暮らしのなかの健康法万般。赤ちゃんからお年寄りまでの病気の解説・予防・治療法。食生活、食品、サプリメント情報…など、面白くてタメになる実用エッセイ。

はじめにひとこと─

 あるいは、ご愛読いただいていた人もおられるかもしれない。

 私は、1986年(新聞によっては2000年前後)以来、地方新聞10数紙に「健康歳時記」(あるいは「健康日記」など)というタイトルのコラムを毎日(あるいは週1~2回)書き続けてきた。

 それが、記事を配信していた通信社の事情(東日本大震災の被災地の新聞3紙への配信が中止になったため、経費面での採算がとれなくなった)で、中止されてしまった。

 未曾有の大津波に小さなコラムがあっさり押し流されてしまった案配だ。ーーいや、それがそうではなかったことが、その後、判明した。

(事実は「なんやらかんやら日録」中の 「G芸通信社への手紙」などに詳述した)。

 やっているときは「しんどいなあ。そろそろ止めたいなあ」と思うこともあったが、いざ無くなると、なぜか妙に寂しい。

 日常生活の歯車が一つ欠けたような感じさえする。

 なにかやってないと気持ちが落ち着かない貧乏性なのである。

 そんなわけで、同じ形式の記事をネット上で書き続けることにした。

 限定的な地域の新聞購読者だけではなく、全国の多くの人に読んでいただければ……という願いもこめて。

 新聞紙面ではスペースの制限(1回450字)があり、説明不足になることも多かったが、ここではその点の融通も利くのが、ありがたい。

 題して「健康1日1話」、ご愛読いただければうれしいです。

 2011年 夏       丸山寛之

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アルツハイマー病の超早期治療

 朝丘雪路さん(82歳)がアルツハイマー型認知症のため4月27日に死去した。

 アルツハイマー病の発症前治療に関する、東京大学大学院・岩坪威教授(神経病理学)の談話を読んだ。


 アルツハイマー病(AD)は記憶障害などの進行性の認知機能障害を主徴とする神経変性疾患で、病理学的変化が10数年から20年かけて進行し、症状が出現したときには既に病理学的変化はかなり進行している。


 ADの根本的治療は、発症メカニズムに即して症状の出現前を対象とする方向にあるという。
 

 脳画像や体液バイオマーカーを探索


 ADの病理学的特徴としては、大脳皮質の神経細胞脱落、神経原線維の変化、老人斑の出現が挙げられる。


 1980年代に病理学的研究が進み、老人斑の主成分であるアミロイドβ(Aβ)や神経原線維の変化の主成分であるタウ蛋白質が同定された。


 また、1990年代には遺伝学研究の進歩により、家族性ADの研究からAβがADの病因であること(アミロイド仮説)、タウ蛋白質は細胞死から認知症症状の発現のメカニズムに関わることが立証された。


 アカデミアにおいて発見されたAD発症メカニズムに基づき、1990年代末には製薬企業がAβとタウ蛋白質を標的として、それらが凝集・蓄積する過程を抑制する疾患修飾薬の開発に取り組み始めた。


 岩坪教授は、

「ADの治療では、その発症メカニズムを知り、症状が軽度または不完全な軽度認知機能障害(MCI)の段階、さらには病理的な変化は起きているが無症状のプレクリニカルADの段階で治療を開始し、神経細胞の変性を抑え、少しでも進行のスピードを抑制することが理想である。


 疾患修飾薬の効果を正確に判定するには、臨床症状や認知機能の変化が少ない初期のADの精密な自然歴を知り、早期の無症候段階で脳に凝集・蓄積するAβを評価、測定する指標が必要となる」と説明する。


 診断には認知機能、臨床評価が最も重要であるが、検査結果はばらつきが大きい。


 そのため、安定して脳の神経細胞の変性を反映するバイオマーカーを併用することで早期から正確な評価ができる。


 また、ADの臨床症状の出現を代理して予測するサロゲートマーカーの開発も非常に重要となる。


アミロイドPETでAβ蓄積を非侵襲的に可視化


 そこで2004年に、MCIを中心とする早期段階のADの自然歴を明らかにし、ADの臨床症状の出現を代理して予測する脳画像や体液バイオマーカーを探索し、症状とバイオマーカーの併用によりその後の進行度を予測、評価することを目的とした多施設共同の縦断的臨床研究ADNIが米国で開始された。


 2004~09年のADNI第1期(ADNI-1)では57施設でADに進行する可能性が高い健忘型MCI 400例、軽症AD 200例、認知機能健常高齢者200例を目標に被験者がリクルートされ、2007年に819例(健忘型MCI 398例、軽症AD192例、認知機能健常高齢者229例)が組み入れられた。


 当初、構造的MRIを用いた脳容積の測定、フルオロデオキシグルコース(FDG)-PETを用いた脳糖代謝画像、脳脊髄液中のタウ蛋白質とAβ1-42などが、バイオマーカーとして測定されたが、途中から一部の被験者に11C-PiBを用いたアミロイドPETによるアミロイドイメージングが行われた。


 2009~11年のADNI"Grand Opportunities"( ADNI GO)では18F-AV45を用いたアミロイドPETが行われるようになり、2011~16年のADNI第2期(ADNI-2)からは全例にアミロイドPETが施行されるようになった。


 ADNI第3期(ADNI-3)が2016年から5年間の予定で現在進行中である。


「タウ蛋白質が蓄積する疾患としてはAD以外にも何種類かの変性型認知症があるが、AβはADあるいはその初期段階を表す必須の指標である。


 Aβの脳内蓄積を非侵襲的に可視化することが可能になったことから、ADNIでのアミロイドPETの導入はAD病理の進行過程を知る上で大きなインパクトとなった」と。


 日米のMCI進行パターンは類似


 日本で疾患修飾薬の治験を開始するには、ADNIと同様の画像・バイオマーカーを用いた研究が不可欠と考えられた。


 そこで、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)橋渡し促進技術開発プログラム、厚生労働省認知症対策総合研究と企業コンソーシアムが協力したpublic-private partnership(PPP)として医師・研究者主導国家的臨床研究プロジェクトJ-ADNIが2007年に始まった。


 J-ADNIでは2008~12年の3年8カ月間に全国38臨床施設で710例をスクリーニングし、ADに進行する可能性が高い後期健忘型MCI 234例、軽症AD 149例、認知機能健常高齢者154例、計537例が組み入れられた。


 半年から1年ごとにMRIによる脳形態画像、FDG-PETによる脳糖代謝画像、11C-PiBまたはBF-227を用いたアミロイドPETイメージング、脳脊髄液検査、ApoE遺伝子型検査、種々の臨床・認知機能検査を行い、3年間(ADは2年間)フォローアップし、2014年3月に終了した。


 日米の認知機能検査データを比較したところ、アミロイド陽性の後期健忘型MCIの認知機能障害検査に基づく進行パターンは両国で非常に類似していることなどが明らかになった。


 J-ADNIで得られたデータは科学技術振興機構National Bioscience Database Centerのヒトデータベースに登録され、研究用に広く公開され、活用が始まっている。


 レクリニカルADを対象とした予防治験も開始


 次世代の治験としては、MCIよりもさらに前段階のプレクリニカルAD(アミロイドなどの病理学的変化は陽性だが、無症候である時期)を対象に、疾患修飾薬が認知機能の正常域からの低下を食い止められるかどうかを検討する予防治験が開始されている。


 2014年に開始されたAnti-Amyloid Treatment in Asymptomatic Alzheimer's Disease(A4)研究は米国、カナダ、オーストラリア、日本が参加し、アミロイドPET陽性のプレクリニカルADを対象に、抗Aβモノクローナル抗体solanezumabの有効性と安全性を4.5年間追跡して検討する二重盲検ランダム化比較試験である。


 わが国からは岩坪教授ら東京大学の研究グループが参加、2017年12月に世界で1,169人の被験者組み入れが終了した。


 岩坪教授は、

「A4はその後に続くプレクリニカルADを対象とした抗Aβ薬の治験のプロトタイプとして重要な意味を持っている。

 今後、ADの予防治験の対象は認知機能健常者になるため、治験を行う上で被験者の登録システム(registry)が鍵になる」


 米国では一般高齢者に対する認知症研究の啓発活動が熱心に行われ、インターネットを活用したregistryも進んでいる。


 治験に興味を持った人が、簡単なスクリーニングを受けて登録できるシステムが構築されている。


 日本でも2017年から認知症外来をベースとするオレンジレジストリー、健常者を主対象としたインターネットベースの登録システムIROOP(Integrated Registry Of Orange Plan)が開始された。


 また学会を中心とするPPPとして、治験に適格な条件を備えた被験者を多数登録した「トライアル・レディ・コホート」を国際的な連携のもとに構築するプロジェクトも構想されている。


 同教授は、

「抗Aβ薬をはじめとする疾患修飾薬で最大の効果を得るためには、超早期の治療が必要である。

 その対象となる一般の健常高齢者にAD、認知症の重要性を理解していただき、興味を持たれた方は治験にも積極的に参加してほしい」と呼びかけている。

初の「アジア版大腸癌GL」

プロ野球記録の2215試合連続出場。

「鉄人」と呼ばれ、国民栄誉賞も受賞した衣笠祥雄氏(71歳)が、4月23日に亡くなった。

死因は「上行結腸がん」と報じられた。

「あ、やはり<右>だったか」と思った。

つい先日、下のようなニュースメールを読んだばかりだったからだ。

初の「アジア版大腸癌GL」で注目される"左右差

2017年11月、欧州臨床腫瘍学会アジア大会において、初の「アジア版大腸癌治療ガイドライン」が公表された。

3月22日に開かれたメディアセミナーでは、同ガイドライン(GL)策定の中心メンバーである国立がん研究センター東病院消化管内科長の吉野孝之氏、および愛知県がんセンター中央病院薬物療法部部長の室圭氏が、大腸がんの"左右差"に関する最新トピックスや、同GLが日本の実臨床に与える影響などについて解説した。

大腸がんで参考にされている三つのGLの特徴は?

吉野氏は初めに、アジア版大腸癌治療GL作成の経緯と概要について報告した。

同氏によると、大腸がん治療で参考とされているGLには、

① 大腸癌研究会(日本)が作成する「大腸癌治療GL」

② 米国25施設のがんセンターを中心に策定した全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)のGL

③ ESMO(欧州癌治療学会議)のGL―がある。

①は大腸がん治療全般について網羅的に記載されているが、改訂の頻度は数年間隔であり、薬物療法については日本で保険適用された薬剤を中心に記載している。

一方、②は年に複数回改訂されており、同GLで推奨した新薬の多くは米食品医薬局(FDA)が承認している。

③については、改訂の頻度は2~3年間隔であるが、エキスパートのコンセンサス会議を経て最新のエビデンスに基づいた内容を記載しており、①~③の中では「最もコンセンサスに踏み込んでおり、至適療法を提示する内容になっている」(吉野氏)。

① の日本の大腸癌診療GLは、どちらかというと②に近く、③ほど踏み込んだ内容になっていないのが特徴だという。

"原発部位による違い"を盛り込んだ初のアジア版GL策定へ

ESMO(欧州癌治療学会議)のGLについては、2016年に改訂版が刊行されている。

しかし、同GL作成時にエビデンスとして用いられたデータは、93%が欧米人患者を対象としたものである。

さらに、2016年版GL公表後、「大腸がんの左右差」と予後および治療効果との関連性が指摘されるようになった。

そのため、吉野氏らは転移性大腸がんの管理に関して、世界初となるアジア版大腸癌GLを策定することを2016年12月に決断。

同GL作成に当たっては、アジア各国(中国、韓国、マレーシア、シンガポール、台湾)の臨床腫瘍学会協力の下に、日本臨床腫瘍学会とESMOが主導した。

一般的にこうしたGLの策定には数年を要するが、同GLの作成は急ピッチで行われ、昨年11月に公表された。

同GLでは参考文献のうち、アジア人が著者のものが65.5%を占めている。

また、欧米人とアジア人で薬剤の治療効果には大差はないものの、有害事象の発現頻度には注意が必要なことから、アジア人で発現頻度が高い薬剤に関しては適正使用に関する記載を追加している。

さらに日本(アジア)で使用経験が多い薬剤についての記載も追加。

最新のトピックスである大腸がんの左右差(原発巣の部位による違い)を踏まえて、アジア人患者に適した治療アルゴリズムを提示しているという。


アジア版大腸癌GLを日本の臨床にどのように生かすか

次に室氏は、「アジア版大腸癌GLを日本の臨床にどのように生かすか」について解説した。

大腸癌研究会のGLは2016年版が最新版だが、同氏は同GL作成委員会の化学療法領域責任者でもある。

大腸がんの占拠部位別の罹患率は、右側が約30%、左側が約70%である。

区分別に罹患率を見ると、右側は盲腸(7%)、上行結腸(14%)、横行結腸(9%)、左側は下行結腸(5%)、S状結腸(26%)、直腸(39%)となっている。

また、大腸がんの右側と左側で臨床的な特徴に違いがあることは以前から知られている。

肛門から遠い右側では腸の内容物がまだ液状であるため、症状が出にくい。

そのため、右側で発症した大腸がんは比較的大きな腫瘍が多く、ステージも進行している例が多い。

一方、左側で発症した大腸がんは肛門に近いため、出血などの症状が確認しやすく、より早期に発見されることも多いため、比較的ステージが進行していない例が多い。

罹患率としては右側が増加傾向にあり、女性、高齢者で多いという特徴もあるという。

さらに、右側では大腸がんの悪性度が左側に比べて悪いことも知られている。

遺伝子的背景として、右側では代表的な予後不良因子とされるや遺伝子変異が多い。

加えて、大腸がんの右側と左側では遺伝子変異の分布が異なることから、薬剤の感受性に関わる因子が大きく異なることも明らかになってきた。

2016年以降、予後・薬剤効果の左右差に関する報告が相次ぐ

こうした大腸がんの左右における予後および薬剤の感受性の違いは、近年相次いで報告されている。

2016年の米国臨床腫瘍学会では、切除不能大腸がんの一次治療におけるFOLFOX/FOLFIRI療法に対する抗上皮成長因子受容体(EGFR)抗体セツキシマブまたは抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)抗体ベバシズマブの併用療法の安全性と有効性を比較した第Ⅲ相試験の探索的解析の結果が発表。

全体として原発病巣が左側の場合は右側に比べて治療成績が良く、かつ抗EGFR抗体の治療効果が高いことなどが示された。

さらに昨年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2017)では、切除不能・進行再発大腸がんに対する化学療法+ベバシズマブと化学療法+抗EGFR抗体の有効性を比較検討した6試験を用いて、原発巣の位置別に治療効果を後ろ向きに解析した統合解析の結果が示された。

この結果からも、大腸がんでは左側と右側で予後、薬剤の効果が違うことが示された。

そのため、大腸がんの左右差に関して一定のコンセンサスが得られるようになったという。


国内の大腸癌治療GLにも"左右差"を盛り込む予定

これらの背景を踏まえて、アジア版大腸癌GLではRAS遺伝子野生型であれば、左側では「2剤併用化学療法+抗EGFR抗体薬」、右側では「3剤/2剤併用化学療法+ベバシズマブ」を推奨した。

このアジア版大腸癌GLを受けて、愛知県がんセンター中央病院では現在、ステージⅣ期(切除不能)大腸がんの一次治療の治療方針として、全身状態・年齢・合併症・本人(家族)の希望に加え、RAS遺伝子の状況および原発巣の位置(右側か左側か)を総合的に勘案して治療を決定しているという。

ただし、こうした原発巣の部位を考慮した治療選択については、国内の大腸癌治療GLにはまだ記載されていないこともあり、国内の臨床医では"支持しない"との見解も存在する。

「右側原発の患者であっても抗EGFR抗体に著効した経験があるので、一概に原発巣の位置で治療を決めることはできない」といった意見もある。

そこで大腸癌研究会は、今年7月に開催される第89回同研究会で大腸がんの左右差による治療選択を盛り込んだGLの改訂案を提示し、来年1月には改訂版を刊行する予定という。

今後は各がん種でアジア版GLを作成予定

大腸がんの一次治療に関する展望として、室氏は「近い将来、遺伝子変異検査が導入される」と指摘した。

大腸がんでは患者の約 10%で変異が認められ 、同変異例では治療成績が不良かつ抗EGFR抗体薬の治療効果が期待し難いことなどが明らかになってきているためだ。

また、同氏は「間もなく一部の大腸がんには免疫チェックポイント阻害薬が臨床応用される。血液を用いた遺伝子検査の実現も近い」と展望した。

最後に、同氏は「大腸がんに端を発したアジア版GLの策定については、他のがん種にも広げていこうという動きが急速に進展している」と報告。

今年11月には、進行胃・食道がんGLのアジア版(責任者は同氏)を刊行する予定であることに加え、進行非小細胞肺がんのアジア版GLについても年内の刊行を予定している。

さらに来年には、進行膵がん、肝臓がん、胆道がんのアジア版GLを刊行。

その後、前立腺がん、リンパ腫、神経内分泌腫瘍、乳がんについても順次刊行していく予定という。

(髙田あや) Medical Tribune 2018/04/20 配信

ナッツ1日28gで心血管疾患予防

 ナッツの心血管疾患予防効果に注目が集まっている

 2013年、スペインの研究チームは、地中海食による指導介入が脂質制限食による指導介入と比較して心血管疾患を30%減少させることを示した。

 この折、地中海食指導介入群の中にさらに2群が設定され、1群には地中海食を摂取しつつ1週間に1㍑のオリーブ油の使用が求められ、もう1群には1日30㌘のナッツの摂取が求められた。

 オリーブ油群、ナッツ群ともに脂質制限食群に比べ心血管疾患の発症を有意に抑制した。

 正直、私はどうあがいても1週間に1㍑のオリーブ油は使いこなせないが、1日30㌘のナッツであれば摂取できる。

 このときから、私はナッツ摂取に関心を持つようになったのだが、実は同じ2013年に早速ナッツ摂取と総死亡率との負の相関、翌2014年にはナッツ摂取と心血管疾患発症との負の相関が示された。

 この二つの観察研究は、いずれも米・ハーバード大学公衆衛生学栄養学部門が報告していたが、前者はNurses' Health StudyとHealth Professionals Follow-Up Studyという同大学が実施しているコホート研究の解析であり、後者はそれらも含めたコホート研究のメタ解析であった。

 今回、同大学が実施している三つのコホート研究の検討があらためて行われ、ナッツ摂取と心血管疾患の発症がやはり負の相関関係にあることが報告された。

 力強いタイトルのeditorial (J Am Coll Cardiol 2017;70:2533-2535)も含めてご紹介したい。

 研究のポイント1: 3コホートでナッツ摂取と心血管疾患の相関を検討

 本研究で解析されたコホート研究は以下の三つである。

・Nurses' Health Study(NHS:7万6,364人、女性、1980~2012年のデータ)

・Nurses' Health Study Ⅱ(NHSⅡ:9万2,946人、女性、1991~2013年のデータ)

・Health Professionals Follow-Up Study(HPFS:4万1,526人、男性、1986~2012年のデータ)

 これらはいずれも世界的に有名なコホート研究であり、これまでにも数多くの論文を出しているが、念のため、簡単にご紹介する。

 NHSは1976年に開始され、30~55歳の女性看護師12万1,700人を登録したコホート研究である。

 NHSⅡは1989年に設立され、25~42歳の女性看護師11万6,671人を登録したコホート研究である。

 HPFSは1986年に開始され、40~75歳の男性医療従事者5万1,529人を登録したコホート研究である。

 いずれも登録から2年ごとに生活習慣や健康状態についてのアンケートがなされている。

 本研究では、登録の時点で心血管疾患やがんの既往がある人、ナッツ摂取の状況についての情報を提供しなかった人、食事摂取記録の記載に漏れが多い人、エネルギー摂取が過少の人(男性<800kcal/日、女性<600kcal/日)、エネルギー摂取が過剰の人(男性>4,200kcal/日、女性>3,500kcal/日)を除外し、NHSの7万6,364人、NHSⅡの9万2,946人、HPFSの4万1,526人を解析対象とした。

 食習慣アンケートにおけるナッツ摂取についての質問は28gを1サービングと定義し、以下の中から選択することになっていた。

 サービング=食べ物や飲み物の平均化した単位。例、パン1枚、ナッツ28㌘は1サービング。

 1.ほとんど摂取しない

 2.月に1~3サービング

 3.週に1サービング

 4.週に2~4サービング

 5.週に5~6サービング

 6.日に1サービング

 7.日に2~3サービング

 8.日に4~6サービング

 9.日に7サービング以上

 また1998年以降には、それまでの総ナッツ摂取量に変えて、クルミ、ピーナツ、ピーナツバター、その他のナッツの摂取量を調査することとし、それらの合算量を総ナッツ摂取量とした。

 実際の解析においては、暦年のナッツ摂取量を基に、以下の5群にまとめて解析した。

 第一群:ほとんど摂取しない(0.00サービング/日)

 第二群:週に1サービング未満(0.01~0.09サービング/日)

 第三群:週に1サービング(0.10~0.19サービング/日)

 第四群:週に2~4サービング(0.20~0.59サービング/日)
 
 第五群:週に5サービング以上(0.60サービング/日以上)

 心血管疾患の定義として、主要アウトカムには心筋梗塞、脳卒中、心血管死の複合エンドポイントをおいた。

 また、複合エンドポイントのそれぞれの構成要素〔致死性・非致死性心筋梗塞、致死性・非致死性脳卒中(虚血性、出血性)〕を二次エンドポイントとした。これらのエンドポイントがアンケ―ト上で回答された場合に、本人(本人が亡くなった場合には家族)にカルテ開示の承諾を求め、エンドポイントが生じた月とエンドポイントの診断内容を確認した。

 研究のポイント2:ナッツ摂取量と心血管疾患の発症に負の相関

 NHSで28.7年、NHSⅡで21.5年、HPFSで22.5年(計506万3,439人・年)の平均追跡期間中に、8,390人の心筋梗塞、5,910人の脳卒中、計1万4,136人の心血管疾患の発症があった。

 そこで、主要アウトカムの発症リスクを各群で見てみると、ナッツ摂取が多い方が心血管疾患の発症リスクが少なかった。

 これは年齢で調整しても、多変量(年齢、人種、BMI、身体活動量、エネルギー摂取量、喫煙状況、ビタミン剤内服の有無、アスピリン使用の有無、家族歴、既往歴、エネルギー摂取量、閉経状況、飲酒、野菜摂取、肉摂取)で調整しても同様であった。

 こうしたナッツ摂取量と心血管疾患との負の相関は、一つひとつの心血管イベントについて検討した場合、心筋梗塞に対しては認められたが、脳卒中に対しては認められなかった。

 ナッツの種類による相違を検討したところ、心筋梗塞に対してはいずれのナッツも発症リスクの減少につながっており、脳卒中に対しては特にクルミが(3コホートの合計ではピーナツも)発症リスクの減少につながっていた。

 今回の結果を別な言葉で表現すると、「ナッツを28㌘食べるごとに心血管疾患が全体として6%ずつ減少し、心筋梗塞としては13%ずつ減少する」ということになるらしい。

 私の考察:早速今日の夜食にナッツを食べよう
 
 今回のデータ解析結果からは、なんとナッツを1サービング(28㌘)摂取するごとに13%もの心筋梗塞リスクの減少が得られるという。

 もちろん、これはあくまでも観察研究から得られた解析結果にすぎない。

 栄養学では、観察研究のデータと介入試験のデータに乖離が生じることがあり、観察研究のデータだけをうのみにして因果関係を推し量ることはできない。

 しかし、PREDIMED試験で既に介入試験の結果と一致しているだけに、因果関係はあるのではなかろうか。

 1サービングで13%もの心筋梗塞リスクの減少が得られるというのは大げさな気もするが、負の関連があるのは間違いように思う。

 この論文に対してJ Am Coll Caridol誌は、PREDIMED試験のメンバーでもある、スペイン・バルセロナの肥満栄養病態生理研究所のEmilio Ros氏にeditorial commentを委ね、

「ナッツを食べよ!されば生きながらえん!!(Eat Nuts, Live Longer)」という題名の論文を掲載している。

 Ros氏も既存のデータとの一致から、ナッツ摂取による心血管疾患保護への因果関係が強く示唆されるとし、αリノレン酸(植物性ω3多価不飽和脂肪酸。特にクルミに多いとされる)が特に良い効果をもたらし、故にクルミは脳卒中に対しても保護的に働くのではないかとしている。

 また、クルミと同様、ピーナツも脳卒中を含めて保護的であることにも注目しつつ、ピーナツバターではそうした作用がないことから、「おそらく、塩分や糖質が添加されるためにナッツのメリットが消失してしまっているのであろう」としている。

 Ros氏の結論は、"ナッツは天然の健康カプセルと見なせるかもしれない"である。

 1週間に1㍑のオリーブ油の摂取は難しい私ではあるが、1日に28㌘のナッツなら可能だ。

 早速今日の夜食にナッツを食べようと思う。

 =山田 悟 北里大学北里研究所病院糖尿病センター長

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