暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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代謝性疾患

健康の元

 糖尿病をほっておくと、怖い。

 病気が進むにつれて、さまざまな合併症が現れる。

 目をやられ(糖尿病網膜症)、腎臓をやられ(糖尿病性腎症)、脳や心臓をやられる。

 スクラップブックを開くと、なんとも恐ろしい新聞記事が貼ってある。

「糖尿病万病の元」──これが一面トップの横見出しで、その下に、

「アルツハイマー4・6倍 がん死亡3・1倍 心筋梗塞2・1倍 脳梗塞1・9倍」

 でかでかと列記してある(朝日新聞2007年9月2日)。

 九州大の清原裕教授らが、福岡県久山町の住民約800人を15年間、追跡してわかったという。

 しかし、それにしても、だ。

「万病の元」とは、ちと大袈裟ではないか。

 いや、糖尿病をナメて、養生をほったらかしにしている人に対しては、これくらい強く警告したほうがいいのかもしれないな。

 厚生労働省「平成17年患者調査の概況」によれば、糖尿病の総患者数は約247万人だ。

 別の調査(国民健康・栄養調査など)では、実際に発症している人は推定約700万人、予備群は2000万人を超える。

 つまり半分以上の人は受診をサボっているわけだ。

 糖尿病ほど治療法のラクな病気はないのに、それを受けないのは、もったいない話ではないか。

 糖尿病の生活療法(栄養のバランスよく腹七~八分目を守り、自分に合った適度な運動をし、十分な休養・睡眠をとる)は、健康な生活スタイルそのもの。

 糖尿病を防ぎ・治すための生活は、万人共通の養生法なのである。

 糖尿病を「健康の元」にしよう。


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痛風の原因・対処法

痛風の本態

 夏は痛風の季節だ。

 汗をかき、尿が濃くなると尿酸(痛風の原因物質)の排せつが悪くなるからだ。

 ゴルフや野球で大汗かいた翌日、発作を起こす例が多い。

 プレー中の水分補給をしっかり─。

 もっとも、痛風発作の痛みは、病気の本態とは関係のない症状で、放っておいても一週間くらいで痛みはほとんど消えてしまうのが普通だ。

 どんなにひどい痛みでも、それで死ぬなんてことは絶対ないし、手当てが悪かったから余計ひどくなるということも、まずない。

 痛風発作は血液中の尿酸が異常に多い状態(高尿酸血症)が基盤になって起こる。

 が、発作自体は病気全体からみれば表面的な現象でしかない。

 本当に怖いのは、高尿酸血症が長く続いたときに心臓、脳、腎臓などに出てくる重大な病気だ。

 ただ、その深刻度は高血圧や糖尿病などに比べるとかなり低い。

 とはいえ、日ごろの養生をなおざりしていいわけはない。

 医師とよく相談し、よりよい生活管理をして、いつも尿酸値を正常に保つようにすれば、二度と痛みの発作に襲われることもない。

 そろり回し

 痛風は、(俗説だが)風が当たっても痛いからこの名がついたといわれる。

 それくらい痛いらしい。

 足の親指の付け根に発症する例が最も多く、赤くはれあがる。

「万力でぎゅっと締めつけられたような痛み」と形容する人もあれば、

「いやいや、とてもそんなものじゃない。もうこれ以上は締められないところを、さらにもう一回りさせたみたいだ」と強調する人もある。

 このものすごい痛みも、冷やすとだいぶ楽になる。

 ポリエチレンの袋に入れた氷で患部を冷やしながら、ときどき足首を曲げたり、そらしたりすると、痛みが軽くなるように感じられる(はずだ)。

 痛風の痛みは、血液中に含まれる尿酸が異常に増加し、関節に沈着するために起こる。

 足首を曲げ伸ばしすれば、足先への血液の流れがよくなるから、親指の付け根にこびりついた尿酸が、血液に再吸収される時間を早める。

 また、痛みのために縮んでいた神経も伸びる。

 足首の曲げ伸ばしだけでなく、ぐるぐる回しも効果的だ。

 そろりそろりとやってみてください。


痛風薬心得

 痛風薬の誤用

 猛暑の某日、年長の友人からFAX─。

「何年も前から尿酸値がやや高かったが、薬をのむほどではないと言われてきた。

 最近、足の親指に痛みが出たので検査を受けたところ、9.1ミリグラムに上がっていた。

 薬をのんでみますかと、ユリノーム錠を2週間分もらった。

 薬をのみ始めたら、むしろ痛みが強くなるようだった。

 4日後、薬を止めたら痛みが治まったので、またのんだらまた痛みが出た。

 どういうことなんだろう?」

 なぁんだ、以前せっかく進呈した拙著をなぜ見てくれないのか。

 あの本(「名医が治す」=マキノ出版)の242ページに痛風専門医の河野典夫・大阪大学教授が、こう言っているではないか。

「痛風治療のポイントは、痛風発作の治療と、高尿酸血症の治療をごっちゃにしないことです。

 痛みが起こっている最中は、いくら尿酸値が高くても、下げてはいけない。

 尿酸値を下げれば、早く炎症が治まるだろうと考えがちですが、逆なのです。

 発作の最中に尿酸排泄剤(ユリノーム)などをのむとかえって発作が長引きます」。


 痛風薬の用法

 尿酸値が血液1デシリットル中7ミリグラム以上だと、高尿酸血症とされる。

 が、多くの場合、薬を用いる必要はない。

 しかし、尿酸値が9ミリグラムを超えると、痛風発作の発症率が高くなる。

 生活を改めてもなお9ミリグラム以上だったら、薬物治療の対象になる。

 といっても、痛風発作の最中は、いくら尿酸値が高くても薬を使って下げてはいけない。

 かえって発作が長引く。

 ただし、それまで薬をのんでいた人はそのままのみ続けたほうがよい。

 のんでいた薬を止めると、尿酸値がさらに上がってしまう。

 要するに、痛風発作が起こったときは、ひたすら炎症を抑えることに集中する。

 安静と禁酒さえ守れば1週間ぐらいで痛みは薄れる。

 消炎鎮痛剤を用いると4、5日で完全に痛みは消える。

 その時点で尿酸値を下げる薬をのむ。

 ここで大事な心得は少しずつ薬を増やしてゆっくり尿酸値を下げていくことだ。

 最初の1週間は1日1錠、次の1週間は1日2錠と徐々に増量する。

 それをせず、いっぺんに尿酸値を下げると、リバウンドでまた発作が起こる。


夏ゴルフの心得

 いやあ、暑い!

 どちらさまも熱中症にご用心ください。

 暑さにもめげず、ゴルフにお出かけのみなさまは特に!

 冬場のゴルフにも健康上の問題が多いが、真夏のゴルフにもさまざまな落とし穴がある。

 最も気をつけなければいけないのは、暑さ(太陽光線)対策と尿量(水分摂取)の維持。

 直射日光を浴び過ぎないようにし、水をよく飲んでお叱呼をたくさん出すこと、だ。

 太陽光線(とりわけ紫外線)の害は、皮膚と眼と全身に現れる。

 皮膚に現れる害は、日焼けと、そのあとにできる、しみ、しわ、たるみ。

 皮膚の老化は、その人がそれまでに浴びた太陽光線の量に比例するといわれていて、皮膚の「光老化」という。

 最悪の場合、皮膚がんの原因にもなる。

 夏のゴルフ場は、太陽光線が思うさまふりそそぐ光のシャワールームだ。

 近年、高齢者に激増している加齢黄斑変性症(目の網膜の中で最も視力の鋭敏な黄斑が、加齢に伴って変性する病気)の危険因子の筆頭は、たばこ、2番目が直射日光といわれている。

 必ず帽子をかぶり、できれば日傘をさして歩きたい。

 紫外線は白内障の原因にもなる。

 白内障は、目のレンズの水晶体が白く濁ってくる病気。

 初期には日常生活にはほとんど支障はないが、逆光に向かうと、ものがよく見えなくなる。

 水晶体の中に部分的な濁りが入ると、光が一点に集中せず拡散するため、光の乱反射が起きるからだ。

 たとえば、夜間、車を運転すると、対向車のライトがまぶしくて見えにくかったり、ゴルフ場で、逆光でボールを打つと、ボールの行方を見失ったりする。

 白内障になるのは、水晶体のたんぱく質が変性するからで、その一因と疑われているのが、紫外線だ。

 眼に入る紫外線の量をなるべく減らすようにすれば、白内障の予防になり得る。

 それにはUV(紫外線)カットの眼鏡をかければ、よい。

 紫外線の浴び過ぎは、体の免疫力も低下させる。

 暑い日にゴルフをしたあと体調を崩すことがあるのは、そのせいだ。

 肝臓病や糖尿病、高血圧など慢性的な病気をもっている人は、特に気をつけてください。

 もう一つ、特に気をつけてほしいのは、痛風もちの人だ。

 痛風発作は、血液の中の尿酸が、関節にくっつくために起こる。

 尿酸は、細胞の新陳代謝によってでき、その大半は尿から排泄される。

 大汗をかくと、尿の量が減る。汗には尿酸はまったく含まれていないから、尿の量が減れば、体の外へ排出される尿酸の量も減る。

 すると血液中の尿酸量がふえて、痛風発作が起きやすくなる。

 痛風もちの人は特に心がけて水分をよく取り、尿の量を減らさないようにすべきだ。

 ただし、尿量が増えるからといって、ビールはいけない。

 アルコールが肝臓で代謝されると、尿酸ができる。

 痛風もちの人は、ビールではなく、水をどうぞ!


女性の悲しみ

 大森安恵・海老名総合病院糖尿病センター長(東京女子医大名誉教授)は、1956年に東京女子医科大学を卒業した。

 そのころは「糖尿病があったら妊娠してはいけない。生んではいけない」といわれていた。

 数年後、若い大森医師は、死産のあと糖尿病とわかって産科から回されてきた患者を担当した。

 悲嘆に沈む同性の姿に接し、

「こんな悲しい思いを女性にさせていることに男性医師は気づかず、長いあいだ放置してきたのだ」と思い至った。

「女性の悲しみは、女性が解決しなければならない。

 私の医学的ライフワークは『糖尿病と妊娠』にしようと決意しました」

 大森先生はそう話した。

 診断薬・診断機器メーカー、ロシュ・ダイアグノスティックス主催のシンポジウム「妊産婦を守る」で──。

 言うまでもないことだが、

「糖尿病の女性は生んではいけない」など大間違いだ。

 血糖コントロールをし、「計画妊娠」をすれば、大丈夫。

「糖尿病の合併症から母児を守るためには、妊娠の可能性がある女性は、ぜひ検診を受けてください。

 特に家族に糖尿病がある人は必須です」

 先ごろ、医療情報誌『JMS JAPAN MEDICAL SOCIETY』で大森先生の話を読んだ。

 畏敬する先輩、伊藤正治さんが同誌に長期連載中のインタビュー形式の医人列伝「Medical Who's Who」の118人目の登場者が、大森先生だった。

 一部をご紹介する。

<私が医師になりたてのころ、年配の患者さんから、「お前が診るんか?」と女医であることにあからさまな不信の言葉をぶつけられ、悔し泣きしたことがあります。給料も女医は男性の6割という有り様でした。>

<男性が失敗しても、「だから男はダメだ」とは決して言われないのに、女性の場合は「だから女はダメだ」と言われます。そう言われないために人の3倍働こうと思い、大学の医局に入ってから定年退職するまで、朝早く出勤し、一番遅くまで仕事をしてきました。>(『JMS』2012年4月号)

 大森先生の座右の銘は、

「まて己 咲かで散りなば 何が梅」

 若き日の野口英世が、刻苦勉励の修行時代に詠んだ句だそうだ。


妊娠と糖尿病

妊娠糖尿病

 最近「駆け込み出産」が増えていると聞いて、「大森先生が胸を痛めておられるだろうな」と思った。

 大森安恵・海老名総合病院糖尿病センター長(東京女子医大名誉教授)は、「妊娠糖尿病」の国際的な定義を変えた医学者だ。

 従来、妊婦の糖尿病は、妊娠前からの糖尿病も、妊娠をきっかけに発症した糖尿病もどちらも「妊娠糖尿病」とされていた。

 大森先生は、東京女子医大の教授時代から、これを分けるべきだと強く主張し続けてきた。

 内外の医学界もようやくそれを認め、2008年6月の国際糖尿病・妊娠学会で定義が変わり、

 妊娠をきっかけに血糖値が高くなったものだけを「妊娠糖尿病」と呼び、

 妊娠前からの糖尿病と、妊娠中に糖尿病とわかったものは「糖尿病合併妊娠」とされることになった。

 糖尿病合併妊娠で血糖コントロールが不良だと、胎児に奇形が生じ、母親は網膜症や腎症を発症する確率が高くなる。

 だが妊娠糖尿病では巨大児分娩は多いが、そうした心配はあまりない。

 とはいえ、駆け込み出産では、それらを見つけることさえできない。


計画妊娠

 糖尿病はかなり進行するまで痛くもかゆくもない。

 無症状だ。そのため糖尿病に気づかないまま妊娠し、妊婦健診で糖尿病とわかったときは、すでに失明寸前の網膜症だったり、重い腎症だったりする人さえある。

 網膜症は、妊娠によるさまざまなホルモンの影響を受けて、さらに悪化する。

 腎症のある人では、胎児の発育が遅れ、母体は子癇(しかん)前症という重い合併症を発症する。

 網膜症や腎症はないか確かめ、あればその対策を立てた上で妊娠することが大切だ。

 血糖値が高いまま妊娠すると、奇形の頻度も高くなる。

 血糖をきちんとコントロールしてからの「計画妊娠」が望ましい。

 だが現実は、妊娠してからようやく血糖コントロールを始める人がとても多い。

 大森安恵・海老名総合病院糖尿病センター長は、東京女子医大の教授だった1975年ごろから「計画妊娠」の必要性を強く訴えてきた。

 子どものころからの主治医がいる1型糖尿病の人の80%は計画妊娠しているが、2型糖尿病で計画妊娠する人はほとんどいないという。



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