言われた──とある。

 パーキンソン病は、加齢とともに進行する神経変性疾患で、厚生労働省指定難病の中で最も患者数の多い一つだ(有病率10万人中約150人。全国の患者数約15万人)。

 大半は高齢になって発症するが、若くして発症する若年性パーキンソン病もある。

 完治できる治療法はまだないが、少しも悲観することはないと、パーキンソン病治療の名医が明言している。

「私が医者になった30数年前には、パーキンソン病は非常に治療しにくい病気でした。

 入院の患者さんを担当すると、先輩から、

『なるべく早く、状態のいいうちに一度、お宅に帰ってもらったほうがいいよ。

 入院が長引くと悪くなるばかりだからね』と言われたものです。

 今はそんなことはありません。

 生命予後がとてもよくなりました。

 私は、パーキンソン病の患者さんが来られると、

『これから30年はおつきあいしましょう』と言います」と、岩田誠・東京女子医大名誉教授。

 パーキンソン病発症年齢のピークは50~60代。

 永六輔さんのような70代半ばの発症も珍しくない。

「昔は、パーキンソン病の患者さんが30年生存されるなんて考えられなかったのですが、

今はそれくらい全く当たり前、パーキンソン病が〈死因〉になることは極めてまれです」

 

 パーキンソン症状

 パーキンソン病は、1817年、ロンドン郊外で診療所を開いていたジェームス・パーキンソンが報告した。

 開業医が見つけた最も有名な病気の一つだ。

 脳の奥底(中脳)には「黒質」と呼ばれる神経細胞の集まりがあるが、そこの細胞が変性・脱落し、レビー小体という異常物質ができて、神経伝達物質のドーパミンが減り、体を動かす運動発現がうまくいかなくなる病気だ。

 症状は──、

 1 運動障害。

 2 自律神経障害。

 3 精神障害に大別される。

 中心となるのは1で、筋強剛(筋肉がこわばる)、振戦(手などが小刻みに震える)、無動(体が動かない。動作がのろくなる)、姿勢保持障害(体が前かがみになり、転びやすい)が4大症候とされる。

 2のために起きる発汗障害、血圧が下がりやすい、便秘などの症状も重要で、特に便秘は、パーキンソン病の全患者が訴える頑固な症状だという。

 岩田誠・東京女子医大名誉教授は、

「若いころ師匠から命じられて、パーキンソン病と便秘について調べたところ、

担当する約80人の患者さんの全例で、運動障害の症状が起こる数年前から高度の便秘が始まっていたことが分かりました。

 パーキンソン病の初発症状は便秘といっていいでしょう」と、プレスセミナーで話した。


 鑑別診断

 パーキンソン病と同じ症状が、別のいろいろな原因で起こるものを「症候性パーキンソニズム」または「パーキンソン症候群」と呼ぶ。

 前かがみにちょこちょこ歩いて、手がしじゅう震えているといった特徴的症状を示す人の9割はパーキンソン病だが、1割はそうではない。

 最も重要なのは薬剤性パーキンソニズムだ。

 抗精神病薬、抗めまい薬、嘔吐(おうと)を抑える制吐剤、胃かいようの予防薬などでパーキンソン病と同じような症状が出る。

「これは絶対に見つけなければいけない。

 薬をやめれば、よくなるからです」と専門医。

 脳の細い血管が何カ所も詰まる多発性脳梗塞の人が、パーキンソン病と間違えられる症状を示すこともある。

 最も難しいのは多系統萎縮症や進行性核上性マヒなどの脳の変性疾患で、脳の侵されている場所が同じだから、初期症状はパーキンソン病ととてもよく似ている。

 しかし、原因が全然違うし、当然、パーキンソン病の治療薬は効きにくい。

 近年、アルツハイマー病に次ぐ「第二の認知症」として注目を集めているレビー小体型認知症でも、パーキンソン病とそっくりの症状がしばしば現れる。

 パーキンソン病では脳幹にだけ出現するレビー小体が、レビー小体型認知症では知能とかかわる大脳皮質にも出現するために、パーキンソン症状を伴う認知症として進行する。

 これをパーキンソン病と間違えて、パーキンソン病と同じ治療をすると、かえって病状が悪化してしまう。

 このことについては、別の日に詳しく取り上げる。

 ──といったようにパーキンソン病は、専門医による鑑別診断(症状が似た別の病気と区別するための精密検査と診断)が重要な病気だ。


 パーキンソン病の薬

 パーキンソン病に最も詳しいのは神経内科医だ。

 神経内科といえば「精神科と同じような診療を行う科」というイメージをもつ人が多いようだが、それは違う。

 神経内科は、脳や脊髄、筋肉などに異常が生じ、体が不自由になる病気を診断・治療する診療科だ。

 だが、そのことについての一般的な認知度は低く、初診時に受診先を間違えて、専門医の診断・治療を受けていない例が多い。

 永六輔さんもパーキンソン病と診断されるまで1年もかかった。

 問題は、そのため適切な初期治療がほどこされず、病気が進行してしまうことだ。

 パーキンソン病の主要な治療薬は、ドーパミンの原材料となるLドーパ製剤や、ドーパミンの働きに似たドーパミン作動薬だ。

 そのほか確かな効果が認められている薬がいくつもあり、病状に合わせて用いられる。

1日1回の服用で24時間安定した効果が持続する薬もある。

 薬を使い続けていくうえでの大切な心得は「自分の判断で服用を中断しないこと」だ。

 薬をやめると動けなくなる。

 が、胃や腸の手術の際は薬をやめなければいけない。

 外科医と神経内科医の連絡が必要だ。


糖質制限食

 血糖値の高い状態が長く続いていると、細い血管が詰まって、目(糖尿病網膜症)や腎臓(糖尿病性腎症)が侵され、手足の指先が腐り(糖尿病性えそ)、さらに太い血管の動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞にもなりやすい。

 しかし、血糖値が常に正常にコントロールされていれば、そうした最悪の結末を防ぐことができる。

 血糖値のコントロールは、「一に食事、二に運動、三、四がなくて五に薬」といわれる。

 食事療法の基本は、米飯・めん類・パン・イモ類などの炭水化物(糖質)を極力減らす「糖質制限食」だ。

「血糖値を上昇させるのは糖質です。糖質を摂取しなければ血糖値は上昇せず、糖尿病は必ず改善します」と、糖尿病の治療でめざましい成績を上げている名医、京都・高尾病院理事長の江部康二先生は、力強く言い切っていられる。

 その理論的根拠は──、

 1、血糖値を上昇させるのは糖質である。

 2、糖質を摂取しなければ血糖値は上昇しない。

 3、糖質制限食を実践すれば血糖値は上昇せず糖尿病は改善する。

 ──と、単純明快、反論の余地のない生理学的事実である。

 実際にはどんなものをどのように食べたらよいか。

 先生が勧める「糖質制限食10カ条」はこうだ。

 1 魚貝・肉・豆腐・納豆・チーズなどタンパク質や脂質が主成分の食品はしっかり食べてよい。

 2 糖質特に白パン・白米・麺類及び菓子・白砂糖など精製糖質の摂取は極力控える。

 3 主食を摂るときは未精製の穀物が好ましい(玄米、全粒粉のパンなど)。

 4 飲料は牛乳・果汁は飲まず、成分未調整豆乳はOK。水、番茶、麦茶、ほうじ茶もOK。

 5 糖質含有量の少ない野菜・海草・茸類は適量OK。果物は少量にとどめる。

 6 オリーブオイルや魚油(EPA、DHA)は積極的に摂り、リノール酸を減らす。

 7 マヨネーズ(砂糖無しのもの)やバターもOK。

 8 お酒は蒸留酒(焼酎、ウィスキーなど)はOK、醸造酒(ビール、日本酒、など)は控える。

 9 間食やおつまみはチーズ類やナッツ類を中心に適量摂る。菓子類、ドライフルーツは不可。

 10 できる限り化学合成添加物の入っていない安全な食品を選ぶ。 

 「糖質制限食」には三つのパターンがある。

 1 スーパー糖質制限食=三食とも主食なし。効果は抜群で早く、一番のお薦め。

 2 スタンダード糖質制限食=朝と夕は主食抜き。

 3 プチ糖質制限食=夕だけ主食抜き。嗜好的にどうしてもデンプンが大好きな人に。

 *抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類などの炭水化物。

 「ぼくら」シリーズの人気作家、宗田理さんも、それを実践している一人。

  第12回ハートの日の座談会で、

「糖質制限食を試したら、不思議なことに見事に血糖値が下がった」と話したら、

「宗田先生、それは不思議でもなんでもないです。必然ですよ」と、江部先生。

 糖尿病を治すため・防ぐために──、

江部康二著『主食を抜けば糖尿病は良くなる! 糖質制限食のすすめ』 (東洋経済新報社刊)を、ぜひ!


一病息災

 世界糖尿病デーの11月14日、国際糖尿病連合(IDF)は、世界の糖尿病患者が3億人を突破したと発表した。

 1位は中国の9000万人で、2位インド、3位アメリカと続き、日本は6位の1070万人だ。

 このまま進むと、2030年の世界の糖尿病人口は5億5200万人に達するという。

 いまや糖尿病は全人類共通の課題だ。

 糖尿病になると全身の血管がしだいに侵され、心臓病、脳卒中、失明、下肢切断、腎不全の原因となる。

 こうしたさまざまな合併症の背景には、糖尿病性の細小血管障害(失明、腎不全、壊疽<えそ>の原因)と、大血管障害(心筋梗塞、脳卒中、足の動脈硬化症につながる)がある。

 元をただせばインスリン抵抗性(血糖を処理するインスリンが働きにくい状態)や肥満があり、さらにその前に生活習慣の悪化がある。

 このそもそも大本の生活習慣の改善をすることが、どの合併症を防ぐためにも絶対的な第一条件だ─と、糖尿病の専門医は口をそろえて強調する。

 生活習慣の基本は、食事と運動だ。
栄養のバランスがとれて、過剰にならないカロリー摂取。
運動は中程度の有酸素運動(ジョギング、ウォーキングなど)を1日30分程度。
これだけでかなり効果的に血糖コントロールができる。

 だから糖尿病のための生活習慣は、万人共通の健康生活の基本でもある。

 8万5千人を対象とした前向きコホート研究(地域、職域などの一定集団を長期間にわたり追跡し、病気の起こり方などを調べる研究)によると「三原則のよい生活習慣」だけで糖尿病を88%予防できる。

 よい生活三原則の

 1は、食事。栄養のバランスをきちんと考え、腹7~8分目に摂取カロリーを抑えたよい食事を─。

 2は、適正体重。BMI(体重キロ÷身長メートル÷身長メートル)が25未満─つまり肥満していない。

 3は運動。1日30分程度の運動(推奨されるのは速足歩き)を週5回以上している。

 こうした三つの生活習慣によって、100人中88人は、糖尿病の発症を予防できると疫学研究は教えている。

 糖尿病という病気を完治する方法はない。患者と家族は一生、治療と向き合って生きなければならない。

 しかし、糖尿病でも「一病息災」で元気な長生きを楽しんでいる人が多い。

 糖尿病と糖尿病の合併症の危険性についてよく知り、正しい知識をもち、血糖値、血圧、脂質を適切に管理しコントロールしている人たちだ。

 つまり頭のいい自制心の強い人たちだ。


世界糖尿病デー

 紀元前1500年ごろのエジプトの医書に「多尿を駆逐する薬」として奇妙な処方が記されてあるのが、糖尿病に関する最古の記載だという。

 古代インドで「蜜(みつ)の尿」と形容された病気や、漢方で「消渇(しょうかち)=のどが渇き、尿が多く出る」と呼ばれた病気も、糖尿病にほかならない。

 そんなにも昔から知られていて、多くの国の医師たちが治療法を模索し続けたがかなわず、この「不思議な病気」は、一度かかると死を待つしかない病気だった。

 だが現代の糖尿病患者は、

「永い暗黒時代の末に、今世紀初めて手にしたインシュリンのお蔭で生き永らえ、現代生活を享受しております」と、『インシュリン物語』の著者は述べている(二宮陸雄訳=岩波書店刊)。

 インスリンは、1921年の夏、カナダ・トロント大学の「ネズミの出没する薄暗い研究室で、仕事を始めた29歳の外科医、フレデリック・バンティングと、まだ医学生だった22歳のチャールズ・ベスト」によって発見された。

 国連が定めた「世界糖尿病デー」の11月14日は、バンティングの誕生日である。

 なお、前出の「消渇」については、誤解が多い。詳しくは、「それ、ウソです(37)鎌倉以来の誤解」を─。

 ブルーサークル

 11月14日の世界糖尿病デーは、IDF(国際糖尿病連合)とWHO(世界保健機関)が1991年に制定。

「Unite for Diabetes(糖尿病との闘いのため団結せよ)」と全世界で糖尿病啓発運動を推し進めてきた。

 2006年12月20日、国連総会は、IDFの要請による「糖尿病の全世界的脅威を認知する決議」を加盟192カ国の全会一致で可決し、IDFとWHOが毎年行ってきた世界糖尿病デーを公式の国連デーとし、2007年からは国連が定める記念日となった。

 世界中で糖尿病の治療と予防を呼びかけるキャンペーンが展開される。

 運動のシンボルマーク「ブルーサークル」の円は生命と健康の象徴、ブルーは空の色であり、国連の旗の色だ。

 11月14日、日本では東京タワー、東京都庁、レインボーブリッジ、通天閣など各都市のランドマークがブルーライトアップされた。 

 全国糖尿病週間

 上記のように世界糖尿病デーが始まったのは、1991年だが、日本ではそれよりもずっと早い1965年から日本糖尿病協会が、11月の第2週を「全国糖尿病週間」とし、啓発活動を行ってきた。

 世界のほうはインスリンの発見者バンティングの誕生日にちなむものだが、日本の週間は、

「農家の収穫も終わり、柿の実の赤くなるころ、日ごろ忙しくて気にかけずにいた糖尿病のことも調べてみよう、というような意味で始まったもので、何かを記念したものではなかった」。

 だが、07年からは世界糖尿病デーを含む1週間を全国糖尿病週間としている。

 ことしは14日(月)~20日(日)。

 テーマは『連携による糖尿病治療の継続』

 標語は『続けよう!ブルーで繋がる 連携の輪』


目は体の窓

 目には人の感情が正直に現れるので、目は心の窓といわれるが、目は体の窓──体の調子を知るシグナルでもある。

 目には多くの神経が分布している。

 また、体のなかで直接、血管の状態を観察できるのは眼底の血管だけだ。

 だから目は体に起こった変化を調べるのに便利だ。

 体が疲労すると、目の疲れや鈍痛を感じたりするように、体の変化は目に現れやすい。

 熱のある子の目はとろんとうるんでいるし、疲れ過ぎると目からも生気が失われる。

 心身ともに元気で張り切っているときは、目が生き生きと輝いている。

 まぶたの裏が白っぽいときは貧血。

 まぶたがピクピクけいれんするのは、ストレス、疲労、睡眠不足。

 目のふちがかゆいときは便秘や胃腸障害。

 女性では生理直前や更年期障害の小さな症状の一つとして、目のふちがかゆくなる人もいる。

 白目が黄色くなったら黄疸(おうだん)で、肝臓や胆のうの機能障害の疑いがある。


 まぶたのふち(とくに目頭の辺)に黄色みを帯びた小さなイボのような盛り上がり(黄色腫)があるときや、角膜(くろめ)のまわりに幅一ミリ前後のうっすらとした白い環(角膜輪とか老人環と呼ばれる)があるときは脂質異常症(血液中の悪玉コレステロールのLDLや中性脂肪が異常に多く、善玉コレステロールのHDLが少ない状態)のしるし。

 健康診断としての目の検査、特に眼底検査を受けることで高血圧、動脈硬化、糖尿病などの全身病の有無やその程度がわかる。

 糖尿病の人は、網膜症を早く見つけて処置する(失明を防ぐ)ため、年1回は必ず眼底検査を受けるようにしよう。


乾いたカビ

 新直木賞受賞作「下町ロケット」を、抄録のかたちながら手早く読みたいと、『オール読物』9月号(文藝春秋刊)を求めた。

 ついでといっては失礼だが、同じ雑誌に収載されてある「時代小説傑作選」の一篇、佐藤雅美「足掛け二十六年の絶望」を味わい深く読ませてもらった。
 さすが直木賞作家の大先輩ならではの巧みな筆さばき、しみじみ心にしみる佳編である。

 ただ、作中の語句「目に一丁字もない」の「一丁字」の振り仮名「いっちょうじ」は、いただけない。
 編集者がルビをふって、校正者も見落としたのだろうが、どこぞの零細通信社の低能編集者ならいざ知らず、文藝春秋ともあろうところで、どうしてこんな稚拙な間違いをしたのだろうか。
 言うまでもないことだが、「一丁字」の正しい読みは、「いっていじ」である。

 ─というところで本題。
 気候の変わり目の秋口には、ぜんそくが起こりやすい。
 ぜんそくのアレルゲン(アレルギーの原因物質)として、ハウスダスト(家の中のチリやダニ)はよく知られているが、近年注目されているのが「好乾性カビ」だ。

 普通のカビは、湿度の高い環境を好むが、このカビは乾燥した室内で増殖する。
 住宅内のカビを調べた環境保健研究所のデータによると、カビ全体の中に占めるアスペルギルス(好乾性カビの仲間で、コウジカビの一種)の割合は、健康な人が住む集合住宅では6・0%、ぜんそく患者の住宅では33・4%と大きな格差があった。

 アレルギー一筋の専門医、鳥居新平・一社アレルギー科こどもクリニック院長(名古屋市)は、名古屋大学医療技術短大教授時代、好乾性カビも、ぜんそく患者のアレルゲンになっているのではないかと推定。ぜんそく患者を対象に、アレルゲン・テストを行った。

 結果、以前からぜんそく患者にとって悪玉とされてきた、高湿度でよく育つカビの陽性率をやや上回る高い陽性反応を、乾いたカビが示すことがわかった。

 乾いたカビも、湿ったカビも毎日、まめに掃除機をかけ、ふき掃除を続けると少なくなる。
 



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