暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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膠原病

多発性関節症

 年をとって、体のふしぶしに多少の痛みが生じるのは、いわば自然現象だ。

 当家などは年中、「あっちが痛い、こっちが痛い」の夫婦競演で明け暮れている。

 体のどこかが痛いのは生きている証しみたいなものである。

 しかし、その関節痛があまりにもひどくて、笑ってなどいられない人もある。

 親しい知人がそれで、リウマチ、痛風、膠原(こうげん)病関係の各種検査を受けても診断が確定しない。

 こうした病気では血液検査で特有の反応を示すことが多いが、その変化は認められず、老化現象と関係のある「多発性関節症」といわれたという。

 現在の症状は、ひざ、手指の関節、首、腰などに痛みが多発し、ひざは正座ができなくなり、階段の昇降や立ったり座ったりする動作で痛みが生じる。

 手指の末節関節がコブ状にふくらんで軽い痛みを伴い、肩、首の痛み、こり、手指のしびれ、体の曲げ伸ばしのたびに腰痛が起こるという。

 とても単なる老化現象とは思われない。

 多発性関節症の原因疾患は多数ある。

 関節リウマチと変形性関節症の頻度が高い。

 ──と医学辞典にはあるのだが。


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リウマチの最新治療

 抗リウマチ薬


 リウマチの話を続ける─。

 冬は、病気をもつ人には特につらい。

 関節リウマチはその最たる病気の一つだ。寒冷刺激が実につらい。

 そんな人が、全国に少なくとも70万人はいる。

 関節リウマチは、治療しなければ、痛みは激しくなるばかりで、関節が壊れ、寝たきりになることさえある。

「1960年代、関節リウマチの本格的な薬はなにもなかった。

 80年代、痛みのコントロールはかなりできるようになった。

 2000年代、関節破壊の進行をかなり止められるようになった。

 リウマチ治療は確実に進歩している。

 2010年代は治る病気になるかもしれない」

 ──と、山中寿・東京女子医大教授(膠原病リウマチ痛風センター所長)。

 関節リウマチの治療には、

 1 非ステロイド系抗炎症薬。

 2 ステロイド薬。

 3 抗リウマチ薬──と、ある。

 1は痛み止め。

 2は炎症を抑える。

 3は関節破壊の進行を止める。

 治療の中心は3だ。

 いったん破壊された関節は元に戻せない。

 関節リウマチと診断されたら早い時期に抗リウマチ薬による治療を開始すべきだ。

 ただ、抗リウマチ薬は効果が現れるまで時間がかかることがある。

 必要に応じて非ステロイド系抗炎症薬やステロイド薬が用いられる。

 抗リウマチ薬のなかで世界的に広く用いられているのが、メトトレキサート(製品名リウマトレックス)という免疫抑制剤だ。

「切れ味がよい」といわれるよく効く薬だが、これだけでは痛みや腫れなどの炎症症状を抑えられない人がいる。

 メトトレキサートを3カ月以上使用してもじゅうぶんな効果が得られない人に対しては、新タイプの抗リウマチ薬、生物学的製剤が用いられる。


 抗TNF療法


 生物学的製剤は、炎症や関節破壊が起こるしくみを免疫学的に解明し、生物によってつくられるたんぱく質などを利用して開発された。

 リウマチの炎症に関係しているサイトカイン(生理活性物質)の働きを抑える薬や、免疫をコントロールしているT細胞の働きを抑える薬だ。

 サイトカインは多種多様で、さまざまなはたらきをするが、その一つにTNF(腫瘍壊死因子)と呼ばれるものがある。

 TNFは、腫瘍を殺すはたらきへの関与や、体の免疫機能に広くかかわる重要な物質だが、炎症反応などを引き起こす原因にもなる。

 近年の研究で、関節リウマチの人は、関節内にTNFという生理活性物質が異常に増えて、関節の炎症や痛み・腫れ・骨や軟骨などの関節破壊を引き起こすことが明らかにされた。

 このTNFそれ自体をターゲットとする関節リウマチの最新治療が抗TNF療法だ。

 これまでの薬物治療で効果のみられなかった人でも、投与3カ月で約65%に症状の改善が認められた。

 痛みを伴う関節や、腫れている関節の数が減り、体の動きが楽になり、関節破壊の進行を止めることが確かめられている。

 抗TNF療法に使われるサイトカイン阻害薬には、インフリキシマブ(レミケード)、エタネルセプト(エンブレム)、トシリズマブ(アクテムラ)、アダリムマブ(ヒュミラ)、ゴリムマブ(シンボニー)がある。

 T細胞の働きを抑える薬にはアバタセプト(オレンシア)がある。

 レミケードは、点滴で、初回投与後、2週目、6週目と、それ以後は8週間隔で投与する。

 エンブレムは、皮下注射で週に1~2回。

 アクテムラは、点滴で4週に1回。

 ヒュミラは、皮下注射で2週に1回。

 シンボニーは、皮下注射で4週に1回。

 オレンシアは、点滴で初回投与後、2週目、4週目、それ以後は4週に1回。

 レミケードは、メトトレキサートとの併用が「必須」とされているが、他の薬はそうではない。

 これらの生物学的製剤によってリウマチ治療は画期的に変わったといわれる。

 半面、肺炎などの感染症にかかりやすくなる副作用がある。

 免疫機能にかかわる物質なので、体の免疫力が低下するためだ。

 下のような症状が現れたら、次の診察日を待たず、すぐに主治医、看護師、薬剤師に連絡を─。

 ●風邪っぽい(熱っぽい、熱がある。せき、たん。息切れ、息苦しさ。のどの痛み)。

 ●発疹が出た。

 ●疲れやすく、だるさを感じる。

 ●皮膚にかゆみがある。

 ●口内炎がよくできる。

 ●皮膚や白目が黄色くなった。

「よく効く薬は、ときに怖い」と頭に刻みつけよう


 リウマチの手術療法 


 リウマチで関節が破壊されると、関節が痛み、動きが制限され、安定性を失って、日常性に支障をきたす。

 関節が壊れたリウマチは、薬では治せない。

 だからといって、決して悲観的になることはない。

 簡便で、体への負担が少ない手術療法が確立している。

 主な手術法は──、

 1 関節内の滑膜(関節を包む袋の内側にある膜)を、関節鏡で取り去る滑膜切除術。

 これで上がらなかった肩がスムーズに上がるようになる。

 2 壊れた関節面を人工物で置き換える人工関節手術。

 膝関節や股関節の人工関節は、ほとんど半永久的にもつほど安定した治療成績が得られている。

 車椅子の人が歩けるようになる。

 しかし、腕は無理して使うので、関節の壊れ方がひどく、肘や手首、手指のいい手術はできなかった。

 最近は形や材質が進歩し、肘関節や手指の関節の人工関節手術でもよい成績が得られるようになってきた。

 このほか、壊れた骨の表面を削って滑らかにする関節形成術、壊れた関節を固定する関節固定術があり、部位によって使い分ける。

 最後に、越智隆弘・大阪大学名誉教授(前日本リウマチ学会理事長)があげる「リウマチが悪化する三つのポイント」。

 1 睡眠不足、過労。

 2 大きな精神的ショック(身内の不幸など)。

 3 酒の深酔い。

 ほとんど治りかけていた人が酒を飲み過ぎて、たちまちぶり返した例が多くみられる。

「リウマチの人は、睡眠をじゅうぶんとってください。あまりイライラせず、お酒の好きなかたでもあまり飲まないようにしてください」と、越智先生は話した


冬のリウマチ

 ずいぶん以前に聞いた話だが、縄文人にもリウマチ患者がいたそうだ。

 日本人類学会での、福田真輔・滋賀医大整形外科教授(当時)らの研究発表で、過去に出土した縄文時代の人骨の中に確実に関節リウマチとみられるものが一体、見つかったといった話だった。

 関節リウマチは、過労、風邪、寒冷刺激、湿気、低気圧などで悪化しやすい。

 リウマチの人にとって冬はとりわけつらい。

 日常生活の基本的な注意はまず安静。

 睡眠を十分にとり、昼間も1時間ぐらいは横になろう。

 しかし、ベッドに寝たきりとか悪い関節を全然動かさないのはよくないし、動かし過ぎるのもよくない。

 運動は疲れや痛みが残らない程度に─。

 保温はなによりも大切。風邪をひかないように気をつけ、関節を冷えから守ろう。

 手首など病気に侵されている関節が露出していたら、包帯を巻きつける、手袋をはめる、毛糸でカバーを作るなどしょう。

 それにしても、縄文時代の冬を、リウマチの人はどんなふうにしのいだのだろう。つらかっただろうなあ。

 注=出土人骨のなかの「関節リウマチの骨」については、リウマチの専門家のあいだでは異論がある。そのことについては、別のページの拙稿「それ、ウソです」の第40回「リウマチの骨」に詳述した。


 最新リウマチ治療

 先年、山本一彦・東京大学大学院教授(アレルギーリウマチ学)の「関節リウマチのパラダイムシフト」という講演を聴いた。

 広辞苑によると──、

 パラダイムとは、「プラトンでは...」となんやらかんやら小難しい記述のあと、

「一時代の支配的な物の見方、時代に共通の思考の枠組」で、

 シフトは、「移動、転換」だ。

 つまり関節リウマチ治療の考え方が一変したということだろう。

 以前のリウマチ治療は、まずNSAIDs(非ステロイド系抗炎症剤)という副作用のない薬から始めて、ダメだったら、ステロイド薬、抗リウマチ薬、生物学的製剤と、少し副作用はきつくても効く薬にする──というように〝弱い薬〟から〝強い薬〟へと段階的に積み上げていく「ピラミッド療法」といわれるものだった。

 それが教科書的な治療法で、多くの医師が順守していた。

 しかし、関節リウマチの骨破壊は発症2年以内に生じることがわかり、それを防ぐには最初から強い薬─抗リウマチ薬を用いたほうがよい。

「ピラミッド療法は古い!」といわれるようになっている。

 * 

 昔、リウマチは一生の病気といわれたが、そうではない。

 早期に見つけて適切な治療をすれば、とても経過がよくそのまま治ってしまう人が多い。

 この初期治療の大切さをある専門医は「山火事」にたとえる。

「火の見やぐらで見張っていると、遠くで煙が上がった。

 大きなたき火か、山火事の始まりか、区別がつかない。もう少し見ていようと思って、あ、火事だと分かったときは遅い。

 消防車が何台も駆けつけてもすぐには消せない。

 たき火か山火事か分からないけど、現場に行ってみたら山火事の始まりだったというのなら消防車1台で簡単に消火できる。

 これが早期診断・早期治療です」(越智隆弘・大阪大学名誉教授)

 関節リウマチは発症2年以内に骨破壊が生じることが多い。

 最初から積極的に抗リウマチ薬を使用、経過を見ながら必要なら新タイプの抗リウマチ薬─生物学的製剤を使用するのが、新しいリウマチ治療だという。

 朝、体や手指がこわばる、ひざや肩など関節が痛い、なんだかおかしいと感じたらぜひ早く「リウマチ登録医」へ─。



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