暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

おれのがん余談

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 しかし、まあ、なんとよく病気をするものだ。

 肝嚢胞、前立腺がん、失聴、尿管がん。

 おれは、学歴は貧しいけど、病歴は輝かしく豊かなのである。

 肝臓高校、前立腺大学、難聴専門学校、尿管大学院──卒業したのは高校だけで、ほかはたぶんずっと留年したままで終わりそうだが。

 それらの病気によっておれは多くのことを学び、矯めされ、鍛えられた。

 おれが病気を治すのではない、病気がおれを直してくれるのである。

 おかげで、ずいぶんいい加減な人間がいくらかまともになれたようにも思える。

 人間、なにが幸いするかわからない。

 がんも、失聴も、自分にはぜひ必要なもので、天の恵みであった。

 これからも、がんを楽しみ、ツン〇を笑い、もう少し生きてみよう。

 おれはいま、そんなふうに思っている。

 それにしても、おれがかかるのは、前立腺肥大症、前立腺がん、尿管がん......なぜかほとんど下のほうの病気ではないか。

 肺結核、狭心症、うつ病......といった、上のほうの上品で優雅な感じの病気に比べると、下等というか下品というか、優雅さに欠ける感じである。

 いかにもおれに似合っているなぁと思う。

 病気も人を選ぶのだろうか?

 ──などと、ざれごとを記したあとに続けるのはどうかと思うが、あの湯川秀樹博士も前立腺がんだった。

 博士は1975年の夏に前立腺がんを発症、81年秋、亡くなられた。

 がん発覚直後に2度、手術を受けた。

 日夜、すさまじい痛みに襲われ、スミ夫人と手をとり合い、「死のうか」と言ったと、何かで読んだ記憶がある。

 湯川博士は仰ぎ見る高峰、こちらは麓の道ばたの石ころだが、同じがんの患者としては石ころのほうがずっと幸福だった。

 現代医学の進歩と医療の普及のおかげである。

 おれはいま、この10有余年を振り返り、自分がいただいた恩恵を噛みしめている。

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