暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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感染症

帯状疱疹&帯状疱疹後神経痛(2)

帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹は治っても、一件落着とはならない例がけっこう多い。

発疹や水疱が消えたあとのきれいな皮膚に奇妙な激しい痛みが生じる。

「私、ここがものすごく痛いの」と訴えても、目で見るかぎり別にどうということはない。

そのため、周りの人に辛さをわかってもらえなかったり、この病気をあまりよくご存じでない医師には、「大したことはないよ」といわれたりする。

痛みのつらさに加えてもう一つ、別の苦悩が加わることになる。


リスクファクター

帯状疱疹から帯状疱疹後神経痛に移行しやすいリスクファクター(危険因子)をもつのは、どんな人か?

①高齢者(60歳以上)。

②皮膚病変が重症。

③急性期の疼痛が重症。

④神経障害性疼痛の症状の存在(アロディニア、知覚異常など)。

⑤免疫不全状態の存在。

最も多いのは、高齢者だ。

普通、若い人ほど比較的すうーっと治っていくが、年をとればとるほど、帯状疱疹後神経痛になりやすい。

50歳の人が帯状疱疹になると50%、60歳では60%、70歳では70%が帯状疱疹後神経痛に移行するといわれる。

男がなりやすいとか、女がなりやすいといった性差は、ほとんどない。

2番目と3番目は、帯状疱疹のときの皮膚の症状や痛みがひどい人。

これは神経がそれだけやられていることを意味する。

急性期の炎症、ウイルスによって神経が激しく損傷されて発症するのが、帯状疱疹後神経痛。神経がやられて起こる痛みだから「─神経痛」なのである。

4番目の神経障害性疼痛とかアロディニアというのは、奇妙な感じのさまざまな知覚障害のこと。アロディニアは「異痛症」とも呼ばれる。

普通の痛みではなく、ちょっと触っても飛び上がるような鋭い痛み、電気が走る、針で刺される、焼ける、ピリピリする...など、いろいろな表現を患者はする。下着が触れても痛いという人が多い。

5番目の免疫不全状態は、エイズ(後天性免疫不全症候群)、がん、糖尿病など。

体の免疫状態の低下した人は、帯状疱疹後神経痛に移行する可能性が強い。

これらのうち一つでもあれば要注意。

二つ以上ある場合は、急性期からの適切な疼痛対策が必須とされる。

帯状疱疹の症状には個人差があり、それによって神経損傷の程度も変わってくる。

急性期の激しい痛みを脳が記憶し、それが慢性の痛みにつながる。

帯状疱疹になったら、とにかく早く正しい診断と適切な治療を受けることが、最も重要だ。

体の片側に赤い帯状のブツブツが出てきて痛いときは、帯状疱疹に詳しい専門医の診察を受けるのが、病気をひどくしない心得の第一條といえる。


神経障害性疼痛

帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛の神経障害性疼痛は、神経が障害された痛みなので、普通の切り傷、骨折、火傷などの痛みとは、痛みの性質が違う。

体にはありとあらゆるところに神経が網の目のように張りめぐらされていて、その神経線維の1本、1本は、電線が絶縁体で覆われているように、髄鞘(ずいしょう=ミエリン)という被膜で覆われている。

ミエリンがウイルスに壊されて起きるのが、神経障害性疼痛である。

痛みの刺激は、電気信号で脳へ伝わるのだが、その電線の絶縁体が壊されて、電線同士がショートし、くっつき合ってしまう。

すると、インパルス(刺激を伝える神経の興奮)が神経から神経へ乗り移って、ちょっと触っても、脳は痛いッ! と感じる。

普通の痛みとは、痛みの伝わり方や性質が違うわけで、痛みの電気的短絡(英語ではエファブスという)が起こるのも帯状疱疹後神経痛の症状の一つである。

たいていは1~2ヵ月で治るが、1年以上続く人や、なかには10年以上も苦痛に耐えている人もある。

絶え間なく続くときもあれば、間が空くこともあり、寒さや冷たさが痛みを増強させる例も多い。


痛みの種類

痛みは、その発生機序(起こるしくみ)や性質によって、①侵害受容性疼痛、②神経障害性疼痛、③心因性疼痛の3種類に分けられる。

侵害受容性疼痛というのは、手を切った、骨が折れた、火傷をしたといったようなケガのとき普通に感じる痛み。

傷や炎症によって活性化される発痛物質が、侵害受容器(体を侵すさまざまな刺激を感受する器官、細胞)を刺激することによって引き起こされる疼痛─と定義されている。

肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)の痛みや関節リウマチの痛みなどもこれに含まれる。

神経障害性疼痛は、そうしたケガなどによって神経が壊されて、ケガが治ったあとも続く慢性の難治性の疼痛である。

神経の損傷あるいはそれに伴う機能異常によって生じる、さまざまな知覚異常を伴う痛みで、神経の損傷部位により末梢性と中枢性に分けられる。

心因性疼痛は、今日は会社に行きたくないなぁとか、学校に行きたくないなぁと思うと、おなかが痛くなるといった種類の痛み。

体のどこにも病変はなく(仮にあったとしても、それほど大きな痛みを伴うことは考えられない)、心理的原因による疼痛だ。

こうした痛みは、個々に独立して起こるだけではなく、重なり合って起こることもある。

たとえば、慢性腰痛や頸肩腕症候群(首、肩、腕、手指にかけての痛み、こわばり、しびれ、脱力感、冷感などさまざまな症状が起こる)などは、侵害受容性と神経障害性の要素が合併した疼痛の代表的なものだ。


治療法

痛みの種類が違えば治療法も当然、違う。肩関節の痛みとか関節リウマチなどは、ケガと同じ侵害受容性の、組織が壊れて、炎症が起こっている痛みなので、NSAIDs(エヌセイド=非ステロイド性鎮痛消炎剤)がよく効く。

しかし、神経障害性疼痛は、すでに炎症は治まっているのだから、これに対してNSAIDsのボルタレン、ロキソニンといった薬をいくら使っても効かない。

でも、実際の臨床の場では神経障害性疼痛なのにNSAIDsを処方されて、よくならない人が少なくない。

「先生、この薬、効きません」といっても、「それはあなたの気のせいだ」とかいわれて、気まずい関係になる例がままあるようだ。

ドクターショッピング、病院のはしごが始まることにもなる。

それから、がん性疼痛(がんに伴うさまざまな痛み)に対しては、いま一般的に強い関心がもたれ、プロモート(啓発運動)も盛んに行われているが、がん性疼痛の3割から7割は神経障害性疼痛なので、モルヒネや医療用麻薬だけではとれない痛みも少なくない。

それに対しては鎮痛補助薬の抗けいれん薬などが適している。

詳しくは、明日の「帯状疱疹&帯状疱疹後神経痛(3)」に─。


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帯状疱疹&帯状疱疹後神経痛(1)

帯状疱疹

ある日、体の片側、胸とか腹とかに赤いぶつぶつが点々と出てくる。

水ぶくれができてチクチク刺すように痛い。

この「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」という病気は、昔からよく知られていて、全国各地に、つづらご、おびくさ、胴まき、たすき、へびたん...など、さまざまな方言がある。

古い話だが、サッカー日本代表のオシム監督が重い脳梗塞で倒れたとき、日本サッカー協会の川渕三郎キャプテンが帯状疱疹になって、心労のためでは...といわれた。そういうこともある。


原因

帯状疱疹は、皮膚に小さな水疱や膿疱(のうほう)ができる「ヘルペス(疱疹)」の一種。

原因は、子どものころにかかった水痘(水ぼうそう)のウイルスだ。

水ぼうそうが治ったあとも、そのウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)は体内の神経節に潜んでいる(潜伏感染という)。

そして、加齢やストレス、過労などが引き金となって、免疫力が低下すると、潜んでいたウイルスが再び活動を始め、神経を伝わって皮膚に到達し、帯状疱疹として発症する。


症状

初めは体の左右どちらか一方にチクチクするような痛み、あるいはピリビリする感じが起こり、しばらくしてその部分に赤い発疹が現れ、小さな透明な水ぶくれができてくる。

やがて水ぶくれが破れてただれ、かさぶたに変わる。

帯状疱疹という名のとおり、神経に沿って帯状に広がり、皮膚と神経の両方でウイルスが増殖し、炎症が起き、非常に強い痛みが生じる。

できるところは、胸から背中にかけてが最も多く、腕や腹部にもよくでる。

頭、顔、首などもわりあい発症しやすい部位だ。

顔面の三叉神経(眼、上あご、下あごの三枝に分かれる神経)に沿って出る帯状疱疹は、注意が肝要だ。

髄膜炎を誘発する恐れがあり、目の角膜炎や結膜炎を併発し、失明することさえある。こわい!

まれに耳鳴りや難聴、顔面神経マヒなどが生じることもある。ラムゼイ・ハント症候群と呼ばれる。


治療

このように症状の程度はさまざまだが、普通は、医師の指示に従って安静にしていれば自然に治る。

精神的あるいは肉体的に疲れているときに発症しやすいので、睡眠と栄養を十分とって心身の回復をはかることが大切だ。

なお、帯状疱疹は、通常は生涯に一度しか発症しない。

ただ、免疫がひどく低下している場合、再発することがある。

治療は、症状に応じて抗ウイルス薬(アシクロビル、ビダラビン、ファムシクロビルなど)、鎮痛薬、ビタミン剤などを用いる。

皮膚症状に対しては抗ウイルス薬の軟膏が効果的だ。

重症例には、局所麻酔薬を用いた神経ブロック療法(神経の伝導を遮断する治療法)が著しく効果的である。

水ぶくれを破ると細菌感染を起こして化膿しやすいので、破ってはいけない。

入浴も控えよう。

そうして治ると一件落着か?

それがそうではない例がけっこう多いのが、帯状疱疹のイヤなところで、そのあと「帯状疱疹後神経痛」というやっかいな病気に移行する人がある。

それについては、明日の「帯状疱疹&帯状疱疹後神経痛(2)」に─。


夏風邪流行中?

 夏風邪がはやっているのだろうか?

 東京五輪招致のためにロンドン出張を予定していた都知事が、

「風邪をひいて発熱が続いている」ので中止した、という記事をすこし前の新聞で読んだ。

 昔の人は、「夏の風邪は猿でもひかぬ」と言っているが、そんなことはないことを半世紀以上も昔の「太陽の季節」の作家が証明してくれたわけだ。

 夏風邪の原因のウイルスは三つ。

 アデノウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス。

 冬にはやるインフルエンザウイルスは乾燥した空気が好きで、空気中の湿度が低いほうが長時間活動できる。

 夏風邪のウイルスは、それとは反対に湿度の高い環境で勢いよくはびこる。

「プール熱」はその典型で、以前は衛生管理のわるいプールでよくはやった。

 三ウイルスとも、インフルエンザウイルスと同じように呼吸器から感染する。

 また、便の中に排せつされたウイルスによる経口感染も起こる。

 夏風邪は、口からもうつるのだ。

 呼吸器から侵入するウイルスを防ぐには、うがいを励行するのが一番。

 経口感染を防ぐには食事の前やトイレの後などのこまめな手洗いが肝要。

 過労や睡眠不足を避けるのも大切な心得だ。

 ひいてしまったら、脱水を起こさないよう水分をきちんととること。

 熱中症予防の第一心得と同じだ。


肝臓の火を消せ!

 一面にひろがり咲いた204の聖なる火の花が、その茎を高く伸ばしながらひとつに集まり、天をも焦がすように大きく燃え上がった。
 ...............。

 全世界的スポーツの祭典の幕が開いた、きょう7月28日は、「第1回日本肝炎デー」でもある。

 WHO(世界保健機構)が、世界的レベルでのウイルス肝炎のまん延防止と、感染予防の推進などを目的に、B型肝炎ウイルスの発見者、バルーク・ブラムバーグの誕生日のこの日を、「World Hepatitis Day(世界肝炎 デー)」と定めたのは、2010年。

 世界のほうは「第3回」になるわけだ。

 ことしのテーマは、「This is hepatitis(これは肝炎である)」、
 スローガンは、「Its closer than you think(それはあなたが思うよりも近い)」。

 記念すべき「第1回日本肝炎デー」に合わせて、世界肝炎連盟の会長、チャールズ・ゴア氏が来日した。

 ゴア氏自身、C型肝炎に罹患した経験をもつ。

 本年は、WHO加盟の約200ヵ国の中から世界肝炎デーに活動する場を日本に定めた。

 滞在中は、超党派の国会議員向けの勉強会、一般市民の啓発イベント、患者会との懇談会、肝炎の新薬を研究・開発している企業との意見交換会、小宮山厚生労働大臣とのイベント参加など一連の行事が予定されている。

 この体のなかの〝炎〟は、燃え盛るまえに消し止めなければならない。

 肝炎のABC

 肝炎の原因になる5種類のウイルス──A、B、C、D、E──のうち、日本人に特に縁の深いのはA型とB型とC型だ。

 A型は口からうつる消化器伝染病の一種。

 一度かかれば免疫ができて二度とかからない。

 昔は数年おきに流行し、流行性肝炎と呼ばれたが、今は激減した。

 発展途上国への旅行で感染する例がままみられる。

 抗体を持ってない人は、旅行前に予防ワクチンの接種を受けるとよい。

 B型肝炎ウイルスは、血液、体液を介して感染する。

 ウイルスが体に居ついてしまう持続感染(キャリア)と、急性肝炎で治ってしまうものとがある。

 出生時や乳幼児期にうつるとキャリアになりやすいが、免疫機構が正常な成人では、A型と同じように一過性の感染で済む。

 ワクチンと免疫グロブリンによる予防が、1986年から始まり、今はもうキャリアになる子どもはほとんどいない。

 数十年後にはB型の慢性肝炎、B型の肝硬変、B型の肝がんは消滅するだろう。

 残るはC型肝炎だが、これの多くは大人になってからの感染で、60~70%がキャリアになり、肝硬変、肝がんに進む人がいる。

 国民的肝炎

 毎年約3万4000人が肝臓がんで亡くなっている。

 その原因の8割がC型肝炎、1割がB型肝炎だ。どちらも血液を介して感染する。

 B型は、出生時や乳幼児期の母子感染と、昔の集団予防接種での注射針の使い回しなど、医療行為による感染が多かった。

 C型は、血液から作った薬や輸血などによって広がった。

 俳優の渡辺謙さんも、1989年に発症した白血病の治療で輸血を受けたさい、C型肝炎に感染したと、自著『誰? WHO AM I?』(ブックマン社)の中に書いている。

 大人になってから感染したB型は慢性化しないが、C型は慢性肝炎になる。

 患者・持続感染者は、B型100万人以上、C型150万人以上とみられる。

 国民病といってもいいだろう。

 慢性肝炎は自覚症状がほとんどなく、感染に気づいてない人も多い。

 治療法は劇的に進歩。

 インターフェロンを改良したペグイントロンと抗ウイルス薬リバビリンの併用による完治例が増えている。

 渡辺さんもこの治療法によって「非常にいい状態をキープしている」そうだ。

 お知らせ。

 出産や手術における大量出血などのさいの、特定の血液製剤の投与によるC型肝炎ウイルス感染者への給付金のしくみがある。

 請求手続は、2013年1月15日まで。

 詳しくは、厚生労働省HPまたは相談窓口。

 電話 0120-509-002  (平日9時30分~18時)


トキソプラズマ

 尻なめた舌でわが口なめる猫 好意謝するに余りあれども    寒川猫持 

 寒川氏は「歌人・目医者」で「猫持」はむろん筆名。

 軽妙な筆致のエッセイ集が何冊もある。

「犬と違って、猫が飼い主をなめるのは余程のことである。

 アイ・ラブ・ユーの印である。

 なるべく黙ってなめてもらうことにしているが、尻をなめた舌で口を、となると話は別である。

 猫のウンチにはトキソプラズマという原虫がいる。

 そんなものを口移しされたのではたまらない」と、猫持先生。

 トキソプラズマは、哺乳類や鳥類に寄生する原虫。

 最終的に(「終宿主」という)ネコの体内で生殖し、糞便中にオーシスト<胞嚢体(ほうのうたい)>というタマゴみたいなモノが出てくる。

 また、ブタやヒツジなどの筋肉の中にはオーシストを膜状の袋<包嚢(ほうのう)>でくるんだシスト<嚢子(のうし)>が寄生している。

 人間には多くのばあい猫糞(ねこばば)の中のオーシストや、豚肉などの中のシストから感染する。

 人間にうつったトキソプラズマは、普通は何の症状も現れない(不顕性感染という)が、まれに発病すると発熱、発疹(しん)、リンパ節炎(ぐりぐり)、肺炎、脳炎、脈絡網膜炎(目の病気)などを起こす。

 妊娠中の女性が初めて感染すると、胎児にも感染して、流産や死産をひき起こし、これを免れたばあいでも水頭症、小頭症、脈絡網膜炎などの赤ちゃんが生まれる(先天性トキソプラズマ症)。

 矢野明彦・千葉大学医学部教授(寄生虫学)の調査によると、過去3年間に全国で19人の新生児がトキソプラズマに感染し、9人が水頭症などにかかり、うち2人が死亡、残りの7人も重い障害が残った。

 ほかの10人は妊娠中の検査でトキソプラズマの感染がわかり、治療するなどして新生児の発症はなかった。

 成人のトキソプラズマ症同様、この先天性トキソプラズマ症も、以前はめったにみられない病気だったのだが、近年ややふえているのは、日本人にはびこっている「超清潔症候群」のせいだと、『笑うカイチュウ』などの著者、東京医科歯科大学の藤田紘一郎教授(寄生虫学)は言っている。

「トキソプラズマは、ネコの便から感染するというので、ネコが悪者扱いされているが、感染経路はネコよりもむしろ加熱の不十分な豚肉のほうが多い。

 それにしても感染率は下がっているし、仮に感染してもどうってことはない。

 問題は、妊婦が妊娠中に初めて感染すると、母親は大丈夫だけど胎児に感染して、新生児に重大な影響が出ることです。

 子どものうちにかかっていたら何でもない病気なのに、感染率が下がってくると、妊婦が初めて感染する率はそれだけ上がる。

 感染率が下がったぶん、逆に胎児に行く発症率はふえている、という妙な時代になっている。

 猫の糞(ふん)なんかこわがらないで、妊娠年齢になる前にうつっといたほうがいいんですよ」と、藤田紘一郎・東京医科歯科大学名誉教授。

 近年、トキソプラズマ症がややふえている理由は、ペットブームのせいではないか、と矢野教授は指摘している。

「飼い猫のフンなどに含まれたトキソプラズマがソファーなどに付着、空気中に舞い上がったものが口から入ることが考えられる」そうだ。

 なお、猫から人にうつる感染症猫から人にうつる感染症としては、他にパスツレラ症、猫ひっかき病などがある。


猫の問題

 トキソプラズマ症

 2月22日は「ニャン、ニャンニャン」の語呂合わせで「猫の日」。

 猫大好き人間の文化人たちが決めたそうだ。

 ニャンとも、のどか、太平楽でご同慶の至りだが、ちょっとヤボな水を差すと、猫には健康上いくつか問題がある。

 1は、トキソプラズマ症の感染源となり、妊婦が感染すると新生児にリンパ腺炎や水頭症などが現れることがある。

 2は、猫の毛やフケは、ぜんそくのアレルゲンになりやすい。

 3は、冬にはやる食中毒のカンピロバクター菌を猫が媒介することがある。

 急いでつけ加えるが、これらのトラブルは犬でも起こりうる。

 犬や猫と遊んだあとは、必ず手をよく洗おう。

 注・トキソプラズマ症=猫の糞便中や豚などの生肉にみられるオーシスト(トキソプラズマ原虫の虫卵)が、口から入って感染する。

 犬はトキソプラズマの中間宿主であるため、猫のように小腸に寄生してオーシストを排泄することはない。

 感染してもほとんど無症状のまま経過するが、発熱、発疹、リンパ節炎などの症状がみられることがある。

 恐ろしいのは、胎盤を介しての胎児への感染。

 妊娠中に感染すると、流産、死産を引き起こし、生後、脳水腫などの急性症状を示して死亡することがある。 

 バルトネラ症

 犬ではみられず、猫だけで起こるのが「猫ひっかき病」。

 猫に引っかかれたり、かまれたりしたあと、リンパ節が腫れる病気だ。

 悪寒や発熱などの全身症状がみられる例もあるが、重いものではない。

 猫によく接触する子どもがかかりやすい。

 狂犬病は現在ほとんど起きてないが、猫ひっかき病の発生は秋から冬にかけて多く、小流行の報告もある。

 猫ひっかき病は、1950年にフランスの医師が初めて報告した。

 92年、原因病原体が、猫の赤血球の中に寄生する「バルトネラ・ヘンセレ菌」という細菌とわかり、「バルトネラ症」とも呼ばれるようになった。

 猫が感染しても猫には何の症状も出ないが、2年以上も保菌している。

 ある調査では約7%が「保菌猫」だった。

 猫に引っかかれて数日後、その部分が発赤し、小さい水疱(すいほう)ができる。

 これは自然に治るが、それから2、3週間後にリンパ節が腫れて、発熱、頭痛が起こる。

 化膿することもある。

 脳炎になったり、肝臓が腫れたり、パリノー症候群という眼球の異常症状が起こることもあるが、死亡例はなく後遺症もない。

 予防法はまず猫ノミを駆除すること。

 猫の血を吸ったノミがフンをして菌を猫の体表にばらまき、猫の爪や口の中にくっつき、引っかき傷やかみ傷から人にうつる。

 引っかかれたりしたら傷口を消毒し、猫をなでたら手をよく洗おう。


小児のインフル

 子どものインフルエンザはこじれやすい。体力や免疫力が弱いからだ。

 子どものインフルには下のような特徴がある。

 1 高熱が出る。いったん下がった熱が、半日か1日で再び高くなる「二峰性発熱」がみられる。

 2 約10%に熱性けいれん(ひきつけ)を伴う。

 3 呼吸器症状(気管支炎、肺炎、中耳炎など)、消化器症状(吐く、下痢など)、脳炎・脳症の合併率が高い。

 4 神経症状(意識障害、異常行動、うわごとなど)が現れやすい。

 とりわけ乳幼児は症状が急変し、重症化しやすい。

 高熱が続いて水分を飲めないと脱水を起こしやすい。

 手や足に痛みを訴え、歩けないようなときは筋肉炎を併発している恐れがある。

 いちばん怖いのは脳炎や脳症を発症することだ。

 国立感染症研究所のインフルエンザ脳症調査によると、季節性インフルの脳症は、0~4歳で発症する例が多く、新型インフルでは5~9歳が中心で、7歳が最も多かった。

 脳炎や脳症の最初の症状はひきつけのことが多い(ひきつけイコール脳炎・脳症ではないが)。

 すぐさま小児科へ──。

 脳炎と脳症

 インフルエンザのウイルスが直接、脳の中に入り込んで炎症を起こすのが、インフルエンザ脳炎だ。

 一方、脳症の場合、ウイルスは脳内には入っていない。

 ウイルスを攻撃する免疫細胞からサイトカイン(生理活性物質)が過剰に分泌され、血液中の物質が血管の外に漏れ出して、脳がむくみ、脳内の圧力が高まり、脳の働きが低下する。

 それがインフルエンザ脳症だ。

 脳炎も脳症も、急な発熱に続いて、けいれん発作、幻覚や幻聴、うわごと、呼んでも反応がないなどの意識障害が現れる。

 けいれん発作(ひきつけ)を伴うことも多い。

 早く適切な治療を受けないと命にかかわり、回復してもまひなどの後遺症が残る。

 日本小児科学会は、インフルエンザウイルスの感染が確認され、意識障害が半日~1日続いた場合を「インフルエンザ脳症」と定義している。

 呼びかけに答えず、けいれんが続き、意味不明の言動などの症状がみられた場合、迷わずただちに受診するよう呼びかけている。

 なぜか日本人の小児は脳症にかかりやすいという。

 解熱剤&抗インフル薬

 インフルエンザは、数日間で重症化しやすいから、早く適切な治療をしなければいけない。

 だが、インフルエンザは、ある種の解熱剤と相性が悪く、脳炎・脳症、ライ症候群(脳症に似ているが、肝臓や腎臓などの障害を伴う)を誘発してしまうことがある。

 子どもの風邪・インフルエンザの解熱剤としては、アセトアミノフェンを成分とするもの以外は、原則的に使用しないことになっている。

 特に危険とされるのはアスピリン。

 子どもにアスピリンを飲ませてはいけない。

 ボルタレン(銀色の紙に包まれた坐薬)やポンタール(白く濁ったシロップ)も危ないといわれている。

 子どもに解熱剤を用いる際は医師や薬剤師に必ず確認し、大人や上の子の薬を使うのも避けるべきだ。

 インフルエンザの治療は、ウイルスに直接作用する抗ウイルス薬が開発されるまでは、熱や頭痛などを解熱鎮痛剤で抑える対症療法しかなかった。

 いまは、ウイルスに確実に到達し、増殖を抑える抗インフルウイルス薬が第一選択となる。よく知られているのはオセルタミビル(タミフル)とザナミビル(リレンザ)だが、去年、10年ぶりにぺラミビル(ラピアクタ)という新薬が加わった。

 タミフルはカプセル剤を1日2回、5日間服用、リレンザは専用の吸入器を用い、やはり1日2回、5日間吸入する。

 ラピアクタは長時間作用型の注射薬だ。

 インフルエンザと診断されたその場で、医師による点滴(15分以上)が行われる。

 治療が1回で完結するわけだ。

 注射だから有効成分が直接血液中に入り患部に早く到達する。

 インフル治療は、医師の指示どおり薬をきちんと用いる「服薬順守」がとても大切だ。

 薬を飲み忘れたり、飲み残したりすると症状が悪化しやすいし、また、体内にウイルスが残っていると、周りの人にうつしてしまうことにもなる。

 そうした心配が要らないのが、ラピアクタの大きな利点だろう。


肺炎は怖い!(2)

 

高齢者の肺炎

 肺炎の症状は、熱が出る。ときには高熱が出て寒けが起こる。

 せきやたんが出る。胸が痛い。

 風邪と似ているところもあるが、胸が痛いという点が違う。

 だから熱が高くて、胸が痛いと、医師は肺炎を疑う。

 ところが、高齢者の肺炎では、そうした症状がなかなか出ない。

 なにかとてもだるいという体の倦怠(けんたい)感と、食欲がないというだけの症状で肺炎だった例が30%ぐらいある。

 そのため発見が遅れて、治療が後手になるのが、高齢者の肺炎を重くする理由の一つになっている。

 高齢者の肺炎の症状が出にくいのは、体の反応が弱いからだ。

 年をとると特に痛みの感覚が鈍くなる。

 肺炎だけではない。

 高齢者の心筋梗塞は痛みがないか、ごく弱いことが少なくない。無痛性心筋梗塞という。

 高齢者の肺炎は、高熱も出ない。

 せいぜい37度台の微熱のような熱が出る程度だ。

 要するに体の反応が鈍いので発病がはっきりしない。

 しかし、それは病気の進行がゆっくりだということではなくて、病気自体は進行している。

 お年寄りがぐったりしているようなときは、ぜひ早めにお医者さんへ──  
 

肺炎球菌

 高齢者がインフルエンザにかかると、肺炎を併発しやすい。

 それにはインフルエンザウイルス自体が肺に広がるウイルス性肺炎と、肺炎球菌などインフルエンザウイルスとは無関係の細菌が肺に広がる細菌性肺炎がある。

 後者のほうがずっと多い。

 インフルエンザ肺炎の合併細菌を調べたデータを見ると、断トツに多いのが肺炎球菌で53%を占める。

「インフルエンザが猛威をふるって、肺炎を併発して亡くなる人が激増するとき、その大半は肺炎球菌肺炎だといっていいでしょう」と、金沢実・埼玉医大呼吸器内科教授は話した。

 肺炎球菌は、健康な人でも40~60%は鼻やのどなどにもっていて、通常は無害だが、免疫力が弱くなると、口の中の細菌が肺に入って肺炎や気管支炎、中耳炎などを引き起こす。

 だから肺炎を防ぐには、風邪をひかないこと、夜寝ている間に口の中の細菌が肺に入らないようにすること、この二つが肝心だ。

 健康な人が起きているときは、喉頭から5センチ下のほうには、ほとんど菌がいないが、眠っている間は、起きているときとは呼吸のしかたが変わるので、気道に陰圧(内部の圧力が外部より低い状態)が生じ、口の中の菌が気管にふっと吸い込まれてしまう。

 それを防ぐには、寝る前に歯をみがきうがいをし、口の中を無菌状態にするのが第一のポイントだ。

 顔をあおむけて喉の奥まで洗ううがいを3回やれば口の中も、喉頭もほとんどきれいになる。

 

未知のウイルス

 一昨年大騒ぎになった新型インフルエンザが、通常の季節性インフルエンザと大きく異なるのは、ウイルス性肺炎が高齢者や妊婦などのハイリスク層だけでなく、基礎疾患のない人にも発症している点だ。

「これからは先入観を持たず、ウイルス性肺炎の合併も常に念頭において、インフルエンザの治療を行う必要があるでしょう」

 ──と、金澤實・埼玉医大教授(呼吸器内科)は注意を促している。

 一方、高齢者には新型インフルの感染者が少ないといわれた。

 それはスペイン風邪など20世紀前半に流行したウイルスの構造と同じだったからで、1918年以前に生まれた90歳以上の人は、抗体を持っていることがわかった。

 これを裏返すと高齢者でも90歳以下の人は安心できない。

 インフルウイルスは「新型」である限り人間にとって「未知のウイルス」なのだ。

肺炎は怖い!(1)

 

肺と肺炎

 インフルエンザや風邪で最も怖いのは肺炎を併発することだ。

 インフルエンザによる死亡例の90%以上は肺炎死だ。

 特に気をつけなければいけないのは、高齢者と幼児。

 肺炎になっても自覚症状が乏しく、あっという間に重症になる。

 熱が高くならない、セキやタンもあまり出ない、呼吸が苦しいとも訴えないが、顔だけ赤い。

 ぐったりしてしまう。食べない─といった例が多く、いきなり意識障害が起こることもあるという。

 そうなる前に早く気づいて受診しよう。

「肺炎は老人に安らかな死をもたらす最後の友だ」と言ったのは、近代内科学の父、ウイリアム・オスラーだ。

 ま、いずれはそれを望むとしても、なるべくならずーっと先延ばしにしたいものだ。

 肺の最も大切な役目は、空気の中の酸素を血液中に取り入れ、血液中の炭酸ガスを吐き出すことだが、吸い込む空気の中には病原菌がいっぱい混じっている。

 そこへもってきて肺には、全身から心臓に戻った、汚れた(栄養豊富な)血液が、そのまま入ってくる。

 病原菌の繁殖にはもってこいの環境だ。

 繁殖し始めた病原菌を追い出そうと、白血球など体の防衛軍が集まってきて、戦争(炎症)が起こるのが、肺炎だ。

 エックス線写真にはそこは真っ白に映る。

 が、ごく初期の肺炎はエックス線にはまだ影が出ない。

 聴診器のほうがよくわかると、練達の内科医は言う。

「慣れた医者は、聴診器で肺の中の小さな特異な雑音をキャッチし、素早く病変を見つけます」

 

隠れ1位

 抗生物質ができて、肺炎で亡くなる人はずいぶん減った。

 それでも肺炎は、がん、心臓病、脳卒中に次ぐ日本人の死因4位であり、高齢者の場合、病理解剖で死亡の直接の原因を調べると、肺炎が最も多い。

 例えば脳卒中で倒れて入院治療中に亡くなったが、実は肺炎を併発し、そのために死亡したといった例がとても多く、高齢者の死因の隠れ1位といわれる。

 肺炎は依然、きわめて危険な病気なのだ。

 肺炎を防ぐには、どうしたらいいか。

 まず第一に風邪をひかないこと。

 常識的なことだが、なるべく人ごみに出ないようにする。

 外出のさいは寒くない服装をし、マスクをする。

 帰宅したらうがいをし、手を洗う。

 栄養のバランスのいい食事をして、睡眠を十分とる。

 もし風邪をひいても全身の状態がよければ、普通の風邪ですんで肺炎にはならない。

 なぜか?

 肺炎のような感染症は、ホスト・パラサイト・リレーションズ(宿主─寄生体関係)といって、病人の体そのもの(宿主)と、それに寄生する病原体との力関係で、重くもなるし、軽くもなるからだ。

 高齢者の肺炎の死亡率が高いのは、寄生体(ウイルスや細菌=パラサイト)の側に問題があるのではなく、その人の体(宿主=ホスト)のほうの要因による。

 肺炎を乗り切った人と、死亡した人を調べた臨床報告「老年者の肺炎100例」を見ると、亡くなった人たちには、

 1 脱水症状のある人

 2 腎臓や肝臓の機能が低下した人

 3 意識障害(意識がもうろうとなる)が出た人がとても多い。

 だから肺炎だけを治療の目標にするのではなく、全身状態をよくしなければ肺炎は治らない。

 肺炎を防ぎ・治すためには、要するに老化現象が進まないように日ごろから規則正しい活動的な生活をすること─と、老年学の大家は話した。

 普段から健康に気を配って体調を整えておくことが大切だ。

 もう一つ、肺の健康のために大切なことは深呼吸だ。

 普通の呼吸では、肺が完全にはふくらまない。深呼吸で肺を十分ふくらませると気管がリラックスし、肺がまんべんなく活動する。

 朝晩、日中、思いつくたびに深呼吸をしよう。

 ある呼吸器内科の専門医は、

「おやつ代わりに深呼吸を─」と話した。

インフルVSお茶うがい

 インフルエンザの本格的流行が始まっている。  100種類とも200種類ともいわれる風邪のウイルス(インフルエンザウイルスもその一種)の大半は、寒く、冷たく、乾いた環境で活動が活発になり、感染力が強くなる。

 一方、その寒冷刺激は、人間の免疫力を低下させるようにも作用する。

 悪条件が重なり、冬は風邪&インフルがはやる。

 予防の基本は、マスク、手洗い、うがい。

 風邪のウイルスは、患者のくしゃみやせきで空中に飛び、空気感染する。

 マスクは、ウイルスをばらまかないためにも、ウイルスが鼻や口から入るのを防ぐのにも役立つ。

 空中を浮遊したウイルスはそこら中の物にくっつき、それに触った手から人にうつる。

 風邪の季節は特にこまめに手を洗おう。

 そして、うがい。

 イチ押しは「お茶うがい」だ。

 風邪、インフルエンザの予防に、緑茶や紅茶でやるうがいが非常に効果的なことを、20年も前に証明した人は島村忠勝・昭和大学医学部教授(細菌学)だった。

 緑茶や紅茶の渋みのもとカテキン類のエピガロカテキンガレートという物質が、生体の細胞に取りつくウイルスの働きを妨げる。

 実験では、普段飲んでいる緑茶や紅茶を300分の1の濃度に薄めた液でも、インフルエンザウイルスの感染力を100%抑えた。

 島村教授の研究報告を参考にした、茶どころ静岡県のある町の小学校では、毎日、児童にお茶でうがいをさせた。

「周辺の各地では集団風邪で学校・学級閉鎖が相次いだが、当校は無事でした」という校長先生からの毛筆書きの礼状を見せてもらったことがある。

 生ぬるい緑茶か紅茶で、のどの奥までよく洗うように頭を大きく後ろにそらし、口の中だけでなく、少し鼻にも入るようにガラガラやるとよい。

 冬の喫茶店では、レモンティーがお勧め。口の中に長く含むようにして飲めばよい。

 うがいには及ばないが、それなりに効果的。ただしミルクティーは、牛乳のたんぱく質のせいでカテキンの作用が落ちる。


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