暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

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呼吸器疾患

風邪ひくなヨ


受験生諸君。

試練のときが迫っている。

この時期、最大の要件は体のコンディションづくりだ。

試験の前に体調を崩したのでは、元も子もない。

なによりもまず風邪をひかないようにしよう。

体の抵抗力が低下していると、風邪をひきやすい。

抵抗力をつけるには、栄養たっぷりの食事と、十分な睡眠が必要だ。

寝てなんかいられないヨ、と思うだろうが、学習のあと一定時間きちんと眠ったほうが効率よく記憶が定着することが確かめられている。

一時前には就寝し、試験当日の朝すっきり起きられるように頭と体を慣らしておこう。


風邪予防の基本は、手洗いとうがい。

外出から戻ったとき、寝る前、ぬるめのお茶でのどの奥まで洗う感じのうがいをしよう。

普通のマスクではウイルス(地球上最小の生物)の侵入を防ぐことはできない。

が、乾燥した空気はのどや鼻の粘膜を弱め、風邪をひきやすい。

マスクをすると適当な湿度を保った空気を吸い込むことができる。

勉強部屋の温度は18~22度、湿度は60%前後に─。


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風邪はホントに「万病のもと」か?

「風邪は万病のもと」ということわざは、中国明時代の『円機活法』という書物のなかの、「風者百病之始」から出たものらしい。

だから「風邪は百病のもと」ともいう。

百病といい、万病といっても、この「百」や「万」は、百貨店や万年筆の百や万と同じ。

風邪は非常に多くのさまざまな病気の原因になるといっているわけだ。

それはホントか? 

ホントでもあるし、ウソでもある。

アメリカの疫学調査だが、ある地域社会の全疾患の発生数の約70%は風邪で、住民1人当たり年に7回、風邪をひき、そのうち2~3回は市販の薬を服用、病・医院で受診したのは1回だった、と報告されている。

ちょっとした鼻風邪なども勘定に入れると、日本人のばあいもだいたいこんなものだろう。

風邪はいわゆるコモン・ディジーズ(ありふれた病気)の最たるものである。

であるのに、もしもあらゆる風邪が万病のもとになるとしたら、世の中そこらじゅう病人だらけになってしまうだろう。

そんなことはない。

だれでも7回ひいた風邪は、7回ともなんの余病を併発することもなく治るのが普通だ。

多分、ほとんど100%に近い症例において、風邪は万病のもとでは、ない。

では、風邪からほかの病気になることはないのかというと、それはあるのである。

いちばん多いのは肺炎を併発する例だ。

とくに乳幼児と老人の風邪は肺炎に進展しやすい。

中耳炎を起こす例もある。

風邪のウイルスや細菌が、鼻をかんだりしたとき、のどから耳に通じる耳管をくぐりぬけて、中耳を汚染するためだ。

まれに脳炎や脳症を引き起こすこともある。

脳炎は、ウイルスが直接、脳の中に入り込んで起こる。

脳症は、ウイルスは脳内に入らなくても、サイトカイン(免疫細胞がウイルスを攻撃するために出すいろいろなたんぱく質)による反応で起こる。

ライ症候群という子どもの病気も、風邪やインフルエンザ、水ぼうそうなどウイルス性疾患のあと発症する。

原因はわかっていないが、解熱鎮痛薬のアスピリンが疑われている。子どもにアスピリンを飲ませてはいけない。

風邪で体力が低下したため、それまで潜在していた病気が出てくることもある。

療養中の病気はてきめんに悪化する。

病人に風邪をひかせないのは、看護の基本である。

初発症状が風邪によく似ている病気が、風邪と間違えられることもある。

はしか、溶連菌感染症、百日ぜき、ジフテリア、急性肝炎、結核などだ。

数日でおさまらない風邪や、風邪にしてはちょっとヘンだな、と思ったら、風邪の余病か、あるいは風邪に似た症状で始まる別の病気を疑って、医師の診察を受けるようにしたい。

なお、厚生労働省が毎冬、キャンペーンしているように、

「インフルエンザは風邪ではありません」。

風邪の熱は37度ぐらいで、症状も軽い。

インフルエンザはいきなり38度以上の熱が出て、のどの痛みやせき、頭痛、倦怠感、筋肉痛など激しい全身症状が出る。

「やられた!」と感じたらすぐ医者へ!

ところで、風邪をひくかどうか、ひいても、軽くすむかどうかは、主としてそのとき、その人のウイルスに対する抵抗力で決まる。

すきっ腹のときや寝不足のときに寒い目にあうと、風邪をひきやすい。

3食きちんと食べて、毎夜よく眠ること。

ひいてしまったときの注意もこれと同じ。

風邪の最良の治療法は安静から始まる。


寝冷え

 寝ているときに体が冷えて、風邪をひいたり、下痢をしたりするのが、寝冷え。

 季節を問わず起こるわけだが、夏の夜は寝相がわるくなるから寝冷えしやすい。

 俳句でも夏の季語とされる。

 寝冷えすや 今宵の月の やゝ赤く 大竹孤悠

 睡眠中に体が冷やされると、体内の熱の放散を防ぐため皮膚の血管が収縮する。

 すると、血液は体の内部とくに粘膜などに集まってくるが、そこに細菌やウイルスがいると炎症が起きる。

 腸の粘膜に炎症が起きると腹が痛くなり、下痢をするし、のどに炎症が生じると咽頭炎、扁桃炎になり、熱やせきが出る。

 むろん大人でも寝方しだいで寝冷えする。

 このごろは〃エアコン寝冷え〃がふえている。

 寝冷えを防ぐには、まず体を冷やさないこと。

 汗をかいたらすぐふく。

 汗をかかない工夫をする。

 腹巻きや腹かけもいいが、あまり厚地のものだと、汗をかいてかえって腹を冷やしてしまうし、アセモができたりもする。

 ダブダブのパジャマを着て、タオルケットをかけるくらいがよい。

 エアコンは適当な時間に切れるようタイマーをセットして寝よう。


夏風邪流行中?

 夏風邪がはやっているのだろうか?

 東京五輪招致のためにロンドン出張を予定していた都知事が、

「風邪をひいて発熱が続いている」ので中止した、という記事をすこし前の新聞で読んだ。

 昔の人は、「夏の風邪は猿でもひかぬ」と言っているが、そんなことはないことを半世紀以上も昔の「太陽の季節」の作家が証明してくれたわけだ。

 夏風邪の原因のウイルスは三つ。

 アデノウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス。

 冬にはやるインフルエンザウイルスは乾燥した空気が好きで、空気中の湿度が低いほうが長時間活動できる。

 夏風邪のウイルスは、それとは反対に湿度の高い環境で勢いよくはびこる。

「プール熱」はその典型で、以前は衛生管理のわるいプールでよくはやった。

 三ウイルスとも、インフルエンザウイルスと同じように呼吸器から感染する。

 また、便の中に排せつされたウイルスによる経口感染も起こる。

 夏風邪は、口からもうつるのだ。

 呼吸器から侵入するウイルスを防ぐには、うがいを励行するのが一番。

 経口感染を防ぐには食事の前やトイレの後などのこまめな手洗いが肝要。

 過労や睡眠不足を避けるのも大切な心得だ。

 ひいてしまったら、脱水を起こさないよう水分をきちんととること。

 熱中症予防の第一心得と同じだ。


たばこ、やめませんか!

 小児とたばこ

 5月31日は世界禁煙デー。

 WHO(世界保健機関)が、喫煙者に対しては24時間の禁煙を呼びかけ、各国の政府・自治体・諸機関・個人に対しては、喫煙と健康問題の認識を深め、適切な対策の実践を求める日だ。

 1988年(この年のみ4月7日)の第1回の「たばこか健康か─健康を選ぼう」以来、毎年、掲げてきた標語の2008年のそれは、「若者をタバコから守れ」だった。

 日本小児科学会は、はるかな以前から、「子どもをタバコから守れ」と訴え続けている。

「日本小児科学会雑誌」106巻3号(2002)掲載の、「こどもの受動喫煙を減らすための提言」は、深刻な事実の指摘から始まっている。

「たばこの煙には、先端から立ち上がる副流煙、喫煙者の吐き出す煙があります。

 こどもの喫煙のほとんどは、これらを吸う受動喫煙です。

 それによって、気道アレルギーが悪化して、ぜんそくが治りにくくなったり、乳幼児突然死症候群(SIDS)が増えるなどの健康被害が報告されています。」

 たばこの煙は、直径1ミクロン以下の微粒子だから、気流とともに浮遊する。

 閉鎖された室内では、数分後には部屋全体に広がって薄められ、見えなくなる。

 しかし、壁やカーテンなどに沈着するのはごく一部で、粒子の大半は長時間にわたって空気中に滞留している。

 その目に見えないたばこの煙を知らず知らず、長時間にわたって吸うことによって、子どもの受動喫煙の大半は起きていると、日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会は指摘している。

 子どもの受動喫煙への影響は、母親の喫煙が最も大きいとの調査結果がある。

 子どもが不在のときに吸うたばこの煙に注意がいかず、部屋を閉め切ったままで子どもを迎えることも、子どもの受動喫煙量を増やしている。

 同委員会は、次の2点を提言している。

 ① 子どものいる家庭では、たばこは室内では吸わず、屋外で吸うようにしましょう。

 ② 室内で吸った場合、必ず窓を開けて換気しましょう。

 とくに対面する2カ所の窓を開けて自然換気するのが効果的です。

 受動喫煙意識調査

 たばこでいちばんの問題は、言うまでもなく受動喫煙による健康被害だ。

 喫煙者本人が健康を害するのは、いわば自己責任、冷たくきめつければ自業自得だ。

 自分でもそれを承知で吸っているわけだから、はたでとやかく口出しするのは、よけいなお節介だろう。

 しかし、人に迷惑をかけてはいけない。最低、最悪である。

 たばこの先から発生する副流煙には、喫煙者自身が吸い込む主流煙よりも多くの有害な化学物質が含まれている。

 受動喫煙で、肺がんや心筋梗塞やぜんそくのリスクが高まるのはよく知られているが、最近の疫学調査では糖尿病にもなりやすいことがわかった。

 糖を処理するインスリンをつくる膵臓の働きが悪くなり、インスリンが効きにくくもなるためのようだ。

 繰り返すが、たばこでいちばんの問題は、受動喫煙である。

 たばこのみ本人もそのことはよくわかっているようだ。

 5月31日の世界禁煙デーを前に、製薬会社のファイザーが行った意識調査では、

 喫煙者の83.5%が、自分のたばこの煙が周囲の人に与える影響を気にしており、

 85.6%が、周囲に人がいるところでは「たばこを控える」と回答している。

 この調査は、47都道府県9400人(各都道府県喫煙者・非喫煙者/各100人、計200人)を対象に、インターネットで行った。

 たばこの煙で不快な思いをした場合、

「吸うのをやめてほしいとハッキリ言う」人は、わずか3.8%。

「言いたいが我慢する」「その場を立ち去る」人が92.5%とほとんどだ。

 傍若無人のたばこのみが、遠慮深い人たちに黙認されているわけである。

 そうした状景を減らす最も効果的な施策は、人の集まる場所での喫煙を制限する「受動喫煙防止条例」だろう。

 すでに同条例が制定されている神奈川県と兵庫県以外の回答者9000人に、

「受動喫煙防止条例のような公的ルールを、お住まいの都道府県に設けることに賛成ですか?」という質問に、

 3570人(39.7%)が「賛成」、

 3194人(35.5%)が「どちらかといえば賛成」と回答している。

 喫煙者に限定しても、「賛成」が14.9%、「どちらかといえば賛成」が40.0%と、半数以上が条例の制定に肯定的である。

 このほか、いろいろ興味深い調査結果は、ファイザーのサイトで、どうぞ。

 肺の生活習慣病

 たばこがつくる病気といえば、肺がん。これは昔からよく知られている。

 いま世界的な大問題は、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)だ。

 有害な空気を吸い込むことによって、空気の通り道の気道(気管支)や酸素の交換を行う肺(肺胞)などに障害が生じ、呼吸がうまくできなくなる病気。

 最大の原因が長期間の喫煙習慣であることから、肺の生活習慣病といわれる。

 2001年のWHO(世界保健機関)調査では、高所得国における死因の第5位、低・中所得国では第6位だ。

 2020年には心疾患、脳卒中に次ぐ第3位になると予測されている。

 2000年に行われた大規模疫学調査によれば、日本人の有病率は8.6%、40歳以上の約530万が罹患していると推定される。

 だが厚生労働省の2008年の患者調査によると、医療機関でCOPDと診断された患者数は17万3000人に過ぎない。

 この病気の初期は自覚症状が少なく、ゆっくりと進行するため病気に気づいていない人が多いためである。

 代表的な症状は、息切れだ。

 階段や坂道の上がりで息を切らし、同年代の人と一緒に歩いていて、歩くペースが遅れがちになる。

 せきとたんがしつこく続き、病気が進むと口すぼめ呼吸をし、胸の前後の幅が増大してビヤだる状になる。

 まず禁煙!

 どんな病気でもそうだが、COPDの治療も、早く始めるほど、よい。

 ① 40歳以上で、たばこを吸っているか、吸っていた人(長期喫煙者の7人に1人がCOPDになるといわれている)。

 ② せき、たんがしつこく続く。

 ③ 階段を上るとき息切れがする人は、ぜひ「肺機能検査」を──。

 息をいっぱい吸って、吐き出すだけの簡単な検査だ。

 治療は、まずたばこをやめること。

 禁煙外来や禁煙教室のある病院を受診し、禁煙を助ける薬を用いるのも一法だ。

 たばこをきっぱりやめて適切な治療を受ければ、病気の進行を遅らせ、せきやたん、息切れなどの自覚症状を抑えることができる。

 治療は、気管支を広げる気管支拡張薬になるが、症状によっていくつかの薬を組み合わせて用いる。

 とにかく、早く診察を受け、根気よく治療を続けることが何よりも大切。

 ある専門医はこう言っている。

「何年か先に、健康な人に近い生活を楽しめるか、ほとんどベッドの上で過ごすか。それはあなた次第です」


「息」は「生き」なり

 きょう5月9日は「呼吸の日」。

 人は普通1分間に15~20回、呼吸をし、空気のなかの酸素を体内に取り入れ、二酸化炭素(炭酸ガス)を体外へ放出する。

 それによって生命を維持している。

 生きているというのは、息をしているということだ。

「息」すなわち「生き」なのだ。

 だが、その呼吸の大切さに、人は案外気づいてない。

 自分の血圧や血中コレステロール値を知らない人は、まずいないだろうが、肺活量を知っている人はごく少ない。

 医療施設にしてからが、スパイロメーター(肺活量計)を備えている開業医は10%以下といわれる。

「高血圧を診療するのに血圧測定や心電図検査をしない医師はいませんが、ぜんそくで、スパイロメトリー(呼吸機能検査)を受けた患者さんはわずか20%です」

 ──と相澤久道・久留米大学医学部教授(呼吸器学)は慨嘆した。

 日本呼吸器学会は、呼吸器の大切さと呼吸器の病気についてよく知ってもらうため、2000年に8月1日を「肺の日」とし、07年に5月9日を「呼吸の日」ときめた。 

 肺年齢

 いま世界中で急増しているCOPD(慢性閉塞=へいそく=性肺疾患)は、「肺の生活習慣病」といわれる。

 たばこや汚れた空気を吸い続けたため、気管支や肺に炎症が生じ、呼吸機能が低下する病気だ。

 いったん発症すると、治らない。

 初めはせきやたん、息切れといった症状が出るが、風邪やぜんそくと間違えられる例も多い。

 早く見つけて治療を始めると、病気の進行・悪化を止めることができる。

 それにはスパイロメトリー(呼吸機能検査)が欠かせない。

 スパイロメーター(肺活量計)の吹き込み口をくわえて、胸いっぱい空気を吸い込んで思いっきり強く吐き出し、すっかり吐き切ったときの空気量が肺活量。

 最初の1秒間に吐き出した空気量を1秒量、1秒量を肺活量で割った値を百分率で表した数値を1秒率という。

 肺活量の標準値は、男性約3500ミリリットル、女性約2500ミリリットルで、その80%以下は異常。

 1秒率70%以下も異常とされる。

 問題点は、肺活量はわかっても、1秒量・一秒率は、患者はもとより医療関係者でさえわかりにくいこと。

 で、もっとわかりやすい指標として、日本呼吸器学会が提唱しているのが「肺年齢」だ。

 性別、身長、1秒率などに基づく計算式で算出される。

 スパイロメトリーを受けると、器械からするすると「肺機能検査報告書」が出てくる。

 ややこしいローマ字と数値の羅列に続いて、「肺年齢・COPD評価」という項目があり、肺年齢、換気機能、コメントなどが印字されてある。

 記者説明会の会場で検査を受けた42歳の男性が、

「肺年齢60歳(+18歳)」という数字を見て、「ええっ!」と驚いていた。

 喫煙者は例外なく肺年齢が高くなる。


小児のインフル

 子どものインフルエンザはこじれやすい。体力や免疫力が弱いからだ。

 子どものインフルには下のような特徴がある。

 1 高熱が出る。いったん下がった熱が、半日か1日で再び高くなる「二峰性発熱」がみられる。

 2 約10%に熱性けいれん(ひきつけ)を伴う。

 3 呼吸器症状(気管支炎、肺炎、中耳炎など)、消化器症状(吐く、下痢など)、脳炎・脳症の合併率が高い。

 4 神経症状(意識障害、異常行動、うわごとなど)が現れやすい。

 とりわけ乳幼児は症状が急変し、重症化しやすい。

 高熱が続いて水分を飲めないと脱水を起こしやすい。

 手や足に痛みを訴え、歩けないようなときは筋肉炎を併発している恐れがある。

 いちばん怖いのは脳炎や脳症を発症することだ。

 国立感染症研究所のインフルエンザ脳症調査によると、季節性インフルの脳症は、0~4歳で発症する例が多く、新型インフルでは5~9歳が中心で、7歳が最も多かった。

 脳炎や脳症の最初の症状はひきつけのことが多い(ひきつけイコール脳炎・脳症ではないが)。

 すぐさま小児科へ──。

 脳炎と脳症

 インフルエンザのウイルスが直接、脳の中に入り込んで炎症を起こすのが、インフルエンザ脳炎だ。

 一方、脳症の場合、ウイルスは脳内には入っていない。

 ウイルスを攻撃する免疫細胞からサイトカイン(生理活性物質)が過剰に分泌され、血液中の物質が血管の外に漏れ出して、脳がむくみ、脳内の圧力が高まり、脳の働きが低下する。

 それがインフルエンザ脳症だ。

 脳炎も脳症も、急な発熱に続いて、けいれん発作、幻覚や幻聴、うわごと、呼んでも反応がないなどの意識障害が現れる。

 けいれん発作(ひきつけ)を伴うことも多い。

 早く適切な治療を受けないと命にかかわり、回復してもまひなどの後遺症が残る。

 日本小児科学会は、インフルエンザウイルスの感染が確認され、意識障害が半日~1日続いた場合を「インフルエンザ脳症」と定義している。

 呼びかけに答えず、けいれんが続き、意味不明の言動などの症状がみられた場合、迷わずただちに受診するよう呼びかけている。

 なぜか日本人の小児は脳症にかかりやすいという。

 解熱剤&抗インフル薬

 インフルエンザは、数日間で重症化しやすいから、早く適切な治療をしなければいけない。

 だが、インフルエンザは、ある種の解熱剤と相性が悪く、脳炎・脳症、ライ症候群(脳症に似ているが、肝臓や腎臓などの障害を伴う)を誘発してしまうことがある。

 子どもの風邪・インフルエンザの解熱剤としては、アセトアミノフェンを成分とするもの以外は、原則的に使用しないことになっている。

 特に危険とされるのはアスピリン。

 子どもにアスピリンを飲ませてはいけない。

 ボルタレン(銀色の紙に包まれた坐薬)やポンタール(白く濁ったシロップ)も危ないといわれている。

 子どもに解熱剤を用いる際は医師や薬剤師に必ず確認し、大人や上の子の薬を使うのも避けるべきだ。

 インフルエンザの治療は、ウイルスに直接作用する抗ウイルス薬が開発されるまでは、熱や頭痛などを解熱鎮痛剤で抑える対症療法しかなかった。

 いまは、ウイルスに確実に到達し、増殖を抑える抗インフルウイルス薬が第一選択となる。よく知られているのはオセルタミビル(タミフル)とザナミビル(リレンザ)だが、去年、10年ぶりにぺラミビル(ラピアクタ)という新薬が加わった。

 タミフルはカプセル剤を1日2回、5日間服用、リレンザは専用の吸入器を用い、やはり1日2回、5日間吸入する。

 ラピアクタは長時間作用型の注射薬だ。

 インフルエンザと診断されたその場で、医師による点滴(15分以上)が行われる。

 治療が1回で完結するわけだ。

 注射だから有効成分が直接血液中に入り患部に早く到達する。

 インフル治療は、医師の指示どおり薬をきちんと用いる「服薬順守」がとても大切だ。

 薬を飲み忘れたり、飲み残したりすると症状が悪化しやすいし、また、体内にウイルスが残っていると、周りの人にうつしてしまうことにもなる。

 そうした心配が要らないのが、ラピアクタの大きな利点だろう。


肺炎は怖い!(2)

 

高齢者の肺炎

 肺炎の症状は、熱が出る。ときには高熱が出て寒けが起こる。

 せきやたんが出る。胸が痛い。

 風邪と似ているところもあるが、胸が痛いという点が違う。

 だから熱が高くて、胸が痛いと、医師は肺炎を疑う。

 ところが、高齢者の肺炎では、そうした症状がなかなか出ない。

 なにかとてもだるいという体の倦怠(けんたい)感と、食欲がないというだけの症状で肺炎だった例が30%ぐらいある。

 そのため発見が遅れて、治療が後手になるのが、高齢者の肺炎を重くする理由の一つになっている。

 高齢者の肺炎の症状が出にくいのは、体の反応が弱いからだ。

 年をとると特に痛みの感覚が鈍くなる。

 肺炎だけではない。

 高齢者の心筋梗塞は痛みがないか、ごく弱いことが少なくない。無痛性心筋梗塞という。

 高齢者の肺炎は、高熱も出ない。

 せいぜい37度台の微熱のような熱が出る程度だ。

 要するに体の反応が鈍いので発病がはっきりしない。

 しかし、それは病気の進行がゆっくりだということではなくて、病気自体は進行している。

 お年寄りがぐったりしているようなときは、ぜひ早めにお医者さんへ──  
 

肺炎球菌

 高齢者がインフルエンザにかかると、肺炎を併発しやすい。

 それにはインフルエンザウイルス自体が肺に広がるウイルス性肺炎と、肺炎球菌などインフルエンザウイルスとは無関係の細菌が肺に広がる細菌性肺炎がある。

 後者のほうがずっと多い。

 インフルエンザ肺炎の合併細菌を調べたデータを見ると、断トツに多いのが肺炎球菌で53%を占める。

「インフルエンザが猛威をふるって、肺炎を併発して亡くなる人が激増するとき、その大半は肺炎球菌肺炎だといっていいでしょう」と、金沢実・埼玉医大呼吸器内科教授は話した。

 肺炎球菌は、健康な人でも40~60%は鼻やのどなどにもっていて、通常は無害だが、免疫力が弱くなると、口の中の細菌が肺に入って肺炎や気管支炎、中耳炎などを引き起こす。

 だから肺炎を防ぐには、風邪をひかないこと、夜寝ている間に口の中の細菌が肺に入らないようにすること、この二つが肝心だ。

 健康な人が起きているときは、喉頭から5センチ下のほうには、ほとんど菌がいないが、眠っている間は、起きているときとは呼吸のしかたが変わるので、気道に陰圧(内部の圧力が外部より低い状態)が生じ、口の中の菌が気管にふっと吸い込まれてしまう。

 それを防ぐには、寝る前に歯をみがきうがいをし、口の中を無菌状態にするのが第一のポイントだ。

 顔をあおむけて喉の奥まで洗ううがいを3回やれば口の中も、喉頭もほとんどきれいになる。

 

未知のウイルス

 一昨年大騒ぎになった新型インフルエンザが、通常の季節性インフルエンザと大きく異なるのは、ウイルス性肺炎が高齢者や妊婦などのハイリスク層だけでなく、基礎疾患のない人にも発症している点だ。

「これからは先入観を持たず、ウイルス性肺炎の合併も常に念頭において、インフルエンザの治療を行う必要があるでしょう」

 ──と、金澤實・埼玉医大教授(呼吸器内科)は注意を促している。

 一方、高齢者には新型インフルの感染者が少ないといわれた。

 それはスペイン風邪など20世紀前半に流行したウイルスの構造と同じだったからで、1918年以前に生まれた90歳以上の人は、抗体を持っていることがわかった。

 これを裏返すと高齢者でも90歳以下の人は安心できない。

 インフルウイルスは「新型」である限り人間にとって「未知のウイルス」なのだ。

肺炎は怖い!(1)

 

肺と肺炎

 インフルエンザや風邪で最も怖いのは肺炎を併発することだ。

 インフルエンザによる死亡例の90%以上は肺炎死だ。

 特に気をつけなければいけないのは、高齢者と幼児。

 肺炎になっても自覚症状が乏しく、あっという間に重症になる。

 熱が高くならない、セキやタンもあまり出ない、呼吸が苦しいとも訴えないが、顔だけ赤い。

 ぐったりしてしまう。食べない─といった例が多く、いきなり意識障害が起こることもあるという。

 そうなる前に早く気づいて受診しよう。

「肺炎は老人に安らかな死をもたらす最後の友だ」と言ったのは、近代内科学の父、ウイリアム・オスラーだ。

 ま、いずれはそれを望むとしても、なるべくならずーっと先延ばしにしたいものだ。

 肺の最も大切な役目は、空気の中の酸素を血液中に取り入れ、血液中の炭酸ガスを吐き出すことだが、吸い込む空気の中には病原菌がいっぱい混じっている。

 そこへもってきて肺には、全身から心臓に戻った、汚れた(栄養豊富な)血液が、そのまま入ってくる。

 病原菌の繁殖にはもってこいの環境だ。

 繁殖し始めた病原菌を追い出そうと、白血球など体の防衛軍が集まってきて、戦争(炎症)が起こるのが、肺炎だ。

 エックス線写真にはそこは真っ白に映る。

 が、ごく初期の肺炎はエックス線にはまだ影が出ない。

 聴診器のほうがよくわかると、練達の内科医は言う。

「慣れた医者は、聴診器で肺の中の小さな特異な雑音をキャッチし、素早く病変を見つけます」

 

隠れ1位

 抗生物質ができて、肺炎で亡くなる人はずいぶん減った。

 それでも肺炎は、がん、心臓病、脳卒中に次ぐ日本人の死因4位であり、高齢者の場合、病理解剖で死亡の直接の原因を調べると、肺炎が最も多い。

 例えば脳卒中で倒れて入院治療中に亡くなったが、実は肺炎を併発し、そのために死亡したといった例がとても多く、高齢者の死因の隠れ1位といわれる。

 肺炎は依然、きわめて危険な病気なのだ。

 肺炎を防ぐには、どうしたらいいか。

 まず第一に風邪をひかないこと。

 常識的なことだが、なるべく人ごみに出ないようにする。

 外出のさいは寒くない服装をし、マスクをする。

 帰宅したらうがいをし、手を洗う。

 栄養のバランスのいい食事をして、睡眠を十分とる。

 もし風邪をひいても全身の状態がよければ、普通の風邪ですんで肺炎にはならない。

 なぜか?

 肺炎のような感染症は、ホスト・パラサイト・リレーションズ(宿主─寄生体関係)といって、病人の体そのもの(宿主)と、それに寄生する病原体との力関係で、重くもなるし、軽くもなるからだ。

 高齢者の肺炎の死亡率が高いのは、寄生体(ウイルスや細菌=パラサイト)の側に問題があるのではなく、その人の体(宿主=ホスト)のほうの要因による。

 肺炎を乗り切った人と、死亡した人を調べた臨床報告「老年者の肺炎100例」を見ると、亡くなった人たちには、

 1 脱水症状のある人

 2 腎臓や肝臓の機能が低下した人

 3 意識障害(意識がもうろうとなる)が出た人がとても多い。

 だから肺炎だけを治療の目標にするのではなく、全身状態をよくしなければ肺炎は治らない。

 肺炎を防ぎ・治すためには、要するに老化現象が進まないように日ごろから規則正しい活動的な生活をすること─と、老年学の大家は話した。

 普段から健康に気を配って体調を整えておくことが大切だ。

 もう一つ、肺の健康のために大切なことは深呼吸だ。

 普通の呼吸では、肺が完全にはふくらまない。深呼吸で肺を十分ふくらませると気管がリラックスし、肺がまんべんなく活動する。

 朝晩、日中、思いつくたびに深呼吸をしよう。

 ある呼吸器内科の専門医は、

「おやつ代わりに深呼吸を─」と話した。

インフルVSお茶うがい

 インフルエンザの本格的流行が始まっている。  100種類とも200種類ともいわれる風邪のウイルス(インフルエンザウイルスもその一種)の大半は、寒く、冷たく、乾いた環境で活動が活発になり、感染力が強くなる。

 一方、その寒冷刺激は、人間の免疫力を低下させるようにも作用する。

 悪条件が重なり、冬は風邪&インフルがはやる。

 予防の基本は、マスク、手洗い、うがい。

 風邪のウイルスは、患者のくしゃみやせきで空中に飛び、空気感染する。

 マスクは、ウイルスをばらまかないためにも、ウイルスが鼻や口から入るのを防ぐのにも役立つ。

 空中を浮遊したウイルスはそこら中の物にくっつき、それに触った手から人にうつる。

 風邪の季節は特にこまめに手を洗おう。

 そして、うがい。

 イチ押しは「お茶うがい」だ。

 風邪、インフルエンザの予防に、緑茶や紅茶でやるうがいが非常に効果的なことを、20年も前に証明した人は島村忠勝・昭和大学医学部教授(細菌学)だった。

 緑茶や紅茶の渋みのもとカテキン類のエピガロカテキンガレートという物質が、生体の細胞に取りつくウイルスの働きを妨げる。

 実験では、普段飲んでいる緑茶や紅茶を300分の1の濃度に薄めた液でも、インフルエンザウイルスの感染力を100%抑えた。

 島村教授の研究報告を参考にした、茶どころ静岡県のある町の小学校では、毎日、児童にお茶でうがいをさせた。

「周辺の各地では集団風邪で学校・学級閉鎖が相次いだが、当校は無事でした」という校長先生からの毛筆書きの礼状を見せてもらったことがある。

 生ぬるい緑茶か紅茶で、のどの奥までよく洗うように頭を大きく後ろにそらし、口の中だけでなく、少し鼻にも入るようにガラガラやるとよい。

 冬の喫茶店では、レモンティーがお勧め。口の中に長く含むようにして飲めばよい。

 うがいには及ばないが、それなりに効果的。ただしミルクティーは、牛乳のたんぱく質のせいでカテキンの作用が落ちる。


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